胆道
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4 巻, 1 号
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  • 上田 順彦, 永川 宅和, 太田 哲生, 角谷 直孝, 中 村隆, 小林 弘信, 中野 泰治, 前田 基一, 萱原 正都, 上野 桂一, 宮 ...
    1990 年 4 巻 1 号 p. 11-22
    発行日: 1990/01/25
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    肝内結石症の病態解明を目的として,雑種成犬の部分肝に胆汁うっ滞兼胆道感染を負荷し形態学的な面より検討した結果,以下の成績を得た.大型胆管領域のグリソン鞘内の変化では,感染群は胆管の拡張とともに胆管壁の線維性肥厚,胆管上皮の増殖性変化が経日的に増強した.さらに,胆管上皮および壁内構造物の細胞質内には経日的に中性および酸性ムチンの含量が増加した.一方,非感染群では胆管の拡張はあるものの,胆管壁の線維性肥厚,胆管上皮の増殖性変化はほとんど認められなかった.隔壁性胆管領域および小葉間胆管領域のグリソン鞘内の変化では,感染群は非感染群に比べ胆管壁周囲を輪状にとりまく線維の増生および門脈血流の低下が高度となった.肝実質の変化では感染群は非感染群に比べ有意に肝萎縮が認められた.以上の成績より,ヒト肝内結石症に高頻度にみられる増殖性胆管炎の所見は,胆汁うっ滞と胆道感染により引き起こされることが示唆された.また,胆汁うっ滞に胆道感染を加えることにより,門脈血流の低下がより高度となり肝実質の萎縮が著明になるものと推察された.
  • 矢田 清吾
    1990 年 4 巻 1 号 p. 23-30
    発行日: 1990/01/25
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    十二指腸パッチ膵管胆嚢吻合による膵管胆道合流異常モデル犬を作製し,膵液逆流による胆管拡張の機序について乳頭部括約筋機能の観点から検討した.膵管胆嚢吻合群では有意な胆管拡張がみられたが,結紮膵管胆嚢吻合群および胆嚢内生理食塩水注入群においても対照群に比べ胆管拡張傾向がみられた.乳頭部括約筋機能にはいずれの群間にも有意な変化はみられなかった.以上の結果から,膵管胆嚢吻合犬における胆管拡張は乳頭部括約筋機能異常によるものではなく,胆道系の流量増加あるいはなんらかの手術操作に起因するものであると考えられた.
  • 山崎 眞一, 松村 敏信, 古味 信彦
    1990 年 4 巻 1 号 p. 31-36
    発行日: 1990/01/25
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    膵管胆道合流異常を伴わない良性胆道疾患で胆汁中アミラーゼ値が測定可能であった156例について臨床病理学的に検討した.胆汁中アミラーゼ値が1,000IU/l以上の高値を示した症例は32例(20.5%)であった.それら32例の血清アミラーゼ値はいずれも正常範囲内であった.性別では男性にやや頻度が高く,70歳以上において頻度が高かった.胆石の存在部位による差は認められなかった.アミラーゼ高値群では細菌感染例が多く,また術中胆道造影時に膵管が造影される症例の頻度が高く,形態的に合流異常が認められないにもかかわらず胆汁と膵液の相互移行が存在し,胆道内へ逆流した膵液が胆汁中アミラーゼ高値の原因であると考えられた.組織学的にアミラーゼ高値群では化生上皮が認められた症例の頻度が高く,逆流膵液が胆道疾患の病態になんらかの影響を及ぼす可能性が示唆された.
  • 胆嚢の胆汁駆出率とCCK分泌動態からの検討
    田中 岳史, 別府 倫兄, 二川 俊二
    1990 年 4 巻 1 号 p. 37-42
    発行日: 1990/01/25
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    肝硬変症に胆石症が高率に合併することはよく知られている.本症合併胆石は多くが胆嚢内黒色石であり,その成因についてはいまだ明らかにされていない部分が多い.今回,著者らは本症胆嚢におげる胆汁駆出能に注目し,胆嚢機能の面から結石生成の成因を考察した.早朝空腹時99mTc-PMTを185MBq静注し,60分後,胆嚢がRIで十分に満たされたところで卵黄を2個経口摂取させた.以後30分間における胆嚢の胆汁駆出率は健常例の平均66.4%に比べ,肝硬変症では平均42.9%と有意の低下がみられた.また経口卵黄負荷前後の血中CCK濃度の推移をみると,肝硬変症では健常例に比べ負荷前後ともに高値を示す傾向が認められた.以上より肝硬変症においてはCCK分泌異常を伴った胆嚢の収縮不良,胆嚢内胆汁うっ滞が存在することが判明し,従来論じられてきた脾機能亢進・溶血因子以外にも本症が結石生成に傾きやすい病態を有していると考えられた.
  • 平田 信人, 菅田 文夫
    1990 年 4 巻 1 号 p. 43-53
    発行日: 1990/01/25
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    胆嚢胆石に対する体外衝撃波による破砕i療法の適応を決定するため,まず基礎的実験により照射条件を決定のうえ200例の胆嚢胆石に対する臨床応用を試みた.193例(96.5%)に破砕可能であった.181例に溶解療法,8例に内視鏡的乳頭切開術,5例に経皮経肝胆嚢鏡を併用施行した.200例中60例(30%)に結石消失が得られた.結石消失率は直径20mm以下の単一結石が51.7%超音波上コレステロ一ル石と推定されたものの累積消失率は約2年間で58.2%であった.結石消失例において胆嚢管径を計測した49例での胆嚢管最大径は6.2±3.1mm,消失日数との相関係数R=-0.388で,最小径は2.5±1.5mm,R=-0.359であった.1年以上結石消失をみない40例の最大径4.2±1.5mm,最小径2.0±0.7mmとは有意差が認められた.
  • 蜂谷 勉, 福山 隆之, 平岡 哲郎, 小味淵 智雄, 岡本 暢夫, 清水 達夫, 福地 浩三
    1990 年 4 巻 1 号 p. 54-61
    発行日: 1990/01/25
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    症例は61歳の男性,主訴は黄疸.経皮経肝胆道造影(以下PTC)にて,膵頭部胆管の狭窄像があり,膵頭部癌が否定できず開腹術を施行した.開腹時の肉眼所見および生検組織所見は慢性膵炎であり,手術時には黄疸も自然消退したため減黄術は行わなかった.約1年後,肝門部総肝管の狭窄のため再発黄し,肝門部肝管切除術を施行した.その組織所見,胆管X線所見より原発性硬化性胆管炎(以下PSC)と診断した.本例は1年間に急速に進行し,X線的に胆管像の経過を追えることのできた比較的報告の少ない,慢性膵炎を合併したPSC症例である.
  • 渋谷 明隆, 杉本 政直, 坂口 哲章, 松本 偉男, 村上 匡人, 国分 茂博, 石井 公道, 柴田 久雄
    1990 年 4 巻 1 号 p. 62-67
    発行日: 1990/01/25
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    肝区域に限局し,特徴的な形態の続発性胆汁性肝硬変を呈した肝門部胆管癌の1剖検例を報告した.症例は79歳の女性で,死亡2カ月前までは黄疸を認めなかったが,急激な発黄を伴う肝不全により死亡した.剖検では肝門部に胆管癌を認め,これによる閉塞性黄疸による肝不全であった.特徴的なことは,肝の外側区域・内側区域・後区域に限局して萎縮性で高度な続発性胆汁性肝硬変豫を認めたが,前区域では胆汁うっ滞所見はあるものの,肥大性で平滑であり肝硬変を認めなかったことである,左肝管に発生した癌が後区域枝に浸潤し続発性胆汁性肝硬変を引き起こしたが,前区域枝は長期間開存し,前区域で胆汁排泄を代償したために臨床的には黄疸を認めなかったものと思われる.最終的には前区域枝にまで癌が浸潤し肝不全により死亡した.続発性胆汁性肝硬変の成り立ちと機能的な肝内域の存在を実証する貴重な症例である.
  • 国村 利明, 諸星 利男, 神田 実喜男, 黒木 辰郎, 梅沢 卓也, 浅沼 勝美
    1990 年 4 巻 1 号 p. 68-74
    発行日: 1990/01/25
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    40歳女性.心窩部痛を主訴として来院.血中胆道系酵素およびアミラーゼの上昇をみた.US,CT ERCPにて胆管型膵胆管合流異常に合併した胆嚢癌が疑われR2リンパ節郭清を伴う拡大胆摘術が施行された.病理学的には胆嚢の乳頭状腺癌で一部で漿膜下層まで浸潤しており,リンパ管浸潤を認めたが,血管,胆嚢管浸潤は認めず切除縁にも浸潤を認めなかった.術後順調に経過したが2年目に腹背部痛を訴え,再度入院.CT,ERCPにて膵体部癌が疑われR1リンパ節郭清を伴う膵体尾部切除術が施行された.病理学的に膵管内乳頭状腺癌で大部分は主膵管内に限局しているものの一部に膵実質への浸潤を認めた.また,中等度のリンパ管浸潤,軽度の血管,神経周囲浸潤が認められた.
    本症例は胆嚢および膵臓に異時性に偶発的に発生したきわめてまれな重複癌で,文献上他に同様の1例をみるのみである.一方,合流異常に伴って胆道系のみならず膵管系にも多発した一連の腫瘍である可能性も示唆され,今後の同様の症例の積み重ねが必要と思われる.
  • 早雲 孝信, 中島 正継, 安田 健治朗, 趙 栄済, 向井 秀一, 水間 美宏, 松井 亮好, 芦原 亨, 水野 成人, 平野 誠一, 加 ...
    1990 年 4 巻 1 号 p. 75-81
    発行日: 1990/01/25
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    症例は6 6 歳女性で, 発熱と黄疸にて近医を受診し, U S にて総胆管および肝内胆管の拡張を指摘され,当科に紹介入院となった.臨床検査成績では総ビリルビンおよび胆道系酵素の上昇を認め,USでは総胆管末端部に直径2cmの腫瘤を認めた.ERCでは同部に不整陰影欠損像を認めたが,可動性なく胆管癌を疑った.また,EUSでは膵内胆管に限局したechogenicな腫瘍を認めた.PTCSにて表面穎粒状の乳頭状腫瘍を認め,直視下生検でpapillary adenomaの診断を得た.しかし,一部に強い異型を認めたため,膵頭十二指腸切除術を施行した.切除標本では腫瘍は総胆管下部に限局し,乳頭状に増殖していた.組織学的には浸潤像は認めなかったが,一部に強い異型を認め,papillary adenomawith fbcal cancerと診断された.なお,非腫瘍部の胆管粘膜には異型を伴った過形成を認めた.本症例は,胆管癌の発生母地を検討するうえで興味深い症例と考えられた.
  • 宮坂 芳明, 奥田 純一, 三木 修, 茂垣 雅俊, 青山 英久, 松本 由朗, 菅原 克彦, 須田 耕一
    1990 年 4 巻 1 号 p. 82-86
    発行日: 1990/01/25
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    長径が3.0cmにも及ぶ巨大な純コレステロール胆嚢壁内結石を経験したので若干の考察を加えて報告する. 症例は73歳女性で心窩部不快感を主訴として当科を紹介され来院した.DIC,ERCP,CTなどの検査を施行し,胆嚢底部に固定された胆嚢結石の診断で胆嚢摘出術を施行した.摘出胆嚢の詳細な検索の結果,胆嚢内腔に結石は認められず胆嚢底部の粘膜下に3,0×1.7×1.7cmの白黄色の結石が1個存在し,赤外線吸収スペクトル分析で純コレステロール結石の胆嚢壁内での成因機序については,報告例が少なく推測の域を出ないがRokitansky-Aschoff sinus内生成説を採用したい.
  • 稲田 吉昭, 山村 学, 上辻 章二, 浅尾 寧延, 川西 洋, 山田 修, 山本 政勝
    1990 年 4 巻 1 号 p. 87-93
    発行日: 1990/01/25
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    胆嚢および胆管を鋳型とした寒天様の非石灰化胆石の2症例を経験した.これらの赤外線吸収スペクトル分析の結果1650および1550cm-1に赤外吸収を認め,蛋白質の吸収帯に一致していた.画像診断上これら胆石はカルシウムを含有せず実質組織と鑑別は困難であったため,いずれの症例も術前診断は悪性腫瘍であった.2症例の臨旅的特徴を述べるとともにその成因について考察した.
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