胆道
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25 巻, 1 号
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第46回日本胆道学会学術集会記録
会長講演
  • 田妻 進
    2011 年 25 巻 1 号 p. 23-30
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/13
    ジャーナル フリー
    要旨:胆石症は先進国における国民病の一つである.
    その治療は古くから議論されてきたが,除去する方法として"胆石のみの除去"と"臓器を含めての除去"の2点に創意工夫が繰り返されてきた.そのたゆまぬ取り組みは胆石症という疾患の背景に潜む重要な臨床課題,すなわち,(1)胆道疝痛発作,(2)胆道炎・胆道感染症,および(3)胆道癌合併,に促されてきたと考えられる.一般に多くの人々が,"突然襲ってくる痛み","癌の合併"を危惧している.それらを背景に,胆石症研究は,成因・形成機序,診断手法,治療手技,予後・合併症と幅広い観点で推進されてきた.当然ながら,胆石症の臨床は胆石の成り立ち(分類,局在)や病態と密接に関わっており,その点で今なお進化している.本稿では筆者の胆石症研究の足跡とそれに伴って派生的に進めた胆汁分泌機構とその異常ならびに胆道発癌研究の概要を述べた.
教育講演
  • 中沼 安二
    2011 年 25 巻 1 号 p. 31-42
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/13
    ジャーナル フリー
    要旨:肝内胆管および胆道の前癌病変・早期癌病変として,平坦型のbiliary intraepithelial neoplasia(BilIN)と乳頭型のintraductal papillary neoplasm(IPN)の2種類の上皮内病変がある.BilINは,顕微鏡下で同定され,BilIN-1,-2,-3に異型度分類される.軽度異型,中等度異型,高度異型で,BilIN-3は上皮内癌に相当する.これらの上皮内異型病変は,2010年WHOの消化器腫瘍分類の改訂で,認知された.この改訂で,従来,用いられて来た肝胆管嚢胞腺腫/嚢胞腺癌と呼ばれた疾患名がなくなり,膵臓型粘液性嚢胞性腫瘍mucinous cystic neoplasm(MCN)の概念が肝胆道系に導入され,類縁疾患・鑑別すべき疾患として嚢胞型IPN(嚢胞型IPNB(IPN of bile duct)とも呼ばれる)や胆管周囲嚢胞等が記載されている.これらの名称を用いた臨床研究,基礎研究が期待される.
エキスパートレクチャー
  • 梛野 正人
    2011 年 25 巻 1 号 p. 43-52
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/13
    ジャーナル フリー
    要旨:肝門部胆管癌では切除再建限界で肝内胆管が切離された場合,上流側胆管断端を十分長く追加切除するのは難しく,たとえ数mmの追加切除で断端が陰性化しても予後が改善する可能性は低い.想定している術式で上流側胆管断端が心配である場合,より広範囲に切除する根治的な術式,具体的には胆管切除→肝区域切除,右葉切除→右三区域切除,左葉切除→左三区域切除が可能かどうかを検討する.表層進展については,これで断端が陽性となっても統計学的にはその予後は断端陰性例と変わらない.しかし,断端に残れば10年前後で進行癌として再発してくるので,80歳以下で肝機能に問題が無く主病巣がおとなしいような症例では,表層進展も全て確実に切除することが望ましい.一方,肝機能からみて大きい切除はriskが高い,或いはリンパ節転移など予後不良因子がある場合には,表層進展の全切除に拘る意義は少ない.
  • 片寄 友, 力山 敏樹, 石田 和之, 海野 倫明
    2011 年 25 巻 1 号 p. 53-59
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/13
    ジャーナル フリー
    要旨:CTが,ヘリカルCTから多検出器を持つmultidetector-row CT(以下MDCT)へ進歩し,分解能が格段に向上した.そのため,画像診断能精度が向上し詳細な検討が可能となり,胆道領域の画像診断体系が大きく変化した.胆管長軸方向の進展範囲については,胆道造影を主に用いて診断していたが,MDCT撮影を施行することにより,多くの症例にて進展度診断に十分な情報が得られるようになってきた.また動脈,門脈に対する垂直方向浸潤に関しては,従来行われていた血管造影はほぼ不要となった.MDCTは容易に施行できるため,手術適応の可否判断やその後の治療計画決定が迅速に行われ,治療が適切に進むことが胆道癌治療に有用である.
    当施設では1999年の4列のMDCT導入以来,積極的に診断に取り入れており,本稿では,MDCTの基本を述べるとともに,その診断能を含めて有用性について述べることとする.
原著
  • 又木 雄弘, 新地 洋之, 前村 公成, 蔵原 弘, 迫田 雅彦, 上野 真一, 高尾 尊身, 夏越 祥次
    2011 年 25 巻 1 号 p. 72-78
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/13
    ジャーナル フリー
    要旨:目的:胆道癌におけるFDG-PETの有用性をretrospectiveに検討した.方法:対象は胆道癌41例(胆管癌22例,胆嚢癌11例,乳頭部癌8例)であり,主病巣の感度,SUVmax値と臨床病理学的因子の比較,偽陰性例の特徴,主病巣以外の集積に関する検討を行った.結果:41例中28例(68.3%)に主病巣の集積を認めた.集積感度は,胆嚢癌100%,乳頭部癌87.5%,胆管癌45.4%であった.集積がみられた28例で,SUVmax値とT,N因子に相関はなかったが,M因子と有意な相関を認めた(p=0.033).胆管癌のSUVmax値は胆嚢癌,乳頭部癌に比べ有意に低かった.胆管癌での偽陰性症例は平坦浸潤型が多かった.主病巣以外に関して,13例にリンパ節の集積を認め,組織学的検索可能な9例中8例が悪性であった.他臓器集積8例中3例に結腸癌が発見された.まとめ:胆道癌でのFDG-PETの意義として,胆管癌の主病巣指摘のsensitivityは胆嚢癌・乳頭部癌に比べ低いが,遠隔転移や重複癌スクリーニングの有用性が示唆された.
  • 藤井 努, 山田 豪, 竹田 伸, 中尾 昭公
    2011 年 25 巻 1 号 p. 79-85
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/13
    ジャーナル フリー
    要旨:十二指腸乳頭部癌切除例の予後予測因子を検討し,縮小手術の可能性について検討した.切除された十二指腸乳頭部癌80例の,臨床病理学的予後予測因子を検討し,さらにpT1症例に対して(幽門輪温存)膵頭十二指腸切除術(PD)を施行した11例と膵頭十二指腸第II部切除術(PHRSD)を施行した5例を比較検討した.全切除例の検討では,組織学的リンパ節転移陽性(n(+))が独立した予後不良予測因子であった.術前診断の点からは,露出腫瘤型以外の肉眼型,肉眼的膵臓浸潤・十二指腸浸潤陽性が,n(+)に有意な相関を認めた.pT1症例に対するPHRSD施行例の手術時間,出血量はPDと同等で,現在までに再発・原病死を認めていない.しかし術前画像診断能の正診率が決して良好でないことを考慮すると,T1と術前診断された十二指腸乳頭部癌に対しては,現状ではPDを標準術式とすべきであると考えられた.
総説
  • 神澤 輝実, 露口 利夫, 川崎 誠治, 田妻 進, 乾 和郎
    2011 年 25 巻 1 号 p. 86-93
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/13
    ジャーナル フリー
    要旨:自己免疫性膵炎の膵臓で認められるTリンパ球とIgG4陽性形質細胞の密な浸潤を伴う線維化の病理組織像は,膵外病変でも同様にみられ,さらに自己免疫性膵炎患者の全身諸臓器にはIgG4陽性形質細胞の密な浸潤が認められることより,自己免疫性膵炎はIgG4が関連する全身性疾患の膵病変であり,高頻度に合併する硬化性胆管炎はその胆管病変(IgG4関連硬化性胆管炎)と考えられる.IgG4関連硬化性胆管炎は,多くは自己免疫性膵炎に合併するが,胆管病変単独の例もみられる.IgG4関連硬化性胆管炎は,好発年齢や合併病変,IgG4の関与,ステロイドの反応性と予後などを考えると,原発性硬化性胆管炎(PSC)とは明らかに異なった病態であり,両者は鑑別を要する.IgG4関連硬化性胆管炎の診断にあたっては,内視鏡的な病理学的アプローチにより可能な限り胆管癌を否定することが非常に重要である.その後,直接胆道造影像,血中IgG4値,内視鏡的胆管生検所見,ステロイドの反応性などの組み合わせにより診断する.
  • 露口 利夫, 杉山 晴俊, 酒井 裕司, 横須賀 收
    2011 年 25 巻 1 号 p. 94-98
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/13
    ジャーナル フリー
    要旨:胆道癌診療ガイドラインの第一版が2007年に発行されて3年が経過し改訂時期が近づいている.ガイドライン改訂にあたり胆道癌関連の診断・治療における内視鏡検査の役割についてreviewした.近年その存在が知られるようになったIgG4関連硬化性胆管炎について肝門部胆管癌との鑑別診断を中心に述べ,また,悪性肝門部胆管狭窄に対する内視鏡的ドレナージは他のアプローチ方法である姑息的外科切除術や経皮的アプローチとの比較についてreviewした.悪性肝門部胆管狭窄のドレナージには未だに多くのcontroversyが存在し,今後のエビデンスの蓄積が望まれる.
症例報告
  • 奥 隆臣, 久保 康則, 三関 哲矢, 阿部 友哉
    2011 年 25 巻 1 号 p. 99-106
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/13
    ジャーナル フリー
    要旨:症例は85歳,女性.右季肋部痛の精査目的に入院となった.入院翌日に腹痛が増強し,CTにて腹水を認めたため穿刺したところ胆汁様腹水が同定され,十二指腸または胆嚢穿孔を疑い緊急腹腔鏡検査を行った.胆嚢に炎症所見や明らかな穿孔はないが,底部からの胆汁漏出が確認され,胆汁性腹膜炎と判断し腹腔鏡下胆嚢摘出術を行った.病理所見でも胆嚢に穿孔はなく,粘膜面も正常で炎症は認められず漏出性胆汁性腹膜炎と診断した.漿膜下層の静脈枝に血栓を認め,それによる虚血が原因のひとつと考えられた.漏出性胆汁性腹膜炎は本邦で13例の報告があり全て開腹下での胆嚢摘出術が行われている.本症の症状の原因は非感染性胆汁であり予後も良く,腹腔鏡治療の適応があると思われる.本症は診断が困難な場合もあるが急性腹症のひとつとして念頭におき適切な術式を選択すべきであると考えられた.
  • 中原 一有, 片倉 芳樹, 奥瀬 千晃, 足立 清太郎, 中津 智子, 高木 麗, 伊東 文生
    2011 年 25 巻 1 号 p. 107-112
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/13
    ジャーナル フリー
    要旨:症例は62歳,63歳,72歳の男性.原疾患は胆管結石2例,慢性膵炎1例といずれも良性疾患の正常胃症例で,ERCP時にスコープによる十二指腸穿孔をきたした.穿孔部位は下行脚が2例,上十二指腸角が1例で,穿孔方向は後腹膜が2例,腹腔内が1例であった.原因はいずれもスコープのストレッチ操作によるものであった.術者はいずれもERCP経験が40件未満であった.2例は穿孔後早期に腹部症状の増悪と腹膜刺激症状の出現を認め外科手術を要したが,後腹膜穿孔の1例は腹部症状が軽微で保存的加療のみで改善した.なお全例軽快退院した.ERCP時のスコープのストレッチ操作で十二指腸穿孔を来す恐れがあり,特に腹腔内穿孔や腹部症状が増悪傾向を示す場合は早急な外科手術による対応を要する.一方,身体所見や血液検査の炎症所見に乏しい後腹膜穿孔では保存的加療のみで改善が得られる場合がある.
  • 門脇 晋, 天野 穂高, 三浦 文彦, 豊田 真之, 和田 慶太, 加藤 賢一郎, 早野 康一, 澁谷 誠, 前野 佐和子, 高田 忠敬, ...
    2011 年 25 巻 1 号 p. 113-119
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/13
    ジャーナル フリー
    要旨:症例は73歳の女性.右季肋部痛を主訴に当院受診し,精査加療目的で入院となった.腹部CTでは胆嚢壁のび漫性な肥厚および濃染像が見られた.また,肝浸潤,門脈浸潤も疑われ胆嚢癌と診断した.拡大右葉切除術を予定したが,高度の僧帽弁閉鎖不全症を合併していたため,僧帽弁置換術を先行した.弁置換術後に再度腹部CTを施行すると(初回CTより19日後),肝浸潤と考えた部分が縮小し,門脈浸潤も消失していた.炎症により胆嚢癌の浸潤範囲が修飾されていたと判断し,肝S4a+S5切除,肝外胆管切除,胆管空腸吻合術を施行した.病理組織診では胆嚢癌とXanthogranulomatous cholecystitisの合併と診断された.炎症の波及により癌の進展度診断が修飾されたと考えられた,示唆に富む一例を経験したので報告する.
  • 木暮 道夫, 杉山 政則, 佐竹 亮介, 細内 康男
    2011 年 25 巻 1 号 p. 120-126
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/13
    ジャーナル フリー
    要旨:先天性胆道拡張症(以下CBD)の家族内発症例は少ない.今回我々が経験した膵・胆管合流異常を伴うCBD症例は,1組の成人女性(母70歳,娘37歳で診断)である.いずれも無症状で経過していたが,母は黄疸で,娘は腹痛で発症した.母は戸谷IVa型で,拡張した肝外胆管内にcarcinoma,dysplaia,hyperplastic atypiaを認めた.この症例に対しては,肝外胆道切除・リンパ節郭清,胆管空腸吻合術を行った.娘は戸谷Ia型で,悪性所見はなく,肝外胆道切除,胆管空腸吻合術が行われた.
    本邦ではCBDの家族内発生例は16組32例を数えるにすぎず,同一家族内で2名とも成人での本症の発症は当症例を含めて2組目であった.さらに,本例(母)の拡張胆管内に癌,異型上皮,異型を伴う過形成ポリープがみられ,hyperplasia-dysplasia-carcinoma sequenceを示唆すると考えられた.本症例から,CBDの家系内screeningがすすめられると考えられた.
  • 西村 和明, 小野山 裕彦
    2011 年 25 巻 1 号 p. 127-132
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/13
    ジャーナル フリー
    要旨:症例は73歳男性.2007年10月,発熱と腹痛を主訴に近医を受診した.画像診断にて胆石症,急性胆嚢炎・胆管炎および胆嚢隆起性病変と診断され,同年11月腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行された.切除標本の免疫組織化学的検索にてSynaptophysin(+),Chromogranin A(-),CD56(-),LCA(-)とされ,小細胞癌と診断された.2008年1月本院転入し,肝床切除+領域リンパ節郭清術を施行した.術後gemcitabineおよびTS-1にて化学療法を行ったが,初回手術より8カ月後に再発により死亡した.
    胆嚢小細胞癌は極めて稀な疾患であり,一般には予後不良とされ,手術や化学療法に関して明確なコンセンサスは得られていない.膵頭十二指腸切除での長期生存例や,肺小細胞癌に準じた化学療法が有効であったとの報告もみられているが,今後更なる検討を要する.
胆道専門医講座(5)先天性胆道拡張症・膵胆管合流異常
第1回 疫学と臨床的特徴
  • 森根 裕二, 森 大樹, 宇都宮 徹, 居村 暁, 池本 哲也, 石橋 広樹, 島田 光生
    2011 年 25 巻 1 号 p. 133-140
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/06/13
    ジャーナル フリー
    要旨:膵・胆管合流異常(以下,合流異常)は解剖学的に膵管と胆管が十二指腸壁外で合流し,膵液と胆汁の相互逆流により,さまざまな病態と惹起するとともに胆道癌の発生母地ともなる.合流異常の疫学と臨床的特徴に関して日本膵・胆管合流異常研究会の全国集計(2,561例)のデータを中心に概説する.ほとんどの症例が有症状であり,特に小児では急性膵炎の合併が約30%に認められている.また胆道癌の合併は小児では拡張型に1例認めるのみであるが,成人では拡張型21.6%,非拡張型42.4%と通常の1000~3000倍の高危険率となっている.本疾患は不明な点が多く,治療方針も統一されていないため,今後,さらなる病態解明の努力が必要である.
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