胆道
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37 巻, 1 号
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第58回日本胆道学会学術集会記録
会長講演
  • 良沢 昭銘
    2023 年 37 巻 1 号 p. 7-11
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー

    ERCP関連手技における近年約15年のイノベーションとして1)0.025インチガイドワイヤーへの移行,2)術後再建腸管症例に対するバルーン内視鏡ERCP,3)困難結石に対するEPLBD,4)ディスポーザブル経口デジタル胆道スコープ,5)ディスポーザブル十二指腸スコープ,などがあげられる.また,EUS関連手技においては1)EUS-FNA,2)EUSガイド下胆道ドレナージ,3)Lumen-apposing metal stentなどがあげられる.胆道内視鏡診療に残された課題として,1)保険収載,保険償還の充足,2)X線被曝の低減,3)ERCP後膵炎の予防,4)選択的胆管挿管100%,5)生検診断能の向上,6)胆管ステントの長期開存,7)AIによる画像の客観化,8)Interventional EUS手技の標準化などがあり,新たな時代に向けて解決すべきである.

日本胆道学会認定指導医養成講座
  • 竹原 康雄
    2023 年 37 巻 1 号 p. 12-21
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー

    MRIではT1強調画像やT2強調画像はもとより,他のモダリティにないコントラスト(拡散強調画像,脂肪抑制画像)などが存在し,更に非特異性ガドリニウムキレート造影剤の他に肝細胞特異性造影剤(Gd-EOB-DTPA)が利用可能で,胆道系の画像診断において,MRIは問題解決型の役割を担う場面が多いと思われる.胆道疾患の臨床現場で頻繁に遭遇する疾患や,最近注目されている疾患を材料に,MRIのコントラスト形成のメカニズムに簡単に触れてみたい.

  • 中井 陽介, 佐藤 達也, 白田 龍之介, 高原 楠昊
    2023 年 37 巻 1 号 p. 22-27
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー

    総胆管結石の有症状化率は90%以上と高く,胆管炎・胆石膵炎を発症すると重症化リスクもあるため,適切な診断と治療は重要である.診断モダリティには腹部超音波,CT,MRI,超音波内視鏡(EUS)があるが,特に小結石ではEUSの感度が高い.総胆管結石に合併する急性胆管炎では急性胆管炎・胆嚢炎診療ガイドラインの診断基準が古典的なCharcot3徴と比較して感度が高い.総胆管結石治療の第一選択はERCPであり,乳頭処置としては内視鏡的乳頭括約筋切開術が行われる.大結石に対しては通常の機械的砕石術(EML)に加えて,内視鏡的乳頭大口径バルーン拡張術や経口胆道鏡を用いた砕石術の有用性が報告されている.また内視鏡治療が困難であった術後再建腸管を有する総胆管結石に対しても最近はバルーン内視鏡やEUSを用いた治療が広まっており,今後も総胆管結石に対する治療における内視鏡の位置付けは大きくなると考えられる.

原著
  • 奥野 充, 岩田 圭介, 向井 強, 大橋 洋祐, 岩田 翔太, 岩佐 悠平, 吉田 健作, 丸田 明範, 上村 真也, 岩下 拓司, 冨田 ...
    2023 年 37 巻 1 号 p. 45-54
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー

    背景:胆管癌水平方向進展度評価におけるマッピングバイオプシー(MB)は,偽陰性,偽陽性を認めることがある.

    方法:2010-2021年にMDCT,ERC,MBと外科的切除を施行した,肝門部領域胆管癌31例,遠位胆管癌52例のMDCT+ERCでの画像診断とMBの胆管癌水平方向進展範囲の診断能を比較した.

    結果:肝門部領域胆管癌での画像診断とMBでは,肝側胆管進展度診断 感度43%/57%(P=1.0),特異度100%/79%(P<0.05),遠位胆管側進展度診断 感度100%/100%(P=1.0),特異度100%/79%(P<0.05);遠位胆管癌の肝側胆管進展度診断 感度22%/56%(P=0.3),特異度100%/70%(P<0.01)といずれもMBの特異度が有意に低かった.

    結論:MBでは生検鉗子挿入時の腫瘍混入等による偽陽性例を認めた.MB施行には腫瘍混入を防ぐ工夫が必要と思われた.

  • 多賀谷 信美, 門脇 啓太, 川崎 一生, 尾花 優一, 松下 公治, 新井 俊文
    2023 年 37 巻 1 号 p. 55-62
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー

    はじめに:腹腔鏡下胆嚢摘出術におけるRouvière溝の形態と肝門部胆管走行の関連について検討した.

    対象および方法:腹腔鏡下胆嚢摘出術312例を対象に,Rouvière溝を5型,肝門部胆管合流形式を4型に分け,それらの関連およびその他の諸因子の影響について検討した.

    結果:Rouvière溝はOpen型32.4%,Closed型29.5%,Scar型17.3%,Slit型13.41%,不明7.4%で,Open型とそれ以外の型では体重(p=0.011)とBMI(p=0.008)に有意差が認められた.肝門部胆管走行はI型79.5%,II型3.8%,III型6.1%,IV型10.6%で,I型と他の型では統計学的な有意差(p=0.774)は認められなかった.

    結語:Rouvière溝の形態と肝門部胆管走行には,明らかな関連は認められなかったが,前者には肥満体型の関与が示唆された.

総説
  • 井上 匡央
    2023 年 37 巻 1 号 p. 63-72
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー

    近年,悪性胆管狭窄に対する局所治療として,胆管内ラジオ波焼灼療法(RFA)が注目されている.胆管内RFAは狭窄部の腫瘍組織を凝固壊死させ脱落を誘導し,その効果として胆管ステント開存期間延長や生存期間延長等が期待される.特に肝外胆管癌を対象としたエビデンスが徐々に蓄積されてきており,遠隔転移を認めない例に対する治療効果を示す報告が散見される.しかし,まだまだ確立された治療手技とは言い難く,未解決な課題が数多く残されている.実臨床において胆管内RFAを施行する際には,現在のエビデンスを良く理解し把握した上で,真に患者さんの利益となるよう適切に運用する必要がある.

    本稿では胆道疾患,特に肝外胆管癌に対する内視鏡的胆管内RFAの現状と課題,そしてその展望に関して概説する.

  • 竹中 完, 工藤 正俊
    2023 年 37 巻 1 号 p. 73-82
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー

    放射線透視下内視鏡手技における職業被ばくに関しては蓄積した放射線線量が健康被害に影響するため,手技に携わる医師は患者と自分自身だけでなく医療スタッフも保護するために最大限の努力を払う義務がある.

    ERCP関連手技に関しては,治療的ERCPが診断的ERCPよりも放射線被ばく線量が有意に多く,EUS-BDではERCPと比して,手技時間は有意に短かったにも関わらず使用放射線線量が有意に多かったことが報告されている.

    放射線被ばく防護の3原則である“正当化”,“最適化”,“線量制限”,及び診断参考レベル:Diagnostic reference level(DRL)のコンセプトが理解され,自施設の透視装置に合わせた被ばく防護対策がとられ,放射線被ばくの低減を目的に日々進歩する技術が広く認識されることが求められる.

症例報告
  • 宜保 憲明, 野々垣 浩二, 大野 栄三郎, 青木 聡典, 八鹿 潤, 植月 康太, 飯田 忠, 水谷 泰之, 山雄 健太郎, 石川 卓哉, ...
    2023 年 37 巻 1 号 p. 83-90
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー

    症例は84歳男性.腰痛と食欲不振を契機に,高カルシウム血症,腎不全,高蛋白血症が明らかとなり,骨髄穿刺などを経て多発性骨髄腫と診断された.造影CTで,胆嚢頚部に僅かに造影される不整形腫瘤を認めた.また,同様の造影効果を示す類円形腫瘤を膵尾部,右胸腔,腹腔にそれぞれ認めた.超音波内視鏡では,胆嚢病変は高低エコーが混在した不整形腫瘤として,膵尾部病変は無エコーと低エコーが混在した類円形腫瘤としてそれぞれ描出された.両病変に対して行った超音波内視鏡下穿刺吸引法で,いずれの検体からも異型を伴う形質細胞が認められ,共に形質細胞腫と最終診断した.1次治療のMPB療法は奏効せず,胆嚢腫瘤増大に伴う閉塞性黄疸を発症した.しかし,胆管ステンティング後に開始された2次治療のLd療法では,M蛋白の減少や高カルシウム血症の改善と共に胆嚢病変と膵尾部病変の縮小も認められ,臨床経過も形質細胞腫として矛盾しなかった.

  • 天野 彰吾, 末永 成之, 浜本 佳織, 矢田 祥子, 津山 高典, 近藤 智子, 伊藤 浩史, 高見 太郎
    2023 年 37 巻 1 号 p. 91-99
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー

    症例は69歳男性.腹痛を主訴に前医を受診した.血液検査,腹部CT検査で胆石性膵炎が疑われ,ERCPが施行された.胆管から粘液の流出を認め,胆管由来の粘液産生腫瘍が疑われた.精査目的に当院へ紹介となった.造影CTでは胆嚢管内に限局する早期濃染,平衡相washoutを呈する隆起性病変を認めた.EUSでは胆嚢管を主座とした乳頭状の腫瘤を認めた.腫瘤は胆嚢管開口部に露出していたが,胆管への進展を認めなかった.胆道鏡観察では胆嚢管から発赤調の乳頭状隆起が胆管側に露出していたが,開口部周囲粘膜は正常であった.以上から原発性胆嚢管癌の疑いと診断し,外科的切除を施行した.病理組織学的にはICPNであり腫瘍は胆嚢管に限局していた.Farrarの診断基準を満たした自験例を文献的考察とともに報告する.

  • 山﨑 信人, 岡田 嶺, 塩川 洋之, 神宮 和彦, 植松 武史, 田中 亨
    2023 年 37 巻 1 号 p. 100-107
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー

    症例は82歳男性.便線狭小化のスクリーニング目的で行った腹部CT検査で胆嚢体部に隆起性病変を指摘され当科紹介となる.造影CT検査で胆嚢の隆起性病変は径25mmあり広基性で不均一に造影された.また,肝円索が中肝静脈の右側に位置し,門脈臍部近傍から前区域背側枝が分岐していたことから右側肝円索を認め,肝内胆管にも解剖学的変異を認めた.精査の結果,胆嚢癌T2(SS)N0M0 cStageIIの診断で,開腹全層胆嚢摘出術を施行した.術中所見では胆嚢床が左傍正中領域に存在し,Calot三角が胆嚢体部に覆われていたため,胆嚢底部から全層切除を行った.病理組織診断は中分化型管状腺癌,T2(SS)N0M0 pStageIIであった.術後4年6カ月経過したが無再発生存中である.右側肝円索は0.2-1.2%を占める稀な解剖学的変異であり,右側肝円索を伴った胆嚢癌の切除報告は少ない.若干の文献考察も加え報告する.

  • 中島 悠, 水野 隆史, 尾上 俊介, 渡辺 伸元, 川勝 章司, 山口 淳平, 砂川 真輝, 横山 幸浩, 伊神 剛, 江畑 智希
    2023 年 37 巻 1 号 p. 108-115
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー

    症例は78歳男性.前医で直腸神経内分泌腫瘍(G1)異時性肝転移に対し肝左内側区域部分切除を施行.術中の胆道損傷による医原性肝門部胆管閉塞に対し総胆管―右肝管磁石圧迫吻合(山内法)が施行された.肝切除44カ月後に胆管再狭窄及び残肝再発を指摘され当科紹介.腹部造影CTで肝門部近傍の左内側区域/尾状葉に13mm大の腫瘤を認め,胆道造影では左右肝管合流部に高度狭窄を認めた.転移性肝腫瘍および医原性胆管狭窄の再燃と診断し,肝中央二区域尾状葉切除+胆道再建にて双方の治療を企図した.安全性を考慮し狭窄して肝門部胆管を温存し肝切除を施行した後,左外側下枝と右後区域枝を術前に挿入したカテーテルを目印に同定し,それぞれに胆管空腸側々吻合を行った.複雑な良性胆道狭窄を伴う肝転移再々発例に対し,肝門部血管損傷を回避しつつ腫瘍切除と胆道再建を一期的に施行し得た症例を経験したので文献的考察を含めて報告する.

Video Reports
胆道専門医講座 硬化性胆管炎―診断と治療の進歩―
  • 藤澤 聡郎, 福間 泰斗, 伊藤 光一, 冨嶋 享, 石井 重登, 伊佐山 浩通
    2023 年 37 巻 1 号 p. 122-129
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー

    原発性硬化性胆管炎(PSC)は大小様々な胆管に線維性狭窄を生じ,最終的に肝硬変に至る進行性の難治性疾患である.疾患特異的なバイオマーカーが存在せず,ERCPによるPSCに特徴的な胆管像の有無で診断するしかないのが現状である.治療に関しては日本,アメリカ,ヨーロッパでそれぞれ診療ガイドラインが出版されており参考となる.しかし未だ生命予後の延長効果が証明された薬物療法はなく,薬効の評価方法とともにPSC診療の最大の課題である.総胆管1.5mm以下,肝門部1mm以下の胆管狭窄はDominant strictureと定義され,黄疸や胆管炎の原因となる.適切な内視鏡的バルーン拡張術は胆汁の流れを改善するだけでなく生命予後も改善する.肝移植のないPSC患者の最大の死因は胆管癌であり,ERCPの際は病理学的スクリーニングを行う.PSCは世界的に増加傾向にあるため,今後診療する機会が増えると予想される.

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