日本看護研究学会雑誌
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31 巻, 1 号
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  • 武田 江里子, 田村 一代
    2008 年 31 巻 1 号 p. 1_37-1_45
    発行日: 2008/04/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
      本研究の目的は,妊産褥婦の気分が対児感情にどのように影響しているのかを明らかにすることである。妊娠末期まで正常に経過した妊婦69名を入院中・産褥1ヶ月と追跡調査した。結果,「活気」はどの時期でも接近感情と関連していた。妊娠末期の「抑うつ-落込み」「疲労」「混乱」は回避・拮抗感情と関連し,「怒り-敵意」は接近感情と負に関連していたが,産後と関連はなかった。逆に「緊張-不安」は妊娠末期の対児感情に関連なく入院中の回避感情に関連していた。入院中の「怒り-敵意」は回避・拮抗感情と関連し,その気分は産褥1ヶ月においては接近感情と負に関連し,妊娠末期・入院中に回避・拮抗感情を持っていた母親は産褥1ヶ月の「怒り-敵意」と関連していた。「怒り-敵意」は全ての時期で関連していた。気分が対児感情にどのように影響するかは時期により異なっており,妊産褥婦の気分は子どもに対する感情の予測に役立つことが示唆された。
  • 加藤 真由美, 小松 佳江, 泉 キヨ子, 西島 澄子, 安田 知美, 平松 知子, 浅川 康吉, 樋木 和子
    2008 年 31 巻 1 号 p. 1_47-1_54
    発行日: 2008/04/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
      本研究は,脆弱な施設高齢者の転倒予防のため,移乗・移動にかかわる上下肢筋力および身体バランスを高め,かつ知的活動の向上と転倒予防への自信を高めるために病棟生活に取り入れ可能な看護師が指導する運動プログラム(全身版)を開発し,その効果を検討した。運動内容は上下肢の筋力運動,バランス能力を高めるための足部(足趾含む)運動,柔軟体操,認知機能に影響させるためのテンポを取り入れた運動であり,週5回を3ヶ月間実施した。対象は療養病床における65歳以上の高齢者であり,介入群(運動参加者)は21名,対照群は19名であった。結果,バランス能力と転倒自己効力感は向上し,移乗・移動能力,下肢筋力と握力,知的活動は維持し,転倒件数・転倒者数は減少し,運動による発症や損傷は起こらなかった。これらの点から,本運動プログラム(全身版)は脆弱な施設高齢者の転倒予防に有効であると示唆された。
  • 横山 純子, 宮腰 由起子
    2008 年 31 巻 1 号 p. 1_55-1_65
    発行日: 2008/04/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
      本研究の目的は,脳梗塞発症後の急性期から自尊感情の経時的変化を捉え,自尊感情の関連要因を時期別に明らかにすることである。4回の調査(入院時,3ヶ月後,6ヶ月後,1年後)すべてにおいて協力が得られた脳梗塞患者92人を分析対象者とした。各時期のRosenberg’s Self-Esteem(RSE)の平均値は30.2~30.7点と安定して高値を示したが,個々のRSEは時期により変動していた(p<0.001)。脳梗塞発症後の自尊感情にはADLの自立度(3ヶ月後と6ヶ月後),職場復帰状況(6ヶ月後),主観的健康感(すべての時期),情緒的サポート提供者(6ヶ月後と1年後)が関連していた(p<0.05)。脳梗塞発症後の患者の自尊感情を高めるためには常に健康状態に留意しながら,発症6ヶ月後までは動作と役割の再獲得に向けた支援を中心に,発症6ヶ月後以降は情緒的サポート支援を中心に援助していくことが重要であると考えられた。
  • 谷村 千華, 森本 美智子
    2008 年 31 巻 1 号 p. 1_67-1_73
    発行日: 2008/04/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
      本研究は,「病気関連不安認知尺度」の因子構造モデルの不変性を検討するとともに,年齢の違いによる病気関連不安認知の特徴を明らかにすることを目的とした。分析対象は,565名の総合病院に入院している患者とした。検証すべき因子構造モデルは「病気・症状悪化」「医療の質の不確実性」「生活制限・縮小」「家族・友人関係の変化」「目的・価値喪失」を一次因子,「病気関連不安認知」を二次因子とする二次因子モデルとした。構造方程式モデリングによる同時因子分析を用い,前記因子構造モデルが年齢の異なる2群において,全てのパラメータを等値制約した条件下においても適合度を満たすことを明らかにした。この結果は,病気関連不安認知尺度の強固な因子不変性を示唆するものである。なお,年齢別に病気関連不安認知総合得点の差の検定を行った結果,有意差は認められず,年齢を問わず患者が抱える不安認知に介入していくことの重要性が示唆された。
  • 則包 和也, 白石 裕子
    2008 年 31 巻 1 号 p. 1_75-1_82
    発行日: 2008/04/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
      本研究の目的は,統合失調症患者と健常者の表情認知における視線運動の違いを明らかにすることである。統合失調症患者4名と健常者6名を対象として,提示した表情写真が表す感情を読み取る際の視線の動きを,視線運動解析装置で記録した。その結果,統合失調症患者は健常者と比較して,視線の平均停留時間が有意に短く,平均移動速度が有意に速いことが明らかになった。また,統合失調症患者は,注視点の数が有意に少ないことが明らかになった。これらの結果から,統合失調症患者は対人関係において,相手の顔に視線を向けないことから,表情をよく見ていないことが考えられた。また,統合失調症患者は顔の一部分だけを見る傾向が強く,表情を漠然とみており,視覚情報の不足が推測されること,および顔のパーツを選択的に捉える能動的な視線の動きが少ないことが明らかになり,表情認知機能の障害との関連が示唆された。
  • 市江 和子
    2008 年 31 巻 1 号 p. 1_83-1_90
    発行日: 2008/04/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
      本研究の目的は,修正版グランデッド・セオリー・アプローチによる質的帰納的分析により,重症心身障害児施設に勤務する看護師が重症心身障害児・者の反応を理解し,意思疎通が可能となるプロセスを明らかにすることである。対象者は,同意を得た看護師15名で,半構成的面接法により調査した。分析の結果,5つのカテゴリーとそれに含まれない3つの概念に分けられた。看護師は,<衝撃的体験>をしながら,<対象接近方略>,<看護実践の多角化>をはかり,<対象者把握法の確立>をしていた。重症心身障害児・者に“一人の人間としてかかわる”ことを基盤とし,対象との<相乗効果>をもっていた。関わりには,“確証がもてない思い”を抱きつつ,相手を中心にした看護を考え,お互いの緊張感がとけることで,意思の疎通が可能になっていくというプロセスになると考える。
  • 松田 光信
    2008 年 31 巻 1 号 p. 1_91-1_99
    発行日: 2008/04/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
      目的:地域で暮らす精神疾患患者の症状再燃を予防するには,積極的な精神科リハビリテーションが不可欠であり,その一方略として患者本人に対する心理教育がある。本研究の目的は,精神科急性期治療病棟に入院中の統合失調症患者に対して,看護師の主体的活動により実施可能な心理教育プログラムを開発した過程を報告することである。
      方法:心理教育プログラムを開発する過程では,①心理教育関連文献の検索と内容分析の段階,②統合失調症患者の主観的経験を記述する段階,③看護介入としての心理教育プログラムを開発する段階,を経た。
      結果:開発した心理教育プログラムは,心理教育用教材としての「患者用テキスト」と「心理教育運営用マニュアル」の2種類,および,プログラムの構造である。本プログラムは,統合失調症患者の服薬と病気の受け止めを促進し,服薬アドヒアランスを向上させ,再発を予防することができると期待できる。
  • -本当は行きたい外出を取り戻すプロセス-
    大和 貴子, 山口 桂子
    2008 年 31 巻 1 号 p. 1_101-1_109
    発行日: 2008/04/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
      本研究は,グラウンデッド・セオリーを参考に,在宅で生活している青年期Duchenne型筋ジストロフィー患者の外出に影響を与えた出来事や思い、関連性を明らかにし、外出に対する支援方法を検討することを目的として,青年期にある3名に参加観察と半構成的面接により調査した。その結果,疾患が予後不良である事実に直面した状態をスタートとした≪本当は行きたい≫外出を取り戻すプロセスが明らかになった。これは,【疾患を受容することからの意欲の回復】に至ることにより,【外出欲望からの外出実行力の再獲得】が生まれ,実際に外出することで【外出の経験から得られた充実感】が生じていた。しかし,一方で,疾患を徐々に受容することで【絶対的な予後不良の中であるがままに生きる姿勢】も身につけており,これは外出行動すべてに影響を及ぼしていた。この結果から,疾患の受容,外出するきっかけ作りや実際の外出での問題に対する支援の必要性が示唆された。
  • 九津見 雅美, 山田 綾, 伊藤 美樹子, 三上 洋
    2008 年 31 巻 1 号 p. 1_111-1_120
    発行日: 2008/04/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
      BPSDは問題行動と捉えられてきた。本研究では複数の認知症高齢者の入所する施設ケアスタッフの中にケアがうまくいっているという感覚や見方,対応の中に洗練されたものや有効なものがあると仮定し,ケアスタッフにおけるBPSDの捉え方とBPSDの転帰について理論化を試みた。その結果,BPSDは『心と身体の安寧を脅かす』,『居場所の安寧を脅かす』という2つとそれらの重なる概念として捉えることが可能で,施設では安寧が脅かされる抑制や不安などBPSD自体が〈触媒〉となって〈BPSDの共鳴〉が起こると説明された。BPSDの望ましい転帰は『認知症高齢者および周囲の人が安寧に施設生活を送ることができる』,『BPSDが最小限となり混乱が収束する』という2つから構成されていた。安寧を鍵概念とする本研究の視点は認知症高齢者の人権やノーマライゼーションに配慮したケアの発展に有益だと考えられる。
  • 須藤 小百合, 青木 健, 冨岡 真理子, 真砂 涼子, 松田 たみ子
    2008 年 31 巻 1 号 p. 1_121-1_128
    発行日: 2008/04/01
    公開日: 2016/03/05
    ジャーナル フリー
      本研究では,清拭における圧の影響に着目し,異なる圧力での末梢部温湯清拭の皮膚血流反応への効果を検討した。9名の成人男性に安静後,約3分間の温湯清拭を実施した。清拭圧は1.8(通常圧条件)および0.9(弱圧条件:なでる程度)kgf/cm2に設定した。清拭部位は右前腕および左右下腿前面内側の3部位とし,1部位10回(末梢から中枢)を4サイクル,計120回拭いた。通常圧条件では右手掌に加え,清拭未実施側の左手掌や前腕の皮膚血流量指標は清拭後も有意に増加した。このことから,末梢部のみの通常圧温湯清拭でも,頻回に行うことで,末梢循環は清拭未実施側の部位も含め,ある程度促進されることが示唆された。一方,弱圧条件でも右前腕の皮膚血流量指標は有意に増加した。したがって,通常の温湯清拭による末梢循環の促進を考えるうえでも,対象者の状況に応じ清拭部位,圧,回数などを変えて実施することが効果的であると思われる。
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