胆道
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22 巻, 4 号
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原著
  • 前田 敦行, 上坂 克彦, 松永 和哉, 金本 秀行, 坂東 悦郎, 斉藤 修治
    2008 年 22 巻 4 号 p. 500-506
    発行日: 2008/10/31
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    肝切除前肝予備能評価法としてわれわれはICG Krem (ICG消失率 (K値) ×予定残肝の全肝に対する体積比) ≥0.05を用いている. この指標の肝門部胆管癌における有用性と限界を検討した. 当院で経験した肝門部胆管癌肝切除46例を対象として, この指標や既知の基準との合致性, 術後合併症, 在院死亡について検討した. われわれの指標を満たしたのは38例 (82.6%) であった. 合併症発生率は45.7%, 肝不全はなく, 在院死亡は1例 (2.6%) であり, 安全な基準であると考えた. 他の基準の合致は幕内基準54.3%, 兵庫医大予後得点50点以上45.7%のみであり, ICG Krem≥0.05はより手術適応の拡大を可能にする指標でもあると考える. 指標逸脱8例 (17.4%) については, 予定残肝容積 (最低278mL), 切除率 (最高71%), 予定残肝容積体重比 (最低0.54%v/w) および, 胆管閉塞状態を個々に考慮し門脈枝塞栓術後に手術適応を最終決定した.
総説
  • 中村 太郎, 長井 俊志, 亀井 秀弥, 木内 哲也
    2008 年 22 巻 4 号 p. 507-513
    発行日: 2008/10/31
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    原発性硬化性胆管炎 (PSC) は有効な内科的治療法が確立されておらず, 進行すると肝移植のみが生命予後を延長しうる治療法となる. 移植適応時期は種々の予後予測式を参考にしながら肝不全症状や個々のQOLに基づいて決定する. 胆道癌合併症例の肝移植成績は不良であり国内の現状では肝移植の禁忌と考えられるため, 術前の十分な精査がなされるべきである. 海外の肝移植成績は1年生存率90%, 2年生存率84%で他疾患より良好であるが再移植率は高い傾向にある. 一方, 国内の肝移植成績は1年生存率76%, 3年生存率69%で海外データや他疾患と比較して良いとは言えない. 肝移植後PSCの再発は長期フォローアップの中で重要な問題であり, 特に生体肝移植では再発率が高い可能性がある. 再発診断が困難な症例もあり, 移植後胆管病変に注目した管理が必要である.
症例報告
  • 恩田 真二, 藤岡 秀一, 二川 康郎, 岡本 友好, 矢永 勝彦
    2008 年 22 巻 4 号 p. 514-517
    発行日: 2008/10/31
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    われわれは腹腔鏡で胆嚢低形成症と思われた1例を経験したので報告する. 症例は44歳の男性で, 右季肋部痛を主訴に当院を受診した. DIC-CTにて胆嚢は描出されず, 総胆管の右側に萎縮胆嚢と思われる1cm大の瘤状物を認めた. 慢性胆嚢炎を疑い腹腔鏡下に手術を施行した. 腹腔内検索では胆嚢床に胆嚢を認めず, 脂肪組織に置換されていた. 総胆管の右側に1cm大の瘤状物が確認され, 周囲の炎症所見は認めなかった. 本症例は, 今回の症状発現以前に明らかな胆嚢炎の既往がないため, 胆嚢低形成症と診断し, 胆嚢は摘出せずに腹腔鏡観察のみで手術を終了した. 胆嚢低形成症は比較的まれな胆道奇形であり, 術前画像診断が困難であるが, 画像所見で胆嚢の存在が不明瞭な場合には, 本症を考慮する必要がある.
  • 鈴木 修司, 伴 慎一, 小池 伸定, 原田 信比古, 鈴木 衛, 羽生 富士夫
    2008 年 22 巻 4 号 p. 518-523
    発行日: 2008/10/31
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    膵のIPMN様の病理形態を呈した粘液産生胆管腫瘍の1例を経験したので報告する. 症例は56歳, 男性. 1カ月前からの心窩部痛にて当院受診. 肝胆道系酵素の上昇を認めたが, 超音波検査, MRCPは異常なく, CTでは若干左肝内胆管拡張を認めた. 2カ月後の超音波検査, CTでは, 左肝内胆管の著明な拡張を認めた. DIC-CTでは左肝内胆管拡張と末梢に陰影欠損像を呈し, PTCでは左肝管の狭小化と陰影欠損像を認めた. 肝内胆管癌を疑い, 左葉切除を施行した. 摘出標本では左肝管が狭窄を呈し, 末梢に粘液塊を認めた. 組織学的には, 狭窄部胆管は低乳頭状増殖を呈する粘液産生性の異型上皮で裏打ちされ, 浸潤所見はなく, 良悪性境界領域病変とした. MUC1陰性, MUC2, MUC5ACは陽性で, MUC6は一部陽性であった. 組織形態とあわせると膵のIPMNの組織学的亜型のうちintestinal typeに相当する所見であった.
  • 仲程 純, 菊山 正隆, 笹田 雄三, 小出 茂樹, 松橋 亨, 大田 悠司
    2008 年 22 巻 4 号 p. 524-529
    発行日: 2008/10/31
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    症例は74歳・男性. 胆石を伴う胆嚢腺筋腫症, 膵石を伴う慢性膵炎, 糖尿病の経過観察中に腫瘍マーカーの上昇とともに胆嚢壁肥厚の増悪, Rokitansky-Ashoffsinusの拡大などの画像所見の変化が認められた. 胆嚢癌の合併を念頭に精査したが, 血管造影下CTでmucosal lineが保たれていることが確認され, 慢性胆嚢炎による壁肥厚と診断した. 膵癌の合併を否定した上で胆嚢摘出術を行った. 病理組織学的検索により高度な線維化による壁肥厚を呈し漿膜下層には膿瘍形成を伴う胆嚢腺筋腫症と診断された. 悪性所見はなかった. 慢性胆嚢炎と胆嚢癌との鑑別にはmucosal lineの確認が重要である.
  • 松田 信介, 永井 盛太, 鈴木 英明
    2008 年 22 巻 4 号 p. 530-535
    発行日: 2008/10/31
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    症例 : 39歳, 男性. 交通事故で腹部を打撲し, 他院に肝挫傷の診断で10日間入院した. 受傷後20日目, 黄疸が出現, 入院となった. 入院時, 黄疸 (T-Bil ; 6.6mg/dl) と肝機能異常がみられた. 腹部CT, USでは肝門部に大きさ3cmの嚢胞性病変がみられ, 肝内胆管は軽度拡張し, 胆嚢も腫大していた. MRCPでも肝門部に嚢胞性病変があり, 三管合流部直下に胆管狭窄がみられたため, PTBDを施行した. PTBD造影では三管合流部直下から2.5cmにわたって総胆管に狭窄がみられたため, 狭窄部を越えて下部胆管内にチューブ先端を留置した. 胆汁細胞診では悪性所見はなく, 外傷性胆管狭窄の診断で胆管チューブを12Frまで太くし, 内瘻化後退院した. 内瘻化チューブを16Frとした後, PTCSを施行したが, 炎症所見のみであった. PTBD後6カ月でチューブを抜去した. 抜去後1年目のMRCPでも再狭窄はみられなかった.
  • 高澤 磨, 藤田 直孝, 野田 裕, 小林 剛, 伊藤 啓, 洞口 淳, 尾花 貴志, 中原 一有
    2008 年 22 巻 4 号 p. 536-543
    発行日: 2008/10/31
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    減黄目的に, 切除不能悪性胆道狭窄の3例に対して, 経胃経肝的Endosonography-guided biliary drainage (ESBD) を施行した.
    ESBDは, 超音波内視鏡ガイド下に経胃的な肝内胆管への穿刺の後に, テーパードカテーテルやバルーンカテーテルによる瘻孔部の拡張を行い, ステントを留置する手技である. 症例1 : 76歳女性. 切除不能胆管癌にて, 内視鏡的胆管ドレナージ (EBD : Endoscopic biliary drainage) にてステントを留置していた. 癌浸潤にて胆管が分断され, 左肝管へのガイドワイヤーの挿入が困難であり, 左肝管に対してESBDを施行した. 症例2 : 62歳男性. 胆嚢癌術後再発による胆管狭窄に対して留置したステント閉塞が頻回となり, 左肝管へのESBDを施行した. 症例3 : 84歳女性. 肝内胆管癌術後再発による閉塞性黄疸と診断. 胆管空腸吻合術後で十二指腸への内視鏡的アプローチが困難で, 右肝管 (左葉切除後) へESBDを施行した.
    経胃経肝的ESBDは, EBD不成功例や, 閉塞胆管の状況に応じて選択肢の一つとなる有用なドレナージ方法と考える.
  • 二川 康郎, 恩田 真二, 藤岡 秀一, 岡本 友好, 矢永 勝彦
    2008 年 22 巻 4 号 p. 544-550
    発行日: 2008/10/31
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    症例は73歳, 女性. 腹部違和感を主訴に来院. 造影CTで胆嚢頚部に20mm大の結石と壁肥厚を認め, 肝門部から右肝内グリソン鞘にかけ軽度造影効果を伴う低濃度腫瘤が認められた. 同腫瘤と胆嚢壁肥厚部はMRIT1強調像で低信号, T2, 拡散強調像で高信号を示し, ERCで上部胆管から右肝管にかけスムースな狭窄を認めた. 以上より完全に悪性疾患は否定できないが, 胆石胆嚢炎で胆嚢頚部の炎症が肝門部に波及したMirizzi症候群と診断した. しかし入院後25日目に閉塞性黄疸を認め, ERC, CT所見で上部胆管から左肝管起始部, 右は前後区域枝分岐部まで胆管狭窄は強く拡がり, 肝門部に浸潤する胆嚢癌と診断し, 肝右葉切除術を施行した. 病理組織検査では線維化の強い組織球主体の炎症を認め, 黄色肉芽腫性胆嚢炎と診断された. 2次分枝レベルまでの広範な肝内グリソン鞘への炎症を伴い, 進行胆嚢癌との鑑別に難渋した黄色肉芽腫性胆嚢炎の1例を経験したので報告した.
  • 木村 公一, 古川 善也, 〓田 幸央, 花ノ木 睦巳, 坂野 文香, 久留島 仁, 松本 能里, 山本 昌弘, 宇都宮 徹, 藤原 恵
    2008 年 22 巻 4 号 p. 551-557
    発行日: 2008/10/31
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    症例は57歳, 女性. 掻痒感を主訴に近医を受診した. CTで巨大肝嚢胞による閉塞性黄疸が疑われ, 当科に紹介入院した. 血液生化学検査ではビリルビン値, 肝胆道系酵素の上昇を認めた. CT, エコーで肝S4に約12cmの肝内胆管を圧排する嚢胞性病変を認め, 末梢胆管は拡張していた. 嚢胞壁に明らかな肥厚は認めなかった. ERCで, 嚢胞性病変の胆管圧排による閉塞性黄疸と考えられたが, 内視鏡的経鼻胆管ドレナージでは減黄不良のため, 経皮的嚢胞ドレナージを施行したところ, 褐色調の壊死物を混じた内容物が流出し, 嚢胞の縮小とともに黄疸は軽快した. ドレナージ液の細胞診で7度目にclass Vを認め, 典型的ではないが嚢胞腺癌を疑い拡大肝左葉切除術を施行した. 病理組織学的には高分化腺癌で, 嚢胞形成性胆管細胞癌と診断した. 肝嚢胞との鑑別が困難な壊死を伴う嚢胞形成性胆管細胞癌は稀であり, 臨床上注意すべき症例と考えられた.
  • 旭吉 雅秀, 千々岩 一男, 大内田 次郎, 今村 直哉, 永野 元章, 甲斐 真弘, 近藤 千博
    2008 年 22 巻 4 号 p. 558-562
    発行日: 2008/10/31
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    胆嚢摘出術時の術中胆管損傷後10カ月を経過した総肝管完全閉塞症例に, 磁石圧迫吻合術を施行, 閉塞部が再疎通し, 治療後2年以上経過した現在, 良好な結果を得ている1例を経験したので報告する.
    症例は69歳の女性で, 胆嚢結石症に対する腹腔鏡下胆嚢摘出術中に炎症が激しく小開腹へと変更になり, 三管合流部で胆管を損傷した. Tチューブを留置して手術を終了したが, 術後7カ月経過して閉塞性黄疸が出現した. 経皮経肝胆道ドレナージで総肝管の完全閉塞を認め当科に紹介となった. 閉塞部は瘢痕性に完全閉塞していたため, 磁石圧迫吻合術を行った. 本法は強力な磁石を密着させ合うことで目的とする臓器に吻合口を形成するものであり, 本症例では施行後35日目に再疎通を確認し, 18Frの内瘻化チューブステントを留置した. ステントは3カ月留置した後に抜去した. 治療後2年3カ月の現在, 胆管の再狭窄の所見や臨床症状は認めず, 経過良好である.
  • 松村 直樹, 徳村 弘実, 安本 明浩, 佐々木 宏之, 武者 宏昭, 高橋 賢一, 豊島 隆, 舟山 裕士, 山下 安夫
    2008 年 22 巻 4 号 p. 563-569
    発行日: 2008/10/31
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    術前診断し腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した出血性胆嚢炎の2例を経験した. 症例1は40歳代女性. 腹痛により入院. 発熱, 高度炎症所見, 黄疸を認めた. エコーで胆嚢は腫大し著明な壁肥厚, 内部には不整で塊状でsludge様の高輝度像を認めた. 保存的加療で軽快せず手術した. 病理所見では胆嚢の壁肥厚と内腔に凝血塊, 限局性の潰瘍を認めた. 症例2は40歳代女性. 右季肋部痛と嘔吐あり, 発熱, 炎症所見, 黄疸を認め入院. エコーで胆嚢は腫大し内部にsludge様の高輝度の塊をみた. MRCPで塊は中~高信号と多様で, 血液の貯留が疑われた. 急性胆嚢炎の診断でPTGBD施行し胆汁は血性であった. 胆汁培養は陰性であった. 切除胆嚢は壁が一部壊死性で内腔は暗赤色で弾性軟の凝血塊を認めた. 組織検査では, 胆嚢壁は肥厚し全層性に炎症性細胞の浸潤と壊死所見を認めた. 今症例では, 入院時, 出血性胆嚢炎は止血されていたが, 血餅をエコーで診断し, 治療しえた.
  • 武田 洋平, 澤木 明, 石川 英樹, 伯耆 徳之, 高木 忠之, 高山 玲子, 重川 稔, 清水 泰博, 谷田部 恭, 山雄 健次
    2008 年 22 巻 4 号 p. 570-575
    発行日: 2008/10/31
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    膵胆管合流異常 (Pancreaticobiliary maljunction : 以下, PBM) に合併した胆嚢管癌の1例を経験した. 症例は58歳, 女性. 検診で胆嚢壁肥厚を指摘され精査目的に来院した. USでは胆嚢頚部に壁肥厚を認め, DIC-CTでも同様の所見を認めた. ERCPではPBMを認めた. また胆嚢は造影されず, 胆嚢管内に陰影欠損を認めた. IDUSでは胆嚢管内に腫瘤像を認め, 胆管は異常所見を認めなかった. EUSはラジアル走査式では胆嚢管の病変は描出困難であったが, コンベックス走査式では胆嚢管内に充実性腫瘤を認めた. PBMに合併した胆嚢管癌と診断し手術を行った. 病理組織学的には主として胆嚢管に存在する乳頭管状腺癌で全周性に漿膜下層まで中分化管状腺癌の形態で浸潤していた. PBMは胆道癌の合併頻度が高いことで知られるが, 一方で胆嚢管癌を術前に診断することは困難である. 術前診断し得たPBMに合併した胆嚢管癌の1例について文献的考察を加えて報告した.
胆道専門医講座 (2) 長期生存が可能なss胆嚢癌の基礎知識
「第二回 診断の立場から US」
  • 松田 正道, 渡邊 五朗
    2008 年 22 巻 4 号 p. 576-580
    発行日: 2008/10/31
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    長期生存が可能なss胆嚢癌のUS像について概説した. そのUS像は, 胆嚢壁最外の高エコー層が保たれているという条件下に, (1) 隆起を主体とし, 腫瘍内部がほぼ均一な実質様エコーを示し早期癌に類似するもの (早期類似ss癌), (2) 乳頭状の小病変で, 粘膜面での増生とともにss浅層への広汎な浸潤を示し, 深部が不整低エコーとして表現されるもの (乳頭浸潤型小病変), (3) 壁肥厚を主体とする限局性病変で, 第1層の高エコー層が境界エコーとして明瞭に描出され, ss浅層の浸潤巣が低エコーを示すもの (平坦浸潤型小病変) に分類される. 胆嚢癌のUS像を読み込むには, 病変が粘膜での増生を主体としたものか, あるいは壁内での浸潤部を表現したものか, 腫瘍全体の増生のありかたから病変の形態を理解していく必要がある.
「第二回 診断の立場から CT」
  • 佐田 尚宏, 小泉 大, 笠原 尚哉, 安田 是和
    2008 年 22 巻 4 号 p. 581-590
    発行日: 2008/10/31
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    多検出器CT (MD-CT) 導入により, CT診断は劇的に変化した. workstationを利用することで以前のフィルム出力と比べ情報量は飛躍的に増加し, 多彩な病変描出法による, より緻密な診断が可能となった. MD-CTの空間解像度・時間解像度は, 他の診断modalityと比較して飛躍的に高いが, 組織解像度は内視鏡超音波検査 (EUS), MRIより劣っている. そのため, 詳細な診断には造影剤の使用が必須となり, 胆道系の評価には経静脈的造影剤を使用したdynamic studyおよび胆道移行造影剤を使用したDIC-CTが有用である. 胆嚢癌, 特に長期生存可能なss以浅の胆嚢癌を診断するために重要なのは, 胆嚢内隆起性病変, 不均一・限局性の胆嚢壁肥厚を詳細に検討し, 評価することである. そのためにMD-CTは, EUSと並んで重要かつ有用なmodalityである. 早期胆嚢癌でも隆起性病変の割合は30.9%と比較的低く, 胆嚢癌の存在診断では平坦型胆嚢癌の存在を常に念頭に置くべきである. 急性胆嚢炎例における平坦型胆嚢癌の合併, segmental typeの胆嚢腺筋腫症と胆嚢癌との鑑別には特に注意する必要がある.
「第二回 診断の立場から EUS」
  • 廣岡 芳樹, 伊藤 彰浩, 川嶋 啓揮, 春日井 俊史, 丹羽 康正, 後藤 秀実
    2008 年 22 巻 4 号 p. 591-599
    発行日: 2008/10/31
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    長期生存可能なss胆嚢癌において, 超音波内視鏡検査が寄与しうる点は次の3点だと考えられた. 1. ss浸潤部の深さが浅い (癌のssへの浸潤量が少ない) かどうか, 2. リンパ節転移の有無, 3. 肝十二指腸間膜浸潤の有無.
    1 : 第二層低エコー層に腫瘍エコーが存在する場合にはSSまたはHinf1a以浅と診断することになる. また, 腹腔側進展の場合には明らかな第三層高エコー層への浸潤を認めない場合にSS浅層と術前診断可能である.
    2 : B-mode画像だけでのリンパ節良悪性診断率は満足できるものではない (sensitivity : 67%, specificity : 82%, accuracy : 76%). EUS-FNA (EUS guided fine needle aspiration) を用いた良悪性診断の当科における成績はsensitivity : 93%, specificity : 100%, accuracy : 95%と高率であったが, 複数のリンパ節の良悪性診断を同時に施行可能な造影カラードプラ断層法が有用である (sensitivity : 100%, specificity : 87.5%, accuracy : 93.7%).
    3 : エラストグラフィーが診断に貢献できる可能性があるが, 今後の検討を要する.
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