日本胸部疾患学会雑誌
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34 巻, 3 号
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  • 花岡 正幸, 藤本 圭作, 早坂 宗治, 久保 恵嗣, 小林 俊夫, 関口 守衛, 本田 孝行
    1996 年 34 巻 3 号 p. 259-265
    発行日: 1996/03/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    1990年から1994年までの5年間に, 信州大学医学部第1内科にて施行された気管支肺胞洗浄 (BAL) 検査の成績をまとめた. 対象は健常群21例, 疾患群216例であり, 各疾患毎に洗浄液中の細胞成分, リンパ球表面マーカーおよび可溶性成分につき検討した. bronchiolitis obliterans organizing pneumonia (BOOP), シェーグレン症候群, サルコイドーシス, 過敏性肺臓炎などにリンパ球の増多を認め, びまん性汎細気管支炎および高地肺水腫で好中球, 好酸球性肺炎で好酸球のそれぞれ著明な増加を認めた. CD4:CD8比は, ステージ1のサルコイドーシスで有意に上昇していた. 可溶性成分の検討で, 好酸球性肺炎および高地肺水腫に総蛋白およびアルブミンの著増を認め, これら疾患の発症に肺血管透過性が亢進するような機序の関与が示唆された.
  • 陳 俊雄, 矢野 孝子, 阿久沢 浩司, 門田 篤, 谷川 恵, 古屋 佳昭, 升谷 雅行, 堀江 孝至
    1996 年 34 巻 3 号 p. 266-269
    発行日: 1996/03/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    胸部X線写真上, 径2cm以下の孤立性腫瘤陰影を呈した59例について気管支鏡検査の診断的意義を検討した. 全体の診断率は57.6% (34/59) で, 疾患別では原発性肺癌65.6% (21/32), 肺結核症58.3% (7/12), 転移性肺癌60% (3/5), 陳旧性病巣60% (3/5) であった. 生検手技別診断率は, 悪性腫瘍ではX線透視下鉗子生検が鋭匙による擦過細胞診よりも優れ, 両者の併用により診断率は向上した. 悪性腫瘍では気管支洗浄法の有用性はなかったが,肺結核症の診断には鉗子生検よりも擦過および洗浄法が有効であった. 病巣の局在別には, 右上葉の診断率が最も低く, 特に悪性腫瘍の診断不能例は13例中9例が上葉であった. 小型陰影に対する気管支鏡検査の早期診断率を向上させるためには種々の生検手技を組み合わせることが重要であるが, 診断能の限界を知り, より的確な生検方法を選択する必要がある.
  • 張 敏, 西村 浩一, 池田 顕彦, 月野 光博, 小山 弘, 泉 孝英
    1996 年 34 巻 3 号 p. 270-274
    発行日: 1996/03/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    通院加療にてコントロールされていると考えられる成人慢性気管支喘息患者103例を対象に, (1) 自覚症状なし, (2) FEV1/FVC≧70%, (3) ピークフローの最低値が基準値の80%以上 (minPEF≧80%best) を治療目標とし, その達成度を比較検討した. 過去4週間に, 自覚症状がほとんどないものは72%, 受診時にFEV1/FVC≧70%を示したものは83%, minPEF≧80%best を維持したものは66%であり, 3つの治療目標の中では, PEFの基準が最も達成困難であった. 自覚症状とFEV1/FVC≧70%のみを治療目標とした場合, 治療不足になる可能性があり, PEFによるモニターは喘息診療において, ルーチン検査として行うべきであると考えられた.
  • 加藤 博一, 川名 明彦, 塩谷 寿美恵, 辻 千鶴子, 太田 保世
    1996 年 34 巻 3 号 p. 275-280
    発行日: 1996/03/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    放射線肺傷害発症機序への副腎皮質ステロイド剤の効果を明らかにする目的で, ラット実験モデルを用い気管支肺胞洗浄液中 (Bronchoalveolar lavage) の細胞数, 細胞分画, 肺胞マクロファージ表面の lymphocyte function associated molecule-1 (LFA-1) 発現率を検討した. 60Co, 20Gyの左胸郭1回照射2週間後にBALを施行した. 副腎皮質ステロイド剤はメチルプレドニゾロンを照射6時間前より開始し, 以後48時間毎に投与した. 放射線照射群では好中球数, LKFA-1発現率の増加を認めた. ステロイド投与群では, 放射線照射によるそれらの変化が有意に抑制された. 以上の結果は, 放射線肺傷害発症過程の急性期に接着分子が関与すること, 副腎皮質ステロイド剤の照射前からの投与が, これらの変化を抑制し得ることを示していた.
  • 永島 暉也
    1996 年 34 巻 3 号 p. 281-289
    発行日: 1996/03/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    恒温CO2混合ガス送出装置を作製し, 換気量測定用に試作した Thermistor・flow through system で得られるサーミスタ出力曲線 (THC) 内の面積 (THA) への, ガス送出時間, ガス温度, 室温の影響を検討した. 更に, ヒトでのTHAから算出した呼気量 (THV) への呼出時間, 呼気温度の補正効果及びTHCと同時に得られるCO2濃度曲線からのCO2ガス量 (CO2V) 測定の可能性の有無を検討した. 送出時間, ガス温度及び室温の増加は, それぞれ, THAの9%/sec, 6%/℃の増加及び7%/℃の低下をもたらした. 呼出時間・呼気温度補正を行ったTHVとレスピトレースで同時測定した気量間には1回の呼気でr=+0.904, 連続換気時にr=+0.881と有意の相関を認めた. CO2Vと送出CO2ガス量間に, またヒトでのCO2Vと同時測定したダグラスバッグによるCO2排出量間にも有意の相関 (r=+0.992) を認めた. THVについては, サーミスターの応答性に問題があり多少問題は残るが, CO2V測定法に関しては臨床応用への可能性が示唆された.
  • 諏訪部 章, 大竹 和久, 八鍬 直, 鈴木 博貴, 高橋 敬治
    1996 年 34 巻 3 号 p. 290-296
    発行日: 1996/03/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    成人呼吸窮迫症候群 (ARDS) 治療に用いられる人工サーファクタントが, 好中球機能に影響を及ぼすか検討した. 人エサーファクタントとしてサーファクタント-TA (S-TA) を用いた. 好中球は健常人末梢血から分離しプラスチックプレートへの接着能を機能評価の指標とした. S-TA (0.16~5mg/ml) の存在下で, FMLP, PMA, TNF刺激による好中球の接着は濃度依存性に抑制された. この抑制はS-TAの前処置あるいは加熱処理S-TAを用いても観察された. S-TAと反応した好中球は, 電顕的に核濃染や細胞表面の平滑化などが観察され, アポトーシスを促進することが示された. アポトーシス様好中球はS-TA反応後経時的に増加し, アポトーシスを抑制するG-CSF存在下でも増加した. 以上, S-TAが好中球機能を抑制することが示され, S-TA投与はARDSのサーファクタント異常の改善ばかりでなく滲出好中球機能を抑制する可能性が示された.
  • 鈴木 聡, 佐久間 勉, 小池 加保児, 小野 貞文, 谷田 達男, 藤村 重文
    1996 年 34 巻 3 号 p. 297-303
    発行日: 1996/03/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    ラット肺胞II型上皮細胞のNa+チャネル機能におよぼすβアゴニストの長期的効果を調べるために, 我々は細胞を0.1mMテルブタリンの存在下で5日間にわたり培養し, 22Na+の細胞内取り込みを測定した. テルブタリンは細胞増殖, 細胞形態, および細胞蛋白質量に影響を及ぼさなかったが, 培養2日目でアミロライド依存性の22Na+の細胞内取り込みを有意に増大させた. 一方, 培養5日目ではテブタリンによる増強効果は認められなかった. アミロライド依存性の22Na+取り込みは主にNa+チャネル機能を表すことから, 以上の成績はβアゴニストがNa+チャネル機能を亢進させ得ることを示している. 本研究は, 肺胞II型上皮細胞のNa+チャネル機能がβアゴニストによる長期的調節を受けていることを示唆するものである.
  • 画像所見と剖検時の病理学的所見との対比
    冬野 玄太郎, 小林 龍一郎, 伊賀 六一, 野守 裕明, 堀尾 裕俊, 森永 正二郎, 古寺 研一
    1996 年 34 巻 3 号 p. 304-311
    発行日: 1996/03/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    悪性腫瘍による上大静脈症候群 (以下SVCS) に Expandable Metallic Stent (以下EMS) 挿入を10例に行った. 今回, 剖検を得た7例 (8病変) を中心にEMS挿入前の画像所見と組織学的所見を対比させEMS挿入の適応を検討した. 剖検時にSVC内腔の開存症例は4例で, EMS挿入前の造影では狭窄部の辺縁は整で壁外性圧排による狭窄を予想していた. その4例ともEMS挿入後にSVCSの再発は認めずEMS挿入の最も良い適応であった. 剖検時に腫瘍浸潤でEMSが閉塞していた症例は2例あり, EMS挿入前の造影では狭窄部の辺縁は不整で腫瘍の血管内浸潤を予想していた. そのうち1例は生前にSVCSの再発は認めず, 1例は軽微な再発を呈したのみであった. 血管内浸潤性狭窄も側副血行路形成までの急性期であればEMS挿入の適応になり得た. 剖検時に血栓でEMSの閉塞症例は2例あり, 1例は左無名静脈, 1例はSVCSの再発例であった. 左無名静脈は人工血管留置の際も血栓性閉塞をきたし易く, EMS挿入の適応にはならないと考えた.
  • 大隈 園美, 笠原 正男, 黒田 誠, 松下 兼弘, 末次 勸, 横井 豊治
    1996 年 34 巻 3 号 p. 312-316
    発行日: 1996/03/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例77歳, 男性. 糖尿病にて通院中, 平成5年6月に右下葉の異常陰影を指摘され, 外来にて経過を観察していた. 平成6年7月より咳嗽, 喀痰出現し,呼吸困難のため当院入院. 胸水貯留し, 結核性胸膜炎が最も疑われ, 胸水穿刺, 胸膜生検などが施行されたが確定診断が得られず, 全経過約1年2ヵ月にて腫瘤は急速に増大し, 縦隔を圧排, 呼吸困難にて死亡した. 剖検にて巨大腫瘤は右胸腔を占拠し, 肺を圧排していた. 腫瘍と肺との境界は明瞭で, 縦隔に浸潤していた. 病理組織学的には右臓側胸膜原発性悪性中皮腫 (肉腫型) と診断された.
  • 石浦 嘉久, 藤村 政樹, 南 真司, 上田 暁子, 岩田 実, 渡辺 和良, 品川 俊治, 安井 正英, 松田 保, 北川 正信
    1996 年 34 巻 3 号 p. 317-321
    発行日: 1996/03/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    多発性骨髄腫 (IgAλ型) にて加療中の患者が発熱と気道症状を訴え入院した. 原因を明らかにするために行った気管支鏡検査時の肺生検によってびまん性肺胞隔壁型アミロイドーシスと診断した. 後日再検時に得られた気管支肺胞洗浄液の免疫電気泳動にて血清同様IgAλ型のM蛋白を証明したが, 形質細胞は認めなかった. 本症は自覚症状が乏しいため生前診断例は稀とされ, 自験例は気管支肺胞洗浄液を検討しえた本邦第1例目であったため, 文献的考察を加えて報告した.
  • 蔵本 美与子, 加藤 正一, 井上 泰
    1996 年 34 巻 3 号 p. 322-326
    発行日: 1996/03/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    肺リンパ管筋腫症は生殖年齢の女性にみられる稀な疾患である. 全肺野にびまん性の嚢胞性変化があり, 気管支, 血管, リンパ管の周囲に著しい平滑筋の増生がみられる.
    十年以上にわたり気胸と血痰を繰り返した症例を報告した. 本症例は頭蓋内石灰化と腎の血管筋脂肪腫および子宮のリンパ管内間質筋症をともなっていた. 前二者は結節性硬化症であり, それゆえリンパ管筋腫症は結節性硬化症の部分病変とも考えられている. しかし今まで子宮病変に関する報告はない. 本症例は, リンパ管筋腫症が平滑筋の系統的疾患であることを示唆するものであり興味深いと考える.
  • 大塚 敏広, 沖塩 協一, 川口 俊, 藤井 達夫, 少路 誠一, 金澤 博, 工藤 新三, 平田 一人, 栗原 直嗣
    1996 年 34 巻 3 号 p. 327-330
    発行日: 1996/03/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は54歳, 男性. 少量の喀血を主訴として受診, 気管支鏡検査にて右 B1, B2, B3, B8, B9, B10, 左 B1+2, B3 入口部に数珠状の粘膜不整を認めた. 右 B8, B9 分岐部を気管支鏡下生検し, 組織にて気管支静脈瘤と診断した. 気管支静脈瘤は稀な疾患であり, 今回は両側多発性に見られ, 生検像も得られたのでここに報告する.
  • 堀越 理紀, 蝦名 昭男, 今井 督, 磯上 勝彦, 貝森 光大, 菅 三知雄, 小野寺 庚午
    1996 年 34 巻 3 号 p. 331-335
    発行日: 1996/03/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は60歳男性. 1993年9月に突然に動悸を訴え, 心房細動, 心不全の診断で近医に入院となった. 抗核抗体陽性, 赤沈亢進などがみられたため膠原病を疑われて当院に紹介入院となった. 当初, 胸部X線写真にて心陰影の拡大と心雑音が聴取されたため心疾患と考えられた. ところが, 胸部CTにて左腕頭静脈が上大静脈に合流するレベルから縦隔内の大血管周囲および心臓を取り囲むように病変が存在し, 縦隔腫瘍の疑いが濃厚となった. そこで経皮針生検を施行したところ, 病理組織診断で非特異的な慢性の炎症像が得られた. 腹部CTでは下行大動脈周囲の病変が横隔膜を越え両側腎動脈に沿って腎門部にまでいたり, 尿管の狭小化や左腎の水腎症が認められた. 以上より縦隔に病変が及んだ後腹膜線維症と診断し, ステロイド剤による加療をおこない病変の著明な縮小が見られた.
  • 蜂谷 勤, 岡田 和義, 山崎 善隆, 早坂 宗治, 吉川 佐和子, 久保 惠嗣, 関口 守衛, 本田 孝行, 羽生田 正行
    1996 年 34 巻 3 号 p. 336-340
    発行日: 1996/03/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は39歳, 女性. 突然の左背部痛で発症した血胸のため入院となった. 胸部CT上左肺門より背部にかけて腫瘤影を認め, 左肺動脈は左主気管支を越えた部位で途絶していた. 試験開胸にて肉腫様腫瘍と診断され, 左全肺切除術を施行した. 腫瘍の切除標本では, 細胞異型や核分裂像を伴った紡錘型細胞が束状ないし花むしろ状パターンを呈しており, 悪性線維性組織球腫 (striform-pleomorphic pattern) と診断された. 術後20ヵ月間, 化学療法を6クール施行し, 再発の徴候なく経過観察中である. 血胸で発症した同腫瘍は, 報告例がなく貴重な症例と考えられる.
  • 中川 義久, 福島 敬和, 坂田 哲宣, 菅 守隆, 安藤 正幸
    1996 年 34 巻 3 号 p. 341-344
    発行日: 1996/03/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は73歳男性, 30年前より糖尿病の診断で経口血糖降下剤で加療中の患者. 右S6の細菌性肺炎の診断で当科入院. 肺炎は10日間の抗生剤投与で軽快し, 炎症反応も陰性化した. 左被包化胸水を認めたため胸腔穿刺を行った.得られた胸水は淡黄色混濁で悪臭なく,高濃度の脂質を含有し,大半が結晶であり細胞成分が少なく, わずかに酵母と酵母を貪食したマクロファージを認めた. 培養で Candida parapsilosis のみが分離された. 左被包化胸水はレントゲン上, 7年前と著変なく, また自覚症状もなく炎症反応も認めないことより, 偶然発見されたカンジダの胸腔内持続感染症と考えられた. 同様な症例は今回検索した限りでは過去に報告がなく, 貴重な症例と考えられた.
  • 松本 浩平, 山内 辰也, 市川 元司, 益田 雄一郎, 小川 清隆, 荒井 孝, 伊藤 雅文, 山下 依子
    1996 年 34 巻 3 号 p. 345-349
    発行日: 1996/03/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    25歳の急性リンパ性白血病患者 (FAB:L2) の第1寛解期に, HLAの一致した同胞より同種骨髄移植を施行した. 充分な免疫抑制療法にも拘らず, 慢性GVHDが遷延した. 移植後1年6ヵ月頃より次第に乾性咳嗽, 労作時呼吸困難を呈し肺に高度な過膨脹, 多発性肺嚢胞の形成を見た. 移植3年後, 両側の再発する難治性気胸に対し肺嚢胞縫縮術を施行した. 病理組織標本より閉塞性細気管支炎を認めた. 同種骨髄移植後の遅発性合併症として閉塞性細気管支炎は知られているが, 病理組織学的報告はわずかである. 臨床病理学的に骨髄移植と閉塞性細気管支炎発症のメカニズムについて考察を加えた.
  • 西 耕一, 水口 雅之, 橘 秀樹, 大家 他喜雄, 藤村 政樹, 松田 保
    1996 年 34 巻 3 号 p. 350-354
    発行日: 1996/03/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    トロンボキサン合成酵素阻害薬が著効を示したと考えられる慢性持続性咳嗽患者を経験したので報告する. 症例は25歳の女性で, 8週間以上継続する乾性咳嗽を主訴として受診した. 乾性咳嗽のエピソードは今回が2回目であり, 前回は気管支拡張薬が無効であり, 塩基性抗アレルギー薬 (塩酸アゼラスチン)が有効であった. しかし, 今回の咳嗽は, 塩基性抗アレルギー薬や吸入ステロイド薬は十分効果的ではなく, トロンボキサン合成酵素阻害薬 (塩酸オザグレル) が著効を示した. さらに, カプサイシンに対する咳の感受性も同薬物の投与にて改善した. トロンボキサンA2, 咳嗽, およびカプサイシンに対する咳感受性の3者の関係に関する報告は今までのところ少なく, 詳細は不明であるが, 本症例のようにトロンボキサン合成酵素阻害薬が効果的な咳嗽患者が存在することは, 臨床的に重要な知見と考えられたため報告した.
  • 大江 真司, 棟方 充, 大塚 義紀, 高橋 亨, 渡部 直巳, 須甲 憲明, 竹川 宏典, 山口 悦郎, 本間 行彦, 川上 義和
    1996 年 34 巻 3 号 p. 355-362
    発行日: 1996/03/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は64歳女性, 60歳女性, 64歳男性の同胞3名. 64歳女性は検診にて胸部写真上異常指摘され, 当科に入院し, 特発性間質性肺炎と診断された. 翌年, 妹である60歳女性も検診で異常を指摘され, 当科入院後, 特発性間質性肺炎と診断された. この女性はその後, 慢性関節リウマチを発症した. 家族内集積性を考え, 同胞4名の家族調査を施行したところ, 64歳の兄も胸部写真上間質性病変を認めた. 他の同胞62歳女性は抗核抗体が160倍であったが胸部写真上正常であった. 最近, 特発性間質性肺炎が多因子性遺伝素因を背景にもつことが報告されており, 本家系も膠原病素因を含めた遺伝的素因が関与した可能性が考えられた.
  • 塙 健, 千葉 渉, 藤本 利夫, 和澤 仁, 山下 直己, 安田 雄司, 松原 義人, 畠中 陸郎, 船津 武志, 池田 貞雄
    1996 年 34 巻 3 号 p. 363-368
    発行日: 1996/03/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は52歳男性で, 1989年に右S6の浸潤陰影を発見された. 抗生物質が無効で, ステロイドにて陰影は消失した. 以後, 両側肺の浸潤陰影を繰り返し, いずれもステロイドにて陰影は消失し, 臨床的にBOOPが疑われていた. また, 顔面に紅斑性の湿疹が繰り返し出没していた. 1994年10月, 左S6の浸潤陰影に対し開胸肺生検を施行した. 病理組織所見からはBOOPが疑われたが, リンパ球浸潤が顕著でリンパ増殖性疾患も疑われた. サザンプロット法による病巣部の遺伝子解析にてTCR-β遺伝子の再構成を認め, T cell lymphoma と診断した. 極めて low grade のT cell lymphoma と考えられ, 術後10ヵ月現在, 肺および他臓器に lymphoma 再発の兆候はなく, 無治療で経過観察中である. 5年以上にわたりBOOP様の経過を呈したT cell lymphoma は極めて稀で, また, 診断には, とくに遺伝子解析が有用であったので報告する.
  • 石田 直, 有田 真知子, 藤森 直子
    1996 年 34 巻 3 号 p. 369-373
    発行日: 1996/03/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は43歳女性. T細胞性悪性リンパ腫および2次性白血病の治療のため同種骨髄移植を受けた. 移植前治療として全身照射および化学療法が施行された. 移植後11日目より血痰の喀出と進行性の呼吸困難を呈し, 胸部X線上両側の浸潤影を認めた. BALにて血性液を回収しびまん性肺胞出血 (DAH) と診断した. 人工呼吸管理, ステロイド大量投与を含む治療を行うも呼吸不全が進行し死亡した. DAHは欧米では骨髄移植後に起こる致死率の高い疾患として認識されている. 本邦でも移植後の早期合併症として留意が必要と思われる.
  • 安東 優, 鬼塚 徹, 河野 昌也, 伊藤 和信, 宮崎 英士, 津田 富康
    1996 年 34 巻 3 号 p. 374-379
    発行日: 1996/03/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は77歳女性. 湿性咳嗽, 発熱にて来院し, 左上葉の浸潤影と左気管支狭窄を伴う肺・気管支結核と診断した. INH, RFP, SMの投与を開始し症状は改善した. 治療開始2ヵ月経過した時点で左主気管支は半月状に狭窄しており, 低調性連続性ラ音も聴取した. さらに左前胸部に連続性心雑音も聴取されるようになり精査したところ, 2本の左鎖骨下動脈-左肺動脈シャントを認めた. 肺結核症に気管支-肺動脈シャントを形成することは報告されているが, 鎖骨動脈-肺動脈シャントは稀である. このような体循環-肺循環シャントがある場合に気管支拡張術を施行しても, 病側肺は死腔になるだけであり, 長期にわたると肺高血圧症に至る可能性があるので, シャント血管を含んだ肺切除術が必要と考えられた.
  • 宮下 修行, 中島 正光, 二木 芳人, 松島 敏春
    1996 年 34 巻 3 号 p. 380-383
    発行日: 1996/03/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は50歳男性.亜急性に進行する小脳失調のため入院した. 神経学的には, 注視眼振と滑動性眼球運動障害, 緩徐言語ならびに著明な四肢の運動失調を認めた. 神経学的所見および経過から Paraneoplastic cerebellar degeneration (PCD) を疑い, 全身の悪性腫瘍の検索を行ったところ右肺S3領域に小細胞癌が確認された. また患者血清中にラット小脳を使用したイムノブロット法にて68KDaの分子量の位置にバンドが認められたことから, 本自己抗体がPCDを引き起こしたものと考えた. 発症後4ヵ月経った時点から抗癌化学療法ならびに放射線療法を施行したところ, 肺癌の縮小はみられたものの, 神経症状の改善や進行の停止は認められなかった.
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