胆道
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13 巻, 2 号
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  • 鈴木 正徳, 遠藤 公人, 海野 倫明, 片寄 友, 及川 昌也, 松野 正紀
    1999 年 13 巻 2 号 p. 81-88
    発行日: 1999/05/31
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    肝門部胆管癌の局所浸潤程度を把握する場合,組織解像慶の上で信頼性の高い診断的横断画像として超音波画像があるが,従来の検査法では周囲の脈管との関連において立体的把握が困難であった.三次元超音波診断装置VOLUSON 530D(MEDISON社)を用いて14例の肝門部胆管癌症例で肝門部の立体的表示を行い,門脈分岐部と癌腫の関係を検討した.門脈分岐部を中心にvolurme dataの取込みを行い,multiplane機構で直交3断面を作製し,通常の二次元超音波診断装置では作製できない肝門部の準前額断像をも作製し,肝門部の腫瘤と大血管との相互関係を検討した.さらに疑似立体画像を作製するマルチ断面表示を用いて詳細な検討を行った.門脈への浸潤程度の診断能は,血管造影所見または術中所見との対比からは,sensitivity,accuracyともに90%,specificityも75%と良好であり,浸潤程度を忠実に描出した.
  • 佐藤 恵美, 田中 淳一, 安藤 秀明, 小山 研二
    1999 年 13 巻 2 号 p. 89-95
    発行日: 1999/05/31
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    最近15年間において,当教室で経験した術後胆管狭窄症例6例の臨床経過を報告し,治療上の問題点を検討した.原疾患は全例が胆嚢結石症で,初回手術は開腹胆嚢摘出術5例,腹腔鏡下胆嚢摘出術1例であった.術中胆道損傷の4例では,Tチューブドレナージが併施されていた.初回手術から修復手術までの期間は,53日から957日で平均382日であった.修復手術に先行して,4例にPTBDが施行された.修復手術は5例に胆管空腸吻合術兼RTBDチョーブ留置が,1例に経皮経肝的胆道拡張術が施行された.ステント留置期間は20日から244日で,平均92.5日,ステント抜去後の転帰は全症例で良好であった.
    治療のポイントは,胆管ドレナージを含む適切な胆管炎の治療と黄疸を長期化させないこと,最終的に胆汁を消化管へ排泄させる経路を確保することである.
  • 塚本 忠司, 広橋 一裕, 久保 正二, 田中 宏, 首藤 太一, 檜垣 一行, 竹村 茂一, 坂田 親治, 葛城 邦浩, 大場 一輝, 上 ...
    1999 年 13 巻 2 号 p. 96-101
    発行日: 1999/05/31
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    過去10年間に,教室で治療した術中胆管損傷症例は6例である.いずれも胆嚢摘出術に伴うもので,腹腔鏡下が2例,開腹下が4例であったが,胆管損傷の診断時期別に損傷部位,修復方法,転帰などを検討した.開腹下胆嚢摘出術時における損傷発生頻度は低下したが,腹腔鏡下の発生頻度は依然として多い.胆嚢摘出術施行時には術中胆管造影を励行し,胆管損傷の早期発見につとめ,術中に適切な修復を行うことが肝要である.しかし,不幸にして術後に発見されたときはinterventional radiologyの発達した今日,経皮的修復も選択肢の一つとなった.
  • 黒川 城司, 桂 巻正, 平田 公一, 古畑 智久, 浦 英樹, 向谷 充宏, 小井戸 一光, 晴山 雅人
    1999 年 13 巻 2 号 p. 102-107
    発行日: 1999/05/31
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    症例は65歳,男性主訴は黄疸.他院で腹部US,CTにて肝内胆管の拡張を認められ,経皮経肝胆管ドレナージが施行された.胆道造影では肝門部で胆管が完全に閉塞し,生検にて癌細胞が証明され肝門部胆管癌と診断された.血管造影では肝動脈に異常所見はなかったが,胆管内超音波検査(IDUS)にて腫瘍に隣接した右肝動脈の内腔に突出像を認め,肝動脈浸潤を疑った.肝左葉・肝尾状葉切除(胆嚢摘出,右肝動脈合併切除兼肝外胆管切除を加えた),右肝管空腸吻合を施行した.右肝動脈においては約1.5cmにわたり腫瘍と連続性を示していたため,合併切除し再建した.病理組織所見では,腫瘍は肝動脈外膜まで浸潤していた.IDUSにおける内腔突出像は,外膜浸潤に付随して生じた線維増生による動脈壁の隆起と考えられた.IDUSは肝動脈の微細な変化を捉えるためには有用な検査法であるが,腫瘍浸潤と線維増生の鑑別は困難と思われた.
  • 上田 順彦, 小西 一朗, 広野 禎介
    1999 年 13 巻 2 号 p. 108-112
    発行日: 1999/05/31
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    胆嚢側に表層進展を伴った原発性胆嚢管癌の1例を報告した.症例は77歳,男性.胆道系の精査を目的に入院した.腹部超音波検査では胆嚢は著明に腫大し,胆嚢頸部から胆嚢管に不整な低エコー像を認めた.直接胆道造影では胆嚢管を中心に約2cmの陰影欠損を認め,胆汁細胞診はclass Vであった.胆嚢管癌の診断にて肝床切除を伴う胆嚢胆管切除,D2リンパ節郭清術を施行した.切除標本の肉眼的所見では,胆嚢管内腔に乳頭状腫瘍を認めた.組織学的には大部分は粘膜内に留まる乳頭状腺癌で,一部で漿膜下層まで浸潤していた.胆嚢は慢性萎縮型胆嚢炎で,胆嚢内面の被覆上皮は大部分が乳頭状増殖を示す上皮内癌や中等度以上の異型上皮であった.このことより,胆嚢側進展については,胆嚢管癌による胆嚢管の閉塞に起因した麗嚢炎の炎症と修復がsubclinica1に繰り返される過程で,胆嚢管癌が胆嚢側に表層進展したものと推察された.
  • 森屋 秀樹
    1999 年 13 巻 2 号 p. 113-117
    発行日: 1999/05/31
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    メトロニダゾール無効例のアメーバ性肝膿瘍に対し,経皮経肝膿瘍ドレナージを施行,肝内胆管との交通を認めた稀な1例を経験した.症例は頻回の海外渡航歴のある,49歳男性.フィリピンにて発熱,下痢で発症し,腹部超音波検査にて肝膿瘍を指摘され,開腹ドレナージを施行された.術後メトロニダゾールを内服するも副作用で中止となり,帰国、全身倦怠感と微熱持続のため,精査入院となった.腹部超音波,CT検査にて肝膿瘍の残存を認め,副作用によりメトロニダゾールは内服不能で混合感染の可能性があるため,経皮経肝膿瘍ドレナージを施行した.血清学的検査でアメーバ抗体陽性であり,膿瘍内容中にEntameba histolyticaを認め,アメーバ性肝膿瘍と診断された.膿瘍造影にて肝内胆管との交通を認めた.ドレナージ中止後,内服治療なしに膿瘍は消失し,胆道系を通してのドレナージの可能性が示唆された.
  • 上田 順彦, 小西 一朗, 広野 禎介
    1999 年 13 巻 2 号 p. 118-123
    発行日: 1999/05/31
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    壁内進展と表層拡大進展の両進展様式を示した,広範囲胆管癌の1例を報告した.症例は62歳男性.肝機能障害の精査を目的に入院した.直接胆道造影では中部胆管に約2cmの狭窄像を認め,その肝側胆管壁には不整像は認めなかったが,乳頭側胆管は下部胆管の中程まで壁の不整像を認めた.中部胆管を主占居部位とする胆管癌と診断し,D3リンパ節郭清を伴う膵頭十二指腸切除術を施行した.肝側胆管切離端(肝門部胆管;Bp)の術中迅速病理診断では乳頭腺癌の進展を認めたが,進展度を考慮し,これ以上の追加切除は断念した.腫瘍の肉眼形態は平坦浸潤型で,組織学的には中部胆管では高分化管状腺癌が漿膜下層まで浸潤していた.乳頭側への水平進展は,下部胆管の中程まではわずかな漿膜下層の浸潤を伴いながら線維筋層全体に浸潤しており,そこから乳頭直前濠では表層進展していた.術後,放射線治療を行い,背部痛は消失し,1年10カ月生存可能であった.
  • 高岡 亮, 久保田 佳嗣, 小倉 眞美, 金 英幸, 山本 伸, 辻 和之, 柳 谷香, 水野 孝子, 井上 恭一
    1999 年 13 巻 2 号 p. 124-127
    発行日: 1999/05/31
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    バルーンカテーテルによる造影が有用であった,重複胆管・重複総肝管に類似した肝外胆管形態異常の1例を経験した.症例は55歳の女性で,胆嚢腫瘍の精査目的で当科を紹介された.腹部CTにて,肝実質へ直接浸潤を示す胆嚢腫瘍が認められた.内視鏡的逆行性膵胆管造影で,膵・胆管合流異常を認めた.バルーンカテーテルによる閉塞性胆管造影で,左右に分岐した胆管が肝門部側で再度合流し,circuitを形成していた.Circuitの肝臓側と右側の胆管から,肝内胆管枝が分岐していた.また,胆嚢管の一部が胆管合流部直下に描出された.重複胆管あるいは重複総肝管と類似点はあるものの,いずれとも一致しない極めて稀な胆管形態異常と診断した.進行胆嚢癌であったため,姑息的バイパス術のみ施行された.
  • 原 均, 森田 真照, 石橋 孝嗣, 左古 昌蔵, 土肥 健彦, 大谷 昌裕, 西口 完二, 岩本 充彦, 谷川 允彦
    1999 年 13 巻 2 号 p. 129-133
    発行日: 1999/05/31
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    症例は,63歳の女性,腹部超音波検査で胆嚢結石症を指摘され,手術希望にて来院した.血清CA19-9が713U/mlであり,悪性を疑い,腹部超音波検査CT検査を行ったが,慢性胆嚢炎を有する胆嚢結石症と診断し,腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した.胆嚢内には混合石を12個認めた.組織学的には慢性胆嚢炎の所見で,悪性所見は認めなかった.胆汁中のCAl9-9は1.98×106U/mlで,胆嚢粘膜の免疫組織染色では,上皮細胞が強陽性に染色された.術後血清CA19-9は,15.8U/mlと正常化した.CA19-9は,膵胆道系の腫瘍マーカーとして診断に有用で広く利用されているが,胆嚢結石症などの良性疾患でも高値を示す症例があり,良悪性の鑑劉診断には各種画像診断を含めた総合的な診断が必要である.
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