胆道
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26 巻, 5 号
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原著
  • 倉田 昌直, 本田 五郎, 奥田 雄紀浩, 小林 信, 田畑 拓久, 来間 佐和子, 原 精一, 神澤 輝実
    2012 年 26 巻 5 号 p. 663-667
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/08/05
    ジャーナル フリー
    要旨:胆道走向異常は区域以下の支配胆管が肝外の胆管や胆嚢,胆嚢管に直接流入するものと定義され,胆嚢摘出術の際に特に後区域枝が胆嚢に合流する形態や後区域枝に胆嚢管が合流する形態の時の損傷が問題となる.当院で5年間に腹腔鏡下胆嚢摘出術(Lap-C)前検査でMRCPなどによる胆道検査を行った506例を対象に,副肝管の有無ならびに胆管の走向,とりわけ南回りの後区域枝かどうかを検討した結果,40例(7.9%)に副肝管を認め,これら全例が南回りと考えられた.さらに40例中に後区域枝に胆嚢管が合流する形態を3例(0.6%),胆嚢管に合流する形態を1例(0.2%)認めた.いずれも術前に副肝管の走向異常が認識できていた.胆嚢に合流する副肝管や副肝管に胆嚢管が合流するような形態の多くが南周りの後区域枝であるため,南周りの後区域枝に注目することで術前診断は可能であり,適切な手技によりLap-Cも可能となる.
  • 鈴木 雅貴, 虻江 誠
    2012 年 26 巻 5 号 p. 668-677
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/08/05
    ジャーナル フリー
    要旨:近年,光の干渉現象を利用して微細な断層像を得るOptical Coherence Tomography(OCT)が開発され,その空間分解能は管腔内超音波検査法(IDUS)の約10倍,300 MHzに相当するとされる.今回胆道癌症例にOCTを施行し粘膜表層進展診断の可能性に関して検討を加えた.切除標本が得られた胆道癌14症例において切り出し後の肝側胆管57切片に対しOCTを施行し病理組織学的所見と比較検討した.更にEndoscopic OCTにて3D-OCT像を含めた検討を行った.非癌部胆管上皮は粘膜上皮,線維筋層,漿膜下層浅層線維組織,漿膜下層脂肪組織,膵実質がほぼ明瞭に区別されて描出された.粘膜上皮では最内側層外側に点状~線状の強い高輝度spotを認め細胞核を描出していると考えられた.癌表層進展部では最内側層全体が比較的均一に高輝度に描出され,粘膜表層進展が診断できる可能性が示唆された.また3D画像構築も水平方向進展診断に有用であった.
総説
症例報告
  • 黒上 貴史, 菊山 正隆, 森田 敏広, 重友 美紀, 木村 勇斗, 丸野 貴久, 萱原 隆久, 松村 和宜, 鈴木 誠
    2012 年 26 巻 5 号 p. 699-704
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/08/05
    ジャーナル フリー
    要旨:症例は74歳女性.10年前に右腎癌に対し根治的切除(病理:RCC clear cell pT3b,45×38 mm,G1>2,INFα,v(+),cut end-)の既往あり,定期的に当院泌尿器科にて経過観察中だった.腹部超音波検査にて胆嚢頸部に7 mmの半球状隆起性病変を指摘され,7カ月後に同病変は15 mmと増大し卵形を呈した.dynamic CTでは動脈相で極めて強い造影効果を伴う腫瘤病変を指摘され,門脈相にて肝とほぼ同等の造影効果遅延を呈した.超音波内視鏡検査にて亜有茎性の20 mm弱の腫瘤で,腫瘤表層には薄く高エコー帯を伴っていた.造影CT早期相における造影所見および超音波内視鏡所見より腎癌の転移を強く疑った.当院外科にて開腹下単純胆嚢摘出術が施行された.病理組織学的に胆嚢粘膜層に限局した腎癌の胆嚢転移と診断された.
  • 足立 清太郎, 中原 一有, 奥瀬 千晃, 高木 麗, 路川 陽介, 末谷 敬吾, 中野 浩, 遠藤 陽, 小泉 宏隆, 高木 正之, 片倉 ...
    2012 年 26 巻 5 号 p. 705-711
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/08/05
    ジャーナル フリー
    要旨:症例は63歳,男性.不明熱で当院に入院となり,精査目的で施行した上部内視鏡検査にて約10 mm大の露出腫瘤型十二指腸乳頭部腫瘍を認めた.生検の結果,高分化型管状腺癌と診断し,膵頭十二指腸切除を施行した.病理組織所見では,十二指腸粘膜固有層に高分化管状腺癌を認め,粘膜下層には免疫組織化学染色でChromogranin A陽性,Synaptophsin陽性,CD56陽性を示す小型腫瘍細胞を認め,腺内分泌細胞癌と診断した.
    十二指腸乳頭部腺内分泌細胞癌は悪性度が高く,治癒切除がなされてもその予後は極めて不良である.自験例はfCurAの治癒切除がなされ,脈管侵襲もみられなかったため術後化学療法は行わなかったが,術後17カ月で悪性リンパ腫にて死亡するまで無再発であった.これまで十二指腸乳頭部腺内分泌細胞癌の報告は少なく,本邦既報告例の文献的考察を加え報告する.
  • 森島 大雅, 大塚 裕之, 清野 隆史, 片山 雅貴, 石川 英樹
    2012 年 26 巻 5 号 p. 712-719
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/08/05
    ジャーナル フリー
    要旨:症例は60歳代,女性.乳癌術後再発に対する化学療法後の経過観察中に,腹部超音波検査にて1年前より指摘されていた胆嚢ポリープが8 mmから11 mmへ増大あり紹介受診された.血液検査では肝胆道系酵素の上昇や腫瘍マーカーの上昇は認めなかった.腹部超音波検査では胆嚢底部に点状高エコーのある低エコー腫瘤を認め,胆嚢壁血流速度は最大13.4 cm/秒であった.Sonazoid®造影超音波検査,DynamicCT検査では持続性に造影効果を認めた.EUSでは胆嚢底部に12 mm大の有茎性で境界部位に線状の高エコーのある,表面平滑だが八頭状の,内部不均一な低エコー腫瘤として描出された.早期胆嚢癌を否定できず,開腹胆嚢摘出術を施行し,切除病理組織では,有茎性で既存の胆嚢上皮により被覆され,上皮下に浮腫状の線維性間質像を示す線維性ポリープであった.
  • 土井 晋平, 安田 一朗, 山内 貴裕, 河口 順二, 上村 真也, 戸田 勝久, 森脇 久隆
    2012 年 26 巻 5 号 p. 720-726
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/08/05
    ジャーナル フリー
    要旨:スパイグラス胆管・膵管鏡システム(スパイグラス)によるYAGレーザー砕石が有用だった総胆管結石嵌頓症例を2例経験したので報告する.症例1は67歳女性.前医にてバスケット嵌頓をきたしたが嵌頓解除用のデバイスが無いため当院へ搬送された.スパイグラスを用いた直視下でのYAGレーザー照射によりバスケット嵌頓を解除した.症例2は79歳女性.上部胆管に可動性の乏しい陰影欠損を認め,細胞診でClass IIIの結果であったためスパイグラスによる経口胆道鏡検査を施行,病変が結石であることを確認の後にYAGレーザー砕石を行った.スパイグラスの機能のうち4方向アングル,独立イリゲーションチャンネルからの洗浄機能はYAGレーザーによる砕石に際し特に有用性が高いと考えられた.
  • 吉岡 伊作, 澤田 成朗, 松井 恒志, 大村 哲也, 森山 亮仁, 関根 慎一, 奥村 知之, 長田 拓哉, 塚田 一博
    2012 年 26 巻 5 号 p. 727-732
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/08/05
    ジャーナル フリー
    要旨:症例はvon Recklinghausen病(VR病)の67歳,男性.総胆管,主膵管拡張を指摘され紹介受診.CTで肝内胆管,総胆管および主膵管の拡張を認めたが腫瘤性病変は明らかではなかった.上部消化管内視鏡では十二指腸乳頭は結節状に腫大しており生検でソマトスタチノーマの診断であった.またCTで十二指腸水平脚に壁外性の3 cm大の造影効果を有する腫瘤を認めgastrointestinal stromal tumor(GIST)が疑われた.幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行,病理診断にて十二指腸乳頭部腫瘤はソマトスタチノーマでNo.13a,17aのリンパ節に計5個の転移を認めた.十二指腸水平脚の腫瘤はc-kit,CD34がともに陽性でありGISTと診断された.VR病患者における消化管病変としてこれらには留意する必要があり文献的考察を加えて報告する.
  • 上月 章史, 志摩 泰生, 住吉 辰朗, 岩田 純
    2012 年 26 巻 5 号 p. 733-739
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/08/05
    ジャーナル フリー
    要旨:症例は80歳の女性.診療所での血液検査で肝機能障害を指摘され,CTで胆嚢腫瘍を認めたため当院へ紹介となった.CTで胆嚢頚部から底部にかけて壁の肥厚を認め,横行結腸および十二指腸への浸潤を伴う胆嚢癌と診断し手術を施行した.術中肉眼所見と病理診断で胆嚢底部の腫瘤は黄色肉芽腫性胆嚢炎(Xanthogranulomatous cholecystitis:XGC)と診断し,十二指腸は温存して肝S4a5切除,リンパ節郭清,横行結腸部分切除を施行した.最終的に胆嚢頚部を主座とする胆嚢癌と診断し,胆嚢底部にXGCの合併を認めた.CTを見直すと胆嚢頚部では胆嚢内腔へ腫瘤を形成するが,胆嚢底部では粘膜面は保たれ,壁外への進展が著明な腫瘤でありXGCを疑い得る所見であった.また,術中迅速病理診断はXGCと胆嚢癌を鑑別し,適切な術式を施行するために重要と考えられた.特徴的なCT所見を呈した,XGCを併存した胆嚢癌の1切除例を経験したため報告する.
  • 黒川 敏昭, 鄭 子文
    2012 年 26 巻 5 号 p. 740-748
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/08/05
    ジャーナル フリー
    要旨:患者は83歳,女性.主訴は上腹部痛.前日に生じた上腹部痛が増悪したため救急搬送された.腹部CT検査では胆嚢の腫大と壁の肥厚,胆嚢内腔には複数個の結石が確認できた.また,肝外側区域臓側面の被膜下に液体貯留腔を認めた.急性胆嚢炎とそれに合併する肝被膜下膿瘍が疑われたため,まずPTGBDを行った.しかし,発熱が持続したためCTを再検したところ被膜下膿瘍の増大と穿孔を認めた.そこで経皮経肝膿瘍ドレナージを施行した.穿刺液の培養ではStreptococcus milleri groupが検出された.全身状態が改善するのを待って,胆嚢摘出術を施行した.術後経過は問題なく,術後20日目に退院した.肝被膜下膿瘍が破裂していたが膿瘍ドレナージが奏効し,待機的に安全に手術を施行することができた.急性胆嚢炎がもとで肝床を介して肝外側区域被膜下に膿瘍を形成したと推察されるまれな症例を報告する.
  • 佐藤 巳喜夫, 海老原 次男, 松尾 亮太, 佐々木 亮孝, 大河内 信弘, 森下 由紀雄, 野口 雅之, 正田 純一, 兵頭 一之介
    2012 年 26 巻 5 号 p. 749-755
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/08/05
    ジャーナル フリー
    要旨:症例は70歳代,男性.主訴は右上腹部痛.腹痛精査のための腹部CTで総胆管結石を疑われたため当科を紹介された.第1回入院時腹部CT,MRCP,ERCPで上部胆管に不整形の総胆管結石を認め,十二指腸乳頭切開術後総胆管結石切石を行った.胆嚢結石は認めなかった.退院1年後に右上腹部痛再燃し当科入院.腹部CTで胆管内腔にはわずかな造影効果を伴う腫瘍を認めた.ERCPでは上部胆管に乳頭状腫瘍を認め胆管生検で高分化腺癌を得た.肝外胆管切除術を施行し病理組織診断ではfm,fStage IAであった.胆管癌に胆管結石を合併することがあり,不整形の胆管結石の内視鏡治療時には特に注意して詳細な観察を行う必要があると考えられた.
胆道専門医講座⑥鑑別診断が困難な症例の取り扱い
第4回 乳頭部
  • 五十嵐 良典, 岡野 直樹, 伊藤 謙, 鎌田 至, 岸本 有為, 三村 享彦
    2012 年 26 巻 5 号 p. 756-760
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/08/05
    ジャーナル フリー
    要旨:近年,検診などで施行される上部消化管内視鏡の際に,十二指腸観察時に乳頭部腫瘍が診断されることがある.
    乳頭部腫瘍には,過形成性変化,再生性変化,腺腫,癌,粘膜下腫瘍,アミロイドーシス,血管腫などが認められる.
    乳頭部腫瘍は表面では異型は軽度で深部で高度になることから,診断に際しては,各種画像診断を参考にして診断する必要がある.
    また,癌を疑った時には画像診断による定期的な経過観察が必要である.
    乳頭部腫瘍に関しては,各種疾患を認識して診断する必要がある.
画像解説
誤記訂正
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