胆道
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35 巻, 4 号
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報告(secondary publication)
  • 中沢 貴宏, 神澤 輝実, 岡崎 和一, 川 茂幸, 田妻 進, 西野 隆義, 井上 大, 内藤 格, 渡邉 貴之, 能登原 憲司, 窪田 ...
    2021 年 35 巻 4 号 p. 593-601
    発行日: 2021/10/31
    公開日: 2021/10/31
    ジャーナル フリー

    IgG4関連硬化性胆管炎臨床診断基準2012が作成されてから数年経過し,新たな知見が蓄積されてきた.

    厚生労働省IgG4関連疾患の診断基準並びに診療指針の確立を目指す研究班,厚生労働省難治性肝・胆道疾患に関する調査研究班,日本胆道学会が合同でIgG4関連硬化性胆管炎の専門家によるワーキンググループを組織し,IgG4関連硬化性胆管炎臨床診断基準2020を新たに作成した.

    IgG4関連硬化性胆管炎の診断は以下の6項目により診断する.1)肝内,肝外胆管の狭窄像 2)胆管壁の肥厚像 3)血清学的所見 4)病理学的所見 5)他のIgG4関連疾患の合併 6)ステロイド治療の効果

    新診断基準は一般医および消化器を専門としない医師にも有用と思われる.

総説
  • 能登原 憲司
    2021 年 35 巻 4 号 p. 602-614
    発行日: 2021/10/31
    公開日: 2021/10/31
    ジャーナル フリー

    胆嚢ポリープは病理学的に,非腫瘍性と腫瘍性に分類される.非腫瘍性ポリープの大多数はコレステロールポリープであるが,泡沫細胞が減少して上皮が増生した,あるいは線維化が強くなった場合に過形成ポリープ,線維性ポリープと呼ばれることがある.炎症に起因するポリープには,肉芽組織ポリープ,fibromyoglandular polyp,リンパ濾胞性ポリープが含まれ,fibromyoglandular polypは上皮や間質の形態によっては過形成ポリープ,化生性ポリープ,線維性ポリープと呼ばれる可能性がある.腫瘍性ポリープの中には幽門腺腺腫,intracystic papillary neoplasm(ICPN)が含まれる.幽門腺腺腫はユニークな形態を示す腫瘍で,胆道系では胆嚢に好発する.ICPNは膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)の胆嚢カウンターパートとして報告されたが,その組織像はIPMNと異なる点が多く,ポリープ型胆嚢癌を包括する可能性があることに注意が必要である.

  • 大塚 隆生, 蔵原 弘, 伊地知 徹也, 山崎 洋一, 又木 雄弘
    2021 年 35 巻 4 号 p. 615-621
    発行日: 2021/10/31
    公開日: 2021/10/31
    ジャーナル フリー

    胆嚢結石症などの良性胆嚢疾患に対する標準治療は腹腔鏡下胆嚢摘出術であり,困難例に対する回避手術もガイドラインの整備により周知され安全に行われるようになってきた.一方,他の胆道疾患に対する鏡視下手術は,現行の保険診療制度からみると他領域に比べ遅れを取っている.原因として,1.胆道悪性腫瘍手術は開腹でも手術難度が高く,鏡視下手術導入への敷居が高いこと,2.ERCPやEUSによるインターベンション治療の技術が高くなり,外科的治療を要する機会が減ってきたこと,3.頻度の低い先天性疾患への手術は一部の施設でしか行われず,一般診療としての普及が困難であること,などが挙げられる.保険収載されている腹腔鏡下手術のロボット支援手術への適用拡大と,比較的ステージの早い悪性胆道腫瘍に対する鏡視下手術の保険収載が当座の課題であると思われる.

症例報告
  • 赤尾 潤一, 高山 敬子, 伊藤 泰斗, 田原 純子, 清水 京子, 徳重 克年
    2021 年 35 巻 4 号 p. 622-628
    発行日: 2021/10/31
    公開日: 2021/10/31
    ジャーナル フリー

    症例は80代,男性.201X年8月に肝胆道系酵素の上昇,高IgG4血症,びまん性膵腫大,下部胆管の高度狭窄,肝門部胆管の軽度狭窄を認め,自己免疫性膵炎,IgG4関連硬化性胆管炎と診断した.下部胆管狭窄に対して胆管ステントを留置しステロイドでの加療を開始した.治療開始し約5カ月後に施行したMRCPにて膵腫大の改善,膵管狭細像のほか,下部胆管狭窄の改善を認めた.治療開始し1年半後に,再度肝胆道系酵素の上昇を認め,精査加療目的に入院となった.ERCでは下部胆管の狭窄は認めず,肝門部胆管の高度狭窄を認めた.胆管ステントを左右肝内胆管に留置しステロイドを増量した.その後,経過観察中であるが現時点で再燃は認めていない.同一症例で異時性,異所性に胆管狭窄を認めた自己免疫性膵炎,IgG4関連胆管炎の報告は少なく,若干の文献的考察を加えて報告する.

  • 小嶋 聡生, 室屋 大輔, 緑川 隆太, 谷脇 慎一, 福冨 章悟, 後藤 祐一, 佐藤 寿洋, 川原 隆一, 酒井 久宗, 久下 亨, 岡 ...
    2021 年 35 巻 4 号 p. 629-635
    発行日: 2021/10/31
    公開日: 2021/10/31
    ジャーナル フリー

    肝門部胆管の高度狭窄を伴う肝切後の胆汁漏に対してERCPを併用する事でPTBDを内瘻化できた症例を経験した.57歳女性.前医で肝血管腫に対して肝中央二区域切除術を施行され,術後11カ月で遅発性胆汁漏を呈した.治療に難渋し当院へ転院となった.B3,B6よりPTBDを施行したが,それぞれ総肝管との胆汁の交通を認めず,左右肝管の狭窄を伴う非交通性の胆汁漏であった.上流側(PTBDルート),下流側(経乳頭内視鏡的ルート)のそれぞれよりbiloma腔へガイドワイヤーを貫通させ,同腔内でガイドワイヤーを把持し総胆管へ牽引することで,PTBDルートからのガイドワイヤーを総胆管へ誘導することができた.ガイドワイヤーに沿ってチューブを挿入し内瘻化に成功した.

    本法はRendezvous法を応用した手技であり,肝門部胆管の高度狭窄を伴う胆汁漏に対してPTBDを安全に内瘻化することができた.

  • 柏﨑 正樹, 小松 久晃, 島津 宏樹, 伏見 博彰
    2021 年 35 巻 4 号 p. 636-642
    発行日: 2021/10/31
    公開日: 2021/10/31
    ジャーナル フリー

    症例は68歳女性.精査にて左側浸潤優位のBismuth IV型肝門部領域胆管癌と診断された.門脈左枝は閉塞し肝左葉が萎縮しており,右肝動脈系では前区域枝に神経叢浸潤陽性と診断した.予測残肝容積からは左葉・尾状葉切除の適応であったが,前区域動脈枝を合併切除すると再建は技術的に困難で非再建では前区域の虚血が危惧された.前区域動脈枝根部から浸潤陽性部位に対しコイル塞栓術を施行後に肝左葉・尾状葉切除,肝外胆管切除,門脈合併切除再建,右肝動脈前区域枝合併切除術を施行した.病理診断はpT2bN0,pStage II,R0であった.術後縫合不全を合併したが保存的に軽快した.術後4年5カ月経過したが無再発で外来通院中である.術前に前区域動脈枝コイル塞栓術で肝内側副血行路の発達を図った上で,左肝切除で前区域動脈枝を合併切除し非再建とする術式で安全にR0切除が可能であった1例を経験したので報告する.

  • 清水 雄大, 佐藤 賢, 比佐 岳史, 𠮷成 夫希子, 阿部 貴紘, 松井 綾子, 善如寺 暖, 星 恒輝, 石田 克敏, 浦岡 俊夫, ...
    2021 年 35 巻 4 号 p. 643-650
    発行日: 2021/10/31
    公開日: 2021/10/31
    ジャーナル フリー

    症例は70歳女性.父に胆道癌,妹に大腸癌の家族歴あり.X年2月,肝左葉切除,肝外胆管切除術を行い,肝内胆管癌pT3N0M0:stage IIIB(原発性肝癌取扱い規約第6版),組織学的剥離面陽性の診断で,テガフール・ギメラシル・オテラシル(S-1)補助化学療法を行った.X+1年4月,多発肺転移再発を認め,ゲムシタビン+シスプラチン療法を17コース行い,痺れのためゲムシタビン+S-1療法に切り替え,20コース行った.肺転移が増大傾向となり,手術検体にて高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)が判明したため,X+3年5月よりペムブロリズマブに変更した.4コース施行後のCTで腫瘍は縮小し,部分奏功の状態である.胆道癌はLynch症候群関連腫瘍の一種とされるもののMSI-Hを有する割合は2%程度とされ稀であるが,本例のように有効な例も見られるため積極的に検査を考慮すべきである.

  • 織田 崇志, 松本 和幸, 加藤 博也, 吉田 龍一, 西田 賢司, 藤井 佑樹, 山崎 辰洋, 友田 健, 堀口 繁, 堤 康一郎, 岡田 ...
    2021 年 35 巻 4 号 p. 651-659
    発行日: 2021/10/31
    公開日: 2021/10/31
    ジャーナル フリー

    症例は45歳,男性.下痢(7~8回/日)による脱水で当院受診となった.造影CT検査で肝左葉に直径約20cmのだるま状の嚢胞性腫瘤を認め,内部に淡く造影される乳頭状の充実部を伴っていた.内視鏡では乳頭開口部から漿液性の液体が大量に流出しており,胆管造影では腫瘤とB2との交通を認めた.明らかな粘液の存在は認めなかったが,胆管内乳頭状腫瘍(IPNB)を疑い,肝拡大左葉切除術を施行した.病理所見は嚢状に拡張した胆管内に,立方状から低円柱状の異型上皮が主として腺管状に増殖する腫瘍であった.免疫染色はMUC1陰性,MUC2陰性,MUC5AC一部陽性,MUC6陽性であり,増殖形態と免疫染色からIPNBや胆管内管状乳頭状腫瘍とも合致せず,肝内胆管由来の嚢胞内充実性腫瘍と診断した.術後に下痢症状は改善した.腫瘍が大量に漿液性の分泌物を産生し,胆管を通じて,乳頭から排出された事が下痢の原因であったと考える.

  • 牛島 知之, 岡部 義信, 島松 裕, 平井 真吾, 安元 真希子, 緑川 隆太, 小嶋 聡生, 久下 亨, 栁 克司, 鳥村 拓司
    2021 年 35 巻 4 号 p. 660-667
    発行日: 2021/10/31
    公開日: 2021/10/31
    ジャーナル フリー

    症例は73歳女性.切除不能局所進行膵頭部癌の診断で,plastic stent(PS)による経乳頭的胆道ドレナージ後に,化学放射線療法および化学療法を継続していた.3カ月目にself-expandable metallic stent(SEMS)に入れ替えたが,約1年後にSEMSが十二指腸内に逸脱したため,逸脱部分をAPCでトリミングし,SEMS内にPSを留置した.その2年6カ月後に胆管炎で緊急入院となり,緊急ERCで十二指腸下行部の主乳頭部口側に胆管十二指腸瘻と同部に遺残していたSEMSの露出をみた.今回,我々は経乳頭的に長期留置したSEMSを基軸に胆管十二指腸瘻を来した膵頭部癌の1例を経験した.SEMS長期留置による胆管粘膜障害や集学的治療による腫瘍縮小により肝十二指腸間膜が短縮され,SEMSが胆管および十二指腸壁を浸食,貫通したことが考えられた.若干の文献的考察を加え報告する.

  • 林 宏樹, 横山 健介, 菅野 敦, 長井 洋樹, 池田 恵理子, 沼尾 規且, 牛尾 純, 天野 雄介, 笹沼 英紀, 玉田 喜一, 福嶋 ...
    2021 年 35 巻 4 号 p. 668-677
    発行日: 2021/10/31
    公開日: 2021/10/31
    ジャーナル フリー

    症例は72歳男性.膀胱癌術後の経過観察目的に施行した造影CTにて胆嚢底部の壁肥厚が指摘され当科を受診した.造影CTやMRIでは胆嚢底部に造影効果を示す隆起性病変と連続する壁肥厚が認められた.EUSでは,広基性の隆起性病変における外側高エコー層の不整が認められた.ERCP時の胆汁細胞診から腺癌を認め,拡大胆嚢摘出術が施行された.肉眼所見では大小不同の顆粒状粘膜を伴う壁肥厚性病変と,隆起性病変の一部と考えられる脱落した組織片が確認された.病理所見では肥厚した胆嚢壁と一致して管状腺癌と神経内分泌癌の所見が認められ,混合型神経内分泌癌と診断した.また脱落した組織には腺癌と肉腫が混在していた.胆嚢における腺癌,神経内分泌癌,肉腫が混ずる腫瘍は稀と考えられた.神経内分泌癌と癌肉腫の進展様式のまとめから,混合する腫瘍成分の影響により隆起性病変と壁肥厚性病変が混在する特異的な形態を呈した可能性が示唆された.

  • 加藤 真司, 山口 直哉, 日比野 貴文, 佐竹 立成, 加藤 祐一郎
    2021 年 35 巻 4 号 p. 678-684
    発行日: 2021/10/31
    公開日: 2021/10/31
    ジャーナル フリー

    症例は70歳男性.67歳時に胃癌のため幽門側胃切除術を施行された.組織型は低分化腺癌であり,pT3N0M0,stage IIIAであった.S-1内服による術後補助化学療法を施行中に副作用の下痢症とヘモグロビン低下を認め,入院し精査加療行ったところ胆嚢腫瘍を認めた.全身検索を行い,胆嚢以外の病変は認めず,PET-CTでも同部位のFDGの著明な取り込みを認めた.術前診断では胆嚢癌と診断し,リンパ節郭清を伴う拡大胆嚢摘出術を施行した.病理検査では,漿膜下組織に濃染した核を有する細胞の小集簇巣を認め,免疫染色のプロファイルも胃癌と類似しており,胃癌胆嚢転移と診断した.術後は2年6カ月無再発で経過している.胆嚢転移は非常に予後不良であるが,非治癒因子がなく,根治切除が可能な症例においては外科的切除で長期予後を見込める可能性があると考えられる.術後2年6カ月生存している本例は,報告されている中では本邦最長例である.

  • 柴田 昌幸, 土屋 昭彦, 西川 稿, 山口 智央, 三科 雅子, 明石 雅博, 高森 頼雪, 滝川 一, 山中 正己
    2021 年 35 巻 4 号 p. 685-690
    発行日: 2021/10/31
    公開日: 2021/10/31
    ジャーナル フリー

    十二指腸球部に胆石が嵌頓し胃内容物排泄障害を来した病態はBouveret症候群と呼称されている.胆石は巨大であることが多く,内視鏡的処置での嵌頓解除が困難な場合があり,外科手術により治療した報告が多い.今回我々は胆道拡張用カテーテルを外筒にして内視鏡的電気水圧衝撃波砕石術が容易となった症例を経験した.77歳女性.1カ月前からの食欲不振・食後嘔吐で精査目的に当科入院.CTで十二指腸球部に35mm大の巨大結石と胆嚢と十二指腸の瘻孔形成が疑われ入院となった.内視鏡検査で十二指腸球部に結石が嵌頓している所見を認め,把持を試みたが全く動かせなかった.電気水圧衝撃波砕石術を試みたが,プローブを固定して結石に押し当てることが困難であった.そこで胆道拡張用カテーテルの先端を切断してプローブの外筒とし,さらに外筒から生理食塩水を流すことで砕石が容易となった.内視鏡治療の成功率を上げる可能性があり報告する.

胆道専門医講座 胆管結石治療up-to-date
  • 梅澤 昭子, 春田 英律
    2021 年 35 巻 4 号 p. 691-700
    発行日: 2021/10/31
    公開日: 2021/10/31
    ジャーナル フリー

    胆管結石に対する治療はアプローチの観点から,1)腹腔鏡下胆管結石除去術+胆嚢摘出術(single-stage),2)開腹下胆管結石除去術+胆嚢摘出術(single-stage),3)内視鏡による胆管結石除去+(外科的)胆嚢摘出術(two-stage)の三法に大別され,two-stageによる治療法が最も広く行われている.治療効率や低侵襲性の観点からの腹腔鏡手術,複雑な症例や難治性の症例に対する開腹手術は,症例数が少ないが意義は大きい.

    上記のアプローチ法に加えて使用する器械など多彩な選択肢の中から,適切な治療法を選択していくことになる.本論では,腹腔鏡手術によるsingle-stageの手技を中心に胆管結石の外科治療を述べる.

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