要旨:先天性胆道拡張症(以下CBD)の家族内発症例は少ない.今回我々が経験した膵・胆管合流異常を伴うCBD症例は,1組の成人女性(母70歳,娘37歳で診断)である.いずれも無症状で経過していたが,母は黄疸で,娘は腹痛で発症した.母は戸谷IVa型で,拡張した肝外胆管内にcarcinoma,dysplaia,hyperplastic atypiaを認めた.この症例に対しては,肝外胆道切除・リンパ節郭清,胆管空腸吻合術を行った.娘は戸谷Ia型で,悪性所見はなく,肝外胆道切除,胆管空腸吻合術が行われた.
本邦ではCBDの家族内発生例は16組32例を数えるにすぎず,同一家族内で2名とも成人での本症の発症は当症例を含めて2組目であった.さらに,本例(母)の拡張胆管内に癌,異型上皮,異型を伴う過形成ポリープがみられ,hyperplasia-dysplasia-carcinoma sequenceを示唆すると考えられた.本症例から,CBDの家系内screeningがすすめられると考えられた.
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