胆道
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36 巻, 5 号
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総説
  • 木暮 宏史, 白田 龍之介, 中井 陽介, 藤城 光弘
    2022 年 36 巻 5 号 p. 583-587
    発行日: 2022/12/31
    公開日: 2022/12/31
    ジャーナル フリー

    無症候胆管結石に対しても,現行のガイドラインではERCPによる内視鏡治療が推奨されている.しかしながら,無症候性胆管結石の自然史については不明な点が多く,無症候性胆管結石に対する積極的な内視鏡治療の妥当性については検討の余地がある.無症候性胆管結石患者におけるERCP関連の偶発症,特にERCP後膵炎のリスクは,症候性患者に比べて高い可能性がある.無症候性胆管結石患者においてERCPによる治療が経過観察よりも良好な結果をもたらすかどうかを検討した前向き研究はなく,ERCP関連偶発症を誘発するリスクと,治療を行わずに経過観察した場合の偶発症のリスクは今のところ天秤にかけられない.無症候性胆管結石に対する積極的治療の正当性を明らかにするためには,治療群と経過観察群の長期的な偶発症のリスクを多施設共同研究による多数例で検討する必要がある.

  • 塩見 英之, 中野 遼太, 太田 匠悟, 酒井 新, 増田 充弘, 児玉 裕三
    2022 年 36 巻 5 号 p. 588-598
    発行日: 2022/12/31
    公開日: 2022/12/31
    ジャーナル フリー

    非切除悪性胆道閉塞に対する内視鏡的胆道ドレナージ術において,開存期間が長い自己拡張型金属ステント(self-expandable metallic stent:SEMS)が推奨されている.近年,化学療法の進歩による生存期間の延長に伴い,SEMS留置後のrecurrent biliary obstructionによりre-interventionが必要となる症例が増加している.担癌患者であり,もともと全身状態が不良であることが多く,容易に重症化するため迅速かつ適切な対応が求められる.Re-interventionを行う際には原疾患,SEMSの留置経路,留置部位,種類,留置形態を事前に十分把握した上で治療戦略を立案しなければならない.様々な要因が絡み合い複雑な病態を呈していることも少なくないため,内視鏡的治療にこだわらず,外科医や放射線科医と協力して集学的な治療を行うことが肝要である.

  • 森 泰寿, 柴尾 和徳, 厚井 志郎, 大場 拓哉, 田村 利尚, 佐藤 典宏, 平田 敬治
    2022 年 36 巻 5 号 p. 599-609
    発行日: 2022/12/31
    公開日: 2022/12/31
    ジャーナル フリー

    膵・胆管合流異常は,解剖学的に膵管と胆管が十二指腸壁外で合流する先天性の形成異常で,胆管拡張型(先天性胆道拡張症)と胆管非拡張型に分類される.胆汁と膵液の流出障害や相互逆流を惹き起こし,胆道癌の危険因子であるため,外科的切除の適応となる.術式は先天性胆道拡張症では胆管切除と胆嚢摘出,および胆道再建であり,胆管非拡張型では予防的胆嚢摘出術である.本邦では2016年4月に腹腔鏡下先天性胆道拡張症手術が保険収載され,さらに2022年4月にはロボット支援下手術も保険収載された.両疾患とも術後長期経過後の胆管癌発癌が報告されており,生涯にわたる経過観察が必要である.

症例報告
  • 岡田 はるか, 岩崎 栄典, 中島 悠貴, 茅島 敦人, 町田 雄二郎, 原 健佑, 眞杉 洋平
    2022 年 36 巻 5 号 p. 610-617
    発行日: 2022/12/31
    公開日: 2022/12/31
    ジャーナル フリー

    症例は54歳男性.上部消化管内視鏡で十二指腸乳頭部腫大を指摘され,精査目的に当院を紹介受診した.十二指腸鏡観察では主乳頭肛門側に10mm大の粘膜下腫瘤があり,EUS検査では乳頭部に連続する粘膜下層に類円形で輪郭整の低エコー腫瘤を認めた.内視鏡下生検で神経内分泌系腫瘍が疑われた.無症状で血圧も正常範囲であり,安静時血清カテコールアミン3分画は正常範囲であった.造影CT検査では十二指腸の病変は判然とせず,有意なリンパ節腫大や遠隔転移を認めなかった.非機能性神経内分泌腫瘍の術前診断で,十分な説明の上で内視鏡的乳頭切除術を施行した.術後出血を認めたが,止血処置追加後は経過良好で術後5日目に退院した.病理組織学的診断は神経節細胞様細胞,神経内分泌細胞様細胞,紡錘形細胞が混在しており,免疫染色と合わせてGangliocytic paragangliomaの診断となった.

  • 小岩井 明信, 廣田 衛久, 佐藤 賢一
    2022 年 36 巻 5 号 p. 618-625
    発行日: 2022/12/31
    公開日: 2022/12/31
    ジャーナル フリー

    症例は75歳男性.腹腔動脈から固有肝動脈に至る動脈浸潤を認める切除不能膵体部癌と診断し,総胆管から肝門部におよぶ腫瘍浸潤による悪性胆道狭窄を認めたため,左右肝管へ金属ステントを留置した.約1カ月後に胆道出血による出血性ショックおよび胆管炎を発症した.造影CTでは明らかな動脈瘤は指摘できず,ステント内に凝血塊を疑う所見とそれに起因する胆汁うっ滞と急性胆管炎が疑われたため緊急ERCPを施行した.胆管内から鮮血が多量にあふれ出ており,急遽結石除去用バルーンを使用して出血点の同定を行う方針とした.バルーンを総胆管下部から順に移動しながら拡張を繰り返したところ右肝管のSEMS上端近傍で拡張した時に胆管からの出血が止まり,同部位近傍からの出血と推定,右前区域枝から総胆管に金属ステントを留置し,持続的な止血を得た.内視鏡的に出血点を同定し,かつ止血処置を行うことができた興味深い症例であり報告する.

  • 鈴木 貴也, 林 大樹朗, 竹内 真実子, 山下 浩正, 塚原 哲夫, 伊藤 貴明, 新井 利幸
    2022 年 36 巻 5 号 p. 626-632
    発行日: 2022/12/31
    公開日: 2022/12/31
    ジャーナル フリー

    症例は75歳,女性.膵管癌cStageIVと診断されジェムザール(以下GEM)およびnab-パクリタキセル(以下nab-PTX)による化学療法を受けていた.治療開始から2カ月後,化学療法2コース終了後に心窩部痛と肝胆道系酵素の上昇を認めた.化学療法を中止後も症状が遷延し入院で精査を開始した.ERCでは総胆管および総肝管にかけて胆管壁の鋸歯状変化を認め,びまん性の拡張を呈していたが閉塞機転は認めなかった.胆管生検で好酸球浸潤を認め好酸球性胆管炎と診断した.ステロイド治療を開始し改善を認め,改善後はGEM単剤で化学療法を再開したが胆管炎の再燃は認めず,nab-PTXによる好酸球性胆管炎が疑われた.同剤による好酸球性胆管炎の報告例は非常に稀であり文献的考察を交えて報告する.

  • 野田 直哉, 伊藤 史人, 武井 英之, 岡本 篤之, 金森 泰光, 伊佐地 秀司
    2022 年 36 巻 5 号 p. 633-639
    発行日: 2022/12/31
    公開日: 2022/12/31
    ジャーナル フリー

    症例は80歳代女性,8年前に胆嚢結石で腹腔鏡下胆嚢摘出術を受けている.右前胸部から背部の痛みがあり,CTでは肝内外胆管が拡張し,拡張した遺残胆嚢管から総肝管,膵内胆管にかけて内腔に充満する造影効果のある3.5×2cm大の腫瘍を認めた.MRCPでは,拡張した遺残胆嚢管から総胆管内にかけて乳頭状に発育した腫瘍が,4cm大の陰影欠損として描出された.胆管外進展はなく,遺残胆嚢管に発生した乳頭状腫瘍と診断し,亜全胃温存膵頭十二指腸切除を行った.摘出標本では,遺残胆嚢管に基部を有する3.4×2.2cmの乳頭状腫瘍で胆管内に粘液はなく,病理組織所見では高異型度intracholecystic papillary neoplasmと診断された.総肝管から総胆管にかけては肉眼的な隆起性病変は認めなかったが,組織学的に低異型度BilIN相当の中等度異型が認められた.

Video Reports
胆道専門医講座 胆道癌治療の最近の進歩
  • 佐々木 隆
    2022 年 36 巻 5 号 p. 649-657
    発行日: 2022/12/31
    公開日: 2022/12/31
    ジャーナル フリー

    これまで胆道癌に対する薬物療法は殺細胞性抗癌剤を中心とした治療開発が進められ,各部位の胆道癌をまとめた形でその有効性が評価されてきた.しかしながら胆道部位ごとの病態の違いが指摘されており,実際に部位別の遺伝子異常の違いも明らかになってきている.一方で治療標的となり得る遺伝子異常が多いという特徴もあることから,遺伝子異常に基づいて治療選択を行う形の個別化治療への期待も高い.実際に胆道癌では,遺伝子異常に基づいて選択した分子標的薬や免疫治療によって良好な治療成績が得られることが複数報告されてきている.近年わが国でも遺伝子パネル検査が普及してきており,遺伝子パネル検査から同定された遺伝子異常に基づく個別化治療も日常臨床で可能となっている.一方で治療薬の提供体制や組織採取の難しさ,さらには分子標的薬使用による獲得耐性の問題など解決すべき課題も多く,今後さらなる発展も求められている.

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