胆道
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36 巻, 1 号
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第57回日本胆道学会学術集会記録
会長講演
  • 中郡 聡夫
    2022 年 36 巻 1 号 p. 5-9
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/03/31
    ジャーナル フリー

    胆道癌に対する根治を目指した外科治療は,膵切除,肝切除,血管合併切除,そして肝膵同時切除等の手技の導入により発展してきました.しかし,血管合併切除・肝膵同時切除等の拡大手術は現在でも手術死亡率が高く,患者のQOLは良好とは言えません.今後は手術の安全性を高めることはもちろん,診断精度の向上や低侵襲手術の導入などによってより良好なQOLを目指す努力が必要です.

    当科の胆道癌切除477例を検討したところ,胆道癌のR0切除率は,肝門部領域胆管癌が54%と最も低く,乳頭部癌が98%と最も高い結果でした.全ての胆道癌でR0切除例の予後は,R1切除例よりも有意に良好で,根治(R0)切除の重要性が確認されました.また胆道癌切除例の入院死亡率は1.7%(8/477)でした.この中では肝門部領域胆管癌の入院死亡率が最も高かったのですが,最近7年間には入院死亡を認めず,手術の安全性は徐々に改善されていると考えられました.

原著
  • 山田 玲子, 坪井 順哉, 井上 宏之
    2022 年 36 巻 1 号 p. 28-36
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/03/31
    ジャーナル フリー

    Spy-Glass™ DS(Spy-DS)下に電気水圧衝撃破砕装置(electronic hydraulic lithotripsy:EHL)を用いた砕石処置は,巨大積み上げ結石や肝内結石等の難治性胆管結石に対して有用とされている.2017年10月から2020年9月に経乳頭的にSpy-DS下に結石治療を行った14例(総胆管結石8例,肝内結石6例)に対し,治療成績と偶発症について後方視的に検討した.全例Spy-DS下にEHLを用いて結石を破砕し,結石除去に成功した.総胆管結石は所要時間中央値72.5分(8-141分),施行回数中央値2.5回(2-4回)で,肝内結石は所要時間69.5分(5-138分),施行回数2回(1-3回)であった.偶発症は1例で,内視鏡的乳頭大口径バルーン拡張後に乳頭出血を認めたが保存的に軽快した.Spy-DS下EHLは,難治性胆管結石に対し安全に施行可能で有用である.

総説
  • 梅澤 昭子
    2022 年 36 巻 1 号 p. 37-46
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/03/31
    ジャーナル フリー

    腹腔鏡下胆嚢摘出術(Lap-C)は標準的な手術になったが,一方で,重大な合併症は一定の確率で起こり続けている.Lap-Cによる血管胆管損傷は最も避けるべき合併症のひとつであり,その予後は不良である.胆管損傷を回避するための解剖学的事項すなわちランドマークを理解し,危険回避手技を励行することが大切で,特にCritical View of Safety(CVS)の成立は誤認損傷の回避に有用である.また,急性胆嚢炎などの炎症性変化によりCalotの三角が線維化瘢痕化して剥離が困難になり,CVSを成立させることが不可能な,いわゆるdifficult gallbladderにおいては,胆嚢亜全摘術に代表される危険回避手術,特にfenestrationを積極的に選択すべきである.ランドマークを理解し危険回避手技と回避手術を自在に活用することが,安全なLap-Cの完遂につながる.

症例報告
  • 坂口 達馬, 里井 壯平, 廣岡 智, 橋本 大輔, 山本 智久, 山木 壮, 宮坂 知佳, 石田 光明, 石井 侑佳, 藤田 真也, 関本 ...
    2022 年 36 巻 1 号 p. 47-54
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/03/31
    ジャーナル フリー

    70歳,男性.造影CTで胆嚢体部から底部に均一に造影される腫瘍が認められた.胆嚢癌を念頭に置き,胆嚢床肝切除および領域リンパ節郭清を施行した.病理組織検査では胆嚢壁全体に異型リンパ細胞がびまん性に増殖し,胆嚢上皮に異型細胞は認められなかった.免疫染色ではTdT(+),CD10(+),CD79a(+),Bcl-2(+)を示した.骨髄生検では組織の60%に異型細胞の増殖があり,胆嚢標本と同様の免疫染色パターンを示し,Bリンパ芽球性白血病と診断された.PET検査では全身の骨・骨髄と左腎腫瘍,傍大動脈リンパ節,膵鉤部に多発して極めて高い集積が認められた.化学療法(HyperCVAD+MA療法)1コース後にcomplete metabolic responseが得られた.化学療法3コースを施行後,治療開始から15カ月目にPET検査で全身骨への再発が確認され,同化学療法レジメンの再開を検討中である.

  • 山添 定明
    2022 年 36 巻 1 号 p. 55-59
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/03/31
    ジャーナル フリー

    症例は71歳の男性,黄疸・皮膚掻痒感を主訴に受診し,精査にてR0切除には肝三区域切除を伴う膵頭十二指腸切除が必要である広範囲胆管癌と診断された.十分な相談の上,化学療法を選択されたためbiweekly GC療法を導入した.経過中のCTでは遠隔転移や局所進展の進行は無く,腫瘍は縮小傾向を呈し,10コース後のPET-CTで異常集積を認めなかった.根治術を再検討するべく初回と同部位の胆管マッピング生検を再検した結果はすべて陰性であった.計13コースのGC療法を施行後に肝右葉尾状葉切除・肝外胆管切除・胆道再建術を施行した.結果,病理組織学的に完全奏効であり,リンパ節転移も認めなかった.現在術後化学療法は施行せず,無再発生存中である.GC療法で完全奏効を得られた胆管癌は極めて稀であり,若干の文献的考察を加えて報告する.

  • 百武 佳晃, 吉留 博之, 大塚 将之, 安蒜 聡
    2022 年 36 巻 1 号 p. 60-65
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/03/31
    ジャーナル フリー

    症例は76歳女性で,心窩部痛を主訴に当院受診し,腹部CT検査で完全内臓逆位症に合併した胆嚢結石症,総胆管結石症と診断された.内視鏡的に総胆管結石除去後に腹腔鏡下胆嚢摘出術の方針とした.腹部CT検査から胆嚢付着部の解剖学的位置異常を合併していることが予想され,手術所見では胆嚢が肝円索の右側に付着しており,正常解剖でいう右肝円索と同様の合併奇形と考えられた.ポート位置の調整を行い,肝円索の吊り上げを追加し胆嚢底部からの剥離を先行するアプローチの上で手術を完遂した.内臓逆位症は臓器が左右対称の鏡面像となる先天的発生異常であり,消化器系,心血管系,泌尿器系などに合併奇形を有する確率が高いとされている.今回,完全内臓逆位症に肝円索位置異常を合併した胆嚢結石症に対し,術前の慎重な画像評価および手術計画により,安全に腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した1例を経験したので報告する.

胆道専門医講座 胆道癌治療の最近の進歩
  • 水野 隆史, 尾上 俊介, 渡辺 伸元, 伊神 剛, 横山 幸浩, 江畑 智希
    2022 年 36 巻 1 号 p. 66-76
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2022/03/31
    ジャーナル フリー

    胆道癌の外科治療開発はこれまで拡大切除術式の開発と周術期患者管理の改善に重点が置かれてきた.周術期死亡率の低下にともない進行胆道癌に対する拡大切除術式の意義が確認されており,近年では肝門部領域胆管癌における肝動脈合併切除症例におけるacceptableな手術成績と生存成績が示され切除率の向上につながっている.一方,長期生存成績のさらなる向上を目的とした周術期補助治療の有効性を評価するための前向き臨床試験が行われており,薬物治療の奏効による腫瘍縮小により切除可能となった初回切除不能症例に対して切除を行うconversion therapyの有効性も報告されている.また,胆道癌に対する内視鏡下手術の適応の拡大とともに,術式の定型化と手術の安全性を検証したデータが示されており,今後はリンパ節郭清や生存成績といった腫瘍学的評価についてのデータが提示されてゆくことが期待されている.

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