Trends in Glycoscience and Glycotechnology
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7 巻, 38 号
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  • J. McLeod Griffiss, 米山 裕, 中江 太治
    1995 年 7 巻 38 号 p. 461-478
    発行日: 1995/11/02
    公開日: 2010/01/05
    ジャーナル フリー
    リポオリゴ糖 (lipooligosaccharide、LOS) は腸管以外の粘膜表面に定着するグラム陰性細菌によって産生される (1)。これらの表面に露出した外膜付随構造物は、腸内グラム陰性細菌のリポ多糖 (LPS) よりもヒトの細胞膜のスフィンゴ糖脂質 (GSL) に似ている (1-3)。
    1つの高度に保存されたLOSとして、パラグロボシド類GSL (7-9) に共通に見られるラクト-N-ネオテトラオース (LacNAcβ1→3Lac) 構造が存在する (2、4-6)。他のLOS糖鎖構造は、ガングリオ系列 (GalNAcβ1→3Gal-R)、グロボ系列 (Galα1→4Lac-R、またはP-シリーズ)、そしてラクト系列 (Lac-R) のGSLと共通である (3、10)。これらの微生物はヒトの細胞と同じ表層糖質構造を持っているため、免疫認識機構から逃れることができる (11-13)。
    LOSの生合成には柔軟性がある。ラクト-N-ネオテトラオースは、二糖類であるラクトサミン (LacNAc; Galβ1→4GlcNAc) とラクトース (Lac; Galβ1→4Glc) がβ1→3結合したものである。内部のラクトース部分のガラクトース (Gal) は“トグルスイッチ (訳者注: 一度押すと1つの機能がオンになり、もう一度押すと別の機能がオンになり前の機能はオフになる。押す度にこれを繰り返すようなスイッチ)”、あるいは生合成上の分岐点として働いており、それに連結している糖質によって、完成したLOSの構造が決まる。二番目のガラクトース残基がこれにα1→4 (Pkグロボシド) 結合で連結すると糖鎖の伸長は止まり、そしてLOSの末端はジガラクトシドで停止する。一方、もしグルコサミン (GlcNAc) がβ1→3結合でラクトシルガラクトースに結合したならば、次のガラクトース残基はGlcNAcにβ1→4結合で連結し、ラクト-N-ネオテトラオースのLacNAc二糖部分となる。
    LacNAcの末端のガラクトースは2つ目の生合成分岐点である。置換されなければパラグロボシルであり (2)、シアル酸で修飾された場合にはシアロパラグロボシルとなり (14、15)、また、ガラクトサミン (GalNAc) によってβ位に置換された場合アシアローG3ガングリオシル (6、16) となる。LOSにシアル酸が付加されると、微生物は補体による溶菌 (免疫溶菌) から免れ (14、17)、多形核白血球による殺菌を遅らせ (18、19)、そして菌の子宮頚部内膜の上皮細胞への侵襲能を高める (20)。LOS末端にGalNAcが付加すると、ヒト血清中に普遍的に存在する殺菌性IgMが結合するようになる (21、22)。これらの抗体は血液中に侵入した微生物の免疫溶菌を開始し (11)、それによって粘膜への定着集落形成を制限する。
    ムコイド型細菌は、いくつかの異なった糖脂質を発現するようにLOSの生合成を変化させることができる。それによって異なったヒトGSLを模倣する(3)。LOSの相変異は非常に速い (10-3) (23、24)。このことは、例えば異なった血液型の性病患者粘膜、あるいは気道粘膜及び髄膜炎にかかっている患者のクモ膜下領域のような、異なった分子環境下で細菌が生存しうる様になることを示唆している。LOSの相は病気の進行中に変化する。淋菌変異株がパラグロボシル、ガングリオシルそしてより高分子量のLOSsを産生する様になることは、ヒトにおける淋菌感染中の尿道の白帯下の前兆 (あるいは感染?) を予告している(24)。淋菌はまた子宮頚部上皮細胞に侵入するため、にシアル酸の付加されたパラグロボシルLOSを産生する (20)。
    LOS生合成に関与する多くの遺伝子の同定は現在進行中である。LOSの生物学遺伝子がのレベルに至ったことにより、潜在的に病原性を有する細菌がLOSを用いてヒトに病気を起こし、様々な粘膜表層で生き残ることを正確に理解するのに道が開かれることであろう。
  • 同種分子間結合の分子機構
    Chi-Hung Siu, 大須賀 壮
    1995 年 7 巻 38 号 p. 479-493
    発行日: 1995/11/02
    公開日: 2010/01/05
    ジャーナル フリー
    神経細胞接着因子NCAMは認識分子である免疫グロブリン (Ig) スーパーファミリーの一員である。NCAMは様々なリガンドと相互作用できるマルチドメイン分子である。NCAMはまた同種分子間結合を行うことが可能で、細胞間接着で決定的な役割を担っている。最近の研究により、ニワトリのNCAMの3番目のIg様ドメイン中に、10個のアミノ酸配列 (243-KYSFNYDGSE-252) が同種分子間結合部位として同定された。この配列は、予測されているIg折りたたみ構造においてC'βストランドとそれに続くターン構造に相当する。突然変異分析結果より、芳香族残基であるTyr-244とPhe-246、また荷電残基であるLys-243とAsp-249はNCAM間の結合に不可欠であることが示された。その後の研究により、NCAMのIg様ドメイン3の組換え体は同種分子間結合を行うが、一旦この10アミノ酸残基からなる結合部位に変異を導入すると結合能が失われることが示されている。これらの結果は、2つの向かい合う分子上の同じ配列同士でNCAMの同種分子間結合部位は相互作用するというモデルを満たしている。同種分子間結合部位が不完全であると、細胞間接触領域においてNCAMの局在化が起こらない。またNCAMの同種分子間結合部位の結合により、多くの初期神経細胞から神経突起の伸張を促進するシグナル経路が開始される。つまりNCAMの同種分子間結合部位は、細胞同士が接触するときだけでなく、神経突起伸張の際にも重要な役割を担っているのである。
  • Frances M. Platt, Terry D. Butters, 太田 稔久
    1995 年 7 巻 38 号 p. 495-511
    発行日: 1995/11/02
    公開日: 2010/01/05
    ジャーナル フリー
    スフィンゴ糖脂質 (GSLs) は真核細胞の表面に広く分布し、他の細胞表面にある複合糖質と一緒に糖衣となっている。また、認識過程において機能しており、多くの感染性病原体のレセプターとしても働いている。その発現は細胞の変化に応じて変わり、もし完全に代謝されないと、GSLリソソーム蓄積病になってしまう。しかしながら、大多数のGSLの役割は未だにはっきりしていない。GSLの機能を調べる方法の1つとして、GSL生合成に特異的な阻害剤を用いることによるGSL個渇の影響についての研究が挙げられる。セラミドアナログとアルキル化イミノ糖という構造的に異なる2つのGSL生合成の阻害剤が今までに調べられている。どちらのタイプの化合物もGSL生合成の最初の段階であるグルコース転移酵素によるグルコシルセラミドの合成反応を阻害する。この結果、グルコシルセラミドから誘導される全てのGSLが合成されなくなる。これらの阻害剤を用いてGSLを洞渇させても in vivo および in vitro において細胞は生きることができるので、これらの化合物はスフィンゴ糖脂質蓄積病の新しい治療に利用でき、またGSLの機能を調べる際にも非常に役立つ薬剤になると期待されている。
  • Ralph D. Sanderson, Brian F. Liebersbach, 石原 雅之
    1995 年 7 巻 38 号 p. 513-524
    発行日: 1995/11/02
    公開日: 2010/01/05
    ジャーナル フリー
    シンデカンは細胞とマトリックスの接着や細胞同士の認識に関わり、種々の増殖因子の補受容体として作用する細胞表面のプロテオグリカンである。疾病に関するシンデカンの役割についてはほとんど何も知られていないが、腫瘍細胞の活動を制御するための重要な役割を果たしていることが明らかになってきた。シンデカン-lの発現は上皮細胞の形態を維持するのに必須であること、さらに生体内で成長している腫瘍の悪性変異に伴って、シンデカン-lの発現が減少あるいは消失することが示されている。加えて、シンデカン-lは腫瘍細胞の細胞外マトリックスへの浸潤を阻害することを示す直接的な証明がある。シンデカン-lを発現していない人間の骨髄腫細胞はI型コラーゲンゲルにたやすく浸潤することができるが、シンデカン-lのcDNAの導入された細胞は非浸潤性となる。これらの研究は、シンデカン-lの発現は細胞の非浸潤性を保持し、腫瘍が転移・浸潤性を得るためにはシンデカン-lの減少あるいは消失が必要であるを示している。
  • Katarzyna Anna Podyma, 山形 貞子
    1995 年 7 巻 38 号 p. 525-526
    発行日: 1995/11/02
    公開日: 2010/01/05
    ジャーナル フリー
  • 石原 雅之
    1995 年 7 巻 38 号 p. 527-528
    発行日: 1995/11/02
    公開日: 2010/01/05
    ジャーナル フリー
  • 鈴木 匡
    1995 年 7 巻 38 号 p. 529-531
    発行日: 1995/11/02
    公開日: 2010/01/05
    ジャーナル フリー
  • 小川 温子, 田中 美和
    1995 年 7 巻 38 号 p. 533-535
    発行日: 1995/11/02
    公開日: 2010/01/05
    ジャーナル フリー
  • 平林 淳
    1995 年 7 巻 38 号 p. 537-539
    発行日: 1995/11/02
    公開日: 2010/01/05
    ジャーナル フリー
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