40歳女性.心窩部痛を主訴として来院.血中胆道系酵素およびアミラーゼの上昇をみた.US,CT ERCPにて胆管型膵胆管合流異常に合併した胆嚢癌が疑われR2リンパ節郭清を伴う拡大胆摘術が施行された.病理学的には胆嚢の乳頭状腺癌で一部で漿膜下層まで浸潤しており,リンパ管浸潤を認めたが,血管,胆嚢管浸潤は認めず切除縁にも浸潤を認めなかった.術後順調に経過したが2年目に腹背部痛を訴え,再度入院.CT,ERCPにて膵体部癌が疑われR1リンパ節郭清を伴う膵体尾部切除術が施行された.病理学的に膵管内乳頭状腺癌で大部分は主膵管内に限局しているものの一部に膵実質への浸潤を認めた.また,中等度のリンパ管浸潤,軽度の血管,神経周囲浸潤が認められた.
本症例は胆嚢および膵臓に異時性に偶発的に発生したきわめてまれな重複癌で,文献上他に同様の1例をみるのみである.一方,合流異常に伴って胆道系のみならず膵管系にも多発した一連の腫瘍である可能性も示唆され,今後の同様の症例の積み重ねが必要と思われる.
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