近年, 血中NAGと高血圧症ならびに動脈硬化との関連が注目されている。我々はSHRSPを用いて, 血圧上昇にともなう血清および主要動脈壁のNAG活性の変動について検索した。1) SHRSPでは対照群であるWKYに比べ, 血清NAG活性が全般に高値を示し, その程度は成熟期に比して血圧上昇がそれほど著明でない幼若期に, より高値を示した。2) 組織化学的検索では, 幼若期にすでに胸部大動脈の中膜平滑筋細胞にNAG活性によるインジゴの沈着が認められ, 成熟期に入ると中膜の肥厚, 弾性線維の破壊と共にEndothelial ringの内皮細胞内にまで組織NAG活性を広範囲に認めた。3) 成熟期のSHRSPにおける組織NAG活性は, 高血圧性血管病変の著明な, 小・細動脈よりもむしろ, 大型および中型の動脈に顕著に認められた。以上の成績の結果, 血圧上昇をきたすSHRSPの血清NAG活性値は, 正常血圧であるWKYより高値を示し, 高血圧確立期における, 動脈硬化性変化と血管壁中の組織NAG活性の検出が並行することは, これら病変におけるNAG活性の重要性を指摘しているものと思われる。しかし, 動脈壁中のNAGが, 血圧上昇期に認められる血清NAG活性の高値に直接関与しているか否かは不明であり, さらに詳細な検討が必要である。
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