土木学会論文集D3(土木計画学)
Online ISSN : 2185-6540
ISSN-L : 2185-6540
67 巻, 5 号
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土木計画学研究・論文集 第28巻(特集)
  • 有村 幹治, 菊池 光貴, 内藤 利幸, 田村 亨
    2011 年 67 巻 5 号 p. 67_I_491-67_I_498
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
    低炭素都市交通に資する施策中,通勤交通の削減は,長期的な居住地や就業地の変更を伴うため,大きな課題となっている.本研究の目的は,過去4回実施された道央パーソントリップ(PT)調査の結果を基に,札幌市の自動車通勤の変化を把握し,自動車通勤トリップ長の削減効果について考察することにある.そのために,自動車を用いた就業者の通勤行動を示すプリファレンス曲線を推定し,最適職住割当問題から,就業地ゾーンへの集中トリップ数の変更により削減可能な通勤トリップ長を求めた.また,各PT実施年次における通勤距離分布の推移を,削減可能量と合わせて累積分布曲線で示した.結果,増加傾向にあった自動車通勤トリップ数は近年は一定量で推移し,職住近接化が強まる傾向にあることが示された.
  • 宮川 愛由, 藤井 聡
    2011 年 67 巻 5 号 p. 67_I_499-67_I_507
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
    関西の主要な観光地である京都・奈良では,観光客の公共交通への転換によるCO2排出量削減を目的として,モビリティ・マネジメントに着手した.具体的には,出発地におけるコミュニケーションとして,地域情報紙,ラジオ番組,旅行雑誌を活用してマイカー以外での来訪を呼びかけるモビリティ・マネジメント技術を検討・実施した.また,到着地におけるコミュニケーションとして,宿泊施設ならびに駐車場における情報提供により,次回の来訪時の行動変容を促した.以上の取組によるCO2排出削減量等の効果を推計した結果,「ラジオ」を活用した観光MMの高い事業効率性が確認され,出発地が広域に分布する観光MMにおいては,広域の対象者に対して効率的にコミュニケーションを図ることができる電波を用いたメディアの有効性が示唆された.
  • 原 祐輔, 羽藤 英二
    2011 年 67 巻 5 号 p. 67_I_509-67_I_519
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
    本研究は,交通ネットワーク上における乗り捨て可能なモビリティシェアリングとそのOD接続性を満たす予約システムを対象とする.本稿では利用者に利用確実性に対する選好を表明させる動的予約システムをネットワーク上のモビリティシェアリングにおいて適用し,各個人が選好を表明するインセンティブが存在することを示す.また,通常の双方向ODの交通サービスと異なり,ポート間の自由なODが許されるモビリティシェアリングにおいて,モビリティという単一の資源を効率的に利用するための配分方法について考察する.更に,利用権取引制度と2つの予約システムを効率性と公平性の観点から比較を行い,動的予約システムが利用権取引制度のセカンドベストとして適用可能な準オークション型予約システムであることを示す.
  • 二神 透, 河口 尚紀, 門脇 玄治, 前川 聡一, 渡部 正康
    2011 年 67 巻 5 号 p. 67_I_521-67_I_529
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
    救急搬送において最も重要なことは,1秒でも早く救急病院へ搬送することであり,救急病院に早く搬送することは,救急患者の救命率を上げることにつながる.しかし,全国の平均搬送時間は,増加傾向にあり,松山市においても例外ではない.例えば,松山市の平均走行時間は,平成18年から平成21年までの3年間で,およそ1分30秒遅くなっているが,この間のトリップ長の大幅な増加は認められていない.このことより,救急車両の走行阻害要因の増加が原因となっていると考えられる.そこで,本研究では,松山市の救急車両の走行データであるGPSデータ,動画像データを用いて,交差点・リンク毎の走行時間と走行阻害要因を把握し,今後の課題を整理した.
  • 笈田 翔平, 菊池 輝, 平見 憲司, 井上 紳一, 藤井 聡
    2011 年 67 巻 5 号 p. 67_I_531-67_I_540
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
    これまでの交通需要予測においては,将来予測の際,外生的に設定した前提条件(土地利用,LOS等の入力データ)を予測システムにインプットし,その諸水準に基づいて需要量をアウトプットする,という方法が採用されてきた.しかしながら,交通需要もまた前提条件に影響を及ぼすという相互作用が考えられる.そこで本研究では,交通需要の変化に伴う前提条件の変化を加味した上で交通需要を推計するシステムとして,従来型の四段階推計法を改良した「交通・土地利用・公共交通LOS簡易型統合モデル」を構築した.そして,それらを需要予測実務に適用した結果,外生的に設定した前提条件の諸水準は交通需要と整合していないことが分かり,実務においては前提条件の水準を過大に見込み,その結果として交通需要を過大に評価している傾向があることが示された.
  • 宮城 俊彦, 遠藤 雅人
    2011 年 67 巻 5 号 p. 67_I_541-67_I_552
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
    本研究はロジット型の経路選択モデルの分散パラメータを経路集合と関連づけて内生的に決定する方法を提案し,その妥当性を数値実験によって確認することを内容としている.ロジット型経路選択モデルを誘導する理論的背景は幾つか存在するが,本研究ではゲーム理論におけるリグレットマッチング理論を基礎にして誘導される経路選択モデルを前提にしている.リグレットマッチング理論は,経路情報のみが与えられる場合の選択行動を記述し,限定合理性に基づく適応的行動モデルという点でエントロピー最大化やランダム効用理論とは異なる行動論的背景を有する.ただし,分散パラメータをもつロジット型モデルで経路選択確率を求める場合,分散パラメータをどのように求めるかという問題に遭遇する.本研究ではその解決法の1つを提案している.
  • 稲田 裕介, 中山 晶一朗, 高山 純一
    2011 年 67 巻 5 号 p. 67_I_553-67_I_561
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
    交通量の確率的性質については,交通量がどのような確率分布に従っているのかというような基本的な問題を含めて,いまだ未知の部分も多い.本研究では,交通量を対象に都市高速道路の時間交通量と日交通量の確率変動特性がどのようなものか,そして,それらがどのような確率分布形に従うのかについて,阪神高速道路の観測交通量を用いて統計学的に考察する.具体的には,実測交通量分布と正規分布に代表される理論分布との適合を適合度検定を用いて検証している.適合度検定には,統計学的検定手法の1つであるKolmogorov-Smirnov検定を用い,交通量分布の形状がどのような統計分布形状に合致しているか分析をしている.
  • 桑野 将司, 塚井 誠人, 三田 遼平, 高松 由彦
    2011 年 67 巻 5 号 p. 67_I_563-67_I_571
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
    本研究では,外出活動時間帯の時点間および都道府県間の違いと,それらの違いに影響を及ぼしている要因を明らかにすることを目的とする.具体的には,社会生活基本調査の時間帯別の行動についてのデータを用いて,時点別都道府県別の時間利用構造の類似度から都道府県をクラスター分析を用いて分類する.そして,都道府県別の人口特性,産業・業務特性,自然環境,社会基盤施設整備状況等から,時間利用構造の違いをもたらしている要因をExhaustive CHAID分析によって統計的に明らかにした.分析の結果,時間利用構造に影響を及ぼす要因は,都道府県の規模と世帯属性であることが明らかとなった.さらに,経年的に外出時間帯が分散し,夜型の生活活動に移行していることが明らかとなった.
  • 小柳 純也, 斉藤 祐紀, 小早川 悟
    2011 年 67 巻 5 号 p. 67_I_573-67_I_578
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
    本研究は,既存研究により単路部における自転車流と歩行者流との分離に有効とされている構造的に区画された自転車用通行路(いわゆる自転車道)について,その法的な意味を整理した上で,通行路の延長にある交差点および道路交通法一部改正(H20施行,単路部のみ)の対象となった形態に関する交通流の実態分析をしている.
    これより,単路部のみならず交差点においても交通流の分離効果があること,道路交通法の改正が意図する単路部における自転車流と歩行者流との分離が実現可能なものであることおよび交通ルールへの対応状況は必ずしも十分ではないことを明らかにしている.
  • 野瀬 元子, 古屋 秀樹, 太田 勝敏
    2011 年 67 巻 5 号 p. 67_I_579-67_I_588
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
    本研究では,1) 外国人旅行者の都区内の観光実態の把握,2) 都区内における仮想の交通パスに対する外国人旅行者の支払い意思額及び交通パス購入による心理的,時間的負担感の軽減と支払い意思額との関連性を考慮する分析手法の開発・提案を行うことを目的として,都区内の外国人旅行者を対象としたアンケート調査を実施した.支払意思額推計にあたっては,回答者の行動意向データをもとに,主観的期待効用理論の概念を用いたCVM(仮想評価法)を適用し,交通パス支払い意思額の分析手法を提示している.推計の結果,交通パスの利用における公共交通機関利用時の負担感の軽減(メリット)を構成する要素ごとの支払い意思額を推定することができた.
  • 永井 政伸, 日比野 直彦, 森地 茂
    2011 年 67 巻 5 号 p. 67_I_589-67_I_597
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
    本研究は,首都高速道路における経路選択行動について,ETC-ODデータを用いることにより分析を行ったものである.車両感知器データと組み合わせることにより,旅行時間や渋滞距離等を指標とするとともに,特に利用頻度に着目し,利用頻度の違いによる経路選択モデルの構築を行った.その結果,首都高速道路における経路選択行動要因を明らかにし,利用頻度による経路選択の特性を示した.それとともにETC-ODデータの今後の有効な活用方法を示すものである.
  • 萩野 保克, 兵藤 哲朗, 宮原 ゆい
    2011 年 67 巻 5 号 p. 67_I_599-67_I_609
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
    国際海上コンテナがそのまま陸上輸送される場合のほとんどは海上コンテナ車によっているが,物流上重要なルート上においても海上コンテナ車の通行支障区間が存在し,迂回や積み替えなどによりリードタイムやコストが増加するなど国際競争力強化の観点から課題となっている.
    このような国際物流に適切に対応するためには,海上コンテナ車に対応した物流ネットワーク構築が必要であるが,海上コンテナ車の走行実態や経路選択のメカニズムは十分に明らかにはなっていない.本論文では,通行許可申請データから海上コンテナ車の経路データを作成するとともに,道路情報便覧の海上コンテナ車の通行支障データを用いて道路ネットワークデータを作成して,海上コンテナ車の経路選択特性を分析した.
  • 矢野 晋哉, 高山 光正, 仲尾 謙二, 藤井 聡
    2011 年 67 巻 5 号 p. 67_I_611-67_I_616
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
    本研究は,カーシェアリング(以下CS)への加入が交通行動,とりわけ自動車利用距離の削減に及ぼす影響を把握することを目的に,京都市内のCS会員に対して実施したアンケート調査結果を分析した.具体的には,CS加入前後の自家用車保有状況別に回答者をグループ分けし,自動車利用距離(自家用車とCS車両の利用距離)の変化を把握した.
    結果,CSに加入することで自家用車を手放した回答者の自動車利用距離は,加入後に約8割減少していることが明らかとなった.さらに,加入後に自動車利用距離が増加している回答者を含めた回答者全員の自動車利用距離の合計でも,約3割減少していた.これは,CS加入後に自動車利用が増加していた回答者の増加量を上回るほど,自家用車を手放した回答者の自動車利用距離削減量が大きかったためであった.
  • 田中 伸治, 藤原 直生, 桑原 雅夫
    2011 年 67 巻 5 号 p. 67_I_617-67_I_624
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
    近年歩行環境への関心の高まりに伴い,歩行者の経路選択モデルや流動シミュレーション等が活発に研究されているが,これらに大きな影響を与える経路選択肢集合を生成する手法は十分に確立していない.本研究では携帯電話端末からのGPSデータを利用して,歩行者の経路選択肢となるリンク集合を推定することを試みた.この手法は,追跡調査やアンケート調査では取得が難しい行動実績データを大量かつ継続的に得られるという利点がある.まず使用するデータの特性を考慮したマップマッチングを行い,それに基づき経路選択に利用されたリンク集合を,経路長と,接続性指標であるインテグレーション値を用いて推定する手法を提案した.その結果,後者を用いることで経路選択リンク集合をより精度よく推定できることが明らかとなった.
  • 今村 悠太, 中山 晶一朗, 高山 純一
    2011 年 67 巻 5 号 p. 67_I_625-67_I_634
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
    現実の道路ネットワークでは,様々な要因により旅行時間や交通量は変動する.旅行時間のばらつきは交通行動の主要な決定要因の一つであり,それを道路整備の便益評価,交通計画や交通政策に取り入れることは重要であろう.本研究では,旅行時間のばらつきの尺度として,直感的な理解が容易なパーセンタイル値に着目する.旅行時間のパーセンタイル値に基づき,実用的にも適用可能な信頼性の評価法を目指し,旅行時間のパーセンタイル値を出力する交通ネットワーク均衡配分モデルを構築することが本研究の目的である.さらに,そのモデルを金沢市道路ネットワークに適用し,モデルを用いた信頼性評価法の現実ネットワークへの適用可能性について考察する.
  • 真坂 美江子, 加藤 研二, 近藤 光男, 奥嶋 政嗣
    2011 年 67 巻 5 号 p. 67_I_635-67_I_642
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
    本稿では,健康支援による生活行動変容に向けて行動変容に必須である定量的指標を得るため,交通手段利用時消費エネルギーを,専用機を携帯することなく自動算定する方法を検討した.まず,交通手段ごとの消費エネルギーを計測して既存手法の適用可能範囲を分析した.さらに,適用可能な手法を組み合わせることにより,交通手段利用時の消費エネルギーを算定する手法を提案した.日常的に自動車,公共交通,および自転車を利用する被験者に対し,提案手法を適用して消費エネルギーを算定した結果,心拍値から求めた消費エネルギーと高い相関を得ることができ,簡単かつ正確に交通手段利用時の消費エネルギーを自動推定できる可能を見出した.
  • 横田 孝義, 玉川 大
    2011 年 67 巻 5 号 p. 67_I_643-67_I_656
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
    本稿では貨物車両の高速道路の利用実態を明確にするために必要となる高架道や並走路の正確な分離を可能とするプローブ情報の新たなオフラインマップマッチングアルゴリズムを提案する.次に,本アルゴリズムを京阪神地域の300台の貨物車両から取得したプローブ情報に適用して明らかになった旅行速度の現状などを述べる.また,貨物車両が高速道路を利用する際の一般道路と高速道路間のアクセス,イグレスの距離の特性について分析し,このアクセス長,イグレス長の短縮が貨物車交通の高速道路利用を増やし効率向上を図るための一つの大きな課題であることを示す.
  • 伊藤 太郎, 岡村 敏之, 中村 文彦, 王 鋭
    2011 年 67 巻 5 号 p. 67_I_657-67_I_663
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
    首都圏の都市鉄道で遅延が慢性化しており,利用者が自身の行動を決めるうえで遅延時の情報提供サービスが重要なものとなっている.利用者の情報利用選好を明らかにすることは,今後情報提供サービスの効果を定量化していくうえでも重要であるといえる.そこで本研究では,鉄道遅延時における利用者の情報収集実態および利用選好を明らかにすることを目的とする.本研究では,朝通勤時の鉄道遅延についての仮想状況を設定し,各状況下でどのような行動をとりうるのかSP調査をおこなった.その結果,「運転見合わせ」や「人身事故」といった遅延原因,運行状況の情報を認知することが経路変更に大きな影響を与えることが明らかになり,遅延情報を早い段階で的確に認知できる施策を行っていくことが重要であるという示唆が得られた.
  • 石村 龍則, 倉内 慎也, 萩尾 龍彦
    2011 年 67 巻 5 号 p. 67_I_665-67_I_671
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
    本研究では,地方都市である松山市における,カーシェアリング普及に必要な基礎情報を得ることを目的とし,潜在需要分析を行った.具体的には,自動車保有,利用にかかるコストと,カーシェアリングにかかるコストを比較し,カーシェアリングによってコストが削減されれば,その自動車を削減可能であると定義し,削減可能台数の多いエリアの推定を実施した.結果,PT調査を用いた1日当たりの分析では,松山市の約7割の自動車が削減可能で,特に都市周辺地区のセカンドカーが削減可能性が高く,PP調査を用いた1週間当たりでの分析では,約7割の車両が削減可能であることが判明した.
  • 金森 亮, 新井 秀幸, 山本 俊行, 森川 高行
    2011 年 67 巻 5 号 p. 67_I_673-67_I_681
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
    低炭素社会の実現やその原資確保に向けた効率的な交通施策として道路課金政策が注目され,公平性や受容性の観点からは課金収入をいかに再分配するかが重要とされる.本研究では再分配効果を交通状況,効率性,公平性の視点から考察する.具体的には,所得階層(時間価値)別の交通手段選択モデルを組み込んだマルチクラス統合均衡モデルにて課金収入再分配のシナリオ別に社会的余剰を算出し,名古屋都市圏を対象としたコードン型の駐車デポジットシステム(PDS)の導入評価を行う.課金収入再分配の施策メニューとして,高速道路通行料金と鉄道運賃の割引を設定した場合,課金スキームにより分配比率は異なり,再分配を行うことで効率性と公平性は改善し,特に低所得者層に大きな影響が及ぶことを確認した.
  • 稲垣 具志, 三村 泰広, 安藤 良輔
    2011 年 67 巻 5 号 p. 67_I_683-67_I_688
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
    近年急速に普及が進む電動アシスト自転車は,従来の自転車の回遊度をさらに高める機能性を有し,勾配の多い地形特性や今後の超高齢社会に対応し得る新しい移動手段としての潜在性が高いと想定され,その有効性を検証することは重要である.本稿では,市街地におけるレンタサイクル利用者の移動軌跡データの解析を通して電動アシスト自転車と一般自転車の挙動を比較することにより,電動アシスト機能が回遊性に与える影響について考察を行った.その結果,電動アシスト自転車の利用により走行距離及び勾配利用が増加し,その傾向は高齢者に特に顕著に現れやすいことや,道路縦断勾配が速度差に与える影響度は大きくないことなどが示された.
  • 武本 東, 宗広 一徳, 葛西 聡
    2011 年 67 巻 5 号 p. 67_I_689-67_I_696
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
    近年,ラウンドアバウトは,安全性の向上や停止時間短縮による環境負荷低減が期待できる平面交差構造として欧米諸国等で積極的に導入されている.我が国でも導入に向けて研究が行われてきているが,積雪地域特有の課題については十分に検討されていない.そこで,苫小牧寒地試験道路に模擬設置したラウンドアバウトにおいて,秋期と冬期に被験者を用いた走行実験を行い,路面状態の違いによる運転挙動の変化や主観評価への影響に着目し分析を行った.その結果,雪氷路面時は乾燥路面時と比べて,車両の環道流入時の速度が低下し,走行位置が中央島に近くなる傾向を確認した.また,冬期は,走りやすさや安心感の評価が低くなった.雪氷路面時に区画線位置が不明確になることが一因と考えられ,走行位置を明確にする対策が必要であることが分かった.
  • 北川 夏樹, 鈴木 春菜, 中井 周作, 藤井 聡
    2011 年 67 巻 5 号 p. 67_I_697-67_I_703
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
    本研究では人の社会的な生活に欠かせない活動の一つである「移動」に着目し,移動中に感じる気分や体感と,生活に対する個人の主観的な評価である「主観的幸福感」との関係について検証することを目的とした.また,移動時の風景等の属性と幸福感についても相互の関係を検証し,幸福感という観点からの「良い移動」について検討した.
    結果,移動時の肯定的な感情や感覚を下位尺度とする「移動時の幸福感」尺度と,生活における種々の主観的幸福感との間に正の相関関係がみられた.これは,移動が目的地へ達するための単なる手段ではなく,人の生活の質を向上させうる重要な活動の一つであることを示唆している.さらに,移動先での目的によって移動が幸福感に及ぼす影響が異なることや,移動時の風景が幸福感に有意に影響している可能性が示唆された.
  • 中村 泰広, 日比野 直彦, 森地 茂
    2011 年 67 巻 5 号 p. 67_I_705-67_I_713
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
    東京都市圏では,鉄道ネットワークの拡大と過密な運行ダイヤにより,駅の混雑という問題が顕在化している.本研究の目的は,鉄道駅の特にコンコースの混雑に関する評価指標を確立するために,混雑の感じ方と利用者数の関係について確認すると共に,データの取得が困難であり十分な分析が進んでいない旅客流動について簡易に調査・分析可能とする手法を提案することである.本研究の結論として,第一に,コンコースにおける混雑の感じ方は単位面積あたりの利用者数によって説明可能であるが,その関係性が各コンコースにより異なることを明らかにしている.第二に,加速度計を用いた歩行調査により旅客流動の特徴を把握し,混雑状況を簡易に評価する分析手法について,その適用性を確認している.
  • 玉川 大, 横田 孝義, 前川 和彦, 河本 一郎
    2011 年 67 巻 5 号 p. 67_I_715-67_I_726
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
    都市内貨物自動車交通の中から定期集配送車両に着目し,その行動特性について,過去に実施のプローブ調査結果ならびに阪神高速道路のETCデータを用いて分析した.分析の結果,定期集配送車両は,集配送時の走行経路を選択するにあたり,経路の標準的な所要時間情報と併せて当該集配送の前後における集配送の存在等も意思決定要因としているものと考えられた.また,定期集配送車両は日々の所要時間の変動が大きくてもその走行経路を変更しない傾向にあり,集配送計画段階で相当程度の所要時間変動を見込んでいると考えられた.この見込むべき所要時間変動として,道路交通状況に起因する変動以外に運転者自身に起因する変動が存在し,各種道路交通施策の検討・評価の際には,この変動の影響を考慮する必要があるものと考えられた.
  • 尾高 慎二, 日比野 直彦, 森地 茂
    2011 年 67 巻 5 号 p. 67_I_727-67_I_735
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
    本研究は,国内宿泊観光における今後の観光政策のターゲットを抽出するために,観光統計の個票データを用い,旅行先での活動内容,年齢,世代等に着目することにより,参加状況の時系列分析,旅行者の観光活動の嗜好分析,参加者1人あたりの活動内容別参加回数の共分散構造分析を行ったものである.その結果,国内宿泊観光の参加状況は,活動内容によって大きく異なっていることを明らかにしている.また,嗜好は時代の変化よりも加齢による影響が大きく,さらに,30歳代と40歳代は時代とともに嗜好の変化に対応することが重要であることを示唆している.活動内容別の参加回数は,性別等の旅行者属性の影響よりも,観光地や同行者等の旅行志向の影響を受け,活動内容別に影響する項目が異なることを定量的に示している.
  • 福本 潤也, 後藤 雄太
    2011 年 67 巻 5 号 p. 67_I_737-67_I_747
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
    自動車は多数の装置から構成される複雑なシステムである.ある検査・点検項目が保安基準に適合する確率は他の検査・点検項目が保安基準に適合する確率と相関する可能性が高い.検査・点検項目間の相関関係を無視すると,車検制度の見直しに関する規制影響分析の結果が大きく歪んでしまう危険性がある.本研究では,検査・点検項目別に推計された自動車保安基準適合率の相関関係をサバイバル・コピュラを用いてモデル化する.さらに,サバイバル・コピュラを最尤推定し,推定結果を多次元尺度構成法を用いて可視化する.分析結果として,制御装置の検査・点検項目間やパワーステアリング装置の検査・点検項目と原動機の検査・点検項目の間に比較的強い相関関係があること等を明らかにする.
  • 前川 朝尚, 倉内 慎也
    2011 年 67 巻 5 号 p. 67_I_749-67_I_757
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
    本研究では,地方都市における中心市街地の衰退などの問題への対策を検討するために,都市圏レベルでの買物行動が把握できるパーソントリップ調査データを活用して,買物目的地選択行動の分析を行った.まず,買物目的地の選択は,起点の場所や前後の活動等の発生メカニズムに依存することから,トリップチェインに着目して買物行動の類型化を行った.次いで,大規模商業施設と商店街の差異や業態の多様性および集積性を考慮するために,事業所・企業統計調査データをベースとして多変量解析によって商業地の魅力度を算出した.最終的に,それを説明変数として用いた買物目的地選択モデルを構築し,買物行動タイプ別の目的地選択特性を分析した.
  • 倉内 慎也, 萩尾 龍彦, 石村 龍則, 吉井 稔雄
    2011 年 67 巻 5 号 p. 67_I_759-67_I_767
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
    本研究では,マイクロシミュレーションモデルの初期データに用いられる母集団の同時分布を生成するために,世帯および個人属性分布の双方を考慮した上で母集団の周辺分布に一致させるIPU法を,松山都市圏PT調査に適用し,その現況再現性を検証した.分析の結果,誤差の原因として,制約式の問題,解探索の問題,ゼロセル問題の3つが抽出され,さらに,それらが混在することで一層推計精度の低下に繋がることを確認した.次に,ゾーンや個人・世帯カテゴリを統合することにより,母集団データの再現性がどのように変化するのかを検証した.その結果,統合による情報損失の影響が大きく,かえって現況再現性が低下することを確認した.ゆえに,IPU法の適用にあたっては,カテゴリごとに抽出率を変化させるなどの事前検討が極めて重要であると言えよう.
  • 関谷 浩孝, 上坂 克巳, 小林 正憲, 南部 浩之
    2011 年 67 巻 5 号 p. 67_I_769-67_I_777
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
    貨物車の経路選択行動についての既往研究では,所要時間及び費用に加え,道路構造,出発時刻,予測所要時間情報提供の有無等を説明変数とした研究は見られるものの,輸送品の特性に着目した研究は少ない.そこで,本研究では「要冷蔵の有無」及び「到着時間指定の有無」といった輸送品の特性を表す指標と,貨物車の経路選択行動との間に関係があることを実証データを用いて明らかにした.具体的には,物流センサスデータを用い,上記2つの指標それぞれと「高速道路利用の有無」の関係を分析し,冷蔵が必要な品物及び到着時間を指定された品物は,高速道路を利用して輸送される割合が大きいことを示した.
  • 井上 紳一, 山口 修一, 鈴木 裕介, 円山 琢也, 森田 綽之
    2011 年 67 巻 5 号 p. 67_I_779-67_I_786
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
    都市高速道路網を含む道路ネットワークに適した交通量配分モデルとして,OD間において「高速道路を利用する/しない」の選択と「どの入口・出口ペアを利用するか」の選択にネステッドロジットモデルを組み込んだ,確率的選択と確定的選択のハイブリッド型の経路選択ルールを採用した,一種の利用者均衡配分モデルを構築した.これを首都圏の道路ネットワークに適用したところ,「高速道路を利用する/しない」の選択のみを二項ロジットで表現した従来の高速転換率内生利用者均衡配分モデルよりも良好な現況再現性を得ることができた.
  • 柳沼 秀樹, 福田 大輔, 山田 薫, 松山 宜弘
    2011 年 67 巻 5 号 p. 67_I_787-67_I_800
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
    離散選択型の歩行者挙動モデルに基づく歩行者シミュレーションは,歩行空間の詳細な施設設計に資する可能性を持っている.しかし,モデルの未知パラメータを推定するためには,大量かつ高精度の歩行者挙動データを獲得する必要があり,効率的なデータ収集方法の開発が望まれている.本研究では,画像解析技術を援用した歩行者挙動データの自動抽出方法の有効性に関する基礎的検討を行った.具体的には,筆者らがこれまでに開発した背景差分に基づくデータ収集手法と,今回新たに提案したパーティクルフィルタを用いた手法の比較を行った.両手法によって得られたデータセットを用いて行動モデルを推定し,精度や安定性について比較検討を行った.その結果,新たに提案した手法が高精度かつ実時間でのデータ取得が可能であることが示された.
  • 山田 忠史, 中村 昂雅, 谷口 栄一
    2011 年 67 巻 5 号 p. 67_I_801-67_I_811
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
    本研究は,既存の商物一体型モデルを基にして,サプライチェーンネットワーク上の各主体(製造業者,卸売業者,小売業者,消費市場,物流業者)の分権的な意思決定や行動の相互作用を考慮した,商物分離型のサプライチェーンネットワーク均衡モデルを提案し,各主体の意思決定の定式化やサプライチェーンネットワーク全体の均衡条件を示す.また,比較対象の一つとして,卸売業者が介在せず,流通段階が削減された場合のサプライチェーンネットワークについても,均衡モデルの枠組みで定式化を行う.これらのモデルを用いて簡単な数値計算を行うことにより,流通形態の相違がもたらす,物資流動量(商品取引量,生産量,輸送量)やサプライチェーンネットワークの効率性の変化について,基礎的検討を行う.
  • 松村 裕太, 森田 哲夫, 藤田 慎也
    2011 年 67 巻 5 号 p. 67_I_813-67_I_821
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,数学におけるグラフ理論の研究成果に基づき人口と施設の組み合わせに着目し,道路ネットワークの整備効果を評価する手法を考案し,その評価手法の有用性について考察することである.
    本評価手法では,都市計画道路の整備前と整備後のネットワークについてグラフを作成し,人口と施設の組み合わせに基づく評価指標を算出する.整備前後の評価指標を比較することにより,未整備区間の整備効果を評価し,整備優先性の高い都市計画道路区間を示した.本評価手法は,道路ネットワークの整備効果を,ネットワーク上の人口と施設の組み合わせの観点から分析する点が特徴である.
  • 日野 祐滋, 木下 瑞夫, 大沢 昌玄, 岸井 隆幸
    2011 年 67 巻 5 号 p. 67_I_823-67_I_830
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
    タイ国の首都バンコクの道路交通渋滞問題は広く知られているが,道路交通を支える重要基盤である駐車場の整備状況や制度,基準については,これまで明らかにされてこなかった.そこで本研究では,バンコク都心における駐車場整備の実態,及び駐車場附置義務制度の内容や経緯について明らかにし,国際的な比較検討を行った.その結果,タイ国では駐車場の附置義務が1974年から制度化されており,その基準は日本のものを大きく上回り欧米諸国の基準に近いものであった.
    バンコクでは,現在,都市鉄道の整備が急ピッチで進められており,自動車交通から都市鉄道等の公共交通利用への転換が求められている.このような状況を踏まえ,今後のバンコクにおける駐車場整備のあり方,公共交通利用を促進するための駐車場整備のあり方等について提言した.
  • 山中 英生
    2011 年 67 巻 5 号 p. 67_I_831-67_I_836
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
    電動アシスト自転車の高齢者への普及が進む中,歩道走行の増加が予想されるが,走行や挙動特性に関する研究は少ない.本研究では,実際の道路における走行挙動特性を,高齢者と若年者,普通自転車と電動アシスト自転車で比較した.この結果,普通車と電動アシスト車を比較すると若年者,高齢者ともに速度が上昇しハンドルが安定する.中でも,高齢者は加減速が増加しており,交差する歩行者が多くても,速度低下や蛇角増加が生じず,加減速を増加させ,しかも歩行者に対する危険感が増加しない傾向が生じることが明らかになった.こうした傾向は,運動能力の少ない高齢者にとって,電動車では走行負荷が低減し,加減速の自由度が増し,走行安定感が増すことが原因と思われ,歩行者の多い歩道ではソフト分離などの施策が重要になると考えられる.
  • Emri Juli HARNIS, Shoshi MIZOKAMI
    2011 年 67 巻 5 号 p. 67_I_837-67_I_848
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
    Regulatory reform in public transport has become one of important issues in many countries, in order to improve efficiency and provide better services to user s. Since regulatory reform will bring about institutional and structure changes of the organization, then it will imply the way of the public transport services regulated and managed.
    This paper highlights how public transport service is organized under service contracts system, as one of growing trends recently. That is to say a system of which the service delivery of public transport is conducted by business enterprise on specified target which is planned by authority, which works under contract agreement between them.
    The study focuses on the two cases namely both London's and Seoul's models. These will illustrate how they are put into practice in those cities. It could be significant as an alternative in undertaking local public transport reform efficiently.
  • 吉城 秀治, 橋本 成仁, 福田 英治, 佐伯 亮子
    2011 年 67 巻 5 号 p. 67_I_849-67_I_859
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
    ハンプが設置されるような生活道路における自動車の走行挙動は,沿道環境や道路構造といった街路空間から影響を受けていると考えられる.この影響を加味した街路空間とハンプの一体的な検討を行うことで,より効果的な配置の在り方も考えられる.そこで本研究では,岡山市内の街路29路線において合計1,230台の自動車走行速度を実測し,自動車の走行挙動と街路要素との関係を明らかにすることで,街路空間から自動車走行速度プロフィールを予測するモデルを作成した.そしてこのモデルを応用することで,街路にハンプを設置した場合や,それに街路整備を伴った場合の自動車の挙動変化を予測可能としている.
  • 橋本 成仁, 佐伯 亮子, 吉城 秀治
    2011 年 67 巻 5 号 p. 67_I_861-67_I_867
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
    生活道路における自動車の交通事故は年々増加傾向となっている.これに対し日本では,多くの地域で交通静穏化政策が行われ効果を挙げており,加えて近年では,警察庁によって面的な速度規制の必要性が指摘されている.そこで,本研究では岡山市内において,地域住民の方々に地域内の個々の道路について望ましい規制速度を回答していただいた調査結果を用いて,地域内の居住者の意識をより適切に反映した規制速度を決定する要因を明らかにするため,決定木分析やロジットモデルなどを用いてその詳細を分析した.その結果,特に中央線の有無や柵や植樹帯によって歩車道が分離されているか否かが大きく影響していることを明らかにした.
  • 西村 悦子, 陳 麗瑩
    2011 年 67 巻 5 号 p. 67_I_869-67_I_878
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
    コンテナ取扱量の増加とその傾向が期待される中,アジア-欧州間を中心に積載容量10,000 TEUを超える超大型船が就航している.超大型船の導入効果を発揮するには,寄港地数の減少にあり,これはターミナルで一度に取り扱われるコンテナ数が膨大になることと,そのコンテナの大多数がトランシップコンテナとなることを意味する.このような超大型船が寄港するターミナルを対象に岸壁空間利用やヤード空間利用の最適化を行った研究があるが,ここで必要となる荷役時間データを,実在する港湾であらゆる状況下でのデータを収集することは困難である.そこで本研究では,荷役方式別のシミュレーションモデルを構築し,これから得られた時間データやこれに影響を及ぼす要因を収集して,本船と時間推定モデルを構築することを目的とする.
  • 岩倉 成志, 上松 苑, 高橋 郁人, 辻井 隆伸
    2011 年 67 巻 5 号 p. 67_I_879-67_I_886
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
    東京圏の都市鉄道はピーク時に慢性的な遅延が顕在化し,相互直通整備による路線の長大化がその問題を深刻化させている.本研究では列車遅延の発生要因を検討した上でATC信号制御に基づく運行ルールや乗降客の行動ルールをエージェントモデルに反映し,列車の遅延時間を再現することを試みる.
    東急田園都市線を対象に平日5日間の実際の遅延時間データと乗客のホームでの乗車時,降車時の旅客行動の位置座標データを取得して,駅間の走行時間を再現するモデルと駅での乗降時間を再現するモデルを開発し,遅延が波及する状況を再現した.
  • 岡林 楠博, 中村 有克, 安東 直紀, 山田 忠史, 谷口 栄一
    2011 年 67 巻 5 号 p. 67_I_887-67_I_897
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
    近年の我が国における大規模災害では,救援物資配送に混乱が生じてきた.被災状況に応じ救援物資を避難所に的確に割当て,迅速に配送を行うためには,事前に具体的な救援物資配送を検討する必要がある.本研究では,災害直後における供給不足の状況を想定し,配送量及び配送順序を決定する救援物資配送モデルを構築した.供給不足に対する総ペナルティ及び配送トラックの総走行距離を目的関数とする多目的最適化の枠組みを用いた.まず,提案したモデルの解法に対して性能検証を行い,精度よく非劣解を選定できることを確認した.その後,仮想的な問題に適用し,モデルの有用性を確認した.その結果,被災地における救援物資の総配送量や優先度の設定により救援物資配送計画が受ける影響を明らかにし,現実的な事例への適用可能性を検討した.
  • 塩士 圭介, 高山 純一, 中山 晶一朗
    2011 年 67 巻 5 号 p. 67_I_899-67_I_910
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
    市町村における現在の地域公共交通施策の現状と課題認識を把握するため,全国市町村に対して公共交通施策の取組状況等をアンケート調査結果で把握した.まず市町村の財政負担面から,市町村の交通政策への取り組みの度合いとその効果及び課題を明らかにした.
    また,特に「市町村合併」に着目して,市町村の合併規模等の分類を試みるとともに,交通課題認識及びその差違に関する比較分析を行うことで,市町村合併の形態ごとに持つ交通政策の取組状況とその課題を探った.その結果,合併市町村においては,非合併市町村に比べて,実際に交通施策に取り組まれている事例が多く,広面積の市町村ほどその傾向が顕著であることが明らかとなった.
  • 奥村 誠, 山口 裕通, 大窪 和明
    2011 年 67 巻 5 号 p. 67_I_911-67_I_918
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
    本研究では,全国幹線旅客純流動調査における鉄道サンプル個票の拡大係数設定方法について検討を行った.まず,現在の拡大係数設定方法の持つ問題点として,旅行目的や個人属性に関するずれが生じ,その結果,集計したOD交通量にも影響があることを示した.ついで,それを解決する方法を線形制約条件つき尤度最大化問題として定式化して,実際に2005年の全国幹線旅客純流動調査データに適用した結果,旅行目的や個人属性に関するずれを補正した拡大係数を設定できることを確認した.
  • 札本 太一, 小嶋 文, 久保田 尚
    2011 年 67 巻 5 号 p. 67_I_919-67_I_927
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
    日本各地でモール化など歩行空間の質改善に向けた社会実験が行われているが,歩行空間の評価には確立された手法がなく,参加意思に左右されやすく,また回答の依頼自体が心理的負担として回答内容に影響しかねない,アンケート調査に頼っているということが現状である.そこで,本研究では,理論的には全歩行者から取得可能な行動や表情といった外形的な特徴に着目し,歩行者の意識と歩行者の外形的な特徴の関係を分析する中で,評価指標になり得る手掛かりを見つける事を目的とした.
    結果として,歩行者意識がよくなる空間ほど歩行者の行動は多様性を有していることが示された.以上より,歩行者の外形的な特徴は歩行者の意識を表しており,歩行者の外形的な特徴が有用な空間評価の評価指標になり得るということがわかった.
  • 安福 皓介, 竹林 幹雄
    2011 年 67 巻 5 号 p. 67_I_929-67_I_938
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
    本研究では,国際海峡の潜在的通航価値の計量方法を提案し,実際にマラッカ海峡と津軽海峡を数値計算例として海峡通航安全航行の機会費用の推計を行った.さらに,海峡安全対策を巡る各主体間における協力体制の枠組み構築について検討を加えた.まず,国際海峡通航不能時の海運市場の変化を推定するために,船社の航路決定行動のモデル化を行った.次に,マラッカ海峡と津軽海峡を取り上げ,船社,荷主,港湾が有する国際海峡安全航行の潜在的価値を機会費用として定量化した.その結果,船社と荷主に関しては国際海峡安全航行のための費用の共同負担について全提携が可能であるが,港湾に関してはターミナルオペレーターレベルでのコスト上昇の回避を行っている可能性があることを指摘した.
  • 荒谷 太郎, 轟 朝幸
    2011 年 67 巻 5 号 p. 67_I_939-67_I_945
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
    わが国では,新幹線を中心とする鉄道ネットワークに加え,航空ネットワークも充実してきている.しかし,地域別にみると新幹線のルートから外れた地域や,航空の不採算路線の廃止による地方路線からの撤退した地域などが存在し,都市間移動のモビリティは地域によって異なっている.このように都市間公共交通の利用者は,それらの技術革新や政策などの恩恵を受けてより効率よく移動できる場合もあれば,そうでない場合もある.
    そこで本研究では,1971年から2006年までの都市間交通整備や技術革新によるモビリティの変化を,マルムキスト指数を用いて明らかにした.その結果,新幹線の開通や空港の開港によって利便性が向上した都市間や,一方で航空路線の撤退や運賃の上昇によってモビリティが低下した都市間が明らかになった.
  • 山下 和哉, 塚井 誠人, 桑野 将司, 奥村 誠
    2011 年 67 巻 5 号 p. 67_I_947-67_I_955
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
    過疎化と高齢化が進行する中山間地域において,高齢者の移動手段を確保するために,送迎を中心とした共助的交通サービスを検討する必要がある.本研究では,インタビュー調査とAD調査から,中山間地域住民の外出活動特性を把握した.さらに,地域特性と住民の外出活動特性を踏まえたフィーダー型送迎サービスを検討し,シミュレーション分析を行った.シミュレーション分析では,時空間上で各個人の時間軸に沿った移動と滞在を表現した活動ダイヤグラムを作成し,活動ダイヤグラム上で,被送迎者が世帯内および世帯間の送迎と路線バスを利用して外出する場合の外出成功率と,そのときの待ち時間を評価指標として,送迎活動を定量的に評価する手法を提案した.
  • 波床 正敏, 中川 大
    2011 年 67 巻 5 号 p. 67_I_957-67_I_966
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
    本研究に至る一連の研究では,期待所要時間(EVTT)を評価指標として,費用制約下における幹線鉄道網の最適化を行ってきたが,本研究では運賃や料金の変化を考慮できる期待一般化費用(EVGC)を用いて分析を行った.
    EVGCを基準として幹線鉄道網を最適化した場合とEVTTを基準として最適化した場合とについて比較を行ったところ,利用者の便益は後者よりも前者の方が大きかったものの,交通事業者の便益は前者では非常に小さく,交通事業者も社会を構成する一部であると考えると,一定の仮定の下では社会的な便益は後者の方が大きいことがわかった.しかし,EVTTを最適化の基準として採用するには,運賃・料金の設定方法や,整備費用の負担のあり方など検討を要する課題が存在することもわかった.
  • 羽鳥 剛史, 三木谷 智, 藤井 聡, 福田 大輔
    2011 年 67 巻 5 号 p. 67_I_967-67_I_977
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
    本研究では,大規模な放置駐輪問題を対象として,心理的方略による放置駐輪削減施策の実施効果を検証することを目的とする.この目的の下,都内で放置駐輪台数が最も多いと報告されている東京都北区のJR東日本赤羽駅周辺を対象として,駐輪場の情報等を記載したリーフレットを作成・配布し,併せてコミュニケータによる説得的コミュニケーションを行った.その結果,本取り組みを通じて,午前時間帯や一部の地域において放置駐輪が減少する傾向がみられた.ただし,先行事例に比べると,本取り組みによる放置駐輪削減効果は限定的なものに留まった.本稿では最後に,本事例と先行事例とを比較しながら,こうした結果が得られた原因について考察し,大規模放置駐輪問題を対象とした放置駐輪削減施策を実務的に展開する上での検討課題を取りまとめた.
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