胆道
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37 巻, 4 号
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原著
  • 小林 聖幸, 鎌田 英紀, 中林 良太, 小野 正大, 河野 寿明, 波間 大輔, 藤田 直樹, 山名 浩喜, 徳毛 誠樹, 國土 泰孝
    2023 年 37 巻 4 号 p. 747-753
    発行日: 2023/10/31
    公開日: 2023/10/31
    ジャーナル 認証あり

    近年,内視鏡的経乳頭的胆嚢ドレナージ術は急性胆嚢炎に対して行われるドレナージ方法の一つとして普及しているが,bridge to surgery(BTS)におけるドレナージとしての報告は少ない.今回,急性胆嚢炎のBTSとして内視鏡的経乳頭的胆嚢ステント留置術(EGBS)を行った20例を経験したため報告する.166例の急性胆嚢炎症例の内,BTSとしてEGBSを施行した20例を対象とし,有用性と安全性について検討した.EGBSの手技的成功率は100%(20/20例),手技関連偶発症は5%(1/20例)に認め,軽症急性膵炎であり,保存的加療で改善した.術前待機期間のステントトラブルは5%(1/20例)にみられ,経乳頭的にステントを交換し,その後胆嚢摘出術が施行された.急性胆嚢炎診断時に早期胆嚢摘出術が困難な症例に対して,EGBSはBTSにおけるドレナージ法として有用かつ安全な治療法と考えられた.

  • 石川 卓哉, 山雄 健太郎, 水谷 泰之, 飯田 忠, 植月 康太, 宜保 憲明, 片岡 邦夫, 森 裕, 高田 善久, 青井 広典, 南 ...
    2023 年 37 巻 4 号 p. 754-762
    発行日: 2023/10/31
    公開日: 2023/10/31
    ジャーナル 認証あり

    1型自己免疫性膵炎(AIP)159例について胆管病変の有無による臨床像を比較し,長期予後を検討した.89例(56%)に胆管病変を認め,胆管病変合併例ではCA19-9が有意に高く(P<0.001),ステロイド投与率が有意に高かった(P=0.001).中央値42.9カ月の観察期間で再燃を49例(30.8%)に認め,膵内胆管より上流まで狭窄・壁肥厚を認めた症例で有意に累積再燃率が高く(3年:24% vs. 37.1%,P<0.001),2回以上再燃する率も高かった(5.1% vs. 19.5%,P=0.01).再燃例の多くはステロイド増量により改善したが,肝内胆管まで狭窄・拡張を認めた2例でステロイド依存性となり,アザチオプリンを併用した.膵内胆管より上流まで狭窄・壁肥厚を認める1型AIPでは再燃を繰り返す率が高く,特に肝内胆管まで狭窄・拡張を認める症例ではステロイド依存性となり得る.

総説
  • 菅野 良秀, 越田 真介, 小川 貴央, 楠瀬 寛顕, 酒井 利隆, 伊藤 啓
    2023 年 37 巻 4 号 p. 763-774
    発行日: 2023/10/31
    公開日: 2023/10/31
    ジャーナル 認証あり

    経口胆道鏡は,経口的に挿入された内視鏡で胆道内を観察する手法である.胆道狭窄の良悪性診断能,肝外胆管癌の水平進展度診断能は,画質の改善とともに向上し,感度は十分に高くなった.胆道鏡下生検は特異度が高いため,観察と生検を併用することによって高い正診率が得られる.胆道鏡下結石破砕術では,独立した送水チャンネルを有するスコープの登場によって治療時間が短縮し,結石除去成功率が向上した.経口胆道鏡は様々な手法に応用され,EUS下に作成したルートからのインターベンションに使用可能であるほか,種々のトラブルシューティングにも用いられている.

  • 髙畑 俊一, 田中 雅夫
    2023 年 37 巻 4 号 p. 775-786
    発行日: 2023/10/31
    公開日: 2023/10/31
    ジャーナル 認証あり

    十二指腸乳頭括約筋Sphincter of Oddi(SO)は胆汁の流出を制御し,胆管・膵管への逆流を防止する.食後には胆嚢収縮にあわせて弛緩し胆汁を流出させ,空腹期には基礎圧と律動的収縮で胆汁の胆嚢への流入を促進しつつ,一部の胆汁を周期的に排出させ腸肝循環を維持する.SO機能異常はSO dysfunction(SOD)や胆石の発生や再発に関係している.SODの診断には内視鏡下のSO manometry(SOM)が重要視されるが,より安全で診断能の高い検査法が切望される.胆管結石の治療では乳頭機能を温存する乳頭拡張術や腹腔鏡下胆管切石術が有望だが,普及には膵炎の克服や器具の改良などが課題である.Ruggero Oddiによる発見から130年が過ぎその生理機能の多くが解明されたが,SO自体がpumpなのかresistorなのかという根本的な疑問など一部未解決の問題もあり興味は尽きない.

症例報告
  • 佐藤 駿介, 高橋 誠, 一瀬 諒紀, 船越 薫子, 林 達也, 森田 泰弘, 岡田 晴香, 板垣 信吾, 大塚 将之
    2023 年 37 巻 4 号 p. 787-795
    発行日: 2023/10/31
    公開日: 2023/10/31
    ジャーナル 認証あり

    3例の同時性多発胆嚢癌を経験した.

    症例1:81歳女性,胆石経過観察中に胆嚢腫瘍を認め腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行.切除標本中の2病変はいずれも腺癌であった.追加切除で胆嚢床切除,リンパ節郭清を施行し癌遺残無くT2aN0M0 Stage IIAであった.

    症例2:76歳男性.腹痛精査で胆嚢腫瘍を認め手術施行.横行結腸と十二指腸に浸潤あり,胆嚢床切除,亜全胃温存膵頭十二指腸切除,横行結腸部分切除術を施行.切除標本中の2病変はいずれも腺癌でT3a N0 M0 Stage IIIAであった.

    症例3:92歳女性.腹痛精査で胆嚢腫瘍を認め高齢のため胆嚢摘出術施行.切除標本に4病変を認め1病変は腺癌とNEC(神経内分泌癌)が混在していた.3病変は腺癌でT2bN1M0 Stage IIIBであった.

    多発胆嚢癌,特にNECとの併発は非常に稀であり,文献的考察を加え報告する.

  • 加納 佑一, 松原 浩, 鈴木 博貴
    2023 年 37 巻 4 号 p. 796-802
    発行日: 2023/10/31
    公開日: 2023/10/31
    ジャーナル 認証あり

    症例は70歳代女性.食思不振,右季肋部痛を主訴に当院を受診した.血液検査にて好酸球分画高値,血清IgG4高値,肝胆道系酵素上昇を認めた.経腹壁超音波検査,超音波内視鏡検査,管腔内超音波検査では総胆管のびまん性で均一な壁肥厚を認め,造影CT検査では肝門部領域の胆管狭窄に加え,両側鎖骨上,縦隔,両側肺門部,肝十二指腸間膜,腹部大動脈周囲のリンパ節腫大を認めた.経乳頭的胆管生検と縦隔リンパ節に対する超音波内視鏡下穿刺吸引法の病理結果から,胆管病変を好酸球性胆管炎,全身性リンパ節腫大をIgG4関連リンパ節症と診断した.プレドニゾロン30mgで治療を開始し,いずれも改善が得られた.

  • 山﨑 吉人, 野口 正朗, 宮下 春菜, 秋田 義博, 中野 真範, 猿田 雅之
    2023 年 37 巻 4 号 p. 803-810
    発行日: 2023/10/31
    公開日: 2023/10/31
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    症例は48歳女性.食後に増悪する心窩部痛の精査目的に入院した.肝胆道系酵素上昇の合併から,総胆管の器質的な閉塞を疑い,各種画像検査を施行するも異常は指摘できなかった.十二指腸乳頭機能不全や胆嚢運動機能異常症などの胆道の機能的疾患を疑い胆道シンチグラフィを施行した.総胆管から消化管への薬剤排泄遅延はなかったものの胆嚢の収縮不全と肝内胆汁うっ滞を認め,胆嚢運動機能異常症と原発性胆汁性胆管炎(PBC)の進行の併発と診断した.胆道シンチグラフィを用いて胆嚢運動機能異常症とPBCの進行を同時に診断した例は極めて稀と考えられたため報告する.

  • 牧 匠, 澁川 悟朗, 中島 勇貴, 上田 健太, 山部 茜子, 星 恒輝, 吉田 栄継, 佐藤 愛, 入澤 篤志
    2023 年 37 巻 4 号 p. 811-819
    発行日: 2023/10/31
    公開日: 2023/10/31
    ジャーナル 認証あり

    症例は60歳台の男性で,黄疸を主訴に当院紹介受診した.腹部造影CTで肝門部の腫瘍性病変を認め,ERCPで肝門部領域胆管に高度狭窄があり,擦過・胆汁細胞診はClass Vであった.肝門部領域胆管癌cT4aN0M0 cStage IVAの診断で,gemcitabin,cisplatin,S-1(GCS)併用療法を開始した.4コース終了後の腹部造影CTでは肝門部腫瘍は縮小したが,14コース後の透視下胆管生検でadenocarcinomaが検出された.17コース後にGrade4の好中球・血小板減少が出現したため,S-1単独療法へ変更した.GCS療法導入後28カ月での,胆道鏡直視下胆管生検では陰性であったことから,総合的にCRを維持していると考え化学療法を中止し,その後4年9カ月経過した現在もCRを維持している.

  • 吉原 絹子, 池田 貴裕, 岡本 辰哉, 北里 周, 三浦 史郎, 伊東 正博, 黒木 保
    2023 年 37 巻 4 号 p. 820-824
    発行日: 2023/10/31
    公開日: 2023/10/31
    ジャーナル 認証あり

    症例は44歳男性.原発性硬化性胆管炎(primary sclerosing cholangitis:PSC),潰瘍性大腸炎に対し当院内科で経過観察中に胆嚢癌を疑われ手術目的に当科紹介となった.胆嚢床切除術及びリンパ節郭清術を施行.病理所見では漿膜浸潤を伴う高分化腺癌を認め,背景の粘膜面には胆道上皮腫瘍性病変biliary intraepithelial neoplasia(BilIN)-1~3を認めた.胆道癌の発症機序として,胆管炎や肝炎の持続によって酸化ストレスが蓄積し,DNAが障害されることで胆道発癌につながると報告されている.PSCにおける胆道発癌へのBilINの関与の可能性も指摘されており,本症例においても,非癌部の胆嚢粘膜にBilIN-1~3の異型を認めていることから,PSCによる慢性炎症を背景にBilINを介した多段階発癌の機序が疑われた.

Video Reports
胆道専門医講座 硬化性胆管炎―診断と治療の進歩―
  • 内藤 格, 中沢 貴宏
    2023 年 37 巻 4 号 p. 831-838
    発行日: 2023/10/31
    公開日: 2023/10/31
    ジャーナル 認証あり

    IgG4関連硬化性胆管炎(IgG4-SC)は,血中IgG4高値,胆管壁の線維化とIgG4陽性形質細胞浸潤を特徴とする原因不明の硬化性胆管炎であり,IgG4関連性疾患(IgG4-RD)の胆管病変とされている.IgG4-SCは多彩な胆管狭窄像を呈することから,胆管像が類似する胆管癌,原発性硬化性胆管炎,膵臓癌の胆管浸潤などとの鑑別が必要である.IgG4-SCの診断はIgG4-SC臨床診断基準2020に基づいて行われ,自己免疫性膵炎の存在とIgG4-SCの胆管像分類が診断において重要である.IgG4-SCの鑑別診断においては,血中IgG4値,内視鏡的逆行性胆管膵管造影,胆管管腔内超音波,胆管生検,胆管外病変としてのIgG4-RDの存在などが有用である.治療としては,ステロイドが有効であり,ステロイドによる寛解導入,維持療法が施行される.また,長期予後はおおむね良好と考えられている.

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