胆道
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27 巻, 4 号
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第48回日本胆道学会学術集会記録
日本胆道学会認定指導医養成講座
  • 正田 純一
    2013 年 27 巻 4 号 p. 672-679
    発行日: 2013/10/31
    公開日: 2013/12/05
    ジャーナル フリー
    胆石は胆嚢あるいは胆管の胆道内に生じた固形物である.胆石はその存在部位と構成成分により,背景病態や生成の機序が異なる.胆石はその主要成分により,コレステロール胆石,色素胆石(ビリルビンカルシウム石と黒色石),稀な胆石に分類される(日本消化器病学会胆石症検討委員会1986年).日本人の胆石症の頻度・種類は欧米並となり,胆嚢結石ではコレステロール胆石が約70%程度を占めるようになり,また,黒色石が増加している.胆石の成因は胆石の種類により異なるが,それらの形成機序は,胆石主要構成成分の胆汁における過剰排泄,それに伴う結晶化による析出,さらに,胆道系における結晶の迅速な成長からなる.成因の理解のためには胆汁の生成,分泌,濃縮の生理学の知識も必要となる.本稿では,胆石症診療ガイドライン(2009年)における「胆石症の病態と疫学」の内容に触れながら解説をおこないたい.
  • 近藤 福雄
    2013 年 27 巻 4 号 p. 680-688
    発行日: 2013/10/31
    公開日: 2013/12/05
    ジャーナル フリー
    胆管内乳頭腫瘍IPNBと胆管嚢胞腺腫瘍MCNの鑑別法として,胆管との交通,卵巣様間質の有無が重要とされている.しかし,その問題点もある.胆管との交通は,画像的にも病理的にも,検索困難な場合がある.また,卵巣様間質はその本体が未だ解明されておらず,異所性卵巣か,線維芽細胞かが確定されていない.また,IPNBとMCNは中間的病態を認めない異なる疾患単位であるのか,それを認める異なるサブタイプであるのか,疾患概念の解釈の問題も存在する.胆管上皮内腫瘍BilINの分類は胆管上皮性腫瘍の異型度を表すのに非常に便利であり,多段階発癌の段階の解釈としても有用である.しかし,この理解のみで解決できない診断困難な組織所見も存在する.このような病理診断の限界に対し,今後さらに努力を重ねる必要がある.最後に,胆道癌取扱い規約の病理所見に補足的説明を加えた.
  • 渡邊 五朗, 佐々木 一成, 松田 正道, 橋本 雅司
    2013 年 27 巻 4 号 p. 689-699
    発行日: 2013/10/31
    公開日: 2013/12/05
    ジャーナル フリー
    胆嚢癌は種々の形態を示し,増生・進展様式,成長速度など種別の異なった病変が存在する.取り扱い規約に記載されている「肉眼形態型分類」は基本的には病変形態の表現法を表記したものでしかない.超音波画像は病変の割面像を描出するものであり,病変の増生主体の層別や様式を知ることができる.本稿では胆嚢癌を大きく隆起型と肥厚型に分け,各内訳として,①隆起型:早期癌(Ip,Is,IIa,IIb),早期類似癌(Ip,Is,IIa),乳頭膨張型,乳頭浸潤型,②肥厚型:限局肥厚型,広範肥厚型として分類を提案,各型につき画像を提示しながら解説し,超音波診断,肉眼型分類における問題点につき考察を加えた.
原著
  • 鈴木 裕, 森 俊幸, 横山 政明, 中里 徹矢, 杉山 政則
    2013 年 27 巻 4 号 p. 700-704
    発行日: 2013/10/31
    公開日: 2013/12/05
    ジャーナル フリー
    〔目的〕肝内結石症例に合併する肝内胆管癌の危険因子を抽出し,肝内結石症の取扱いを検討することを目的とする.〔方法〕対象は2006年の全国調査の登録症例336例のうち必要項目すべてに回答を得た325例.胆管癌の合併例(23例)と非合併例(302例)に分け,胆管癌合併の危険因子を抽出した.〔結果〕多変量解析で胆道再建の既往例と肝萎縮例が胆管癌の危険因子として抽出された.また,肝萎縮を認める胆管癌合併例を検討すると87.5%に萎縮肝と胆管癌発生部位が一致した.また,胆管再建法(胆管十二指腸吻合vs胆管空腸吻合,端側吻合vs側側吻合)と肝内胆管癌合併とは相関しなかった.〔結論〕萎縮肝は可能な限り切除すべきであると思われた.胆道再建は将来胆管癌発生のリスクとなるため,胆管癌合併という観点からは推奨されないと思われた.
  • 本田 五郎, 倉田 昌直, 奥田 雄紀浩, 小林 信, 坂元 克考, 堀口 慎一郎, 神澤 輝実
    2013 年 27 巻 4 号 p. 705-711
    発行日: 2013/10/31
    公開日: 2013/12/05
    ジャーナル フリー
    早期胆嚢癌ないし胆嚢癌疑診例に対する標準術式は開腹での胆嚢全層切除と1群リンパ節郭清であるが,本邦の胆道癌診療ガイドラインにおいては,腹腔鏡下手術は漿膜下層での胆嚢床剥離が行われるため推奨できないとされている.しかしわれわれは胆嚢床にLaennec被膜を残す層での胆嚢剥離により,胆嚢側の漿膜下層が薄い膜用構造物に包まれた状態で胆嚢全層切除を行うことができることを組織学的に確認した.そしてそのような剥離を行う際の注意点を明確にして手技を標準化し,7例において腹腔鏡下胆嚢全層切除術を行い良好な結果を得ることができた.本手技では肝臓側からの制御不能の出血に難渋することなく,また漿膜下層が膜様構造物に包まれた状態で胆嚢全層切除を行うことが可能であり,胆嚢癌疑診例や早期胆嚢癌例に対する低侵襲的アプローチとして標準手技のひとつになり得ると考えられる.
総説
  • 遠藤 格, 森 隆太郎, 松山 隆生, 谷口 浩一, 窪田 賢輔
    2013 年 27 巻 4 号 p. 712-719
    発行日: 2013/10/31
    公開日: 2013/12/05
    ジャーナル フリー
    黄色肉芽腫性胆嚢炎(XGC)は胆嚢炎の一亜型であり,漿膜下層を中心とする壁肥厚像を呈することが多いため,進行胆嚢癌との鑑別に苦慮することがある.胆嚢癌が否定できないため過大手術を余儀なくされた症例の報告が後を絶たない.XGCの画像診断上の特徴的所見は,CTにおける粘膜層の連続性保持,胆嚢壁内の低吸収域などである.細胞学的診断に関して,従来のブラシ細胞診の感度は十分ではなかったが,近年超音波内視鏡下穿刺細胞診(EUSFNA)技術の向上により感度が改善されつつある.治療の選択において,胆管狭窄のない場合は胆嚢癌の併存が10%程度あるため切除を勧める.胆嚢床切除~S45切除程度で腫瘤を露出させずに切除可能である.一方,胆管狭窄像を認める場合はブラシ細胞診,EUSFNA,術中胆嚢床生検を順次施行し,癌が検出されなければ胆嚢摘出術のみを行う.摘出胆嚢の迅速診断でも癌が検出されなければ手術を終了する.今後,多施設共同でprospective databaseを構築し,系統的な診断・治療戦略が確立されることが望まれる.
症例報告
  • 宮田 英樹, 岩尾 年康, 吉田 浩司, 牛尾 純, 石野 淳, 河瀬 智哉, 野村 佳克, 多田 大和, 中島 義博, 日下部 崇
    2013 年 27 巻 4 号 p. 720-725
    発行日: 2013/10/31
    公開日: 2013/12/05
    ジャーナル フリー
    症例は69歳女性.近医で施行された腹部超音波検査(US)で胆嚢壁の限局性肥厚を指摘され,精査を行ったが,積極的に胆嚢癌を疑う所見が得られなかったために,経過観察となった.半年間隔で,超音波内視鏡(EUS)にて経過観察していた.指摘から約1年8カ月後に,同部位は表面平坦な胆嚢壁肥厚に発育していた.精査の結果,胆嚢癌と診断し,外科的手術を施行した.最終病理診断は,Adenocarcinoma(pap-tub1),m-RASmp,ly0,v0,pn0,pHinf0,0-IIa+IIb,Gbfであった.表面型早期胆嚢癌を診断するためには,丹念な経過観察が必要であると考えられた.
  • 兼平 卓, 恩田 真二, 岡本 友好, 矢永 勝彦
    2013 年 27 巻 4 号 p. 726-731
    発行日: 2013/10/31
    公開日: 2013/12/05
    ジャーナル フリー
    症例は67歳,女性.黄疸および肝胆道系酵素の上昇を認め,精査目的に当院紹介.腹部US,腹部造影CT,ERCPにて肝門部胆管狭窄および胆嚢頚部から胆管の壁肥厚を認めた.また肝円索は胆嚢の右側に存在し,右側肝円索と診断し,肝内門脈分岐の破格を認めた.胆嚢癌の胆管浸潤または肝門部胆管癌が疑われ,胆嚢を含む肝円索より左側の肝切除術,胆管切除術,リンパ節郭清(D2)を施行した.門脈は本幹から後区域枝が独立分岐した後,前区域と門脈左枝が分かれていた.最終病理ではfstageIVaで根治度はBであった.右側肝円索に伴う胆嚢癌の報告は我々の知る範囲で,本邦で2例目と稀である.右側肝円索では肝内門脈分岐異常を伴うことが多く,術前十分なシミュレーションを行い注意して手術に臨む必要があると考えられた.
  • 岡庭 信司, 玉井 方貴, 中村 喜行, 堀米 直人, 伊藤 信夫
    2013 年 27 巻 4 号 p. 732-738
    発行日: 2013/10/31
    公開日: 2013/12/05
    ジャーナル フリー
    症例は50歳代女性.心窩部痛にて近医を受診し,胆嚢炎として当科に紹介となった.入院時の採血では軽度の肝機能障害と炎症所見を認めた.USでは胆嚢内に不整な内部エコーを有する腫瘤像を認め,ドプラにて腫瘤内部に定常流の血流シグナルを認めた.EUSにて膵胆管合流異常と胆管周囲のリンパ節腫大を認めた.CTでは胆嚢底部に不規則な造影効果を伴う腫瘍を認め,1カ月後のMRIにて腫瘍の急速な増大と胆嚢周囲に淡い高信号域が出現したことから肝内直接浸潤を疑った.膵胆管合流異常に合併した胆嚢腫瘍として肝床(S5+S4下)切除+膵頭十二指腸切除術を施行した.腫瘍は表面平滑な有茎性の形態を呈し,背景粘膜には上皮の化生を認めなかった.腫瘍の大半は紡錘形の細胞からなる肉腫であり,一部に腺癌成分を認めた.肉腫成分は間葉系マーカー陽性,上皮系マーカー陰性であったことから真の癌肉腫と診断した.患者は急速に出現・増大した肝転移により術後4カ月で死亡した.
  • 七島 篤志, 阿保 貴章, 村上 豪志, 富永 哲郎, 永安 武
    2013 年 27 巻 4 号 p. 739-745
    発行日: 2013/10/31
    公開日: 2013/12/05
    ジャーナル フリー
    胆道癌の転移再発に対し外科的切除を含めた局所治療を施行した7例の治療成績を報告する.肝内胆管癌切除後の肝転移に再切除した1例は7カ月後に多発肝転移を認めた.肝門部胆管癌の右肝切除後局所再発の1例に光線力学的治療を施行し11カ月腫瘍制御が可能であった.胆嚢癌術後肝転移に焼灼療法を施行,近傍の転移巣には肝部分切除を施行したが早期に多発肝転移を認めた.乳頭部癌肝転移3例に局所治療を行った.1例は肝転移部分切除を施行し無再発生存中.1例は肝転移に焼灼療法施行するも効果なく肝部分切除を施行し無再発生存中.1例は乳頭部病変に光線力学的治療を施行するも腫瘍制御できず膵頭十二指腸切除術を施行.2年後肝転移を認め部分切除を施行,長期無再発生存中である.乳頭部や肝外胆管癌で異時性かつ単発肝転移では切除により長期生存する可能性がある.光線力学療法や焼灼療法は再発局所の完全消失は得られず姑息的選択肢と考えられる.
  • 夏目 誠治, 加藤 岳人, 青葉 太郎
    2013 年 27 巻 4 号 p. 746-751
    発行日: 2013/10/31
    公開日: 2013/12/05
    ジャーナル フリー
    結腸直腸癌肝転移は肉眼的胆管内進展を伴うことがあり,そのような症例は切除後の予後が良好であることが知られている.組織学的に,胆管内進展には腫瘍栓様の管腔内発育と胆管上皮内進展の2つの要素があるが,粘液栓をきたすことは稀である.今回我々は,S状結腸粘液癌術後に胆管上皮内進展に加えて粘液栓を伴なった肝転移の1例を経験したので報告する.症例は45歳の女性.2006年S状結腸粘液癌に対して切除手術を施行した.病理組織学的にリンパ節転移を伴う粘液癌と診断した.2011年,腹部造影CT検査にて肝後上区域(S7)に21×14 mmの腫瘍とこれに接する右後上区域胆管枝(B7)の拡張を認めた.胆管内進展を伴うS状結腸癌肝転移と診断し肝後区域切除術を施行した.切除標本において肝S7に充実性腫瘍を認め,この腫瘍に接するB7胆管内には粘液が充満していた.病理組織学的に胆管上皮内進展と粘液栓を伴う肝転移と診断した.
  • 岡野 美々, 樋口 亮太, 太田 岳洋, 梶山 英樹, 谷澤 武久, 矢川 陽介, 増田 浩, 竹下 信啓, 山本 雅一
    2013 年 27 巻 4 号 p. 752-757
    発行日: 2013/10/31
    公開日: 2013/12/05
    ジャーナル フリー
    症例は30歳女性で,妊娠30週にて嘔吐,腹痛が出現した.他院で先天性胆道拡張症と診断され,出産後に当院へ紹介となった.胆管膵管造影では,左肝管から下部胆管までの嚢腫状拡張と,左肝管根部の狭窄,Wirsung管の拡張と透亮像を認めた.嵌頓する膵石を合併した戸谷IV-A型の先天性胆道拡張症と診断した.内視鏡的治療は困難であった為,体外式衝撃波結石治療法により膵石を破砕した上で,分流手術目的に肝外胆道切除再建術を施行した.膵石合併の先天性胆道拡張症に対し,体外式衝撃波結石治療法により膵石の破砕を行い,分流手術を施行した報告は少なく貴重な症例と思われたため,若干の文献的考察を加えて報告する.
胆道専門医講座⑦胆道癌診療のスキルアップを目指して
第3回 胆道疾患に対する栄養管理
  • 大村 健二
    2013 年 27 巻 4 号 p. 758-765
    発行日: 2013/10/31
    公開日: 2013/12/05
    ジャーナル フリー
    胆道疾患では,疾患そのものや手術によって胆汁や膵液の分泌が障害される.また,膵の内分泌障害もおこる.胆汁や膵液の分泌障害による消化・吸収障害に対しては,食事指導と消化酵素薬を中心とした薬物療法を行う.消化不良を示唆する腹部症状には薬剤の増量で対処し,食物・食材の永続的な制限,禁止は最後の手段とする.膵頭十二指腸切除術などの高度侵襲手術では,術前のimmunonutrition施行を考慮する.また,術中に消化管吻合部の肛門側の空腸まで先端を進めた経鼻栄養チューブで,術後早期に栄養の一部を経腸的に補うことも考慮すべきである.胃切除術を併施する術式を行った場合,鉄欠乏性貧血やビタミンB12欠乏に注意する.胃全摘術を受けた症例でも,経口的なビタミンB12投与は有効である.PDの術後でも,酵素補充療法によって食事制限を必要としない状態を目指す.体重の減少には十分な注意を払い,早期に適切な処置を行う.
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