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工藤 壮一郎
セッションID: 1
発行日: 2024年
公開日: 2025/02/02
会議録・要旨集
フリー
環境問題が深刻になっている現在,環境教育の充実は重要となる.環境教育では,生徒の環境問題に対する当事者意識の涵養が求められ,主たる教材である教科書は生徒の当事者意識に深く関連している可能性がある.そこで本研究では,環境問題に対する生徒の当事者意識の涵養に対する教科書の貢献について検討する.ROSES調査「D.私と環境問題」と中学校第3学年理科教科書の大単元「自然と人間」を分析した結果,生徒は環境問題に対し良好な当事者意識を有していることが明らかとなった.また,教科書内で人間活動と環境との関わり・科学技術による環境問題の解決等について幅広く取り扱われていること,本文で「わたしたち」という一人称代名詞が多用され,目指すべき市民像が明示されていることなどが生徒の当事者意識の涵養に貢献している可能性が示唆された.今後は,環境問題が扱われている他教科・科目の教科書内容についても検討する必要がある.
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―保育者を目指す中学校3年生の傾向について―
新井 しのぶ
セッションID: 1
発行日: 2024年
公開日: 2025/02/02
会議録・要旨集
フリー
本研究では,保育者の多くが科学に対して消極的であることについて,義務教育が終了する中学校3年生の時点でこの問題が生じているかどうかを調査することを目的とし,ROSES調査のデータを利用した分析を行った.ROSES調査は義務教育が終了する中学校3年生までに生徒が科学技術にどれぐらい関心があるのかどうかについて行われている国際的な調査であり,理科教育の成果を判断する指標の一つとなりうる.分析の結果,保育者に将来就きたい中学3年生の特徴として,専門性を活かし,人と関わりながら仕事することへの期待はあるが,理科に対しての好感度は低い傾向にあり,かつ理科で学んだことを発展的な好奇心へと結びつける態度や,生活の中で活かすことに対しては消極的である傾向が明らかになった.
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奥本 素子
セッションID: 1
発行日: 2024年
公開日: 2025/02/02
会議録・要旨集
フリー
コンバージェンス教育とは,分野横断型のSTEAM教育に社会課題を取り入れて学ぶ新しい学際教育のフレームワークである.2022年にアメリカ政府主導の省庁横断型のワーキンググルーによるSTEM戦略として設計された。本課題発表では,コンバージェンス教育の背景を解説するとともに,日本におけるコンバージェンス教育実現の可能性について,博物館教育,地域での感染症教育,福島におけるエネルギー教育などの科学教育の実践を通して考察していく.本稿では,本研究課題の背景となったコンバージェンス教育とその関連となる日欧の教育方針も紹介し,社会課題を含めて学習する先端的な科学教育のコンセプトについて,また社会課題と共に科学教育が社会に開かれていく際に必要なインフォーマルラーニングからのアプローチについても考察していく.
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石川 奈保子
セッションID: 1
発行日: 2024年
公開日: 2025/02/02
会議録・要旨集
フリー
本発表では,「はまぎん こども宇宙科学館」をフィールドとしたプロジェクト研究を紹介する.本プロ ジェクトでは,来館者と科学館職員との間の科学コミュニケーションについて,認知科学,言語情報科学,建築学,教育工学の視点での学際的研究を展開してきた.職員の科学教育に対する動機と方略,科学教室での参加児童と職員の関与配分,展示解説空間での来館者と職員との共通基盤構築についての4つの研究を紹介することで,本研究課題である日本におけるコンバージェンス教育の展開を考えるための話題提供としたい.
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森 沙耶
セッションID: 1
発行日: 2024年
公開日: 2025/02/02
会議録・要旨集
フリー
デジタルハンズオン展示は,少ない設置面積で多くの情報を提供できることや,従来のハンズオン展示と比較してよりインタラクティブな展示体験を提供できることから近年博物館施設で急速に普及している.特に自然科学分野の展示はそのスケールから実際に体験できるような展示物を製作することは難しい場合も多く,デジタル機器を用いることで細かく条件を設定でき,シミュレーションとして体験可能なものとして発展している.本研究ではデジタルハンズオン展示AR Sandboxを用いて親子を対象に展示体験の観察と会話記録から親が子どもへどのような支援を行っているかという観点から展示体験の様子を明らかにすることを目的に,複線径路等至性モデル(TEM)を用いて質的に分析した.その結果,多くの親は起こっていることを言語化したり変化したポイントを共有したりしていること,複数の分野に関する概念的理解が行われていることが明らかになった.
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池田 貴子
セッションID: 1
発行日: 2024年
公開日: 2025/02/02
会議録・要旨集
フリー
都市環境に適応した野生のキツネは「アーバンフォックス(都市ギツネ)」と呼ばれ,彼らと人間との軋轢は年々多様化・深刻化している.キツネから人への「エキノコックス症」の感染リスクの増大と,餌付けによるキツネの「人馴れ」はその代表格である.こうしたキツネ問題に対して,行政主導での包括的な対策が求められているものの,リスク評価の難しさからいまだ実現に至っていない.都市部でのキツネとの「共生」をめざしたキツネ管理の実現には,行政システムの整備に加えて,市民の主体的な参画が不可欠である.そこで,野生動物管理に対する市民の当事者意識の涵養を目的として,札幌市内の都市公園との協働で,獣害対策教育のイベントを5回にわたり実施した.自由記述の感想から,本イベントが,参加者自身の自然観を再解釈するきっかけになったり,知識の習得だけでなく互いの不安を共有しあう場として機能した可能性があることがわかった.
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七田 麻美子, 須永 将史, 菊地 浩平
セッションID: 1
発行日: 2024年
公開日: 2025/02/02
会議録・要旨集
フリー
本論は企業研修を対象に,質疑応答でのやりとりを分析するものである.ここでの企業研修は,再生可能エネルギーに関するもので,実際の社会課題を対象に知識や自身の考えを深めていくものである.そこでの質疑応答を分析すると,知識勾配がある教授者と受講者のやりとりにおいて,必ずしも知識が高いものだけが学習場面での主導権を持つことにならず,むしろ知識を求める側が「ありがとうございます」という表現によって,学習場面のコントロールをする場面があるということが示された.こういった社会課題学習場面の特徴は,学習場面に質疑応答という形式を取り入れることにもよるが,それ以上に多くの人に関わる社会課題を対象とすることの影響が大きい.つまり,学習者側がその課題に役割と学ぶ動機を持つことで,単純な知識習得に留まらない学習が成立しているのである.
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成田 宏樹, 渡津 光司, 大谷 忠
セッションID: 1
発行日: 2024年
公開日: 2025/02/02
会議録・要旨集
フリー
平成18年森林・林業白書において「木育」が示され,学校教育や社会教育においてその活動が展開されてきた.ところが,学校教育では木育が教科ごとの範囲に留まり,木育本来の広がりをもつ学びには至っていない点に注目した.本研究では,木材の良さやその利用の意義を学ぶ既存の概念を拡張し,脱炭素社会の実現に向けた新たな木育に転換することを試みた.技術科を中心とした他教科を横断するSTEAM教育の視点から木育授業を設計した.その結果,技術科では森林の炭素貯蔵効果を学習し,中学校理科では植物の光合成を通じた炭素固定,小学校社会科では森林資源の役割を学習する内容が含まれていることがわかった.これらを基に,物質生産に関わる内容に関して,技術科を主軸として,理科や社会科などに拡張したSDGsに基づく脱炭素社会を目指した新たな木育授業を設計し,題材指導計画を作成した.
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東原 貴志
セッションID: 1
発行日: 2024年
公開日: 2025/02/02
会議録・要旨集
フリー
SDGs に掲げられている社会課題の一つである脱炭素社会の実現に向けた,STEAM の視点に基づく教科横断的な木育プログラムの開発が求められている.そこで本研究では,林野庁が示している森林が有する多面的機能の一つである土砂流出防止機能について,根系の引抜き抵抗による崩壊防止機能のモデル実験を開発し,SDGs の教育目標に沿った森林と国土保全に関する教育プログラムを作成した.小学校5年生社会科の授業実践を行った.丸棒にマツの根を模した水平の根のモデルを貼り付け,土砂(ハイドロコーン)を入れたバケツからの引き抜き抵抗をばねばかりで測定した結果,根の有無による値の違いが確認できた.森林ボランティアの活動を映像で視聴し,間伐の方法を理解していた.これらの教材を通して,森林の多面的機能について,社会科と理科の教科横断的な学習が成立したのではないかと考えられた.
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田口 浩継
セッションID: 1
発行日: 2024年
公開日: 2025/02/02
会議録・要旨集
フリー
森林・林業や木材利用に関する教育として,木育が実践されるとともに,2019年度から開始された森林環境譲与税の使途の一部に「木材利用促進,普及啓発」活動が位置づけられた.木育の内容は「木の良さや利用の意義」が中心となっているが,木材利用の拡大には至っていない.木製品や木造住宅などを購入する要因として,クラシ・ヒト・モノ・カネの視点で見た場合,良いモノを作り,それを安く提供するだけでは購入に繋がらない時代になったといえる.木の素材としての良さや,樹木・国産材を利用することによる暮らしや地域の変化などに関する理解が充分でない状況にある.本研究では,木材の良さや利用の意義を学ぶ既存の概念を拡張し,脱炭素社会の実現に向けた「木の文化」の理解の促進を試みた.技術科を中心とした他教科を横断するSTEAM教育の視点から「木の文化」に関する木育授業を検討した.
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野田 龍
セッションID: 1
発行日: 2024年
公開日: 2025/02/02
会議録・要旨集
フリー
日本では地震や豪雨によって毎年数多くの土砂災害が発生している.土砂災害の防止・軽減のため,ハード・ソフトの両面から対策が進められているが,土砂災害の発生メカニズムや防災対策施設の機能等が広く周知されているとは言い難い.そこで,本研究では土砂災害の仕組みと防災対策を学ぶための砂防えん堤モデルを製作し,実験を行った. 実験では水量を変化させて土砂災害の発生機構と対策の有無による市街地の被害程度を評価した.その結果,水量が増えると土石流が発生し市街地は氾濫すること,砂防えん堤を配置することで氾濫は抑えられることが分かった.本実験は土砂災害の発生機構から発生後の被害形態,被害を防ぐ対策工について網羅的に理解する上で有効であるとともに,大雨による気象災害のモデル実験としての活用のほか,理科で学習する土砂災害の発生メカニズムと技術科の防災の技術を含む教科横断型のSTEAM教育に資すると考えられる.
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安藤 秀俊, 出井 貴大
セッションID: 1
発行日: 2024年
公開日: 2025/02/02
会議録・要旨集
フリー
SSH指定の高等学校において,「理数探究基礎」を想定した授業実践を実施し,その教育的な効果を検証した.その結果,理科と数学の関連性について,調査対象の生徒は授業前アンケートから理科と数学の関連性をある程度感じていたが,授業後に理科と数学の関連に対する意識が更に高まったことが明らかになった.具体的には,実践した授業で,①理科と数学ともに自然界との関連性の意識の向上,②自然現象について理科と数学の2つの視点からみると理解できるという意識の向上,③探究意識の向上,の三点が確認された.したがって,本実践では理科と数学の連携の重要性を伝えることができたと考察した.
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吹き矢を題材とした高等学校物理基礎と数学Ⅲの教科横断型授業
島本 史也, 高阪 将人, 渡邊 耕二
セッションID: 1
発行日: 2024年
公開日: 2025/02/02
会議録・要旨集
フリー
本稿では,理科の見方・考え方と数学の見方・考え方から事象を多角的に捉える授業を開発するとともに,その効果を検証した.そのためにまず,学習指導要領及び先行研究から本稿における「理科の見方・考え方」と「数学の見方・考え方」を定めた.次に,両教科の見方・考え方から事象を多角的に捉える授業として,吹き矢に着目した.その後,中等教育学校の6年次生(高校3年生)16名に授業を実践し,授業の効果を検証した.その結果,生徒達の解法として,「数式から考える」と「実験から考える」が提案された.また,両者の見方・考え方を同時に働かせることで,変数設定の重要性に気付いたり,科学的思考の順番が整理できたりすることが明らかとなった.つまり,理科の見方・考え方と数学の見方・考え方を同時に働かせることで,事象を多角的に捉え,科学的な思考を深化させる可能性が示唆された.
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学習指導要領の目標と内容に存在する動詞に着目して
福田 博人, 池田 浩輔
セッションID: 1
発行日: 2024年
公開日: 2025/02/02
会議録・要旨集
フリー
教科横断や通教科が重要視される現状において,教科「理数」が高等学校の教育課程の中に新たに位置づけられた.先行研究において,理科や数学科との比較による教科「理数」の特徴の同定の試みはなされているものの,専門教科「理数」との比較は行われていない.そこで本稿では,専門教科「理数」との比較を通して,教科「理数」の特徴を明らかにすることを目的とした.目的を達成するために,両教科の学習指導要領の目標と内容に存在する動詞に着目し,テキストマイニングによって共起ネットワークを作成し,両教科の比較を行った.結果として,専門教科「理数」でも教科「理数」でも探究を重要視している点で類似している一方で,専門教科「理数」とは異なる教科「理数」の特徴として,理科と数学科の融合をあげられることが明らかになった.
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森田 大輔
セッションID: 1
発行日: 2024年
公開日: 2025/02/02
会議録・要旨集
フリー
学習指導要領の改訂に伴い,高等学校において教科「理数」が新設されるなど,理数教育の充実に対して大きな関心が寄せられている.理科と数学の接続を企図した教材開発などが積極的になされている一方,「教科『理数』における生徒の探究活動をどのように評価するか?」という評価の本性については未だに議論の余地がある.そこで,本稿では,教科「理数」の目標を概観した上で,その目標を達成しうるパフォーマンス課題について検討することを目的とする.そこで,「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」を評価するものとして,パフォーマンス課題「微生物の増殖のメカニズム」を作成した.このパフォーマンス課題は,観察の計画を立てることを端緒に,観察,モデルの設定・改良,考察という一連のプロセスを含んだものであり,観察された現象と数学的モデルとの関連を考察するといった点が利点として挙げられる.
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髙須 雄一
セッションID: 1
発行日: 2024年
公開日: 2025/02/02
会議録・要旨集
フリー
医学部第1学年に対して,統計用語の認知度調査と統計に対する意識調査を実施した。その結果,高校までに学習する基礎的な用語に関しては習得していることを示したが,これまでの物理実習のレポートを分析した結果,高校までに学習しているはずの分散や標準偏差などの専門的な用語に関しては必ずしも十分な理解に達していないことが分かった。そこで,物理実習において,受講生120名分の全データをプロットし,全データのばらつきを評価するには標準誤差と標準偏差のどちらが適しているかを問う課題を設計し実践した。その結果,全データをプロットすると,全データのばらつきは標準偏差で評価できるとの解答が増加した。以上より,統計量の理解において,全データプロットが一定の効果を有することが分かった。
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- 学習指導要領を手掛かりにして -
風間 寛司
セッションID: 1
発行日: 2024年
公開日: 2025/02/02
会議録・要旨集
フリー
算数・数学教育における数学史を活用した教材事例は多く,教科書には,導入課題やトピック,数学者の紹介が掲載されている.数学史は,様々な利活用可能性が考えられる.本課題研究では,特に和算や算額の様々な利活用可能性について,学校教育,社会教育における事例研究の成果と課題を共有し,普及していくことが重要であると考える.例えば,和算や算額の学校数学への利活用,幾何分野における活性化教材の開発,ICT,AIによる原書読解を含む探究的な学習の時間における和算書や算額の教科横断型の研究活動,算額の復元活動などの事例がある.さらに,測量術,天文学,暦学は,科学教育における教材事例となる.
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牧下 英世
セッションID: 1
発行日: 2024年
公開日: 2025/02/02
会議録・要旨集
フリー
中学,高校の数学カリキュラムから初等幾何の内容が減り,数学の概念を視覚化することに課題がある.また幾何教材がまとまって整備されていないため,教職課程の学生(以後,教職学生)や若手教員にも未解決な問題となっている.本研究の目的は数学の概念を視覚化するために算額を題材とする幾何教材を開発することである.
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福井県の「絵付算額」を題材として
赤間 祐也, 風間 寛司
セッションID: 1
発行日: 2024年
公開日: 2025/02/02
会議録・要旨集
フリー
本研究では和算教材を活用した中学校数学の授業を設計し,その評価を行うことを目的とする.題材としては風間(2023)において先行研究のある福井県内の絵付算額を主に用いる.都内中高一貫教育校の中学1年生を対象として鶴亀算の原典,朽飯八幡神社算額,石部神社算額を教材とした一次文献の観察・問題文理解,自力解決,文献との解法比較,条件変更による問題作り,算額づくりの構成からなる授業を設計し,2時間分の授業として実施した.その結果学習者に特に当時の数学のレベルの高さや文化の理解について強い肯定反応が多く見られ,原因として鶴亀算の由来など文化的背景に触れたこと,問題に当時の人々の営みが反映されていることなどが印象的であると捉えられることが考えられた.学習者の既有知識を利用することで算額を教材に用いた授業や算額づくりの活動が学習者の数学観の変容に資することが示唆された.
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小林 徹也
セッションID: 1
発行日: 2024年
公開日: 2025/02/02
会議録・要旨集
フリー
本稿では,勤務校における高校1年生に対する「和算の解釈と表現」の探究活動9年間の指導経験に基づき,今後の和算探究活動に必要な「文理融合」と「生成AI」への対応を検討することを目的とした.令和4年度の活動では和算書「因帰算歌」を使用し,238名の生徒が班ごとに現代語訳,数学的内容の表現,英語訳,江戸時代の文化調査を行い,ポスター発表を行った.一方,「文理融合」については,近年の教育未来創造会議やスーパーサイエンスハイスクール事業の影響を受けるが,本校のこれまでの活動は,高校版「文理融合」の探究活動の一例といえる.また,これからの「和算の解釈と表現」として必要なことを確認するため,「生成AI」に上記探究活動を意図したプロンプト入力し,その回答を検討した.その結果,「生成AI」利用において,プロンプト入力の際は「問い」続け,回答を読む際は「批判的」に見る指導が望まれることを指摘した.
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中島 秀忠
セッションID: 1
発行日: 2024年
公開日: 2025/02/02
会議録・要旨集
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NPO和算を普及する会は毎年「算額をつくろうコンクール」を開催している.参加資格に制限はなく,算数や数学を学ぶ生徒にとって良い機会と考える.「算額」とは江戸時代に花開いた文化の一つ「和算」のもので,算術の能力の向上を神仏に感謝し,算術の問題を絵馬に書いて奉納したものである.これを現代に蘇らせたのがこのコンクールであり,通常では問題を“解く側”である生徒が,問題を“つくる側”を体験できる.私はこれまでこのコンクールの審査員の一員として関わり,直近13回分においては,生徒のつくった問題の面白さや工夫について分析してきた.実際の算額を掲げた昔の人々がそうであったように,生徒達もその図や数値に創意工夫を施し,楽しみながら問題をつくれている.中には知識不足から誤答のまま提出される作品もあり,その生徒は悔しさから,知識欲を向上させた事例もある.このコンクールは学びの原動力を授ける機会になっている.
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下村 勝平
セッションID: 1
発行日: 2024年
公開日: 2025/02/02
会議録・要旨集
フリー
本研究の目的は,「データの活用」領域の新設に伴い,学習指導の充実が求められる算数科の統計教育において,批判的思考の育成を意図した教材を開発することである.そのために,今年度から小学校現場で用いられている算数科教科書全6社の「データの考察」単元を比較分析し,教材開発の視点として,①時系列やはずれ値を教材内で扱うことによって結論を導いた後,もう一度問題やデータに立ち戻り,批判的に考察する機会を与え得るということ,②根拠をあげて話し合うだけではなく,自身の考えを振り返らせる発問を教材内に設定する必要性という2点を得ることができた.そして,得られた視点をもとに,場面やデータの数値を工夫した教材を開発した.本稿では教材の開発を試みたに過ぎず,今後の実証的な研究が求められる.
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−生徒実験の結果を処理する場面に着目して−
佐竹 靖, 西仲 則博
セッションID: 1
発行日: 2024年
公開日: 2025/02/02
会議録・要旨集
フリー
理科の授業では,観察・実験が重視されており,教員養成の視点からも観察・実験を伴う授業構想力や実践的指導力を備えた教師の育成が求められている.そこで本研究では,教師が生徒実験の結果を処理する場面に着目し,中学校理科「力の大きさとばねののびの関係」の授業を題材にしたケースメソッド教材を開発した.開発した教材は,学生が授業の指導計画を考案する活動の中で試行的に活用し,アンケート分析によって学修効果を検証した.その結果,次の3点が示唆された.①マンガ教材は授業場面を具体的に想像させることに有効であった.②「力の大きさとばねののびの関係」の学生実験とケースメソッド教材を組み合わせた学修を行う必要がある.③特に「誤差の存在や原因,範囲」に関する指導の必要性について言及できる学生が増えた.したがって,本ケースメソッド教材を活用した学修は,学生の実験を伴う授業構想力育成に一定寄与したことが示された.
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細田 幸希
セッションID: 1
発行日: 2024年
公開日: 2025/02/02
会議録・要旨集
フリー
本稿は,統計教育に関する国際誌であるStatistical Education Research Journal(SERJ)の初等教育における統計的思考と確率的思考に関する先行研究の整理と考察を行うことを通して,日本の初等教育段階における統計・確率教育に関する指針を示すことを目的とした.その結果,データと偶然性の関係を捉える学習活動を充実させるために,確率的実験に基づく統計グラフに関する学習やインフォーマルな統計的推測の文脈を取り入れた学習を踏まえて,標本空間,無作為性,標本変動等の概念の理解を促す方法を具体化すること,小学校の教員養成課程の講義や現職教員を対象とした研修会・研究会の中で,テクノロジーを活用した教材研究や授業デザインについて学びながら,統計と確率の内容的知識及び教授方法の知識の獲得を目指した機会を充実させることを示した.
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藤井 良宜
セッションID: 1
発行日: 2024年
公開日: 2025/02/02
会議録・要旨集
フリー
情報通信技術の進展やAIの急激な発展によって,情報を読み取る力やデータを活用する力の重要性が増してきており,これらからの教育に求められるものも変わりつつある.本稿では,今後の統計教育の目標として,統計的なアイデアを用いてデータの特徴の理由付けをしたり,統計情報を論理的に納得したりする統計的な推理力を育成することと高校卒業後も統計を学び続ける生徒を育成するために,統計の必要性や有用性を理解し,学ぶ意欲を高めることを提案した.また,統計に対する態度を高めるために,中学校第3学年数学科の「標本調査」の単元構成について検討した.ここでの特徴は,導入段階で新聞記事(ここでは疑似的なもの)を活用することで,生徒のデータに対する関心を高めることにある.さらに,その単元構成に基づいて実施した授業の概要や授業における生徒の具体的な反応や生徒の感想についてまとめて報告した.
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西仲 則博, 佐竹 靖
セッションID: 1
発行日: 2024年
公開日: 2025/02/02
会議録・要旨集
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西仲(2024a,b)では,次期学習指導要領の改訂けて,データの活用領域において,実験や観測によって測定した測定値を用いる学習をする上で,測定値の誤差についての学習を取り入れることを提案している.本研究では,測定値の誤差や有効数字に関して,数学科教員を目指す学大学生の意識調査を行い,その実態を明らかにすることを目的とする.調査の結果として,「測定値に誤差がある」ことには肯定的で,その上で,誤差の削減のための努力や,測定値のトレースを行うことに肯定的である.また,偶然の誤差については知っているが,偶然の誤差の3公理については知らないことが示された.更に,誤差や有効数字の問題について苦手意識を持ち,それらを教えることについて不安である傾向があることが示された.これらの結果から,誤差や有効数字の教員養成用教材研究が必要であることを得た.
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小口 祐一
セッションID: 1
発行日: 2024年
公開日: 2025/02/02
会議録・要旨集
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AI・デジタル化の進歩に対応して,統計科学・コンピュータ科学・情報科学等を融合したデータサイエンスの重要性は疑う余地がない時代になっている.ドイツでは,以前より,データサイエンスのリテラシーレベルであるデータリテラシーの育成が提唱されている.本稿では,ドイツHFD(Hochschul forum Digitalisierung,「デジタル化に関するドイツ大学フォーラム」)によるデータリテラシーの枠組みを参照して,データリテラシーは,どのような能力を育成することを目標とするのか,どのような指導方法が有効なのかについて,情報共有と考察を行う.高等学校数学科では「データの分析」,「統計的な推測」の内容が拡充され,情報科では「データの活用」,「データサイエンス」の単元が設定されていることをふまえ,本稿は,わが国におけるデータリテラシーの育成に関する示唆を得ることを目的とする.
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向 平和
セッションID: 1
発行日: 2024年
公開日: 2025/02/02
会議録・要旨集
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地方の人口減少に歯止めがかからず,地方の科学人材の確保も喫緊の課題と考えられる.現在,科学技術振興機構は,ジュニアドクター育成塾・グローバルサイエンスキャンパス(現在は次世代科学技術チャレンジプログラムに統合)を展開し,突出した科学人材育成を推進している.本課題研究では,両事業を実施している島根大学,琉球大学,愛媛大学の取り組みを通して,小学生・中学生・高校生さらにメンターとして関わる大学生,大学院生を含めた,今後の科学人材育成について議論を深めたいと考え企画した.本課題研究にて,それぞれの地域特有の課題なども含めて議論できればと考えている.実施運営上の課題と工夫点,実施プログラムの成果や波及効果,地方でのプログラムの位置づけと課題という視点で議論することで,今後の次世代科学人材育成の示唆を得られると考える。
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御園 真史
セッションID: 1
発行日: 2024年
公開日: 2025/02/02
会議録・要旨集
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スーパーサイエンスハイスクール事業やジュニアドクター育成塾等の事業で学ぶ児童・生徒が身に付けるべき能力の一つに,適切に文献を引用し,出典情報を適切に記載するなどのアカデミックライティングに関わるスキルがあると考えられる.こうしたアカデミックライティングに関わる指導は,現行の学習指導要領下においては,小学校国語科で扱われる.国語科の教科書等を分析したところ,その学習内容は必要なものであるが,実態として定着は十分でないと考えられる.島根大学で実施しているジュニアドクター育成塾事業でのアカデミックライティング指導および効果の測定を踏まえると,アカデミックライティングスキルの定着には,少なくとも,約2年弱といった長期間かかること,さらに,自らの興味・関心に基づく探究活動を通して,論文執筆というある程度まとまった量の文書の作成に,じっくり取り組む必要があることが示唆された.
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―琉球大学の実施する次世代人材育成事業の展開―
宮国 泰史, 東江 あやか, 福本 晃造, 杉尾 幸司
セッションID: 1
発行日: 2024年
公開日: 2025/02/02
会議録・要旨集
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琉球大学では、次世代人材育成事業として小中学生および高校生をそれぞれ対象とする科学教育プログラム「琉大ハカセ塾」および「琉大カガク院」を長期にわたり展開し,両事業一体的な運用により、卓越した意欲・能力を有する科学技術人材の発掘と育成を目指してきた.本報告では,これまでの本学における両事業の展開内容を紹介するとともに、取り組みを通して見えてきた各種の事象や効果・特徴・課題を議論するとともに,島嶼地域からの人材育成の具体例なども取り上げながら,大学の実施する科学教育プログラムの展開・維持が,令和の日本における多様な特性を持つ児童・生徒の受け皿になる可能性を紹介し,総合的にみた,現在および今後の沖縄地域の科学系人材について議論する.
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加藤 晶, 向 平和, 中本 剛, 高橋 亮治, 宇野 英満
セッションID: 1
発行日: 2024年
公開日: 2025/02/02
会議録・要旨集
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愛媛大学では全学組織である次世代人材育成拠点を中心に,国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)による多くの事業助成を通じた様々な科学教育事業を実施している. 人口減少・超高齢化社会,四国外への転出超過が長期的にわたって一貫して継続している現状など,四国地域が抱える課題は山積しており,将来地域や世界で活躍する次世代の科学者・技術者に加え,イノベーションの担い手を早期に育成・獲得することは,本事業の大きな役割といっても過言ではない. 本事業では,「早期育成型」「アントレプレナー育成型」といった新たな育成型に加え,高校教員を「学外メンター」として各高校に配置し学校現場と連携を図る取組を行っている. そこで本発表では,これらの取組や事例を取り上げ,本事業の多様性を重視した地域密着型の若手人材育成がその解決策の一つとなり,地域人材の「好循環」を生み出す可能性について議論する.
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柗元 新一郎
セッションID: 1
発行日: 2024年
公開日: 2025/02/02
会議録・要旨集
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本稿の目的は,国際的な視点に立ち,数学教育に関わるリスク研究に関わる論考を調査し,初等中等教育におけるリスク社会に対応した数学教育のあり方の示唆を得ることを目的とする.そのために,国際的な数学教育ジャーナルThe Mathematics Enthusiastのリスクの特集号に掲載されている26本の論文を調査した.26本の論文の全体の傾向として,確率・統計に偏っていること,条件付き確率やベイズの記述が多いこと,二重過程理論やプロスペクト理論の記述が多いことが分かった.また,社会正義を数学教育で扱うことに関連して「可謬主義」の立場に立つことを明らかにした.また,カリキュラムにおけるリスクの扱いを取り上げて分析を行った.
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中越 進, 峰野 宏祐
セッションID: 1
発行日: 2024年
公開日: 2025/02/02
会議録・要旨集
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本稿の目的は,科書におけるリスクに関する記述を分析することにより,中学校数学におけるリスクの扱いの実態の一端を明らかにするとともに,教材開発への示唆を得ることである.数学の全領域における日常生活や社会の中からのリスクに関わる内容を抽出し,リスクに関する記述の度合いや形式によって4種類に分類した(観点①).加えてそれらを場面や文脈,育みたい資質・能力等を視点に9つの観点で分類した(観点②).上記枠組みによる分類の結果から3点に絞って考察を行った結果,小学校教科書と比較すると,算数・数学の内容(領域)では「A 代数」「C 解析」が扱われていること,リスクの文脈のレベルでは「C 社会的」「D 科学的」な文脈が扱われていること,また,意思決定の場面が扱われないこと等,傾向に違いがあることが見いだされた.以上のことから,扱いのない内容やリテラシーの育成に向けた教材開発のための視点を提案した.
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-中学第3学年「そのメール開きますか」の分析-
菊野 慎太郎
セッションID: 1
発行日: 2024年
公開日: 2025/02/02
会議録・要旨集
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本研究の目的は,中学校数学科においてリスク社会に対応した教材研究と授業を通して,リスクを題材とした数学の授業における子どもの現れを明らかにすることである.中学校第3学年を対象として「迷惑メール」を題材として,教材開発及び授業実践を行った.授業では,迷惑メールのリスクを子どもたちが特定し,データや経験から通常メールと迷惑メールの割合を仮定し,条件付確率を求めていった.通常メールと迷惑メールの割合などの仮定を変えて確率を考察することで,迷惑メールの確率の高さに気づいたり,一般化したりする姿が見られた.授業後の考察から,迷惑メールのリスクを授業で扱うためには,技術科など他教科の知識や経験が必要になることが分かった.また,リスクと数学の価値の両方が表出している子どもの現れをみとることができた.
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藤原 大樹
セッションID: 1
発行日: 2024年
公開日: 2025/02/02
会議録・要旨集
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本研究は,中学校数学科における関数と統計を活用したリスク対応を意図した教材開発の視点を導出することを目的とする.架空行事の模擬店出店場面で,天候等の制御不能な条件や市場調査の統計データ等を基に,生徒が主人公として赤字回避に向けて合理的に意思決定する教材「焼きそばの単価を決めよう」を開発し,学習指導案を作成して中学校第3学年を対象に実施し,生徒の様子や生徒の記述,事後アンケートへの回答を分析した.その結果,望ましい教材の要件として,リスクに対応する必要性を生徒が理解できる教材(近い将来遭遇する可能性がある疑似現実的な問題場面等を含む)等の4点が得られた.また,授業展開で設けることが望ましい場面として, モデルや意思決定について協働的,批判的に検討する場面等の3点が得られた.
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-高等学校第1学年「情報拡散の脅威」の授業を通して-
冨田 真永
セッションID: 1
発行日: 2024年
公開日: 2025/02/02
会議録・要旨集
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本研究の目的は,高等学校数学科においてリスク社会に対応した教材を用いた授業実践を通して,リスクを題材とした数学の授業づくりへの示唆を得ることである.そのために,高等学校第1学年を対象として「情報拡散の脅威」という教材を開発し,授業実践を行った.授業における生徒の反応や事後アンケートの記述をもとに考察した結果,指導上の留意点として,①対象リスクを「私的」と「社会的」を往還すること,②解決に必要な仮定や変数について議論することの2点を特定した.今後の課題は,リスクを低減するための方策を考えるところまで指導の中で扱うことである.
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小川 義和
セッションID: 1
発行日: 2024年
公開日: 2025/02/02
会議録・要旨集
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国際博物館会議の博物館の定義では,博物館の基本的な機能に加え,誰もが利用でき,多様な人々を包摂する博物館が社会の多様性と持続可能性を育むとされている.本稿では,多様な人々を包摂する活動の博物館における意義について個人と社会のウェルビーイングの観点から検討した.多様な人々を包摂する活動によって博物館に精神的幸福のみならず身体的幸福の実現に有益であるという新たな価値をもたらすことが期待され,そこには個人と社会のウェルビーイングの最適解を探る研究が求められる.
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鳥居 深雪
セッションID: 1
発行日: 2024年
公開日: 2025/02/02
会議録・要旨集
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自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder以下ASDと表記)や注意欠如多動症等の神経発達症群(Neurodevelopmental Disorders)について,「障害(Disorder)」としてではなく,脳の多様性=Neurodiversity(以下ND)とする考え方に変わってきている.今回,オーストラリアのThe Scienceworks Museumで博物館展示におけるNDに対する展示方法の工夫等の提供について調査した.Webでは,アクセシビリティの情報を表示している.Sensory mapの作成や時間帯のゾーニングなど運用面の工夫が行われている.支援に際しては, AMAZE(ASD支援団体)の助言を受けながら工夫をしている. さらに,The Hidden Disabilities Sunflowerプログラムにも参加している.
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山本 健太
セッションID: 1
発行日: 2024年
公開日: 2025/02/02
会議録・要旨集
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本研究は成人自閉スペクトラム症者(Autism Spectrum Disorder; 以下ASD 者)のオープンエア空間における記憶成績が低下しているかどうか検証することを目的とした.これまでASD 者における記憶研究では,参加者自身が実際に経験していない写真や単語などが用いられてきた.さらに,インタビューなどでも測定されてきたが,各参加者が実際に経験した記憶は統制できない点が難点であった.そこで本研究ではASD 者1 名と定型発達大学生8 名を対象に大学構内の銅像などのオブジェクトを自身で写真を撮って憶える条件とPC モニターで見て憶える条件を設定した.参加者人数が少なかったため統計解析を実施することができなかったものの,自身で写真を撮って憶えた条件においてASD者の記憶成績に低下が認められ,PCモニター条件では群間に差が認められなかった.
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楠 房子, 石田 弘明, 稲垣 成哲
セッションID: 1
発行日: 2024年
公開日: 2025/02/02
会議録・要旨集
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本研究では,従来における自閉症スペクトラム症(ASD)児童の色知覚特性の調査手法を検討することによって,科学系博物館における展示パネルの色彩改善のためのガイドラインを提案することを目的としている.従来の研究では,カードタイプの色見本を用いた調査がなされてきたが,Neurodiversityに配慮した環境整備には,より実際的な展示パネルの背景色とオブジェクトの関係を考慮した色彩調査が必要である.具体的には,異なる色の組み合わせを持つパネル状の色見本を作成し,その視認性を評価する方法を提案した.これにより,ASD児童を含む多様な来館者にとって,理解しやすい展示環境を提供するための実用的なガイドラインの提案することが可能となった.
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寺田 努, 大西 鮎美
セッションID: 1
発行日: 2024年
公開日: 2025/02/02
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筆者が属する科研費基盤A 研究プロジェクト「科学系博物館におけるニューロダイバシティーの実現:展示手法と実践モデルの提案」では,発達の多様性(Neurodiversity)の立場から科学系博物館の来館者を捉え,その学習保障ガイドラインの体系化・展示手法の開発,さらにはその具体例としての展示に係わる学習実践モデルを提案することを目的としている.本プロジェクトの特徴のひとつは,上記のようなガイドライン体系化等を行うにあたって,質問紙等の主観評価だけでなく,ウェアラブルセンサを用いた客観的指標による評価を行った結果を用いて展示手法の開発を行う点である.本稿では,実際に行った実験を例に挙げながら,どのようなウェアラブルセンサでどのような値が評価可能なのかについて議論し,Neurodiversity の実現のための評価環境を考える.
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下平 剛司
セッションID: 1
発行日: 2024年
公開日: 2025/02/02
会議録・要旨集
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インフォーマルな場における科学体験の機会は科学教育において重要な役割を担っているが,そのような場に参加する人が限定されているという課題を抱えている.そこで本研究では,インフォーマルな科学体験の場として成立しているシチズンサイエンス的なコミュニティを仮定して関連する概念を整理することで,その成立に関する仮説モデルを生成することを目的とした.具体的には,学際的な探究の共同体における「関心」概念やアイデンティティ概念を手がかりに,インフォーマルな科学体験の場における個人と共同体の関係性を検討した.その結果,「関心」と「共同体」が直接的に結びつくものではなく,それらを媒介する「行為」概念の存在が示唆された.また,この検討をもとに「関心」「行為」「共同体」の関係性を整理した仮説モデルを生成した.仮説モデルには複数の循環が存在し,その循環における共同的知的生産の重要性が示唆された.
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森田 泰暢
セッションID: 1
発行日: 2024年
公開日: 2025/02/02
会議録・要旨集
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本研究は,日本におけるシチズンサイエンスの持続的な支援に向けた課題解決に繋がる仕組みを明らかにすることを目的としている.近年注目されているシチズンサイエンスは,市民の科学への参加が期待されるが,広報活動の強化,研究倫理面のチェック,市民と研究者との連携,研究資金制度の確立という4つの課題を抱えている.本研究では,認定NPO法人バードリサーチが実施する「調査研究支援プロジェクト」を事例に,これら課題の解決に繋がる仕組みを探る.バードリサーチは市民からの寄付と投票に基づく新しい形態の研究資金支援を実施し,そのプロジェクトは調査者の計画書作成,一次審査,寄付者の投票,支援金の配分というプロセスで進行する.本研究では,インタビュー調査を通じて市民の研究資金支援,広報活動,職業研究者との連携,倫理面のサポートという各課題に対応しているプログラムの創設・維持の背景やマネジメント面での特徴を整理した.
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高田 陽
セッションID: 1
発行日: 2024年
公開日: 2025/02/02
会議録・要旨集
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長崎県対馬市の市民大学「対馬グローカル大学」では,ゼミ活動に主眼を置いた運営を行っている.対馬市の域学連携事業を活かし,大学教員のサポートのもと環境・社会,ビジネスの3つのテーマのゼミが開講している.環境ゼミでは,大学教員,地元ナチュラリスト,地元住民が,それぞれ科学知,地域の記録,地域知をもちよりフラットな関係での知の融合と生産が行われている.ビジネスゼミでは,ソーシャルビジネスをテーマに地域課題の原因について考える活動が展開されている.社会ゼミでは,市民(citizen)になることを目標に,地域課題を自分ごととして捉え,要素を分解しながら関わり方を考える活動が行われている.3つのゼミの科学体験として共通する点として,科学的な考え方として,論理性や客観性,理論的妥当性などが特にゼミ教員からのアドバイスとして多い傾向が見られた.
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武貞 真未, 山形 巧哉
セッションID: 1
発行日: 2024年
公開日: 2025/02/02
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本研究では,日本におけるシビックテックでの市民参加型プロジェクトについて,前橋市の「地域アーカイブ」プロジェクトを事例に構成要素を整理する.具体的には,「地域アーカイブ」プロジェクトの担当者へのインタビューをもとに,プロジェクトの構成要素を整理し,市民の科学技術領域における活動を促進していくために必要な体制,仕組み,デザインを検討した.市民参加型の研究プロジェクトや技術活用プロジェクトには,参加方法のデザイン,持続可能な関わりを可能にするための機会提供や価値還元,活動実施後の振り返りや軌道修正などを行うことが必要であることが示唆され,加えてシチズンサイエンスとシビックテックを接続していくためにはより多層的な関わりを実現させるための設計,連携のタイミングや方法の調整,各プロセスに合わせた企画・運営を行うプロジェクトマネジメントなどが必要であることが考えられる.
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岡田 大爾, 井山 慶信, 田島 大輔, 久田 健一郎, CHOOWONG Montri, CHARUSIRI Punya, 王 文能, 巫 ...
セッションID: 1
発行日: 2024年
公開日: 2025/02/02
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本研究グループでは,早期避難を左右する心理を分析し,それに基づいて線状降水帯や土石流・活断層・津波の仕組みを理解し,主体的に避難する感情理性視点からの教育プログラムを開発して,その教育効果を分析する.地震・津波・土石流・洪水等の映像を見て大変怖いと感じた感情からそれだけで終わらせず理性的な対策へとつなげるプログラムを作る取り組みを中心として,国内外の実践例とその評価を行った.本稿では,主に災害リスクを自分ごとと捉えて理性的に避難行動を促す取り組みを世界的視野で各国の長所を互いに学び,短所を克服する.さらに,開発したデータ遠隔収集システムを国内のみならず,モンスーン地帯の被災地でChulalongkorn大とテストし,タイや台湾の大学や国の機関とシステムの運用協議を行った.
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木村 玲欧
セッションID: 1
発行日: 2024年
公開日: 2025/02/02
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本研究では,インターネットモニター調査(有効回答数: n=1599)によって,災害時の避難に関する備えを促進させるための要因を明らかにし,今後,どのような防災教育が効果的であるかについて考察を行った.避難に関して何らかの備えをしていたのは63.0%であり,地域別には大きな違いが見られなかったが,年齢別では具体的な備えについて違いが見られた.具体的な備えの10項目を得点化して重回帰分析を行ったところ,年齢,被災経験,ハザードマップ認知度,災害切迫度,地域交流度の5つの変数について統計的に有意な関連があることがわかった.特にハザードマップ認知度の標準化係数が高く,「地図などで災害時の地域を理解する実践」を基礎として,「備える」「行動する」実践を重点的に行うことで効果的な防災教育が実施できることが考えられる.
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吉本 直弘
セッションID: 1
発行日: 2024年
公開日: 2025/02/02
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中学校理科第2学年「気象とその変化」の「自然の恵みと気象災害」の学習に関連して,「日本の天気」における梅雨前線に関する学習で使用する教材を作成した.梅雨前線がもたらす気象災害の発生メカニズムを理解する上で必要な梅雨前線に関する学習の内容は,「梅雨における日本の天気の特徴」「梅雨前線の位置と範囲」「梅雨前線の形成に関わる気団の性質と広がり」「梅雨前線周辺の風系と梅雨前線への水蒸気の流入」「梅雨前線帯の雲と雨の分布」の 5 項目に整理できた.これらについて平成30年7月豪雨の事例を対象に,生徒が資料から事実を見いだすことができる教材を作成した.生徒は,見いだした事実を基に,気象災害の誘因である集中豪雨がどのようにして発生するのかを捉えることができると期待される.
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竹野 英敏
セッションID: 1
発行日: 2024年
公開日: 2025/02/02
会議録・要旨集
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本研究では,土砂災害に限定し,気象情報や避難情報に基づいて能動的に避難する人と,受動的に避難する人がいることを前提として,受動的に避難する人でも能動的に避難しようと思う防災情報について,質問紙とインタビューによる主観指標,シングルチャンネル脳波計による生理指標から防災情報の効果について明らかにし,今後の防災学習に示唆を与えることを目的とした.その結果,気象庁が提供する防災情報よりも極めて身近に危機感が感じられる映像情報の提供が求められる可能性が高いことが再確認された.今後の教育上の取組は,文字情報と映像情報の相関関係を正確に理解させ,気象庁が提供する文字情報の意味を刷り込む学習が必要と推察された.
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松本 一郎
セッションID: 1
発行日: 2024年
公開日: 2025/02/02
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自然災害列島である日本は,SDGs目標11「住み続けられるまちづくり」で掲げられているように,まちの存続のため,子どもたちを含めたすべての住民・市民の備えと行動力が重要な鍵を握っている.本研究では島根県での実践事例をもとに,防災・減災教育のあり方とその重要性について議論する.安心して暮らせるまちづくりのための防災・減災教育が極めて重要であり,地域全体で防災・減災教育を進める必要がある.まちの防災力を高めるためには行政の力がもちろん必要であるが,防災意識の醸成には学校を中心とした子どもたちを巻き込んだ教育のあり方を提示する必要がある.本研究の結論としては,SDGsを意識した学校現場での魅力的で科学的な教材の開発と実践,および,専門家を巻き込んだ学校や公民館などでの研修・講習の2つが防災・減災意識の醸成にとって有効であることを議論する.
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