Trends in Glycoscience and Glycotechnology
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13 巻, 73 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
  • Jun Hirabayashi, Harry Schachter
    2001 年 13 巻 73 号 p. 445-446
    発行日: 2001/09/02
    公開日: 2010/01/05
    ジャーナル フリー
  • Shihao Chen, Andrew M. Spence, Harry Schachter, 葉山 洪, 平林 淳
    2001 年 13 巻 73 号 p. 447-462
    発行日: 2001/09/02
    公開日: 2010/01/05
    ジャーナル フリー
    UDP-N-アセチルグルコサミン: α-3-D-マンノシドβ-1,2-N-アセチルグルコサミン転移酵素I (GnT I) は、複合型、混成型のアスパラギン結合型糖鎖生合成に関する鍵酵素である。哺乳類GnT Iの相同物と予測される三つの遺伝子に対するcDNAを線虫C. elegansからクローン化した (gly-12、gly-13、gly-14と命名)。これら三つのcDNAは全て、以前クローン化されたゴルジ型糖転移酵素がもつ典型的な構造のタンパク質をコードしていた。これらの遺伝子を線虫に導入し発現させると、全てがGnT Iの酵素活性を示した。中でもGLY-13はユニークで、糖アクセプターとして生理的な基質であるMan5GlcNAc2-Rのみを認識した。trimethylpsoralen (TMP) 存在下での紫外線照射によって、これら三つの遺伝子が欠落した変異体を単離した。gly-12gly-14の一方、あるいは両方を欠落させた変異体の表現型は野生型と変わらなかった。このことは、少なくとも研究室で標準的に飼育している限り、gly-12、gly-14いずれの遺伝子も線虫の発生には必要ないことを示す。この結果や他のデータから考え、GLY-13がC. elegans の主たる機能的GnT Iであると判断される。gly-13遺伝子が欠落した変異体は半致死で、生存できたとしても形態や行動に重大な欠陥を生じた。今のところ、gly-13遺伝子に隣接する箇所で生じた第二の変異の可能性を除外できないが、遺伝学的なマッピング実験では、観察された表現型がgly-13遺伝子欠損に基づくことが確認されている。マウスGnT I遺伝子に関するヌル変異体の実験から、哺乳類の形態形成における複合型、混成型N-結合糖鎖の決定的な役割が指摘されている。我々のデータは、線虫C. elegans においても同様なことが成り立つことを示唆する。しかしながら、後生動物の発生過程における糖鎖の機能を調べるのに、GnT Iや他の糖転移酵素のヌル変異体を用いる方法には限界がある。つまり、この問題 (翻訳後修飾に関する機能プロテオミクス) に対する別種のアプローチが必要となる。
  • Fred Hagen, Michael Layden, Keith Nehrke, Karen Gentile, Kari Berbach, ...
    2001 年 13 巻 73 号 p. 463-479
    発行日: 2001/09/02
    公開日: 2010/01/05
    ジャーナル フリー
    C. elegasO-結合型糖鎖の発生における役割を遺伝学的に調べるのに適したモデル動物である。ポリペプチドGalNAc転移酵素 (ppGaNTase) は、ゴルジ体で一群のタンパク質、すなわち細胞表面や、細胞外基質へと輸送されるタンパク質、及び分泌タンパク質のセリン、ないしスレオニン残基に翻訳後修飾としてN-アセチルガラクトサミンを転移する酵素家系である。C. elegans はゲノム中に哺乳類ppGaNTaseと有意な配列類似性をもつ遺伝子を9つ含む。これらから構造上のトポロジーが等しい糖転移酵素をコードする13のmRNAが派生する。この遺伝子家系の規模が大きいことから、ムチン型タンパク質へのO-結合型糖鎖の付加は、動物細胞では組織特異的に発現した各種ppGaNTaseアイソザイムによって制御されていることが示唆される。
    胚から幼虫期において、一群の糖転移酵素がどのような細胞特異的発現を示すかを知るため、C. elegans のppGaNTase家系を構成する各メンバーについて、lacZまたはGFPレポーターを発現するトランスジェニック線虫の構築を行った。これらアイソフォームの時空間的な発現に関する予備的なデータから、ppGaNTaseアイソフォームの特異的な分布が、発生過程におけるO-結合型糖鎖付加の特異性と可能性を制御していることがうかがえる。
  • Judith Appleton, Anne Dell, Mark Nitz, David Bundle, 平林 淳
    2001 年 13 巻 73 号 p. 481-492
    発行日: 2001/09/02
    公開日: 2010/01/05
    ジャーナル フリー
    この総説では、宿主-寄生生物間における糖鎖の重要性を示す一例として、Trichinella spiralis という寄生虫を扱う。T. spiralisN-結合型糖鎖に関する研究は、寄生の機構を明らかにするためになされた、構造、合成、免疫学的手法等を用いた学際的アプローチの結集と言える。他の多くの線虫と同様、Trichinella はその表皮上にN-結合型糖鎖を豊富に含む糖タンパク質群を分泌し、提示している。これら糖鎖のうち大部分は線虫、さらには真核生物全体に共通するものだが、最も興味深い糖鎖はTrichinella に独特な構造をもつ。前者は高マンノース型や切り詰め型、後者は複合型N-結合糖鎖に属する。Trichinella を含む多くの寄生虫では、lacdiNAc構造がアンテナ鎖の組み立て部品として好んで用いらる。T. spiralis のL1幼虫では、このlacdiNAc構造がさらにホスホコリンやD-チベロース (3,6-デオキシ-D-arabino-ヘキソース) で修飾されている。両修飾を受けた糖鎖は免疫原性が著しく高い。チベロースは T. spiralis に対する防御免疫の標的となるため、最も掘り下げた研究がなされている。自然界に存在する糖鎖末端の結合様式 (立体化学) を決定するため、α、及びβ結合したチベロースを含む末端四糖の化学合成が試みられた。3,6-ジデオキシ-D-アラビノ-ヘキソースという前例のないキャッピングを導入するには、これまでにない新しい合成法の開発が必要であった。合成糖鎖を用いた結合実験や抗体を用いた実験により、T. spiralis に対する感染防御を果たす抗体の作用機序が明らかにされている。
  • Kay-Hooi Khoo, 平林 淳
    2001 年 13 巻 73 号 p. 493-506
    発行日: 2001/09/02
    公開日: 2010/01/05
    ジャーナル フリー
    住血吸虫症は二宿主性の吸血虫によって引き起こされる寄生虫病である。過去10年間に及ぶ研究の成果、この寄生虫の発生過程における糖鎖付加パターン上の変化に対する理解に大きな進展があった。蓄積されたデータによると、住血吸虫のN-結合型糖鎖の生合成初期段階は哺乳類の場合と同様で、その結果類似のコア構造ができるが、住血吸虫ではさらにこの構造に修飾が加わったり、末端にフコシル化した配列が加えられるなど、構造上の差が著しい。O-結合型糖鎖に関しては、従来から知られる1型、2型構造の他に、新規コア構造が同定されている。また、多フコシル化した、異常に長い複雑な構造のO-結合型糖鎖も幾つか見つかる。一方、Schistosoma mansoni (いわゆる住血吸虫) のスフィンゴ糖脂質は schisto コアという従来にないコア構造をもつ。この新規コア構造から、さらにこれまで知られていないユニークな構造が伸長しているらしい。本レビューでは、住血吸虫のグライコーム解明に向けた研究上の進展を振り返る。
  • Roland Schauer, 佐藤 ちひろ
    2001 年 13 巻 73 号 p. 507-517
    発行日: 2001/09/02
    公開日: 2010/01/05
    ジャーナル フリー
    数種の昆虫の発生途上にシアル酸、主に、N-アセチルノイラミン酸が見出されてきている。我々はレクチンや抗体、単糖の様々な精製および分析法を用いることによって、ショウジョウバエ (Drosophila melanogaster) の神経発達領域およびセミ(Philaenus spumarius) のマルピーギ管にポリシアル酸を検出した。これらの昆虫の成体にシアル酸は検出されなかった。シアル酸の発現は in vivo では明らかであるが、多くの昆虫培養細胞系ではその存在が明らかにされていない。また、バキュロウイルスの発現系を用いて哺乳動物型の組換え糖タンパク質 (複合型シアリル化N-型糖鎖をもつもの)を生産することは利点が多くあるため、培養細胞におけるシアル酸の生合成機構の解明が生物工学的な観点から重要視されてきている。それらの研究によって明らかになったことは、糖鎖の改変は昆虫細胞に糖転移酵素群を発現させることによってのみ可能であることである。すなわちシアル酸の生合成に関わる酵素をコードするいくつかの外来遺伝子を導入しなくてはならない。さらに、昆虫細胞に関する研究によって、シアル酸は動物界の新口動物に限られているのではなく、昆虫のような原口動物にも存在することが明らかになった。このことはシアル酸の進化に対して新しい見解を投ずるものである。
  • Naotaka Tanaka, Kaoru Takegawa
    2001 年 13 巻 73 号 p. 519-532
    発行日: 2001/09/02
    公開日: 2010/01/05
    ジャーナル フリー
    近年、分裂酵母 Schizosaccharomyces pombe は糖タンパク質糖鎖の生合成や糖鎖構造の解析の研究に真核生物のモデル系としての興味がもたれている。分裂酵母の糖タンパク質にはマンノースの他に多量のガラクトースが含まれていることから、動物細胞のように糖タンパク質糖鎖にガラクトースを付加する能力があることがわかってきた。分裂酵母におけるガラクトース鎖の機能を解析する目的で、我々はガラクトース鎖付加に欠損を示す変異株(gms1変異株)を取得した。そして分裂酵母のgms1+遺伝子がUDP-ガラクトーストランスポーターをコードしており、gms1+遺伝子を破壊した株ではガラクトシルトランスフェラーゼの基質であるUDP-ガラクトースがゴルジ内腔へと輸送されないために細胞表層のガラクトース鎖が完全に欠損していることを明らかにした。Δgms1株はガラクトース鎖の付加が完全に行われないために分裂酵母におけるガラクトース鎖の機能を解析する上で非常に有用であることがわかった。Δgms1株の諸性質の解析結果から、分裂酵母のガラクトース鎖は細胞形態の維持、性的凝集、種々の薬剤への抵抗性や非性的凝集などの様々な現象に重要な役割を果たしていることを明らかにすることができた。
  • Jun Hirabayashi, Yoichiro Arata, Ko Hayama, Ken-ichi Kasai
    2001 年 13 巻 73 号 p. 533-549
    発行日: 2001/09/02
    公開日: 2010/01/05
    ジャーナル フリー
    ガレクチンは幅広い生物に見つかる比較的分子量の小さなレクチンで、進化的に保存されたβガラクトシド結合活性をもつ。以前我々は、線虫 Caenorhabditis elegans から32-kDaガレクチン、16-kDaガレクチンと名づけた異なる二種類のガレクチンを見つけ、その性質を調べた。しかし、最近、この生物のゲノムプロジェクトが完成し、より多くのガレクチン様遺伝子の存在が明らかとなっている。これらガレクチン候補遺伝子についてさらに詳しく調べるため、これらに系統名lec-1-11をもうけた。このうち、以前解析された32-kDaガレクチン、16-kDaガレクチンは、それぞれLEC-1、LEC-6タンパク質に相当する。また、32-kDaガレクチン (LEC-1) とより密接な関係を示した四つのメンバーはlec-2-5と、また新しい特徴を持ったそれ以外のメンバーはlec-7-11と命名した。cDNAクローニングによってこれらの遺伝子の読み枠を決定し、ゲノム/プロテオームデータベースに登録した。これら新規ガレクチンの生理機能を知るため、詳細な糖特異性を、最近補強されたフロンタルアフィニテイークロマトグラフィー法によってに調べた。一方、内在性糖タンパク質レセプターの同定には、最近開発されたグライコキャッチ法を援用した。フロンタル解析の実施には蛍光標識された一連のオリゴ糖鎖を用いるが、本解析法ではこれらに対するアフィニティーを定量的に、迅速、かつ信頼度高く求めることができる。後者のグライコキャッチ法ではC. elegans ガレクチンが特異的に認識した糖タンパク質に対する遺伝子を特定する。これは、従来から用いられているレクチンアフィニティー技術に、最近のin silico レベルのデータベース検索を組み合わせた画期的な方法である。実は、これら二つの新技術は、そのまま著者らが提案しているグライコームプロジェクトへの応用が可能である。すなわち、我々のグライコームプロジェクトでは、ゲノム科学の潮流にのった形で「糖タンパク質リスト」の作成を目指す。グライコキャッチ法によって以下の三点が明らかにされる。1)どの遺伝子が糖タンパク質として発現されるか。2)どの位置が実際に糖鎖の付加を受けているか。3)その糖鎖の種類はどのようなものか(例、N-結合型かO-結合型か、高マンノース型か複合型か)。実際にコンカナバリンAとLEC-6ガレクチンを用い、C. elegans の可溶性、及び界面活性剤抽出物の双方についてグライコーム解析を試みているが、かなりの数の糖タンパク質コード遺伝子を決定できた。よって、本戦略はヒトなどの、より複雑な生物に対する応用も十分可能と判断される。最後に、プロテオーム/グライコームデータベースへの糖鎖の記載法に関し、新しい提案を行う。
  • 長束 俊治
    2001 年 13 巻 73 号 p. 551-553
    発行日: 2001/09/02
    公開日: 2010/01/05
    ジャーナル フリー
  • 平林 淳
    2001 年 13 巻 73 号 p. 555-556
    発行日: 2001/09/02
    公開日: 2010/01/05
    ジャーナル フリー
  • Teruhiko Matsubara
    2001 年 13 巻 73 号 p. 557-560
    発行日: 2001/09/02
    公開日: 2010/01/05
    ジャーナル フリー
    タンパク質-糖鎖相互作用は、糖鎖に結合するタンパク質、例えばレクチン、酵素、および抗体などが用いられ解析されてきた。しかし標的糖鎖に特異的に結合する分子を設計することは容易ではない。本研究ではガングリオシド糖鎖に結合する分子をランダムペプチドライブラリーからセレクションした。得られたペプチドの糖鎖への結合性を調べたところ、セレクションに用いた糖鎖構造に特異的に結合し、また共通モチーフを介して糖鎖と相互作用している可能性が示された。
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