胆道
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16 巻, 2 号
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  • 渡辺 繁, 別府 倫兄, 二川 俊二
    2002 年 16 巻 2 号 p. 87-93
    発行日: 2002/05/31
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    教室で経験した肝門部胆管癌切除例で,治療後の予後に及ぼす因子を明らかにする目的で,臨床病理学的検討を行った.肝門部胆管癌42例を対象とした.うち切除例は25例であったが,治癒切除がえられたものは6例のみであった.切除例25例の深達度はss9例,se8例,si8例であり,ss症例では9例中4例に治癒切除がえられたが,hm,dmとも陽性となった症例も2例みられた.se+si症例は,16例中14例が罪治癒切除に終わった.治癒切除がえられた6例の1,3,5年生存率はそれぞれ83.3%,83.3%,55.6%であったのに対して,非治癒切除19例の1,3,5年生存率は55.7%,5.6%,0%と不良であった.教室の肝門部胆管癌の全例が診断時点で進行癌であり,肝切除を加えても胆管断端陽性で非治癒切除となる症例が多く,非切除内(外)瘻の造設例との聞で治療後の予後の差は認められなかった.
  • 桑山 知登世, 宮内 慎, 柿沼 千早, 阿部 寛, 鈴木 不二彦, 須田 耕一
    2002 年 16 巻 2 号 p. 94-99
    発行日: 2002/05/31
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    ラットにおいて,dibutyltin dichloride の単回静脈内投与により,肝外胆管上皮の障害と炎症が起こり,次いで十二捲腸開口部近傍での肝外胆管の閉塞と肝側胆管の拡張を認めた. 肝臓では, 細胆管炎, 肝内胆管の増生がみられ, 変化の著しいものでは肝硬変への進展傾向がみられた.このことから,本実験により発症した病態は,ヒトの総胆管拡張症ならびに続発性胆汁性肝硬変のモデルとなる可能性が示唆された.ヒトの総胆管拡張症は, 膵・胆管合流異常との深い関わりが考えられている. 一方, ラットは種の特徴として,膵管と胆管が合流している.本モデルの病態の進展は,膵管と胆管の合流が一要因と考えられ,ヒト総胆管拡張症の発生機序を考察する手がかりが得られた.
  • 太田 仁, 別府 倫兄, 二川 俊二
    2002 年 16 巻 2 号 p. 100-107
    発行日: 2002/05/31
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    腹嚢癌切除69例を対象に進展様式と遠隔成績との関連を検討し,予後を規定する因子を明らかにすることを目的とした.切除例の内訳は,m癌11例,mp癌7例,ss癌30例,se,si癌21例で,予後良好なm,mp癌を除いた進行癌について,各因子別の予後を比較した.治癒切除率は,ss癌83.3%,se,si癌19.0%であり,根治度別の5年生存率は治癒切除55.2%,非治癒切除では3年生存例を認めなかった.リンパ節転移の有無別では,n(-)の5年生存率は50.4%,n(+)では5.7%,binf因子の有無別では,binf(-)35.6%,binf(+)では3年生存例はなかった.その他の予後不良因子として,stageIII,IV,乳頭型以外の肉眼形態,Gn(+)があげられた.5年以上長期生存の進行胆嚢癌症例は,いずれも治癒切除例で,binfは全例陰性,リンパ節転移陽性はn1(+)の1例のみであった.
  • 月岡 雄治, 小西 孝司, 前田 基一, 出町 洋, 三輪 淳夫, 藪下 和久
    2002 年 16 巻 2 号 p. 108-112
    発行日: 2002/05/31
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    陶器様胆嚢は比較的稀な疾患であるが,高率に胆嚢癌を合併することが知られている.今回我々は,術中迅速病理検査にて診断された,胆嚢癌合併陶器様胆嚢の1例を経験したので報告する.患者は69歳,女性.右悸肋部痛を主訴に来院,腹部単純X-P,超音波検査,CTにて陶器様胆嚢を有する急性胆嚢炎と診断され,入院となる.胆嚢炎軽快後に行った内視鏡的逆行性膵胆道造影(ERCP)にて,総胆管の軽度狭窄像を認めた,胆嚢癌合併の検索目的に行われたCT,dynamic MRIでは胆嚢癌の存在は確認されなかったが,胆嚢摘出術後の術中迅速病理検査にて胆嚢癌と診断されたため,肝床切除およびD2郭清を追加した.胆嚢壁は全層にわたって石灰化を認め,正常構造は破壊され,繊維化組織に置換されていた. 胆嚢内は大部分が壊死物であったが, 一部に癌組織を認めた. 壁深達度はs sで,リンパ節転移は認められなかった.
  • 松田 正道, 渡辺 五朗, 橋本 雅司, 宇田川 晴司, 竹内 和男
    2002 年 16 巻 2 号 p. 113-118
    発行日: 2002/05/31
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    多量に産生された粘液により特有な臨床症状あるいは画像所見を呈する腫瘍は,膵では粘液産生膵腫瘍として数多くの報告がある.また胆管においても同様の症例が散見されるが,胆嚢での報告は極めて稀である.今回,腫瘍から胆嚢内腔へ向けて多量に分泌された粘液により胆嚢管の閉塞を生じ,急性胆嚢炎を惹起したと考えられる2例の早期胆嚢癌を経験したので報告した.ともに胆嚢炎様の疝痛発作と肝胆道系酵素異常を伴い,超音波上,胆嚢内を広く占拠するスラッジ様構造が捉えられた.超音波あるいはCTで胆嚢内に隆起性病変が捉えられ,粘液産生胆嚢癌と診断し手術を施行し,早期胆嚢癌としての組織診断が得られた.今回の経験から,胆嚢内を広く浮遊するスラッジ様構造を認めた場合,癌や結石による胆嚢管閉塞の可能性,あるいは出血を伴う低分化型胆嚢癌の潜在等とならび,粘液による胆嚢管閉塞の可能性も念頭に置くべきと考えられた.
  • 上田 順彦, 山本 精一
    2002 年 16 巻 2 号 p. 119-124
    発行日: 2002/05/31
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    p53蛋白の異なる発現を認めた,多発胆嚢癌合併膵・胆管合流異常症の1例を報告した.症側は49歳,女性.腹部超音波所見で,胆嚢底部に辺縁不整な19×10mm大の隆起性病変を認めた.ERCP所見では,膵・胆管合流異常と肝外胆管の円筒状拡張を認めた.胆嚢癌合併膵・胆管合流異常症と診断し,胆嚢および肝外胆管切除,肝十二指腸間膜内リンパ節郭清を施行した.切除標本では,胆嚢底部に20×20×10mm大(病変A)と5×7×3mm大(病変B)の2個の乳頭型腫瘍を認めた.病理所見では,病変Aはtub2,病変Bはtub1で,深達度はmであった.病変Aの核分裂度は7個/10HPF,アポトーシスの頻度は2個/10HPF,病変Bはそれぞれ25個/1OHPF,10個/10HPFであった.また,病変AのKi-67LIは7.7%,p53は陰性,病変BのKi-67LIは27.8%,p53は陽性であった.自験例は同一環境下に発生した癌でありながら,発癌にいたる細胞周期制御異常が異なることが示唆された.
  • 阿部 友哉, 鈴木 正徳, 海野 倫明, 片寄 友, 力山 敏樹, 竹内 丙午, 水間 正道, 松野 正紀, 遠藤 希之
    2002 年 16 巻 2 号 p. 125-131
    発行日: 2002/05/31
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    肝門部胆管癌拡大肝右葉切除後遠隔期に残肝左葉外側区域に肝腫瘍を生じ,異時性多中心発生による肝内胆管癌と肝内胆管癌の肝内転移との鑑別に苦慮した症例を経験した.症例は67歳・男性.1996年12月に肝門部胆管癌で,拡大肝右葉切除・尾状葉全切除・肝外胆管切除・胆道再建術を施行した.腫瘍は胆管内腔に乳頭状に増殖し,胆管沿いに上皮内進展が認められた.組織学的にはpap,m,ly0,v0,pn0である.術後4年を経過した2001年2月,CTでS2に約3cmの低吸収域を認め,同年3月肝部分切除術を施行した.組織診断はpapを主とする中~高分化型腺癌で,初回摘出標本と組織型が類似し,原発巣からの血行性もしくはリンパ行性転移の可能性,あるいは肝内胆管枝の粘膜に生じていたskip lesionからの異時性発生の可能性も考えられた.肝門部胆管癌のpap症例は粘膜表層進展やskip lesionの頻度も高く,このような病巣が残肝左葉に残存した可能性もあり,定期的な画像診断による病巣の検出と早期治療が必要と考えられた.
  • 青木 秀樹, 塩崎 滋弘, 松川 啓義, 高倉 範尚
    2002 年 16 巻 2 号 p. 132-136
    発行日: 2002/05/31
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    肝外胆管走行異常は,術中胆管損傷の原因として注意が必要であるが,決して稀ではない. 今回, 非常に稀な低位合流尾状葉胆管枝を伴う, 膵・胆管合流異常合併胆嚢癌の1切除例を経験したので報告する.症例は72歳男性で,右悸肋部痛の精査で胆嚢腫瘍を指摘された. ERCP, CT, 腹部血管造影にて, 膵・胆管合流異常を伴う胆嚢癌と診断された.また,ERCPで下部胆管に合流する,細い胆管枝を認めた.術中所見より,左尾状葉枝の膵内胆管への合流を確認した.膵・胆管合流異常や胆管拡張症等を認める場合には,さらに他の変異の併存を念頭においた充分な検討が必要であると考えられた. また, 肝十二指腸間膜の郭清の際には, 稀ではあるものの異所胆管の存在にも留意すべきと考えられた.
  • 西川 紀子, 木村 康利, 向谷 充宏, 荒谷 純, 山本 雅明, 鬼原 史, 桂 巻正, 佐々木 茂, 今井 浩三, 平田 公一
    2002 年 16 巻 2 号 p. 137-143
    発行日: 2002/05/31
    公開日: 2012/11/13
    ジャーナル フリー
    症例は17歳, 女性. 学校検診で愈尿を指摘された. 腹部超音波検査および腹部CT検査を施行したところ,総胆管の著明な嚢腫状拡張を認めた.ERCP上,主乳頭からの造影では腹側膵管のみが造影され,副乳頭からの造影では背側膵管のみ造影されたことから,膵管非癒合と膵・胆管合流異常に併存した先天性胆道拡張症と診断し,分流手術を施行した.無症候性で背側膵炎の所見を認めなかったため,副乳頭形成術を付加しなかった.摘出標本の検索においても,胆道上皮の異形成変化を認めなかった.本症例のような膵管非癒合,膵・脂管合流異常の合併例は極めて少なく,本邦で検索しえた範囲では本症例を加え6例のみであり,術式決定においては議論の余地が残された.今後両奇形の合併も念頭におき,検討を加えていく必要性があると考えられた.
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