胆道
Online ISSN : 1883-6879
Print ISSN : 0914-0077
ISSN-L : 0914-0077
6 巻, 2 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 内山 勝弘, 高田 忠敬, 安田 秀喜, 長谷川 浩, 土屋 繁之, 三須 雄二, 岩垣 立志, 山川 泰彦, 四方 淳一
    1992 年 6 巻 2 号 p. 115-122
    発行日: 1992/05/25
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    急性胆嚢炎の手術時期には,緊急,早期,待期手術があるが,欧米では腹腔鏡下胆嚢摘出術も適応されつつある.したがって,急性胆嚢炎の治療法の選択には,入院時に病態ならびに重症度を的確に把握することが重要である.本研究では急性胆嚢炎112例を超音波所見より3群に分類し,既報の臨床的重症度,急性疾患の重症度判定に用いられるAPACHE II scoreと対比するとともに,腹腔鏡下胆嚢摘出術の適応についても検討した.超音波分類は,1度;走査時圧痛,胆嚢腫大,壁肥厚,2度;sonolucent layer,胆嚢内debris,肝床部・胆嚢壁内型胆嚢周囲膿瘍,3度;腹腔型胆嚢周囲膿瘍,fluid collection,胆管所見,肝膿瘍所見である.これらの超音波分類は臨床的重症度とよく相関した.また,APACHE II scoreでも各群間に差を認め,1度が軽症,2度が中等症,3度が重症に相当した.手術所見は,1度は胆嚢の炎症性変化軽度,2度は半数近くが炎症性変化高度,3度は広範囲の炎症性変化を認めた.1度,2度には保存的治療後に腹腔鏡下胆摘術を含めた待期手術が,3度には緊急・早期手術が治療法の基準になると考えられた.
  • 特に胆嚢収縮動態と血中CCK分泌動態による胆石発生機序の解明
    緑川 武正, 生田目 公夫, 成原 健太郎, 仲吉 昭夫
    1992 年 6 巻 2 号 p. 123-131
    発行日: 1992/05/25
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    胃切除術後に発生する胆嚢結石症について,その原因を解明するため胆嚢収縮動態,血中CCK分泌動態の他諸因子に関して検討した.発生率は11.8%,発見時期は平均2年2カ月と比較的早期であり,自然消失率も34.8%と高率であった.切除術式別発生頻度は胃全摘例に高率で,再建術式別ではRoux-Y例に高く,かつ非生理的再建例に高い傾向がみられ,郭清度別ではR2以上に有意に高率であった.術後空腹時胆嚢面積は拡張傾向を示した.術後内因性胆嚢収縮動態検査は,初期相で急速に収縮,再拡張し,有意な低緊張状態を示した.外因性胆嚢収縮動態検査では有意差は認めなかった.術後血中CCK分泌動態は,急峻な一過性の高分泌反応を示し有意差を認めた.以上,胃切除後胆嚢結石症の発生要因として,リンパ節郭清による迷走神経切離ならびに胆嚢壁CCK受容体の感受性低下による胆嚢収縮能低下および胆嚢緊張状態が,重要な発生要因であると考えられた.
  • 国村 利明, 諸星 利男, 神田 実喜男
    1992 年 6 巻 2 号 p. 132-138
    発行日: 1992/05/25
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    各種肝疾患においては多彩な細胆管の再生像がみられる.今回われわれは,再生細胆管の発生母地を検討する目的で原発性胆汁性肝硬変(PBC)9例,先天性胆道閉鎖症(CBA)10例の生検および剖検例を用い,病理組織学的,免疫組織学的,電顕的検索を行った.光顕的に再生細胆管には,明るい細胞質を有し内腔を認め横断面として観察されるI型細胆管と,暗い細胞質を有し内腔に乏しく縦断面として観察されるII型細胞管とが認められた.PBCではII型がほとんどを占め,CBAでは拡張したI型が優位であった.免疫組織学的には,I型は胆管上皮類似の,II型は肝細胞と胆管上皮双方に類似した染色性を示した. 電顕的に,I型は細胞内小器官に乏しく基底膜を有していたが,II型は大型ミトコンドリアに富み基底膜を有していなかった.以上より,胆管上皮も肝細胞も再生細胆管の発生母地となり得るが,原疾患によって一次性に障害される胆管の部位によって,その発現形態が異なると考えられた.
  • 瀧藤 克也, 谷村 弘, 永井 祐吾, 上畑 清文, 寺下 史朗, 内山 和久, 佐々木 政一
    1992 年 6 巻 2 号 p. 139-148
    発行日: 1992年
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    超音波内視鏡(EUS)の胆石症に対する診断能を検討した.1)摘出胆石を3.5,7.5,12MHzで走査し,3種のファントム像を分析した結果,コレステロール胆石は周波数を上げると胆石の内部エコーが消失し,薄く強い表面エコーのみとなった.ビリルビン石も音響陰影が出現し,厚く強い表面エコーのみとなった.黒色石は胆石全体が高エコーを示し,音響陰影が出現した.2)胆嚢結石20症例,総胆管結石症10例に対しEUSを施行し,他の検査で描出できなかった2例の胆嚢頸部結石が診断し得た.総胆管結石は全例に胆石の描出が可能であった.質的診断も87%に可能であり,EUSは胆石症,とくに総胆管結石症の存在および質的診断,さらに治療方針の決定に有用であった.
  • 大藤 正雄
    1992 年 6 巻 2 号 p. 149-154
    発行日: 1992/05/25
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    胆石の体外衝撃波破砕療法は,これまで衝撃波発生方式により装置が異なり,使用条件や治療成績に差がみられる.わが国においては,これまで治験として臨床応用が続けられてきた.今後,本法が胆石治療法として正しく評価され発展するには,異なる種類の装置を使用した各施設での成績にもとづいて,その有効性と安全性また治療法としての問題点を明らかにすることが必要である.そこで,本法の臨床応用を積極的に試みている全国施設について,臨床応用の状況ならびに関連する問題点についてアンケート調査を行った.
  • 岡本 篤武, 鶴田 耕二, 神沢 輝美, 伊澤 友明, 田畑 育男, 田中 良明
    1992 年 6 巻 2 号 p. 155-162
    発行日: 1992/05/25
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    肝門部から下部胆管まで進展した広範囲胆管癌5例に対し,肝葉切除と膵頭十二指腸の合併切除を施行したが,4例において腫瘍の剥離面や胆管切断端で癌陽性となり非治癒切除となった.これらの非治癒因子に対して,補助療法として術中照射療法を併用し,3例に術後外部照射を追加した.1例が3年以上生存,1例は1年7カ月健在であるが2例は1年以内に再発死亡し,胆管切断端に術中照射を行った1例は,肝膿瘍から敗血症を併発して術後早期に死亡した.本治療を行う際には,特に癌の肝側胆管への進展範囲の評価が重要である.胆管断端に対する術中照射は1,500cGyの線量にとどめ,術後は外部照射の追加により腫瘍致死線量を補う方法が安全と考えられた.肝十二指腸間膜に対する術中照射では,合併症はなかった.その延命効果は未だ評価できないが,1例で3年4カ月の長期生存が得られた.
  • 齋藤 博哉, 桜井 康雄, 影井 兼司, 高邑 明夫, 長谷川 貴, 花輪 真, 臼渕 浩明, 鎌田 正, 森田 穣, 入江 五朗
    1992 年 6 巻 2 号 p. 163-169
    発行日: 1992/05/25
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    PTBD後の肝内胆管非拡張例12例(胆管癌11例,乳頭部癌1例)に対し,全区域ドレナージ,経皮経肝胆道鏡,放射線腔内照射,EMS留置の目的で,経皮経肝逆行性胆道ドレナージ(PTRBD) により14本のルートを造設した. 全例容易に造設可能で, 合併症はなかった.
    本法は既設のPTBDルートから対葉の導出胆管枝の可及的末梢までカテーテルを挿入,ガイドワイヤーの硬性の部分で胆管壁,肝実質を穿破し,正側透視下に止血鉗子でガイドワイヤーを抜き取り,ドレナージチューブを留置する方法である.左右いずれの胆管からもアプローチ可能であり,また,4次分枝以下の胆管で穿破するため,脈管の損傷の可能性は極めて低く,PTCS,腔内照射,EMS留置のルートとして有用であった.PTRBDは減黄後の胆管非拡張例でのルート造設に有用な方法と考えられた.
  • 岡田 喜克, 末永 昌宏, 杉浦 勇人, 国場 良和, 上原 伸一, 大輪 芳裕
    1992 年 6 巻 2 号 p. 170-175
    発行日: 1992/05/25
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    本邦では4例目と極めて稀なMultiseptate gallbladderの1例を報告する.症例は52歳の男性で,食後の臍周囲痛にて入院した.腹部USにて胆嚢内腔は多数の薄い隔壁で不規則に仕切られブドウの房状を呈した.腹部CT,ERCP,PTCおよびBTGBなどを施行し,Multiseptate gallbladderと診断したが,腹部血管撮影で肝右葉前区域に腫瘍濃染様所見を認めたため,胆嚢摘除術および肝右葉前区域切除術を施行した.摘出胆嚢の軟線撮影にて胆嚢内部の多数の繊細な隔壁像が極めて明瞭に描出された.組織学的所見では,胆嚢上皮は殆ど剥離し,壁の線維性肥厚および慢性炎症細胞浸潤を認めた.隔壁上皮も剥離していたが,胆嚢壁の固有筋層は隔壁中へ移行していた.切除肝の検索では腫瘍性病変や血管性病変は認められなかった.極めて稀なMultiseptate gallbladderの種々の画像が得られたので,文献的考察を加えて報告した.
  • 森下 浩, 亀井 克彦, 船曵 孝彦, 丸上 善久, 福井 博志, 松原 俊樹, 二渡 久智, 山口 久, 長谷川 茂, 新井 一史, 森 ...
    1992 年 6 巻 2 号 p. 176-183
    発行日: 1992/05/25
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    非拡張型膵胆管合流異常に胆嚢癌, 微小胆管癌を合併した症例を経験した. 本報告例は58歳の女性で心窩部痛にて豊田地域医療センターに入院,胆石症および急性膵炎の診断で準緊急手術として,胆嚢摘除術,総胆管切開,T-tube挿入,膵床ドレナージ術が施行された.術中胆道造影にて膵胆管合流異常を認め,病理の結果で胆嚢癌と診断されたため,根治手術目的にて転院した.当科にて肝外胆管切除,肝床切除,肝管空腸Roux-Y吻合を施行したが,切除標本の病理所見でT-tube圧痕に一致した胆管の一部に極く微小な癌を認めた.この病理組織像より本症例の胆管癌の発生には,膵胆管合流異常に伴う膵液の混和,うっ滞に加え,T-tubeの機械的刺激も何らかの形で関与した可能性が示唆された.非拡張型膵胆管合流異常に対しては,胆嚢癌の存在のみでなく,その胆管粘膜は発癌準備状態にあるので,積極的に分流手術をすることが望ましいと考えさせられる1例であった.
  • 松山 秀樹, 松尾 成久, 鏑木 祐二, 小松 永二, 広瀬 哲也, 大井 至, 羽生 富士夫, 中村 光司, 吉川 達也, 新井田 達雄, ...
    1992 年 6 巻 2 号 p. 184-190
    発行日: 1992/05/25
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    高度な慢性胆嚢炎を伴った胆道非拡張型膵胆管合流異常(以下,合流異常)の1例を経験した.症例は24歳,男性.左側腹部痛,下痢を主訴に来院し,腹部超音波検査で著明な胆嚢壁肥厚を指摘され入院となった. ERCPでは副膵管様の結合枝のみが高位で胆管と合流しており,共通管,主膵管は主乳頭で別々に開口していた.胆石,膵石はなく,胆管最大径は8mmで,胆嚢は軽度腫大し,体部にくびれがみられた.膵胆管合流異常,胆嚢腺筋症の診断で胆嚢摘出術を施行した.病理組織所見では胆嚢の体底部に繊維化による著明な壁肥厚を認め, 粘膜には過形成がみられた. 胆道非拡張型合流異常の発見は容易ではないが,胆嚢壁肥厚には合流異常の存在を念頭に置く必要があると考えられた.
feedback
Top