Trends in Glycoscience and Glycotechnology
Online ISSN : 1883-2113
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ISSN-L : 0915-7352
23 巻, 133 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
ミニレビュー
  • Jessica C.F. Kwok, Chin Lik Tan, Difei Wang, Janosch Heller, James W. ...
    原稿種別: ミニレビュー
    2011 年 23 巻 133 号 p. 201-211
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/02
    ジャーナル フリー
    コンドロイチン硫酸プロテオグリカン (CSPGs) は、巨大な細胞外マトリックス分子であり、神経系の損傷後にグリア性瘢痕において強く発現する。多くの場合CSPGsは、損傷部位を乗り越えようとする軸索の再生を妨げる阻害因子として働くことが知られている。細菌由来の酵素であるコンドロイチナーゼABCによりCSPGsを除去することで、軸索再生が改善される。また、CSPGsは中枢神経系の可塑性を制御するペリニューロナルネットの主要成分でもあり、CSPGsの除去により、構造的可塑性が増強され、機能的回復をもたらす。本総説で我々は、神経損傷後の軸索再生と可塑性におけるCSPGsの役割を概説するとともに、CSPGの受容体もしくは相互作用分子の発見により最近明らかとなってきた、これらの阻害分子の機能的側面について論じる。
  • Kazuma Sakamoto, Kenji Kadomatsu
    原稿種別: ミニレビュー
    2011 年 23 巻 133 号 p. 212-220
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/02
    ジャーナル フリー
    ケラタン硫酸は2糖の繰り返し構造を単位とするグリコサミノグリカンの一つであり、コアプロテインに共有結合することによりケラタン硫酸プロテオグリカンを生ずる。ケラタン硫酸プロテオグリカンは元来角膜抽出物において発見され、また関節軟骨中において豊富に見出されたため、これら組織における構造や生物学的機能が注目されてきた。しかし1980年代に入り中枢神経系においても見出され、神経系の発達や疾患における働きが注目を集めてきた。現在、ケラタン硫酸プロテオグリカンは生理的および損傷後神経可塑性を制御する主要な分子の一つとして受け入れられ始めている。
  • Chihiro Sato, Ken Kitajima
    原稿種別: ミニレビュー
    2011 年 23 巻 133 号 p. 221-238
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/02
    ジャーナル フリー
    シアル酸 (Sia) がα2, 8結合で8-400残基縮重合したポリシアル酸構造は、胎仔期の脳において神経細胞接着分子 (NCAM) 上に一過的に発現する。また成体脳では、海馬や嗅球などの神経の再構築が行われている部位で発現が存続している。ポリシアル酸は、自身の大きな負電荷や立体障害により、細胞の接着を阻害するため、細胞接着の負の制御分子として細胞移動や神経突起の伸長、軸索の可塑性を促進し、正常な神経回路の形成や神経発生に関わるとされてきた。近年我々はポリシアル酸が神経の機能を制御するBDNF、FGF2、ドーパミンのような生理活性因子と直接相互作用し、それらの因子を保持して細胞表面濃度を調節することによって細胞機能を制御する新たなポリシアル酸の機能を見いだした。また、ポリシアル酸構造の生合成を司るポリシアル酸転移酵素(STX)について、統合失調症患者に報告されたその翻訳領域におけるSNPは、酵素活性を顕著に低下させ、それを反映するポリシアル酸構造の質と量を低下させ、そのことによりポリシアル酸の保持機能が失われることを明らかにした。このポリシアル酸構造の破綻が統合失調症をはじめとするポリシアル酸量の変動が認められる精神疾患や神経変性疾患患者のポリシアル酸による分子保持機能に影響を与えている可能性がある。
  • Shinji Miyata, Hiroshi Kitagawa
    原稿種別: ミニレビュー
    2011 年 23 巻 133 号 p. 239-247
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/02
    ジャーナル フリー
    経験依存的な神経可塑性は、生後初期の臨界期と呼ばれる時期に強く見られ、成体では顕著に低下する。臨界期の終了した成体脳から細胞外マトリックス成分であるコンドロイチン硫酸プロテオグリカン (CSPG) を除去することで可塑性が回復する。そのため、CSPGは可塑性を阻害する非特異的な物理的障壁であると認識されてきた。しかし最近の研究から、CSPGが神経回路の機能的接続に対して特異的な機能を果たすことが提唱されている。つまり、CSGPの機能は、コンドロイチン硫酸 (CS) 鎖の特異的な硫酸化修飾によって特徴付けられる硫酸化コードの中に書きこまれており、それが神経可塑性を制御する可能性がある。CSPGは生後の発生に伴い、経験依存的な可塑性において重要な役割を果たすパルブアルブミン陽性の抑制性神経細胞周囲に集積し、ペリニューロナルネットを形成する。本総説では、CS鎖の硫酸化コードと抑制性神経細胞の成熟との関連に焦点をあて、経験依存的な可塑性におけるCSPGの機能について最近の知見を概説する。
  • Takashi Yamanaka
    原稿種別: ミニレビュー
    2011 年 23 巻 133 号 p. 248-255
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/02
    ジャーナル フリー
    ウマインフルエンザAウイルス(EIV)はウマにおいて、その高い伝染性のため最も重要な病原体の一つである。EIVは他のインフルエンザAウイルスのように、ヘマグルチニンと細胞表面の受容体の末端シアル酸との相互作用を経由して宿主の標的細胞に結合する。2004年のアメリカでは、EIVの種間伝達が原因となりイヌの間で呼吸性疾患が大発生した。EIV由来ウイルスは急速に広がり、アメリカでのイヌの風土病になりそうである。このレビューはEIVとアメリカで感染したイヌより分離されたEIV由来ウイルスの病原論と受容体結合の特徴についての認識を検討するものである。
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