胆道
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36 巻, 4 号
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総説
  • 岩下 拓司, 上村 真也, 清水 雅仁
    2022 年 36 巻 4 号 p. 499-508
    発行日: 2022/10/31
    公開日: 2022/10/31
    ジャーナル フリー

    術後再建腸管症例の良性胆管狭窄は,解剖学的に胆管開口部まで内視鏡を挿入することが容易ではないことから,経皮的処置や外科的処置が行われてきた.バルーン内視鏡ERCP(BE-ERCP)の登場により,術後再建腸管症例においても,より確実に処置を行うことが可能となった.超音波内視鏡下胆管ドレナージ(EUS-BD)は,ERCP不成功例の悪性胆道閉塞に対するsalvage治療として発展してきたが,近年では良性胆管狭窄にもその適応を広げている.本総説では,術後再建腸管症例の良性胆管狭窄に対するEndoscopic Interventionとして,BE-ERCPとEUS-BDを中心にその治療の現状について報告する.

症例報告
  • 高橋 幸治, 大山 広, 三方 林太郎, 菅 元泰, 杉山 晴俊, 原田 桜子, 加藤 直也
    2022 年 36 巻 4 号 p. 509-514
    発行日: 2022/10/31
    公開日: 2022/10/31
    ジャーナル フリー
    電子付録

    症例は77歳の男性.当院を受診する12カ月前に急性胆管炎を発症し,CTで遠位胆管末端の隆起を認めた.ERCPで内視鏡的乳頭括約筋切開術を行って胆管プラスチックステントを留置した.遠位胆管末端の隆起には病理学的な悪性所見を認めなかった.約3カ月毎にERCPを行い,胆管ステントの交換と遠位胆管末端の隆起部からの生検を行っていたが,患者本人の希望で当院受診の約1カ月前に胆管ステントを抜去し,精査目的で当院へ紹介となった.造影CTとMRCPでは遠位胆管末端に長径10mmの隆起を認め,EUSでは遠位胆管末端の隆起は経時的に形態変化をする様子が観察された.これらの所見から,腫瘍ではなくPapillary foldsと判断し,Papillary foldsの突出を伴う胆道型乳頭括約筋機能不全と診断した.胆管ステントの留置をしない状態で経過をみているが,血中肝胆道系酵素上昇や黄疸の出現なく経過している.

  • 佐藤 辰宣, 川口 真矢, 金本 秀行, 松田 昌範, 寺田 修三, 遠藤 伸也, 高木 哲彦, 徳田 智史, 新井 一守
    2022 年 36 巻 4 号 p. 515-523
    発行日: 2022/10/31
    公開日: 2022/10/31
    ジャーナル フリー

    症例は78歳,男性.肝外側区域の嚢胞性腫瘤の精査目的に受診した.画像所見では肝外側区域に造影効果を有する結節を伴う多房性嚢胞性腫瘤を認めた.胆管造影では嚢胞性腫瘤とB3胆管枝との交通が確認された.胆管内乳頭状腫瘍(IPNB)と診断し,腹腔鏡下肝外側区域切除術を施行した.病理組織学的に腫瘍は主として粘液産生性を有する異型円柱上皮の乳頭状増殖巣からなり,胆管内を裏打ちしていた.多くが中等度程度の細胞異型で,嚢胞壁のごく一部にのみ浸潤しており,IPNB由来浸潤癌と最終診断した.IPNBについては,亜分類法や乳頭型胆管癌との鑑別など,現在もその病態については議論が行われている.本症例は典型的なIPNBの画像所見を呈し,病理組織学的にもIPNBとして矛盾しない.その中で嚢胞壁内に微小浸潤部を有し,浸潤癌への進展過程を捉えた希少な症例と考えられた.

  • 川島 万平, 吉岡 正人, 松下 晃, 清水 哲也, 神田 知洋, 上田 純志, 入江 利幸, 吉田 寛
    2022 年 36 巻 4 号 p. 524-530
    発行日: 2022/10/31
    公開日: 2022/10/31
    ジャーナル フリー

    症例は76歳男性で心窩部痛を主訴に近医を受診した.上部消化管内視鏡検査を施行したところ,前庭部大彎に粘膜下腫瘍様の隆起性病変を認めた.採血上炎症反応高値であり,CT,MRI上では胆嚢底部に不整な壁肥厚を認め肝実質との境界が不明瞭であり隣接する胃壁の肥厚を認めた.胆嚢癌の可能性を否定できず開腹手術の方針とした.胆嚢周囲は大網,横行結腸,胃が一塊になっていた.瘻孔形成部と思われる部位は強固に癒着していた.胆嚢床切除術を先行し再度瘻孔部の剥離を試みたが剥離は困難であったため幽門側胃切除術も施行した.術中迅速診断で明らかな悪性所見は認めなかったためBillrothII法で再建し手術終了とした.病理診断は黄色肉芽腫性胆嚢炎であった.

  • 戒能 美雪, 戒能 聖治, 近藤 智子
    2022 年 36 巻 4 号 p. 531-536
    発行日: 2022/10/31
    公開日: 2022/10/31
    ジャーナル フリー

    症例は56歳男性.黄疸のため当科へ入院した.画像診断で胆囊壁の高度肥厚,多発肝転移,多発リンパ節転移を認め,進行胆囊癌が疑われた.ERCPでは膵管合流型の膵・胆管合流異常を認め,胆嚢は造影されず,肝門部胆管から遠位胆管に高度狭窄を認めた.胆汁細胞診および胆管ブラシ細胞診でN/C比の高い異型細胞の「木目込み細工様」,「Indian file状」の集塊を認め,神経内分泌細胞癌(Neuroendocrine carcinoma:NEC)が疑われた.このため超音波下肝腫瘍生検を行い,NECと診断した.CBDCA,VP-16併用療法を施行し,約3カ月間SDであった.本症例はCEA,CA19-9高値を伴い,腺癌成分を併存する可能性はあるが,進行例であっても胆汁細胞診を含めて病理学的検索を積極的に行うことが化学療法の選択につながると考えられた.

  • 林 千恵, 酒井 健司, 俊山 礼志, 森 清, 後藤 邦仁
    2022 年 36 巻 4 号 p. 537-543
    発行日: 2022/10/31
    公開日: 2022/10/31
    ジャーナル フリー

    症例は80歳男性.右腎細胞癌に対して右腎摘出術を施行され,その16年後に腎細胞癌肺転移に対して肺切除が施行された.肺切除の術後経過観察中,胆嚢内に経時的に増大する腫瘤が指摘され,腎摘出後17年目に精査加療目的に当科を紹介受診された.腹部USでは胆嚢体部に18mm大の内部に血流のある有茎性腫瘤病変を認めた.腹部単純CTでは胆嚢体部に14mm大の隆起性病変を認めた.画像診断より胆嚢腫瘍と診断し,腹腔鏡下胆嚢摘出術および12cリンパ節サンプリングを施行した.病理組織学的検査にて腎細胞癌(淡明細胞型)胆嚢転移の診断となった.術後8カ月の時点で再発を認めず,外来経過観察中である.腎細胞癌胆嚢転移は稀であるが,腎細胞癌の既往がある患者で胆嚢腫瘍を認めた際は胆嚢転移を鑑別疾患として挙げ,根治切除が期待される症例では外科切除が考慮される.

  • 黒木 直美, 谷口 正次, 後藤 崇, 内山 尚美, 黒木 暢一, 山下 篤, 小板 裕之, 臼間 康博
    2022 年 36 巻 4 号 p. 544-552
    発行日: 2022/10/31
    公開日: 2022/10/31
    ジャーナル フリー

    症例は70歳,男性.総肝動脈と門脈本幹に浸潤のある局所進行切除不能胆嚢癌に対し,GC療法7コース施行後にconversion surgeryとしてS4a切除を伴う拡大右肝切除・尾状葉切除,肝外胆管切除再建を施行した.その後,2度の肺転移再発がみられ,1度目は胸腔鏡下肺部分切除,2度目は化学療法(GC療法4コース,gemcitabin単剤療法3コース)後に胸腔鏡下肺部分切除を行い,初回治療開始後6年現在,無再発生存中である.局所進行切除不能胆嚢癌の中には,化学療法により切除可能になるものが少なからず存在する.また胆嚢癌肺転移症例に対しては,無病期間が2~3年以上であること,原発巣がpN0であることなどの一定の条件を満たし,かつThomfordらの基準を順守して肺切除を行えば,長期生存を得られる可能性がある.

  • 藤原 優太, 林 泰寛, 所 智和, 倉田 徹, 天谷 公司
    2022 年 36 巻 4 号 p. 553-557
    発行日: 2022/10/31
    公開日: 2022/10/31
    ジャーナル フリー

    症例は70歳代の男性.右季肋部痛を主訴に受診した近医にて右肝被膜下血腫と急性胆嚢炎を疑われ当科紹介となった.腹部造影CTでは胆嚢は腫大緊満しており,頸部に胆嚢結石を示唆する高吸収域を認めた.また,肝被膜下に液体貯留像を認め,背側には高吸収な液体成分が鏡面像を示していた.これらの所見から急性壊疽性胆嚢炎による肝被膜下の特発性胆汁腫に血腫形成を伴ったものと診断し,緊急手術を施行した.胆嚢摘除を行った後に肝被膜を胆汁腫に沿って切開し,内腔洗浄とともに,isolated arteryに対する止血処置として胆汁腫内腔の肝実質表面に対する焼灼止血を行った.胆嚢を胆汁の漏出点とする肝被膜下特発性胆汁腫は比較的稀である.その治療においては,isolated arteryの存在にも注意を払う必要があり,考察とともに報告する.

Video Reports
胆道専門医講座 胆道癌治療の最近の進歩
  • 吉岡 靖生, 浅利 崇生, 村山 重行, 西村 哲夫, 笹平 直樹, 髙橋 祐
    2022 年 36 巻 4 号 p. 565-576
    発行日: 2022/10/31
    公開日: 2022/10/31
    ジャーナル フリー

    胆道癌治療において放射線治療(RT)の果たす役割は現状では限定的である.術後RTあるいは切除不能例に対するRTの,他の治療法に対する優越性は明らかでなく,いずれも薬物療法単独が現在の標準治療と思われる.一方,技術革新を背景としたRTの発展は著しい.強度変調放射線治療(IMRT),体幹部定位放射線治療(SBRT),粒子線治療(陽子線治療・重粒子線治療)がその代表で,他の癌腫においては手術と同程度の成績を上げているものもある.これらの新規RTに共通するのは線量集中性の高さであり,正常肝や十二指腸など周囲正常臓器への線量を抑えながら,腫瘍への線量を増加させることができる.すでに胆道癌治療への応用も始まっている.新規RTは過去のRTとは全く異なるレベルに達しており,薬物療法と組み合わせた新しいエビデンスの創出が必要である.そのために,外科,内科,放射線科の相互理解と連携が重要である.

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