胆道
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37 巻, 5 号
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原著
  • 奥薗 徹, 伊藤 聡司, 齋藤 宏章, 安田 将, 宮本 浩一郎
    2023 年 37 巻 5 号 p. 845-850
    発行日: 2023/12/31
    公開日: 2023/12/31
    ジャーナル 認証あり

    急性胆嚢炎の中で緊急手術の適応がなく,かつ待機的な手術を予定する症例に対して,経皮的胆嚢ドレナージが行われている.長期入院や疼痛などの課題があり,その代替手段としてのendoscopic ultrasound-guided gallbladder drainage(EUS-GBD)が期待されているが,主に切除を前提としない症例で行われている.今回,経胃的にドレナージを行うことで腹腔鏡下胆嚢摘出術を行うことが可能になるという仮説のもとで,新規開発したデバイスを用いてEUS-GBDを行った後の5例の生体ブタに対して腹腔鏡下胆嚢摘出術を行った.いずれも開腹移行することなく,胆嚢摘出術を行うことが可能であった.今後はヒトにおいて同デバイスを用いたEUS-GBD後の腹腔鏡下胆嚢摘出術の実現可能性や安全性について検証していきたい.

  • 瀧浪 将貴, 金子 淳一, 木内 亮太, 神藤 修, 坂口 孝宣, 鈴木 昌八
    2023 年 37 巻 5 号 p. 851-856
    発行日: 2023/12/31
    公開日: 2023/12/31
    ジャーナル 認証あり

    透視下内視鏡では,術者が透視モニターを見ていないのにX線照射される不要な被ばく時間を低減しなければならない.透視モニターへの視線の有無を推定する人工知能機器を開発し,有効性の評価のため機器使用群8例と不使用群7例を比較した.X線照射時間の中央値は,277.4秒と366.5秒(p=0.61).連続5秒以上の不要な被ばく回数は0回(四分位範囲:0-1.5)対6回(4-10),p=0.013,不要な被ばく割合は2.3%対33.3%,p=0.017で共に使用群が少なかった.時間あたりのX線照射回数は5.9回(5.1-7.9)対2.6回(1.7-2.7)と使用群が多かった(p=0.0003).非使用群では,X線照射中の視線ありとありの間の視線がない時間により不要な被ばく割合が増えた.視線推定機器の使用により,X線照射回数を増やして視線がない時間をX線非照射にすることで,不要な被ばく時間を減らした.

  • 浦岡 未央, 船水 尚武, 坂元 克考, 高田 泰次
    2023 年 37 巻 5 号 p. 857-863
    発行日: 2023/12/31
    公開日: 2023/12/31
    ジャーナル 認証あり

    優れた空間分解能を有するCTにより,3次元的に脈管の分岐形態を把握することが可能となった.術前の血管走行把握は安全に手術を行う上で必須である.特に膵頭十二指腸切除(PD)においては胃十二指腸動脈(GDA)を処理するにあたって,GDAと肝動脈(HA)との関係を把握しておくことは重要となる.当院で施行したPD 172例の術前CTを検討した結果,PD時に最も注意を要するのは,GDAから右肝動脈(RHA)が分岐する破格であった.これは0.28%から2.0%と比較的稀である.自験例では4例(2.3%)に同破格を認め,全例でRHAの温存が可能で,術後合併症はなかった.HA損傷予防のためには,術前3D構築画像でHAとGDAとの位置関係を把握するのみでなく,日本肝胆膵外科学会の推奨するGDA切離前のクランプテストが肝要である.

総説
  • 宇座 徳光, 松森 友昭
    2023 年 37 巻 5 号 p. 864-872
    発行日: 2023/12/31
    公開日: 2023/12/31
    ジャーナル 認証あり

    画像診断技術の進歩により胆道癌の局在診断および進展度評価は飛躍的に向上してきたが,確定診断および正確な進展度評価には組織採取に基づく病理学的評価が必須である.また近年,がんゲノム医療の時代を迎え,患者自身の遺伝情報に基づく個別化医療を提供するには,遺伝子パネル検査に耐えうる患者個々人の良質な組織採取が求められる.しかしながら,既存の手法を用いた胆道からの組織採取法には様々な課題が存在する.本稿では,胆道癌術前診断における留意点と,胆道癌病理学的評価のための組織採取,特に確定診断目的の経乳頭的胆管狭窄生検と進展度評価目的のマッピング生検の現状について概説する.また胆道癌診断における課題を克服する目的で開発した新デバイスの特徴とこれまでの成績,そして今後の展望にも触れる.

症例報告
  • 武井 沙樹, 竹下 明子, 森谷 敏幸, 高木 慎也, 佐藤 英之
    2023 年 37 巻 5 号 p. 873-879
    発行日: 2023/12/31
    公開日: 2023/12/31
    ジャーナル 認証あり

    症例は72歳男性.急性胆管炎による敗血症性ショックの診断で当院消化器内科へ入院した.CT検査で20mm径の結石が三管合流部の高さに嵌頓したことによる胆管炎が疑われ,緊急ERCPを施行したが結石除去は困難であった.ERCPやMRCP,DIC-CT所見からは総肝管胆嚢瘻を伴ったMirizzi症候群が疑われた.B2にERBD tubeを留置し,抗生剤および昇圧剤投与により胆管炎は軽快した.本症例は8年前にも総胆管結石性胆管炎で加療を受けており,当時のERCPでB6単独分岐型の破格を認めていたが,今回のMRCPおよびDIC-CTではこのB6分岐部が明らかでなく,同部位も瘻孔に巻き込まれている可能性が示唆された.上記の所見から,手術はB6を確実に温存する術式を選択することとし,開腹胆嚢部分切除術を施行した.術後胆管狭窄なく経過は良好であった.

  • 小中 義禎, 古志谷 達也, 三田 正樹, 三宅 敏彦
    2023 年 37 巻 5 号 p. 880-886
    発行日: 2023/12/31
    公開日: 2023/12/31
    ジャーナル 認証あり

    症例は65歳,女性.前医にて胆嚢癌,多発リンパ節転移の診断で化学療法中であった.閉塞性黄疸にて当科に紹介された.造影CTにて胆嚢体部に造影効果のある類円形の腫瘤を認め,肝門部から大動脈周囲に連続する著明なリンパ節腫大を認めた.MRIの拡散強調画像では病変部の拡散能の著明な低下を認めた.EUS下胆道ドレナージ後,リンパ節に対するEUS下穿刺吸引法にてneuroendocrine carcinoma(NEC)と診断した.CBCDA+VP-16療法を導入し,一時的にpartial responseとなったが,2クール目途中より胆嚢腫瘍の増大所見を認めた.腫瘍の肝浸潤部からも経皮的生検を施行したが同様の病理組織像であった.本症例では病期が進んでからの治療介入となったが,EUS下穿刺吸引法による組織診断を積極的に行うことで,希少癌に対しても適切な治療法を提供できる可能性がある.

  • Yifare Maimaitiaili, 福村 由紀, 高橋 敦, 市田 洋文, 佐野 勝廣, 石井 重登, 齋浦 明夫, 伊佐山 浩通, ...
    2023 年 37 巻 5 号 p. 887-895
    発行日: 2023/12/31
    公開日: 2023/12/31
    ジャーナル 認証あり

    73才男性.肝胆道系酵素上昇精査で遠位胆管腫瘍が見つかり,ERCP下生検後膵頭十二指腸切除術が施行された.遠位胆管に径30mm大,ポリープ状,充実性腫瘍あり.病理学的に骨巨細胞腫に酷似し,紡錘形腫瘍細胞と破骨型多核巨細胞の増殖を認めた.腫瘍基部にBiliary intraepithelial neoplasia(BilIN)あり,間質浸潤性の腺癌なし.巨細胞腫,結節性筋膜炎,炎症性偽腫瘍,退形成癌を鑑別に挙げ検索,免疫染色でSMA,Vimentin陽性,ごく一部でAE1/3陽性,Histone3.3G34W,ALK陰性.分子生物学的にMYH6::USP6(-),KRAS:mt.なお,BilIN成分はKRAS:wt.以上より破骨型多核巨細胞を伴う退形成癌と診断した.本症例は,核異型・浸潤性腺癌を欠き,病理診断に苦慮した.胆道の退形成癌の報告は稀で,予後など詳細は未だ不明である.

  • 後藤 貴宗, 清水 明, 窪田 晃治, 小松 大介, 野竹 剛, 増尾 仁志, 細田 清孝, 梅村 謙太郎, 蒲池 厚志, 富田 英紀, 山 ...
    2023 年 37 巻 5 号 p. 896-903
    発行日: 2023/12/31
    公開日: 2023/12/31
    ジャーナル 認証あり

    症例は73歳,女性.近医で腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行された.術後胆汁漏を来し,保存的に加療されたが感染コントロールが困難となったため,当院に転院となった.精査を行うとともに,前医術前画像と手術ビデオを確認したところ,胆嚢頚部に胆管前後区域枝が別個に合流する破格があり,これが離断されたことにより胆汁漏を来したと考えられた.術後2週間が経過しており,肝門部から肝周囲にかけて広範に膿瘍を形成していたため,胆道再建は困難と判断,ドレナージ後に肝切除を行う方針とした.肝門部に高度な癒着を認めたが,予定通り肝右葉切除を施行しえた.離断された胆管の同定は困難であった.胆嚢肝管は肝から胆嚢へ直接流入する胆管の破格であるが,本症例のように前・後区域枝がそれぞれ独立して胆嚢頚部に合流する破格は報告がない.今回,我々は胆管損傷を来した非常に稀な形態の胆嚢肝管の1例を経験したため文献的考察を加えて報告する.

  • 若林 時夫, 代田 幸博, 龍沢 泰彦, 上田 善道
    2023 年 37 巻 5 号 p. 904-911
    発行日: 2023/12/31
    公開日: 2023/12/31
    ジャーナル 認証あり

    症例は70歳,男性.胃癌術後経過観察目的の腹部単純CTで胆管拡張を指摘された.造影CTでは十二指腸乳頭(AV)の腫瘤像,上流胆管の拡張と壁肥厚を認めた.胆管腔内超音波検査では乳頭部胆管(Ab)から遠位胆管(Bd)に連続して全周性の壁肥厚を認めた.AbからBd末端部のブラッシング細胞診にてclass Vがえられたことから乳頭部癌の遠位胆管内進展の診断で,膵頭十二指腸切除術を施行した.術後病理では,乳頭部平坦状上皮内癌(FIC)と診断され,Bdおよび主膵管起始部に上皮内進展を認めた.また,乳頭部導管の粘膜固有層は炎症細胞浸潤,付属腺過形成および平滑筋増生により肥厚していた.FICは腫瘤を形成しないため無症状で画像による直接的な指摘も困難であり,浸潤癌を伴わない純粋な状態で発見されることは稀とされる.本例は随伴した慢性乳頭炎による画像変化が診断契機となった.

胆道専門医講座 硬化性胆管炎―診断と治療の進歩―
  • 川上 尚人
    2023 年 37 巻 5 号 p. 912-917
    発行日: 2023/12/31
    公開日: 2023/12/31
    ジャーナル 認証あり

    免疫チェックポイント阻害剤(ICI)は今や癌治療の中心的存在であり,ICIに起因する免疫関連有害事象(irAE)のマネジメントは癌診療医にとって,いまや必須のスキルである.ICI治療後に生じた1)閉塞のない肝外胆管の拡張 2)びまん性の肝外胆管壁肥厚 3)胆道系酵素優位な肝障害 4)抗核抗体や抗ミトコンドリア抗体やIgG4は正常または低値 5)CD8陽性T細胞の胆管浸潤といった特徴をもつ胆管炎を2017年に我々が報告して以降,症例報告が相次いだが,実際の発生頻度は0.05~0.7%とされ比較的稀な病態である.そのため確立した診断法や治療法がなく,臨床上の問題となっている.本稿ではirAE胆管炎の概念や,現時点での知見をもとにした診断・治療法について概説し,今後解決すべき課題について論じる.

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