名古屋市厚生院における1961年3月より1990年8月までの剖検1,881例を対象に,胆石保有高齢者の検討を行い,以下の成績を得た.
1)胆石保有例は378例(胆嚢結石303例,胆管結石38例,併存37例).胆石保有率,特に胆管結石保有率は加齢と共に増加.
2)CT,US,排泄性胆道造影の併用は,胆嚢結石の診断率向上に寄与したが,胆管結石の診断率向上には有用でなかった.
3)死因は肺炎等の呼吸器系良性疾患が多く,胆道疾患は17例(癌6例,胆嚢結石1例,胆管結石10例)と少なかった.
4)胆管結石は胆嚢結石に比し,有症状化率,致死率共に高く,生前何らかの胆石発作の症候を示す例が多かった.
5)治療法については,開腹術と非開腹結石除去術との間で予後に差はなかった.以上より,高齢者の胆嚢結石は,有症状化率,胆嚢癌死率共に低く,積極的,予防的開腹術の適応となり難いと思われた.しかし,胆管結石は一旦発症すると重篤化し易く,全身状態を考慮した上で可及的早期の根治術が必要であると考えられる.
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