欧米においては,PSCの約80%に炎症性腸疾患が合併すると報告されているが,本邦における合併率は低いとされていた.しかし,PSCの病態に対する理解の深まりとともに,本邦における腸管病変の合併率も増加しつつある.さらに,本邦における合併腸疾患には,欧米のものと比べていくつかの相違点があることも報告されている.今回我々は,PSCに合併した右側結腸優位の分類不能型腸炎が,生体部分肝移植後に消失した症例を経験したので報告する.症例は21歳時(平成3年)にPSCと診断され,大腸内視鏡検査にて回腸末端のびらん,上行結腸のびらんおよびハウストラの不明瞭化を認めた.10年の経過観察の間に,3回の大腸内視鏡検査を行なったが,腸管病変に変化はみられなかった,また,経過中に腸炎症状を訴えることもなかった.その後,平成13年に肝不全のために生体部分肝移植を施行した.移植後の経過は順調であり,肝機能も正常化した.さらに,移植後14カ月目に大腸内視鏡検査を施行したところ,腸管病変は完全に消失していた.生体部分肝移植後の合併腸疾患の経過に関する報告は少なく,貴重な症例と考え報告する.
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