胆道
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24 巻, 5 号
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原著
  • 若井 俊文, 白井 良夫, 坂田 純, Korita Pavel V., 味岡 洋一, 畠山 勝義
    2010 年 24 巻 5 号 p. 667-674
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    要旨:胆管切離断端に遺残した上皮内癌におけるp53-binding protein 1(53BP1)を介した早期DNA損傷修復応答を解明し,局所再発との関連を検討した.肝外胆管癌にて根治切除された84例中,胆管切離断端が上皮内癌陽性であった11例を対象とした.蛍光免疫組織染色を行い共焦点レーザー走査顕微鏡にて53BP1の核内発現様式を検討した結果,びまん性集積が7例,ドット状集積が4例であった.アポトーシス標識率は,ドット状集積が中央値22%に対し,びまん性集積では1%と有意に低かった(p=0.003).53BP1核内ドット状集積は,γH2AXにより検出されるDNA損傷部に共局在していたことから,53BP1活性化を介した早期DNA損傷修復応答によりアポトーシスが誘導されたと考えられた.53BP1びまん性集積例の累積5年局所再発率は60%であり,ドット状集積例の0%と比較して有意に局所再発率が高かった(p=0.019).胆管切離断端に遺残した上皮内癌の局所再発には,早期DNA損傷修復仲介因子53BP1の不活化およびアポトーシス減少と関連がある.
  • 守 慶, 窪川 良広, 崔 仁煥, 須山 正文, 信川 文誠
    2010 年 24 巻 5 号 p. 675-682
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    要旨:切除したADM合併胆嚢癌12例(分節型11例,限局型1例)を対象とし,ADM合併胆嚢癌の臨床的特徴と病理学的事項を検討した.臨床的検討では,男女比9:3,平均年齢56.6歳,有症状2例,腫瘍マーカー(CEA,CA19-9)の上昇5例,有結石症例6例であった.最終画像診断で,癌の正診率は58.3%だった.形態別では,平坦型/表面型4例中1例,結節型/隆起型8例中6例が診断できていた.背景粘膜の病理学的検討を,分節型ADM8例に行った(底部側は6例).化生性変化,過形成が全例にみられ,すべて胃型上皮だった.分節部より頚部側と底部側の免疫染色(MIB-1とp53)を行った.6例の底部側と頚部側の比較ではMIB-1高値2:1,p53陽性2:0であり陽性率に有意差はなかった.結論1.ADMに合併した平坦型/表面型は診断困難であった.2.症例数が少ないこともあり免疫染色の検討では分節型ADMの底部側粘膜が前癌病変である一定の結果は得られなかった.
  • 貝田 将郷, 財部 紗基子, 市川 仁志, 岸川 浩, 西田 次郎, 森下 鉄夫
    2010 年 24 巻 5 号 p. 683-688
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    要旨:今回我々は急性閉塞性化膿性胆管炎(以下AOSC)を対象に国内版急性胆管炎ガイドラインにおける重症度判定基準の臨床評価を行った.重症度判定基準による分類では,AOSC群の79%(19/24),非AOSC群の46.5%(89/191)が中等症に分類された.両群中等症例のうち黄疸項目該当例はAOSC群で100%(19/19),非AOSC群で96.6%(86/89)と非常に高率であった.また黄疸のみの該当例は,AOSC群で100%(5/5),非AOSC群で97.4%(74/76)であり,黄疸が中等症例を増やす大きな因子となっていた.両群中等症における2項目以上の該当症例では,非AOSC群の14.6%(13/89)に比べAOSC群で73.7%(14/19)と有意に高い結果となった.現行の国内版ガイドラインにおいて中等症と判定されたものに対しては,補助的診断として判定基準項目で2項目以上が該当する場合や,WBC,CRPが高度な場合には準重症として取り扱うことが望ましいと考えられた.
総説
  • 上坂 克彦
    2010 年 24 巻 5 号 p. 689-694
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    要旨:胆道癌の補助療法には,2件の前向き研究があるのみである.そのうち,膵胆道癌に対する術後補助化学療法に関する1件の研究では,フルオロウラシル+マイトマイシンCの生存期間に対する有効性が,非治癒切除となった胆嚢癌においてのみ示された.また,肝門部胆管癌に対する術後補助放射線療法についての1件の研究では,同療法の生存期間に対する有効性は示されなかった.いくつかの後ろ向き研究からは,補助化学療法としてのゲムシタビンの有効性や,断端陽性症例に対する放射線治療の有効性が示唆されている.今後,質の高い前向き研究が,我が国から発信されていく必要がある.
症例報告
  • 川井田 博充, 板倉 淳, 松田 政徳, 河野 寛, 浅川 真巳, 雨宮 秀武, 細村 直弘, 藤井 秀樹
    2010 年 24 巻 5 号 p. 695-699
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    要旨:本態性血小板血症に併発した中部胆管癌の1切除例を経験した.患者は63歳男性,約20年前に本態性血小板血症と診断されアスピリンの内服により治療されていた.上腹部不快感を主訴に近医を受診し,中部胆管癌と診断され,手術目的に紹介となった.血小板の著明な上昇を認めたため,術前にhydroxyureaを投与してコントロールした後,幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した.術後はhydroxyurea,ヘパリン,アスピリンを投与し血小板のコントロールを行い,血栓などの合併症を起こすことなく退院となった.
  • 所 隆昌, 杉岡 篤, 棚橋 義直, 竹浦 千夏, 香川 幹, 岡部 安博, 守瀬 善一, 高桑 康成, 黒田 誠
    2010 年 24 巻 5 号 p. 700-706
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    要旨:今回我々は,胆管癌と鑑別が困難であった原発性硬化性胆管炎の1例を経験したので報告する.
    症例は73歳の女性,高血圧症で通院中の医院で肝機能障害を指摘され,腹部超音波検査で肝内胆管拡張を認めたため当院に紹介となった.入院時には黄疸は認めなかったが,入院中にT-bil 8.8 mg/dl と黄疸が出現したため内視鏡的逆行性胆道造影(endoscopic retrograde cholangiography:ERC)を施行した.ERCでは左右肝管から総肝管にかけて狭窄像を認めた.胆汁細胞診,ブラッシング細胞診では悪性所見はなかったが,経乳頭的胆管生検で高分化型腺癌を否定できない所見を認めたため経皮経肝門脈塞栓術を行った後,肝左3区域切除術+D2リンパ節郭清を施行した.術後病理診断は胆管周囲に炎症細胞の浸潤と線維化による壁肥厚を認め原発性硬化性胆管炎と診断された.
  • 伊藤 裕幸, 川口 義明, 東 徹, 小川 真実, 岡田 健一, 松山 正浩, 堂脇 昌一, 飛田 浩輔, 中郡 聡夫, 平林 健一, 今泉 ...
    2010 年 24 巻 5 号 p. 707-713
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    要旨:今回われわれは比較的稀とされる十二指腸乳頭部カルチノイドの外科的切除及び内視鏡的切除例2例を経験したので報告する.症例1は66歳,女性.平成19年2月健診内視鏡にて十二指腸乳頭部不整潰瘍を指摘され当科を受診した.病変は径12 mm大の腫瘤潰瘍型乳頭部腫瘍であり,精査にてカルチノイドと診断され膵頭十二指腸切除術を施行した.症例2は40歳,女性.内視鏡にて十二指腸乳頭部に白色調の粘膜下腫瘍様の隆起病変を認め,精査にてカルチノイドと診断し内視鏡的乳頭切除術を施行した.十二指腸乳頭部のカルチノイドは原則外科的切除の適応とされているが,最近では深達度が浅い病変に対して内視鏡的切除を行った報告も散見される.本報告例では再発は認めずに経過しているが,カルチノイドは腫瘍の性質上,長期を経て再発や転移を来たすことがあり,治療後の十分な経過観察とともに内視鏡的切除の適応決定には詳細な評価が必要と考える.
  • 菅野 敦, 佐藤 賢一, 廣田 衛久, 正宗 淳, 高舘 達之, 力山 敏樹, 海野 倫明, 石田 和之, 下瀬川 徹
    2010 年 24 巻 5 号 p. 714-722
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    要旨:下部胆管に発生した腺内分泌細胞癌の1例を報告する.症例は62歳,男性.全身倦怠感と皮膚黄染を主訴に来院した.入院時の血液検査所見は肝胆道系酵素の上昇を認めた.腹部CTでは下部胆管に造影効果のある腫瘍を認め,そこから肝側の胆管は拡張していた.ERCPでは,下部胆管に腫瘤影と一致した偏側性の欠損像を認めた.経乳頭的に生検を施行した結果,腺内分泌細胞癌の診断であった.遠隔転移を認めず,膵頭十二指腸切除術を施行した.術後gemcitabineの補助化学療法を施行したが,術後3カ月で多発性の肝転移が認められ,術後5カ月で永眠された.胆管原発の腺内分泌細胞癌は極めて稀であり,また術前の生検にて腺内分泌細胞癌と診断し得た症例の報告はなく貴重と考えられた.
  • 長谷川 直之, 安部井 誠人, 佐々木 亮孝, 朴 秀吉, 森脇 俊和, 南 優子, 福田 邦明, 平井 祥子, 正田 純一, 大河内 信弘 ...
    2010 年 24 巻 5 号 p. 723-728
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    要旨:症例は64歳女性.上腹部痛のため近医を受診し,腹部CTにより肝,門脈,肝弯曲部結腸に直接浸潤し傍大動脈リンパ節転移を伴う胆嚢癌(Stage IVb)が認められ,当院を紹介された.S-1(80 mg/日 4週投与2週休薬)を開始した.3コース終了後には,原発巣は著明に縮小し,周囲臓器への浸潤は認められなくなり,リンパ節転移も縮小した.1年間のS-1内服により,原発巣は肝床周囲に限局し,リンパ節転移は消失したため,拡大胆嚢摘出術,肝外胆管切除術,2群リンパ節郭清を施行した.切除標本の病理診断では,中分化腺癌,pT2,pN0,pM0,Stage IIであった.術後1年以上,無再発生存の状態が継続している.今後,切除不能進行胆嚢癌に対するS-1も含めた化学療法の進歩に伴い,本例のように根治切除が可能となる症例が増加することが予想される.
  • 貝田 将郷, 市川 仁志, 岸川 浩, 西田 次郎, 森下 鉄夫
    2010 年 24 巻 5 号 p. 729-735
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    要旨:今日の総胆管結石に対する標準的治療は内視鏡治療となってきている.「急性胆道炎の診療ガイドライン」におけるドレナージ法の選択においても内視鏡的ドレナージは推奨度Aと記載されているが,時に内視鏡治療が困難な症例にも遭遇する.今回,経乳頭的胆管挿入が困難であった総胆管結石症に対して,Rendezvous techniqueを用いて載石を行った2症例を経験した.本法は胆管挿入困難例に遭遇した際の選択肢の1つとして有用である.
  • 樋口 亮太, 太田 岳洋, 竹下 信啓, 梶山 英樹, 谷澤 武久, 矢川 陽介, 植村 修一郎, 米田 五大, 高山 敬子, 白鳥 敬子, ...
    2010 年 24 巻 5 号 p. 736-742
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    要旨:症例は66歳男性で,慢性腎不全,前立腺癌,副甲状腺機能亢進症と直腸癌術後のため通院中であった.発熱と腹痛を主訴に受診し,急性胆管炎を伴う総胆管結石に対し内視鏡的治療が行われた.大きな傍十二指腸乳頭憩室の肛門背側に十二指腸乳頭を認め,プレカット後に中切開のESTとENBDおよび膵管脱落型ステントの留置が行われた.しかし,処置後4日目より消化管出血を認め一時ショック状態となった.計3度の内視鏡的止血術と輸血が行われたが結局止血が得られず,状態が悪化したため外科へ転科した.緊急で経十二指腸的乳頭形成術に準じた止血,総胆管結石の切石,胆嚢摘出とCチューブドレナージ術を行い,止血が得られ退院し得た.1983-2010年の医学中央雑誌にて検索したところ,ショックを伴うようなEST後の出血例に対する外科的止血法について,具体的な方法を言及した報告はまれであり報告する.
  • 盛 直生, 櫻井 直樹, 飯澤 肇
    2010 年 24 巻 5 号 p. 743-747
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    要旨:症例は74歳の男性.平成8年に胃癌の診断で手術を行い,平成19年7月の超音波検査で胆嚢内に隆起性病変を指摘され,腹部CT検査では8 mmであったが,3カ月後に11 mmと増大し,悪性腫瘍が否定できないため,平成19年12月に開腹胆嚢摘出術を施行した.腹腔内は腫瘍の肝床への肉眼的な浸潤は認められなかった.胆嚢体部に10 mmのなだらかな隆起性病変を認め,病理組織学的には大型の異型核を有する紡錘形細胞がstoriform patternをとって配列しており,免疫染色の結果,Vimentin陽性,cytokeratin陰性,EMA陰性,α-SMA陽性,CD34陰性,c-kit陰性,S-100陰性,NSE陰性,NCAM陰性,p53陽性より非上皮性悪性腫瘍であり,さらにCD68陽性,α1-antitripsin陽性より悪性線維性組織球腫と診断された.術後約2年6カ月が経過するが,無再発生存中である.胆嚢原発の悪性線維性組織球腫は非常に稀であり,ここに報告した.
  • 亀高 尚, 牧野 裕庸, 宮崎 勝
    2010 年 24 巻 5 号 p. 748-753
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    要旨:症例は57歳の男性で,検診にて肝機能障害を指摘された.CTにおいて,S1,S4から肝門を占拠する直径5 cmの腫瘤形成型の肝内胆管癌と診断された.ERCPでは左肝管,右前区域枝への癌浸潤を認めたため肝左三区域+尾状葉,および胆管切除が選択され,下大静脈,門脈,肝動脈への浸潤に対してそれぞれの切除再建を行った.下大静脈の再建は完全肝血行遮断(Total Hepatic Vascular Exclusion;以下,THVEと略記)下に行い,門脈再建には臍静脈パッチグラフトを使用,肝動脈は端々吻合が可能であった.術後合併症は認めず,第19病日に軽快退院した.病理組織学的にはNo.8,No.12,No.13リンパ節が転移陽性であり,中分化型管状腺癌,pStage IVB(t3,n1,m0)と診断された.術後補助化学療法としてGemcitabineを投与し,リンパ節再発により癌死するまでに3年3カ月生存した.
胆道専門医講座(4)「胆管結石」―胆道専門医に求められるスキル(知識と手技)―
第4回 予後・合併症
  • 大屋 敏秀, 田妻 進
    2010 年 24 巻 5 号 p. 754-761
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    要旨:胆管結石に対する内科的治療法は,内視鏡的に十二指腸乳頭を介して結石除去を行う.それ故,十二指腸乳頭開口部およびOddi括約筋に対しての処置を伴い,同部位の器質的変化を回避できない.内視鏡的結石除去を行う上で,周術期に発生する早期合併症と乳頭処置後の新たな生理的条件下において発生する後期合併症がある.前者には,ERCPにおける合併症でもあるが,主として出血,穿孔,急性膵炎が挙げられる.後者には,胆管炎,胆嚢炎,肝膿瘍などの感染症と胆管結石の再発が問題となる.この稿においては,内視鏡的な結石除去を行う場合の早期および後期合併症について概説する.
  • 大内田 次郎, 千々岩 一男
    2010 年 24 巻 5 号 p. 762-769
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    要旨:胆管結石の治療はESTやEPBDを行う内科的治療と腹腔鏡下手術や開腹手術を含めた外科的治療に大別される.短期合併症として,ESTでは出血,穿孔,EPBDでは膵炎の頻度が高く,結石再発率はEPBDと比較してESTで高い傾向にあるが,EPBDの長期観察例が少ないため今後の検討が必要である.外科的治療として腹腔鏡下手術を行う施設が増えてきているが,手技が容易ではなく,長期予後の報告も少ないため,内視鏡的治療との比較検討が今後必要である.十二指腸乳頭機能の問題や各々の治療法の適応が統一されていないため,現時点では治療の優劣をつけることはできず,各施設で合併症が少なく再発を起こさない最善の治療を尽くすべきである.胆管結石と急性胆管炎は密接に関連しており,moderate,severeな急性胆管炎治療のfirst choiceは内視鏡的緊急胆道減圧ドレナージであることから,内科との密接な連携が外科の立場からも重要である.
総括
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