胆道
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37 巻, 2 号
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第58回日本胆道学会学術集会記録
日本胆道学会認定指導医養成講座
  • 尾島 英知
    2023 年 37 巻 2 号 p. 139-148
    発行日: 2023/05/31
    公開日: 2023/05/31
    ジャーナル フリー

    胆管内乳頭状腫瘍(intraductal papillary neoplasm of the bile duct:IPNB)は,肝内および肝外の胆管内に高円柱状から立方状の腫瘍細胞が,線維血管間質を軸にして著明な乳頭状~絨毛状構築を示して増生する胆管癌の前癌・早期癌病変である.細胞異型の程度で,low gradeとhigh gradeに分類され,high gradeは上皮内癌に相当する.WHO分類第5版では,別項目立てされ病理学的に確立した疾患として詳細に記載されている.IPNBは膵管内乳状粘液性腫瘍(intraductal papillary mucinous neoplasm:IPMN)をカウンターパートとして確立され,膵IPMNと同様に粘液形質発現により,胆膵型pancreatobiliary type,腸型intestinal type,胃型gastric type,好酸型oncocytic typeの4種の亜型が提唱されている.しかし,膵IPMNに比して発生頻度や粘液産生を伴う症例が少なく,肝臓と肝外胆管の2臓器にわたる疾患概念であることから,未だコンセンサスが形成されていない部分も認められる.IPNBの基本的病理事項を概説後,この病変がもつ臨床病理学的意義,臨床医や病理医が直面する運用上の問題点に関して解説する.

原著
  • 室屋 大輔, 新井 相一郎, 橋本 和晃, 谷脇 慎一, 緑川 隆太, 小嶋 聡生, 名嘉眞 陽平, 吉富 宗宏, 佐々木 優, 岡部 義信 ...
    2023 年 37 巻 2 号 p. 149-154
    発行日: 2023/05/31
    公開日: 2023/05/31
    ジャーナル フリー

    切除不能悪性疾患を有する患者に発症した急性胆嚢炎は予後や癌治療に影響を与える.今回salvageで経皮経肝的胆嚢ドレナージ(Perctaneous transhepatic gallbladder drainage:PTGBD)施行した21例において検討を行った.平均年齢は72歳で62%が女性.原疾患は胆道癌8例,膵癌3例,他癌10例.急性胆嚢炎の原因は,癌による胆嚢管閉塞が13例であった.胆石性胆嚢炎は8例認めた.全例で胆嚢炎の改善を得ることができ,重篤な合併症は認めなかった.平均生存期間は7.7カ月で化学療法中の患者のうち92%が化学療法を再開できた.経乳頭的ドレナージ困難であった担癌患者の急性胆嚢炎に対するsalvage PTGBDは,症状改善および化学療法継続へ寄与すると考えられた.

  • 森 千浩, 北川 裕久, 武藤 純, 橋田 和樹, 河本 和幸
    2023 年 37 巻 2 号 p. 155-161
    発行日: 2023/05/31
    公開日: 2023/05/31
    ジャーナル フリー

    初回胆摘後にT2胆嚢癌と診断され,追加切除した12例を検討した.年齢中央値は75歳,術前診断は胆嚢癌疑い2例,他10例は良性胆嚢疾患であった.初回は通常胆摘5例,全層切除6例,亜全摘1例であった.追加切除は初回手術後50日で行われており,肝切除7例,肝外胆管切除7例,領域リンパ節郭清11例,R0切除11例であった.術後はClavien-Dindo分類Ⅲa以上の合併症なく,術後在院日数10.5日であった.癌遺残は3例,術後補助化学療法を3例で施行した.再発は2例,5年無再発生存率81.5%,5年全生存率91.7%であった.本邦の臨床試験の結果から今後S-1が術後の標準治療となることが期待されており,更なる予後改善が期待される.胆摘後にpT2胆嚢癌が判明した場合,根治を目指した二期的追加切除に加え適切な術後補助化学療法を行うことで良好な予後が得られる可能性がある.

総説
  • 樋口 亮太, 古川 徹, 本田 五郎
    2023 年 37 巻 2 号 p. 162-174
    発行日: 2023/05/31
    公開日: 2023/05/31
    ジャーナル フリー
    電子付録

    胆道癌の外科切除縁には胆管断端と剥離面が含まれる.

    胆管断端の評価は,胆道ドレナージチューブによる炎症のための上皮の再生・反応性異型,凍結切片での評価の困難性,付属腺/胆管周囲腺や壁内の導管が浸潤癌と類似,等の理由で経験豊富な病理医でも診断が難しい場合がある.胆管断端が浸潤癌陽性の予後は不良だが,追加切除の意義に対する意見は分かれる.上皮内癌陽性では短期的な予後は断端陰性と変わらないが,中長期的に再発を来す可能性がある.リンパ節転移がない早期の胆管癌では,上皮内癌陽性に対する追加切除が生存を改善する可能性がある.

    肝門部や肝十二指腸間膜では胆管と脈管の近接のため,剥離面の十分なマージンを確保しづらく,剥離面の浸潤癌陽性の場合は成績不良と報告されている.

    切除縁陽性例に対する術後治療で,上皮内癌と浸潤癌陽性を分けた報告はなくエビデンスは少ないが,化学療法や化学放射線療法に期待が持たれている.

  • 日比 泰造
    2023 年 37 巻 2 号 p. 175-184
    発行日: 2023/05/31
    公開日: 2023/05/31
    ジャーナル フリー

    肝門部領域胆管癌は完全切除のみが治癒を期待し得る難治がんで,日本の肝胆膵外科が大肝切除と血管・膵合併切除などを組み合わせ拡大手術を強力に推進し,予後を劇的に改善してきた.しかし診断時に切除困難・不能な患者の成績は極めて不良で,標準治療の薬物療法では5年生存率は10%未満に留まる.近年,欧米では厳格な選択基準のもと切除不能症例に集学的治療の一環として肝移植が行われている.米国では2009年に通常の移植適応として承認され,2012年時点に行われた多施設共同研究では5年無再発生存率65%と極めて良好な予後であった.筆者らが日本から提唱したtransplant oncologyという概念から肝門部領域胆管癌を思惟すると,腫瘍学的な根絶可能性=oncological eliminabilityを達成すべく切除と肝移植は相補的な役割を担うと考えられる.本邦が先導者としての使命を果たすことが期待される.

  • 髙橋 翔, 伊佐山 浩通
    2023 年 37 巻 2 号 p. 185-193
    発行日: 2023/05/31
    公開日: 2023/05/31
    ジャーナル フリー

    化学療法の発達により担癌患者の生命予後は格段に改善している.そのため悪性肝門部胆道閉塞(MHBO)を治療する際にはステント閉塞時のre-interventionを見据えて治療戦略を立てる必要がある.しかし,MHBOにおいては病変の進展範囲やドレナージすべき肝領域の評価が比較的難しく,ドレナージに使用可能なステントの種類や留置形態も多岐にわたるため,その治療戦略は一定ではなく,個々の症例によって治療法が異なることが珍しくない.MHBOの治療戦略は,re-interventionを考慮して交換可能なステントが主流になってくると考えており,患者の病悩期間全体のQOLを考慮した治療戦略の再検討が必要である.本稿では切除不能例を中心にMHBOに対する経乳頭,経消化管ドレナージについて最新の知見を交えて解説したが,確立されていない事項が多いため,今後のさらなるエビデンスの集積が期待される.

  • 川嶋 啓揮, 大野 栄三郎, 石川 卓哉, 山雄 健太郎, 水谷 泰之, 飯田 忠
    2023 年 37 巻 2 号 p. 194-202
    発行日: 2023/05/31
    公開日: 2023/05/31
    ジャーナル フリー

    2021年に日本消化器内視鏡学会と日本胆道学会から内視鏡的乳頭切除術(EP)診療ガイドラインが発行された.また,同年European Society of Gastrointestinal Endoscopyからもガイドラインが発行された.両者によりEPの適応,短期・長期成績などがまとめられた.管腔内進展をともなわない乳頭部腺腫に対するEPは良好な治療成績が報告されており適応とすることに異存はないと考えられる.膵管ステント留置(術後膵炎)やクリッピング(術後出血)による有害事象削減努力もなされているが,まだ有害事象の頻度は高いのが現状である.7~23%と比較的高い再発率も報告されており長期間の経過観察も必要である.さらに腺腫内癌例,水平進展例や管腔内進展例の治療方針など解決すべき課題も多い.今回は,ガイドラインの内容を中心に最近の報告の内容も追加してEPの現状と課題について総説する.

症例報告
  • 飛田 浩輔, 深澤 麻希, 大島 由佳, 白井 雄史, 鈴木 理之, 今泉 俊秀, 加藤 優子
    2023 年 37 巻 2 号 p. 203-211
    発行日: 2023/05/31
    公開日: 2023/05/31
    ジャーナル フリー

    症例は70代女性.胆管非拡張型膵・胆管合流異常を伴う胆嚢腫瘍を認め,胆嚢摘出術を施行し,高分化管状腺癌であった.5年後,閉塞性黄疸にて再来院,中部胆管腫瘍の診断にて胆管切除術を施行し,高分化管状腺癌であった.さらに6年経過し,膵内胆管内腫瘍を確認EUS-FNAにて高分化型腺癌と診断した.胆管非拡張型膵胆管合流異常において3度にわたり胆嚢胆管3カ所に異時性胆道癌発生を診断した.胆管非拡張型膵・胆管合流異常では,異時性胆道癌発生について慎重な長期経過観察が必要である.

  • 松本 謙一, 野田 剛広, 的羽 大二朗, 佐々木 一樹, 岩上 佳史, 山田 大作, 富丸 慶人, 高橋 秀典, 小林 省吾, 土岐 祐一 ...
    2023 年 37 巻 2 号 p. 212-219
    発行日: 2023/05/31
    公開日: 2023/05/31
    ジャーナル フリー

    本邦において,臓器移植後の胆嚢結石症・胆嚢炎に対する治療方針や周術期管理について詳細な報告は少ない.今回,当院で心,あるいは肺移植後患者に対し腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した10例の周術期管理法と治療成績について検討した.平均年齢は47歳.移植臓器は,心臓と肺が8例と2例であった.疾患は慢性胆嚢炎/総胆管結石/胆嚢結石症/急性胆嚢炎がそれぞれ6例/3例/2例/2例(重複あり).全例で待機的手術による腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し,開腹移行は認めなかった.免疫抑制剤は3剤の使用が9例,4剤の使用が1例.8例で術当日朝も内服継続し,術後は全例で術当日夕方から再開した.周術期に血中トラフ値の測定を行い,5例に投与量の変更を要した.いずれの症例も感染や拒絶等の合併症を認めず,安全に手術を施行可能であった.本研究は,臓器移植後患者における腹腔鏡下胆嚢摘出術の周術期管理の一助となることが期待できる.

  • 村上 崇, 清水 宏明, 野島 広之, 山崎 一人, 松本 智弘, 碓井 彰大, 小杉 千弘, 首藤 潔彦, 山崎 将人, 幸田 圭史
    2023 年 37 巻 2 号 p. 220-228
    発行日: 2023/05/31
    公開日: 2023/05/31
    ジャーナル フリー

    症例は60歳,男性.皮膚掻痒感と黄染を主訴に近医を受診した.血液検査で肝胆道系酵素上昇を認めた.造影CTでは左肝に50mmの濃染する腫瘍を認め,同部から肝門部領域胆管内に連続する病変を認めた.減黄後,左肝・尾状葉切除,中肝静脈合併切除,肝外胆管切除術を施行した.切除標本の左肝内に50×38mmの白色腫瘍を認め,主病変から境界明瞭な腫瘍が肝門部領域胆管内に進展し,腫瘍栓を形成していた.病理組織では,腫大した核と豊富な淡明細胞質からなる腫瘍細胞が増殖し,Synaptophysin,Chromogranin A陽性,MIB-1 indexは8%であったことから,肝原発神経内分泌腫瘍G2と診断した.さらに腫瘍細胞の免疫組織染色ではCK7+,CK19+と胆管上皮マーカー陽性であった.本症例は肝門部胆管腫瘍栓を伴う,きわめてまれな肝原発神経内分泌腫瘍の1例と考えられた.

  • 菅原 元, 南 貴之, 久留宮 康浩, 世古口 英, 成田 道彦, 山下 依子
    2023 年 37 巻 2 号 p. 229-238
    発行日: 2023/05/31
    公開日: 2023/05/31
    ジャーナル フリー

    症例は60歳台,男性.近医で黄疸を指摘され当院を受診した.CTで膵頭部背側に腫大したリンパ節を認め上流側の胆管が拡張していた.PTBDを施行し,胆管を造影すると下部胆管に狭窄を認めた.上部消化管内視鏡検査で十二指腸乳頭部に潰瘍を伴う隆起性病変を認め,生検の結果神経内分泌癌であった.手術直前のCTでは新たに門脈腫瘍栓を認めた.門脈腫瘍栓を伴う十二指腸乳頭部癌に対し,亜全胃温存膵頭十二指腸切除+門脈合併切除を施行した.病理組織学的検査では,十二指腸乳頭部神経内分泌癌pT3bN1M0と診断された.術後は肺小細胞癌に準じた化学療法を施行したが,多発肝転移を認め術後19カ月で死亡した.十二指腸乳頭部神経内分泌癌の過去22年間の本邦報告例は自験例を含め29例と少なく,十二指腸乳頭部癌による門脈腫瘍栓併発例は本例が2例目と稀であり,文献的考察を加え報告する.

  • 山田 翔, 寺田 卓郎, 三井 毅
    2023 年 37 巻 2 号 p. 239-245
    発行日: 2023/05/31
    公開日: 2023/05/31
    ジャーナル フリー

    症例は,54歳の女性.心窩部痛を主訴に紹介受診した.胆嚢結石症に対して腹腔鏡下胆嚢摘出術の方針となった.術前のMRCPでは胆嚢肝管の認識はできていなかった.術中,Calot三角背側を剥離中に索状物を認め,胆嚢動脈と判断し切離したところ胆汁漏出があり,胆嚢肝管損傷(離断型胆管損傷)と診断した.術中胆管造影を施行し,胆嚢肝管の支配領域はS5の一部と小範囲であったため,離断された胆嚢肝管に対して胆管アブレーションを行った.術後胆汁漏は認めず,術後11日目に退院した.術後6カ月の画像では,胆管アブレーション後の肝は委縮し,リピオドール集積は良好で,残存する肝内胆管拡張や膿瘍形成は認めなかった.腹腔鏡下胆嚢摘出術中の胆嚢肝管損傷に対して,胆管アブレーションが術後胆汁漏回避に有効であった症例を経験したので報告する.

  • 永田 祐貴, 前村 公成, 山尾 幸平, 飯野 聡, 濵田 信男, 末吉 和宣
    2023 年 37 巻 2 号 p. 246-251
    発行日: 2023/05/31
    公開日: 2023/05/31
    ジャーナル フリー

    症例は77歳女性.他病精査のCTで偶発的に膵頭部近傍に長径約90mm大の腫瘤を指摘された.EUS-FNA組織診の結果から十二指腸神経内分泌癌(Neuroendocrine carcinoma:NEC)と診断し亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した.病理組織検査では,膵頭部近傍の腫瘤は一部リンパ組織が残存しておりリンパ節転移と考えられた.大部分がNEC成分で,腺癌,軟骨肉腫の成分も伴っていた.摘出標本で胆嚢底部に25mm大の結節性病変があり,病理組織学的には腺癌成分と軟骨肉腫成分から成り立っていた.また,12cリンパ節にも転移を認め,NEC成分のみであった.以上より腺癌,軟骨肉腫からなる胆嚢癌肉腫で,リンパ節転移の過程でNECへ分化したと診断した.本症例は興味深い転移形式を呈しており,腫瘍発生を考える上で貴重な症例であると思われたため報告する.

Video Reports
胆道専門医講座 硬化性胆管炎―診断と治療の進歩―
  • 赤松 延久
    2023 年 37 巻 2 号 p. 257-264
    発行日: 2023/05/31
    公開日: 2023/05/31
    ジャーナル フリー

    非代償性肝硬変に至った原発性硬化性胆管炎(PSC)は肝移植が唯一の選択枝である.脳死肝移植においては,Child-Pugh C以上が適応とされ,生体肝移植ではChild B相当でも適応である.日本の肝移植においてPSC患者が占める割合は5%であり,2021年末までに372例のPSCに対する肝移植が実施された.PSCレシピエントの移植後1,5,10年生存率は84%,74%,60%であり,他の移植患者より有意に不良である.その主たる原因はグラフト肝へのPSC再発である.移植後25%の症例に再発をみとめ,再発を認めたレシピエントのグラフト生存率は10年で18%と極めて低い.再発に対する危険因子解析ではドナー年齢45歳以上(HR1.65 p=0.003)と1年時使用免疫抑制剤1剤以下(HR2.38 p=0.011)が独立因子であった.

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