UDP-
N-アセチルグルコサミン: α-3-D-マンノシドβ-1,2-
N-アセチルグルコサミン転移酵素I (GnT I) は、複合型、混成型のアスパラギン結合型糖鎖生合成に関する鍵酵素である。哺乳類GnT Iの相同物と予測される三つの遺伝子に対するcDNAを線虫
C. elegansからクローン化した (
gly-12、gly-13、gly-14と命名)。これら三つのcDNAは全て、以前クローン化されたゴルジ型糖転移酵素がもつ典型的な構造のタンパク質をコードしていた。これらの遺伝子を線虫に導入し発現させると、全てがGnT Iの酵素活性を示した。中でもGLY-13はユニークで、糖アクセプターとして生理的な基質であるMan
5GlcNAc
2-Rのみを認識した。trimethylpsoralen (TMP) 存在下での紫外線照射によって、これら三つの遺伝子が欠落した変異体を単離した。
gly-12と
gly-14の一方、あるいは両方を欠落させた変異体の表現型は野生型と変わらなかった。このことは、少なくとも研究室で標準的に飼育している限り、
gly-12、gly-14いずれの遺伝子も線虫の発生には必要ないことを示す。この結果や他のデータから考え、GLY-13が
C. elegans の主たる機能的GnT Iであると判断される。
gly-13遺伝子が欠落した変異体は半致死で、生存できたとしても形態や行動に重大な欠陥を生じた。今のところ、
gly-13遺伝子に隣接する箇所で生じた第二の変異の可能性を除外できないが、遺伝学的なマッピング実験では、観察された表現型が
gly-13遺伝子欠損に基づくことが確認されている。マウスGnT I遺伝子に関するヌル変異体の実験から、哺乳類の形態形成における複合型、混成型
N-結合糖鎖の決定的な役割が指摘されている。我々のデータは、線虫
C. elegans においても同様なことが成り立つことを示唆する。しかしながら、後生動物の発生過程における糖鎖の機能を調べるのに、GnT Iや他の糖転移酵素のヌル変異体を用いる方法には限界がある。つまり、この問題 (翻訳後修飾に関する機能プロテオミクス) に対する別種のアプローチが必要となる。
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