日本地理学会発表要旨集
2012年度日本地理学会春季学術大会
選択された号の論文の290件中251~290を表示しています
発表要旨
  • 大上 隆史, 須貝 俊彦
    セッションID: 607
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/08
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    地層の形成速度と層相および粒度組成の関係は,堆積地形や地層の発達を考える上で重要な事項であるが,これらを具体的な検討した研究事例は少ない.これは,それらの関係を定量的に検討するのに必要な放射性炭素年代値や粒度分析結果を多量に収集することが困難であったためである.本発表では,濃尾平野で掘削された沖積層を貫くボーリングコアの解析にもとづいて沖積層の各層序における堆積速度と粒度組成の関係を検討した結果を報告し,それにもとづいて濃尾平野の発達様式について考察する.
  • 日下 博幸, 足立 幸穂, 藤田 惠子, 飯島 奈津美, 井原 智彦, 飯泉 仁之直, 原 政之, 山形 与志樹
    セッションID: S1405
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/08
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    本研究では,領域気候モデルWRFを用いて,2030, 2050, 2070年代の首都圏の夏季気候予測を行い,今後の全球規模の気候変動による気温上昇量と都市の拡大・縮小による気温上昇量の評価を行う.さらには,気温上昇が都市住民の健康に及ぼす影響も評価する.IPCC SRES A1b シナリオに基づく2030年代,2050年代を対象にした気候予測実験の結果は現状再現実験の結果と比べて,それぞれ約1℃,2℃程度上昇した.
  • 安田 正次
    セッションID: 621
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/08
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    ハイマツ(Pinus  pumila)は日本列島の山岳上部に多く分布し森林限界上方の大きな部分を占めている。ハイマツは1年に一節だけ枝が慎重する単節型で、シュートの伸長は夏を中心とした単年で完結し、次年以降には伸長しない事が知られている。ハイマツはシュートが伸長する時、年枝痕が残ることから、この年枝痕間長を計測する事で毎年の伸長量を遡って知る事が出来る。 一方、スギやヒノキのような針葉樹の生長量変動については、年輪幅を調べる手法が多くとられてきたが、ハイマツに関しては、年輪の解析事例はほとんどなく、年輪成長量の変動傾向についてはほとんど明らかになっていない。 発表者は群馬県・新潟県県境で生育していたハイマツ10本を伐採し、その解析から、ハイマツの年輪生長量は夏の気温と負の相関がある事を明らかにした。年枝生長量の研究では、夏の気温と正の相関がある事が知られていることから、年枝生長量と年輪生長量は相反する性質を持っているという事になる。 そこで、本研究では年枝生長量と年輪生長量の関係性を明らかにするために、ハイマツの伐採木の両者を比較して両者の関係を検討した。その結果、年枝成長と年輪生長量同士の比較を行った結果、10個体のうち、4個体で弱い負の相関が、4個体で弱い正の相関が認められた。既存の研究によるとハイマツは夏期に生産した物質を一旦幹に蓄える性質があると報告されている。そこで、当年の年枝生長量と前年の年輪生長量を比較した。その結果、無相関だった2個体に関しては1個体が正の相関が、もう1個体が負の相関がみとめられ、その他の4個体でも相関係数が上昇した。以上から、年輪生長量と年枝生長量との間には常に正の相関が認められないことが明らかとなった。それらの関係は個体毎に異なっていることから、それぞれの個体の生育立地の環境を考慮する事が必要となるだろう。また、年枝生長量と年輪成長量の間には1年のズレがある事から、年輪の解析と気候条件の比較には生産物質の配分に関する検討を行う必要があるだろう。
  • 逸見 優一
    セッションID: 206
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/08
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    現在の高校生は生活場で起きている日常の諸現象をどうとらえているか。思いをめぐらせ、思考を展開し、総合化してとらえているか、どうか。いつも報告者には思慮される。ここでは世界各地に生起している、各時代的地球的な課題をどうとらえているか。時代的地域を地球的スケールの観点から、各時代的課題を設定することのできる高校生像の誕生を展望したい。試行錯誤獲得方法の手段には、報告者は「世界史A・B」を意識した歴史性の中で、生活場にみられる環境の多様性の中から、古環境をとらえ、地域を見定める調査がありえると破断する。今のところ学校という範疇では限界だが、身近な古環境把握のための指標、微化石としてはプラントーオパールや珪藻、火山灰、樹木の年輪、いわゆる化石をやはり取り上げてゆくことが重要と判断できる。過去にも報告したように、分析となると安全性の確保と設備(理科室など)・機器、薬品などで、教師が分析し作業過程や成果を動画/画像記録に保存し、いわゆるICT(PC、プロジェクター、液晶テレビ等)で授業時間中に、取り扱う学習項目を設定し、実践者がデモンストレーション(いわゆるプレゼンテーション)するしかないのが現状である。「世界史A・B」を意識した場合にも、珪藻とイネ科のプラントオパールが、微化石を利用した農耕の起源をめぐるトルコ/アナトリア高原地域一帯の古環境復原指標とされた事例から有効性があると判断できる。今回は「世界史A・B」を意識した場合について、2010年・2011年に報告者が在籍校で実践した微化石を検鏡・同定するアプローチの展開例から試行錯誤した事例を見てゆきたい。実践例は「農耕の展開から文明へ」の学習項目の単元である。生徒には新鮮で深い感動を与え、科学の世界へと導いてくれるものと思い実践した。作業提示、実演・演示過程は未展開。分析例と環境の変遷観点から設定実践。模擬的試料採取と試料分析をうまく結合し、高校生の関心・意欲・態度を高めてゆく教材化が課題今後の課題である。
  • 西山 弘泰
    セッションID: 714
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/08
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    本研究では東京30km圏内に位置し,1960年代に虫食い状の乱開発によって都市化した埼玉県富士見市関沢地区を事例に地主の土地利用,特に賃貸不動産を中心にその変遷を明らかにする。関沢地区に土地を所有する地主の賃貸不動産の建設数の推移を用途別にみてみると,1960・70年代はアパートや貸家など小規模なものが多い。建設資金は土地の売却資金が充てられ,管理も自己管理か地元の不動産仲介業者に任せることが多かった。1980年以降は,比較的広い土地を利用した駐車場や多額の建設資金を必要とする賃貸マンション,大型のアパート,ロードサイド型の店舗などになり,建設資金は金融機関からの借入金によって賄われるようになる。また,管理なども地元の不動産仲介業者から農協,全国展開の建設・不動産業者へと移っていく。こうした地主の土地利用の変化から,地主にとって賃貸不動産は単に現金収入を確保するという位置付けから,地価の上昇による税負担の増大や税制の変化,融資の拡大,住宅需要やニーズの変化などによってより複雑化し,資産の保持という位置付けへと変化したとみることができる。
  • 近藤 章夫
    セッションID: S1303
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/08
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    本報告では,先端産業のうち半導体産業を題材にして,グローバル競争下で進展する研究開発の特徴を考察し,グローバル・クラスターとでも呼ぶべき事象について取り上げる.それらを踏まえたうえで,先端産業の振興を中心とした地域政策の課題について検討する.
  • 秩父アニメツーリズムの事例
    天野 宏司
    セッションID: 319
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/08
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    埼玉県秩父市では,アニメーションを積極的に活用し旅客誘致をはかるため秩父アニメツーリズム実行委員会を組織している。2010年には『銀河鉄道999』を,2011年には『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』を活用し,誘客に効果を上げた。本報告は,この実行委員会の一員として知り得た事情を含め,コンテンツツーリズムの成果と課題を報告する。
  • 遠藤 海斗
    セッションID: 617
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/08
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    高山帯-亜高山帯における岩塊斜面は過去または現成の周氷河地形として扱われる場合が多い.しかし,岩塊斜面を表層に岩塊が堆積する斜面と定義すれば,数々の形成要因が考えられる.周氷河現象以外の成因として,モレーン堆積物,岩石なだれ,火山活動や断層の動きによる崩壊,地すべりなどが述べられており(高橋,1985) ,その他で崖錐,岩塊熔岩等の可能性もある.蓼科山 (標高2530m)の山頂から東方約500 mに位置する標高約2100m~2300mの前蓼科山南西斜面に,東西約400m,南北約350m,面積約5haの岩塊斜面が分布する.周辺の斜面は亜高山帯針葉樹林におおわれるが岩塊斜面上にはほとんど植生がない.本研究では,この岩塊斜面を調査地とし,礫径計測,礫のファブリック,縦断・横断形,断面内部(掘削による)を調査し,この岩塊斜面が,どのようにして形成されたかを明らかにすることを目的とする.詳細は発表において述べる.
  • 日本地理学会災害対応本部 津波被災マップ作成チーム, 松多 信尚
    セッションID: P1103
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/08
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     2011 年3 月11 日の東北地方太平洋沖地震により,広域的な津波被害が生じたことを受け,日本地理学会災害対応本部は津波被害を検討する作業チームを立ち上げ,航空写真判読に基づいて縮尺2万5千分の1の津波被害分布図を作成し,3 月29 日よりインターネットを通じて順次発表した.
     被災マップ作成の目的は,東北日本太平洋岸を襲った津波による被災範囲と全容をできるだけ迅速に把握し,救援活動や復興計画の策定に資するデータを提供すること,および津波遡上の全体像を明らかにして現地調査のベースマップを提供するとともに,被害分布の地域性を明らかにして,被害の原因解明調査に資するデータを提供することであった.
     本発表では,作成したマップの具体例を紹介する. 
  • 飯田 義彦, 手代木 功基, 藤岡 悠一郎, 京都大学 自然地理研究会, 水野 一晴
    セッションID: P1205
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/08
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    本研究では,滋賀県高島市朽木地域のトチノキ巨木林に着目し,巨木林が残存してきた背景を近年の山林利用の動向をふまえ考察するとともに,2009年頃から本格化した伐採問題をきっかけとした朽木地域の変化について検討した。<br> 巨木林の存在が確認されている小流域を調査区とし,近傍の集落において山林の利用状況について聞き取り調査を実施した。また,巨木林に関連する各種活動に継続的に参加するとともに,伐採跡地を4か所にわたって観察した。<br> 聞き取りから調査区周辺の山林は,これまでに肥料源としてのホトラ(コナラの枝葉)採集,薪炭林施業,パルプ用材伐採,公社造林などさまざまな利用圧を受けていたことが明らかになった。とくにトチノキ巨木林の近傍には炭焼き窯跡が数多く確認された。採集したトチノミからトチモチをつくった経験が伝承されており,継続的な山林利用圧の中でもトチノキは果実採集のため意図的かつ選択的に残されてきたと考えられる。<br> 2009年頃からトチノキ巨木が50本以上伐採される事態が生じた。その背景として,都市部での高級マンションの内装材としてトチノキの需要が高まっていること,野生動物によるトチノミの食害で採集が困難なこと,所有者の高齢化などが挙げられる。伐採跡地ではヘリ搬出を妨げる周辺植生の伐開や不要な大枝が散乱している状況がみられた。山地源流域における伐採状況を問題視した地元住民や複数の環境団体が中心となり2010年10月に保全組織が立ち上げられた。トチノキの伐採問題を巡り,将来的な伐採を差し止める法的な係争,県による森林税活用の検討,伐採跡地見学の開催など保全に向けた活発な動きがある一方で,トチノキを生かしたエコツアーが実施されるといった新たな利用の試みも生まれている。 トチノキ巨木林の伐採は,集落自身が保持してきたトチノキに対する従来の利用価値が薄れ始めてきたことを象徴しているといえる。こうした中,トチノキ巨木林が担う生態的な側面を評価する動きに伴って,トチノキ巨木林に対する新たな利用価値が朽木地域に醸成されつつある。
  • 髙橋 伸幸, 長谷川 裕彦, 佐々木 明彦, 小久保 裕介, 小疇 尚
    セッションID: 612
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/08
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    北海道中央部の大雪山高根ヶ原周辺(標高約1700〜2000m)には、堆積物から構成される小丘状の地形や周辺部の岩屑とは不調和な大きさの巨礫が分布する。これらの地形や堆積物の成因は、現在の営力では考えられないことから、過去の氷河作用によるものと見られる。
    ・小丘Aと堆積物 標高1880m付近には、南東側に凸型の弧を描く比高10m余りの小丘(A)が見られる。その表層部は、スコリアを含む砂礫からなり、径数mの巨礫も散在する。Aの南側にも小丘が存在するが、その表層部は、高根ヶ原を構成する板状節理の発達した基盤岩から供給された扁平な岩屑によって覆われ、巨礫は分布しない。また、スコリア礫もほとんど見られない。したがって、小丘Aを構成する物質は、現地性のものではない。その成因としては、小丘Aの北側に越年性雪田が分布することから、現在よりも寒冷な時期に、この付近を涵養域として発達した氷河の作用である可能性が大きい。また、小丘Aの北西側に沿って数本の流路跡が見られるが、これらは、氷河縮小時にその縁辺で形成された融氷河水路と考えられる。これらのことから、小丘Aは、氷河により形成されたモレーンであると考えられる。その形成時期に関しては、表層部に含まれるスコリアが、調査地域の北西方に位置する旭岳あるいは熊ヶ岳の完新世における火山活動により供給された(斉藤、1995)と考えられることから、モレーンの形成時期もその頃であろうと見られる。
    ・巨礫と凹地形 標高1845m付近には、礫径5mに及ぶ巨礫群が分布する。高根ヶ原上の現地性物質は、主に扁平な岩屑からなり、その礫径は数10cm程度であることから、これらの巨礫は現地性のものではない。また、巨礫を構成する安山岩は、比較的粗粒な斑晶をもち、角閃石を含んでいる。この岩石学的特徴は、北部の白雲岳周辺を構成する安山岩の特徴(斉藤、1995)と類似している。これらのことから、巨礫の供給源は、白雲岳周辺である可能性が高く、その運搬営力も、やはり氷河作用であると考えられる。また、この周辺には、亜角~亜円礫を多く含む厚さ数mの堆積物が見られる。さらに、その堆積物分布域には、直径10mを超える複数の凹地が分布している。ここでも現在の営力下でこれらの成因を考えることは難しい。したがって、ここでも過去の氷河作用を想定される。凹地に関しては、ケトルホールの可能性がある。
  • 石川 智, 鹿島 薫
    セッションID: 628
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/08
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    高層湿原の形成過程を復元することは、水位変動・環境変化を読み取ることであり、ひいては気候変動の復元が可能である。湿原などの水域においては水環境の変化に敏感な珪藻が、その環境復元に良く利用される(例えば鹿島 1986)。しかし、珪藻を用いて高層湿原の形成過程を復元するためには、低層湿原からの湿性遷移に伴う珪藻種の変化を把握する必要がある。 北海道東部の厚岸市に位置する別寒辺牛湿原には高層湿原が存在しており(図1)、そこに生息する珪藻種についてIshikawa and Kashima (2009)において4属7種とその構成種が少ないことが明らかにされた。高層湿原の規模は小さく、離れるとすぐヨシ原、低層湿原・ハンノキ林に至り、その珪藻構成は高層湿原とは異なることが予想される。低層湿原から高層湿原にかけての珪藻構成の側方変化は、湿性遷移に伴う変化に相当すると考えられる。 <BR>
    2011年11月の調査において、高層湿原を跨ぎハンノキ林に至る約650 mの測線を設定し、測線の測量と測線上8地点で現生珪藻の採取を行った。測量にはハンディGPS、GPS、レーザー測距機、簡易測距機を用い、測線に沿った断面図を作成した。現生珪藻は表層水と底質から採取した。採水後pHと電気伝導度を測定した。採取試料はエタノールで固定して持ち帰り、5%の過酸化水素水で湯煎し懸濁液を作成した。懸濁液は和光純薬製マウントメディアを使用して封入し、各スライドに対し予察的観察と300殻以上の同定・計数を行った。 <BR>
    予察的観察の結果、産出珪藻の種構成は地点によって異なることが明らかとなった。Ishikawa and Kashima (2009)での採取地点では同様の珪藻種が得られ、ハンノキ林・低層湿原では産出種数が比較的多くなる傾向が見られた。<BR>
    現在、各スライドの同定・計数作業が進行中である。この分析から湿性遷移に伴う珪藻種の構成変化を推定し、これまで別寒辺牛湿原で行ってきたボーリングコアを用いた形成過程の復元への応用についても当日発表する予定である。
  • 杉本 昌宏, 秋山 祐樹, 碓井 照子
    セッションID: 710
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/08
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    本稿では、現在サブカルチャーのまちとして知られる大阪日本橋地域を主な研究フィールドとして、創造都市の考え方を主軸にGISを用いた解析を行った。GIS解析は、秋山祐樹(東京大学空間情報科学研究センター)の研究である「日本全土の商業集積地域ポリゴンデータの開発」の商業集積ポリゴンを利用して商業集積の分析を行った。また、大阪日本橋と類似する地域(東京秋葉原や埼玉県鷲宮町など)との比較を行い、類型区分を行った。 これらの調査より、アニメの作品の舞台となり「萌え」と「地域」を売りにした「聖地巡礼「萌」型」、映画やイラストなどメディアを通じて地域のよいところを掘り起こし観光につなげる「地域資源発掘展開型」、サブカルチャーのメディアを扱う専門ショップの揃う大阪日本橋のような「総合メディア型」の3つに分類できた。しかし、サブカルチャーのまちづくりには、地域資源としてのその地域が伝統的に持っている地域資源とおたく文化(サブカルチャー)の融合が必要であることがわかった。
  • 日本地理学会災害対応本部 津波被災マップ作成チーム, 杉戸 信彦
    セッションID: P1104
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/08
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     2011年3月11日東北地方太平洋沖地震の直後に撮影された空中写真は,沿岸部の広大かつ甚大な津波被害をはっきりと把えている.
     早期の徹底的な救援・復旧活動のため,本チームは,地震後撮影の空中写真の実体視判読をただちに開始し,地震後17日目の同28日,津波浸水域と激甚被害域を示した縮尺1:25,000「津波被災マップ」を災害対応本部のウェブサイトにて公開した.津波浸水域の認定は,地震後撮影の空中写真の実体視判読を,微地形や標高,地形発達史,土地利用,土地条件,また人工構造物などを直接確認しつつ津波の流動コースを考慮して実施することで,概ね可能である.画面上で空中写真データを拡大しての実体視判読も重要である.地震前に撮影された空中写真との比較も浸水域認定に役立つ.
     こうした手法により,広大な浸水域を迅速に認定することができる.しかしこれまで,このことはほとんど明示されてこなかった.本稿では今回の「津波被災マップ」をもとに,浸水域認定の根拠と注意点,問題点を述べる.作成の経緯やマップの具体例は本チームによる他の2発表(本大会)を参照されたい.
  • 東京大都市近郊の見沼田圃を事例として
    髙木 陽光
    セッションID: 407
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/08
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    大都市近郊において、農地の減少と維持、農地の都市的土地利用への転換と放棄は、社会的な問題となっている。大都市近郊農地の維持システムに関する今後の研究課題としては、地域資源の持続的な維持・利用を目的として、政策や計画をより強く施行する研究が必要であること、農地の維持や耕作放棄地の防止は農村の振興における重要な要素であり、その手法や対象地域、効果についての研究が今後ますます必要とされる。そこで本研究では、大都市近郊農地の維持システムのひとつの方法である公有地化に焦点を当てる。研究目的として、公有地化された農地の社会的意義とその維持システムについて研究する。そのため東京大都市近郊において、一番大規模に農地の公有地化事業が行われている埼玉県の見沼田圃の公有地化事業を事例に、農地の公有地化の契機と、公有地化された農地を維持するために行政が行っていることを分析する。具体的には、行政が買取った公有地の維持・管理を委託している市民団体の中でも、一番広い面積の維持・管理を行政から任されているグラウンドワーク川口を事例に考察する。そして①公有地化された農地の利用主体(行政・市民団体・法人・教育機関・市民)と②公有地化された農地の利用目的と③公有地化された農地の地理的立地の3つをフレームワークとして、それらの関連を研究する。その結果、グラウンドワーク川口のイベント利用回数とイベント参加者の推移から、創立期(1998~2001)・発展期(2002~2006)・安定期(2007~2010)の3期に分類した。そして3期を比較すると、創立期では、川口自然公園での活動で、少ない利用目的でも利用主体が全て連携していることが多かった。発展期では、公有地の管理を委託され、イベント数・利用目的が増加した。また創立期・発展期とも75%のイベントにおいて利用主体が連携して行われていたが、安定期では、公有地の管理委託面積が増加し、連携して行われるイベントは45%と、他の2期より市民団体の役割が強まった。利用主体の連携が発展期より弱くなっているが、利用目的は少し増加した。しかしイベント回数の減少が、公有地化された農地の維持理由を弱めた。つまり公有地化された農地は、公有地という性質上、生産性の向上・利用目的の増加・利用主体の連携強化を図り続けなくても維持され、人々にレクリエーションや教育の機会などを提供していた。
  • フンク カロリン, クーパー マルコム, 淡路 昭彦
    セッションID: 307
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/08
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    日本政府は2003年から地域経済の活性化や、日本への理解を深めることを目的に、外国人旅行者を誘致するビジット・ジャパン・キャンペーン(以下VJC)に乗り出した。周辺各国の経済成長も影響し、訪日外国人旅行者が2008年までに順調に増加し、経済危機と震災の影響を受けたにも関わらず今後も増える見通しである。また、外国人旅行者に関する統計資料は不十分ではあるが、旅行する時期、滞在期間、訪問する地域が日本人と異なるため、経済効果が期待される。外国人旅行者が旅行会社のルート設定、ガイドブックや口コミの情報、観光資源・施設の内容などの影響で一部の観光地に集中する傾向があり、このような国際色の強い観光地こそ、イノベーションの中核となりえる。そこで本研究では外国人旅行者と日本人旅行者の観光動機や観光行動の違いを明らかにし、イノベーションを起こす観光需要の多様化を確認する。
  • 岡本 耕平, 森田 匡俊, 谷 謙二, 佐藤 久美
    セッションID: 106
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/08
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     平成22年国勢調査によれば、東日本大震災で被害の大きかった岩手県、宮城県、福島県の3県の外国人比率は約0.5%で、日本全体の1.3%に比べるとかなり低い。国籍は、中国、韓国朝鮮、フィリピンが多い。被災地に居住していた外国人は、1)技能実習生・研修生、2)日本語学校や大学の留学生、3)日本人と結婚した外国人妻、が多くを占めていた。原子力発電所の事故が起こったことや、研修生たちが働いていた工場が被災したことなどのため、1)と2)の外国人の多くは、地震発生後、短期間のうちに帰国した。したがって、発災後に支援が必要とされたのは、主として3)の外国人妻たちであった。彼女たちの多くは、嫁不足の農村や漁村に嫁いだ中国人やフィリピン人であり、日本人の夫の親と同居している場合も多い。周囲に同じ国の出身者がいない環境の中で暮らしているために、災害時は特に孤立しやすい。 外国籍人口は、都市だけでなく農漁村地域に広く分布する(いわゆる外国人妻には、このほか日本国籍に帰化した人々もいる)。対象とした国勢調査小地域5446カ所のうち、外国人が居住している小地域は1938、そのうち外国人が1人しかいない小地域は757、それが女性である小地域は623カ所であった。阪神大震災後の外国人災害支援策は、1990年代に日系人が急激に増加したこともあり、外国人集住地区への支援を想定したものであった。しかし、東日本大震災の被災地ではその有効性は限られる。また、外国人のみを援助するといった支援のやり方は、外国人妻を家族や地域社会の中で特別扱いして、かえって孤立させる可能性がある。孤立化を防ぐための1つの方法は、地理的に分散している彼女たちを結びつけるネットワークの形成である。フィリピン出身者たちにとってはカトリック教会をハブとしたネットワークがその役割を担っている。中国出身者にとっては、各地の国際交流協会やNPOが運営する日本語教室が今後そうした役割を果たしていけるかどうかが鍵となるであろう。
  • 四日市市・北上市の企業立地促進法の事例
    佐藤 正志
    セッションID: 311
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/08
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    1.はじめに
     現在のローカル・ガバナンスに関する検討では,政策形成における域内の主体に関する検討が中心である.一方で,域外アクターからの影響力は,政府間関係の視点から検討が進められているが,垂直的政府間関係が中心であり,自治体間に該当する水平的政府間関係の解明は議論の中途段階にある.
     水平的政府間関係に関する研究課題として①分野による参照メカニズムの違い,②他地域を参照にする際の空間的特徴に関する検討があげられる.特に後者は,他の自治体との関係や影響力を考察する際の地域的な条件を明らかにする点で,空間的な検討の余地がある. 
     本報告では,地方自治体での政策形成時における自治体間での相互参照行動の空間的な特徴を明らかにすることを目的とする.事例として,従来考察されていない産業分野である企業立地促進法(2007年5月公布)を取り上げる.企業立地促進法は,従来の地域経済政策と異なり,自治体主導で基本計画を策定すると共に,出荷額,企業立地件数,雇用増加数,対象業種等を設定する点で,自治体が独自の政策内容を決定することが可能となる.
     産業政策に関する自治体の政策形成および参照メカニズムに関して仮説を示すと,制度化後自治体間で競い合いながら急速に導入が進むと考えられる.これは,先行導入が企業誘致等を他の自治体より優位に進められ税収や人口増加が見込める点,補助金や助成金が得られる等の利点を享受できる点が指摘できる.一方,後発の場合,形成の遅れから先行事例の後追いになる欠点がある一方,先行する事例を参考にして内容の改訂を進めていく長所も指摘できる. 

    2.企業立地促進法の全国的な策定動向
     まず,2007年以降の動向を踏まえて全国的な導入動向と参照行動に関して検討した.企業立地促進法における同意地域は,2011年3月段階で全国に178存在している.
     累計導入数と導入地域の動向を確認すると,制度形成後半年~1年ほど後の時期に導入されていく点が示された.かつ,各地域の基本計画内容や対象分野,数値目標,産業活性化協議会への参加主体を元に基本計画の内容お類似性を示すと,都道府県内を中心に内容が類似している.この点から,基本計画策定における自治体の参照行動は,先行事例が見られてから行い各自治体で検討を始め,参照する例も近隣の自治体を対象にしていると考えられる.
     こうした全国的な特徴が見られた理由として,第1に,先駆的な自治体の計画を見てから検討していると判断できる.後発の事例では,農商工連携の盛り込みや景気後退後の数値目標の適正化といった先行事例を踏まえた上での修正を行った点から,この理由が示される.
     第2に,政策指針や内容形成における都道府県の影響力があげられる.大半の基本計画地域では,都道府県が地域産業活性化協議会に加わっている.都道府県は管轄領域内の市町村へ計画立案の指導・支援を行うため,計画が類似してくると考えられる.特に,県内の全市町村を複数地域分割する場合,この傾向が見られる.

     3.先駆的な自治体における政策参照行動の空間的特徴
     2.の全国的な動向を踏まえ,先駆的に導入した地域に関する参照状況と空間的な特徴を,四日市市・北上市を対象にして検討した.両市ともに第1号同意(2007年7月)を得ており,先駆的な事例となるだけでなく,他の自治体からの参照の対象になりうると判断できる.
     両市で先駆的に基本計画が策定できたのは,経済産業省との人的交流を通じて企業立地促進法の情報を入手できた点が大きい.法案に関する情報を逐次入手したことで,制度化直後の基本計画策定が可能になった.両市とも基本計画形成時には他の自治体を参照にしておらず,独自に計画策定を進めている.これは産業活性化協議会の設置から第1号同意を得るための基本計画作成時間が非常に短かった点,以前から独自の産業政策形成を行った点が大きく働いている.特に二点目は,両市ともテクノポリスや地域産業集積活性化法等を通じた産業政策形成のノウハウを持っていた点が,独自の政策形成を可能にした.
     一方,他地域から視察や問い合わせ等で直接両市を参照した地域は見られない.この点から後発の自治体では,公表された資料や都道府県からもたらされた情報等を中心にして政策内容を参照していると判断できる.
  • 林 悦子, 森本 晶, 杉本 昌宏, 吉良 唯史, 長谷 理史, 碓井 照子
    セッションID: P1312
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/08
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     奈良県川上村には、限界集落が多く、対策として「住まいるネット」というITによる空家対策を実施している。空家対策の有効性についてGISを利用して評価し、空家対策支援システムの要件について考察する。
     限界集落は高齢化により空き家率が増加し、廃村へのプロセスをたどるが、「住まいるネット」の高齢化率を減少させる空き家対策は、一定の有用性があると言える。しかし、村外居住の子供の血縁関係を中心に準空き家という形態で、集落のコミュニティは維持され、廃村化の一歩手前で持ちこたえている限界集落の実態がある。GISを利活用した限界集落空家対策支援システムの基礎的構成は完成したが、今後、全集落での実証実験が必要である。
  • 北海道東川町を事例として
    佐竹 泰和
    セッションID: 315
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/08
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    1.研究背景と目的
      インターネットの登場とその普及に合わせて,情報通信技術へのアクセス機会に関する格差,すなわちデジタル・デバイドが問題として生じた.さらに2000年代に普及したブロードバンドは,技術的問題やインフラ新設のコスト問題からブロードバンドが利用できる地域とできない地域の間にある格差として地理的デジタル・デバイドを問題として生じさせた.この地理的デジタル・デバイドは,山村や離島のような地形的に整備条件が不利な地域に多くみられるが,人口低密地域にも存在する.そのため,地理的デジタル・デバイドは自治体単位ではなく,町中心部と周辺部というように,人口密度に応じてより細かい地区単位で現れる場合もある.本研究では,地区単位でブロードバンド環境が異なっていた事例として北海道東川町を取り上げ,ブロードバンド整備後の回線変更状況とコンテンツ利用状況から,ブロードバンド整備が住民のインターネット利用に与える影響を検討した.
    2.研究方法
      本研究では,住民のインターネット利用状況を把握するために,東川町の全世帯を対象としてアンケート調査を行った.アンケートは2011年8月に配達地域指定郵便で全世帯へ郵送し,配布数3,074通,回収数478通,回収率15.5%であった.2010年国勢調査によると,東川町の世帯数は2,983世帯であるため,国勢調査の世帯数をベースとした場合,回収率は16.0%となる.
    3.ブロードバンドの整備
      東川町全域でブロードバンドが利用可能になったのは,2008年のNTT東日本による光ファイバー整備と2011年の東川町による光ファイバー整備によるものだった.光ファイバー整備以前のブロードバンドは,町の中心部でADSLが利用できるのみであり,町の周辺部はISDNやダイヤルアップといったナローバンドしか利用できない(ブロードバンド・ゼロ)地区であった.2008年の整備では主な整備地域が町中心部であり,ブロードバンド・ゼロ地区は解消されなかったため,その対策として東川町が光ファイバー未整備地区すべてに光ファイバーを整備し,2011年2月以降に各地区で順次ブロードバンドが利用可能となった.したがって,インターネット接続に関して光ファイバーは,東川町共通の情報通信基盤となったのである.
     4.結果の概要
      アンケート回答世帯のうち,インターネットを契約している世帯は67.5%であった.さらにインターネット利用世帯のうち,インターネットの契約回線をみると, FTTH(光ファイバーによる通信)を利用している世帯は52.8%,ADSLの利用世帯は35.2%である一方,ISDNやダイヤルアップ回線を利用している世帯は5.0%であった.ブロードバンド整備前後のインターネット回線の変更状況をみると,中心部ではADSLからFTTHへの変更が多いのに対し,ブロードバンド・ゼロ地区があった周辺部では,ナローバンドからFTTHへの回線変更が目立っていた.このように,2008年と2011年に整備された光ファイバーは,ブロードバンド・ゼロ地区の住民にブロードバンド利用を促し,町全体でもインターネット利用者のうち過半数が利用する情報インフラとなったのである. また,インターネットの契約状況を世帯主の年齢でみると,高齢になるにつれてインターネット契約率が下がっており,特に60歳以降で利用率の低下が顕著であった.回線の契約状況をみると,高齢世帯主ほどFTTHの新規契約が目立ち,インターネットの回線変更は少なかった.さらに,世帯主の年齢別にコンテンツの利用状況をみると,「ウェブサイト閲覧」は,「ネットショッピング」のようなコンテンツは,全体として高い利用率を示したものの,高齢世帯では,ネットショッピングの利用率が相対的に低く両者の利用率に大きな違いがみられた. このことは,高齢世帯主においてFTTH新規契約が多くみられたことに結びつく.すなわち,高齢世帯主はインターネット利用暦が浅く,ウェブサイト閲覧のような基礎的利用はできるものの,それ以上の利用には至っていないのである.したがって,ブロードバンドの整備は,ブロードバンド・ゼロ地区の対策だけでなく,町内の高齢者のインターネット利用にも影響を与えたといえるが,高齢者のコンテンツ利用率は低いことから,単に回線契約を進めるだけでなく,高齢者が関心を持つコンテンツを把握し,その利用方法を伝える仕組みを整える必要があると考えられる.
  • 洞爺湖を例として
    加藤 隆之, 日下 博幸
    セッションID: 723
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/08
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     熱的局地循環の一種である湖陸風は、山地からの直接の影響に加えて、山谷風や一般風の影響も受け、海陸風とは異なった性状を呈しているといわれている(枝川・中島1981)。周囲に急峻な地形をもつ国内の湖で観測された陸風循環(e.g.,Kato 1981)は、斜面下降流をとらえていた可能性が大きい。本研究では、湖の局地循環をシミュレーションする二次元の気流モデルを構築し、洞爺湖を例とした早朝の局地風の熱的・地形的効果についての理想化数値実験を行う。そして、従来の観測で得られた陸風が本当に陸風であったかどうか検証する。
     開発した数値モデルには二次元非静力学ブジネスク近似の方程式系を採用した。数値モデルの離散化には有限差分法を用い、直交座標系のもとスタガード格子を用いて計算を行った。圧力解法にはフラクショナルステップ法を使用した。また、時間スキームに省メモリー型三次精度ルンゲクッタ法、空間スキームには二次精度中央差分を用いた。圧力に関するポアソン方程式の解法には、ガウス・ザイデル法を使用した。境界条件には側面の風速について勾配0条件、上部はフリースリップとした。圧力の境界条件はノイマン条件を適用し、階段地形においては、水平方向境界のみ圧力勾配を0として扱った。また上空には、重力波の反射の影響を防ぐためにRayleigh dampingによるスポンジ層を設定した。
     計算対象領域を北海道洞爺湖北東-南西断面20km、上空2500mとし、Kato(1981)の観測値を用いたコントロール実験を行った。実験の結果から、湖が存在している場合、湖中心への収束構造がみられ、中島付近で上昇流となったのち、高度200m程度で反流となる構造がみられた。一方、湖をなくした場合には湖中心への収束はみられず、洞爺湖一帯は冷気湖に覆われる。また、大規模な山風循環が発生するため、コントロール実験でみられた湖盆地形内で湖中心へと向かい、上昇して反流となる循環は生じていない。このような結果から洞爺湖における早朝の局地循環は、斜面下降流のみでは発生せず、湖の熱的効果が加わることで発生するものであると考えられる。
  • 教員養成スタンダードと学会版ガイドラインの分析
    山本 隆太
    セッションID: 204
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/08
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    ドイツの地理教員養成の在り方は、2008年の各州文部大臣会議による教員養成スタンダードと2009年のドイツ地理学会による地理教員養成ガイドラインによって示されている。 教員養成スタンダードは、教員として必要な、教育に関する知識・能力についての具体的な内容や、教科指導と関連する専門科学および教科教育のカリキュラムの内容について、各州の教員養成制度に対して示された全国的な要求水準である。そこでは大学における地理学の学習を通じて、ジオスフィア(Geosph&auml;re)を複雑かつ動態的なシステムとして理解することと、その理解のために人間-環境システム(Mensch-Umwelt System)のアプローチが採られることが明示されている。人間―環境システムの分析に基づいて空間の持続可能性を評価し、代替案を検討できるような地理学的コンピテンシーを獲得することがスタンダードでは求められている。教員養成課程者に対する地理学の学習内容において、持続可能性に関する学習が中心に位置づけられている。また、こうした地理学の専門的な知識・技能を地理教育の研究成果に基づいた基準に従い、学校での地理授業へと展開できるコンピテンシーが求められている。その際、ESDの観点が地理授業の重要な中核のひとつとして位置づけられている。 ドイツ地理学会版地理教員養成ガイドラインは、地理教員養成に携わる地球科学系・地理学系機関に対して示されたドイツ地理学会の指針である。地理学に関しては、人間-環境システムに行動志向的な分析という記述が付け加えられており、社会参画の面が強調されている。また、統一的な地理学という見方を重視しており、自然地理学と人文地理学の両分野の学習を通じて、地理学としての領域横断的な知識・技能の獲得が期待されている。地理教員はまた地理学の専門知識に加えて、学習心理学などの教育科学の知見を獲得することが強く求められている。また、人間-環境システムは科目横断的なESDの実践に応用されることも示唆されている。 ドイツ地理学会は学校教育を重要視すると共に地理教育に積極的に関与している。そのため、ドイツの教員養成スタンダードおよびガイドラインにおける地理教員養成の在り方には、ドイツ地理学会が考える地理学観が強く反映されており、そこでは人間―環境システムと持続可能性の概念が中心的な位置を占めている。
  • 松山 洋, 西峯 洋平, 中山 大地
    セッションID: P1303
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/08
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    本研究では日本全国の小字地名を対象として,計量的な解析手法を用いて特定の語句を含む地名がどのような気候条件や地形条件の下に分布しやすい傾向があるのかを定量的に明らかにすることを研究目的とした.同時に,先行研究で由来が解釈されている地名について解析結果と先行研究の解釈が一致しているか立証すると共に,今まで分布の特徴が見つかっていなかったり見落とされてきたりした地名について自然条件的な観点から分布の特徴を見出すことも研究目的とした.
  • 田上 善夫
    セッションID: P1305
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/08
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    Ⅰ 風の祭祀の背景 風の祭祀には,それが行われる周辺の景観とのかかわりがみられる。また農山漁村における生業の違いや,風の局地性による地域ごとの風の違いからも,風の祭祀の地域的な特色が形成されると考えられる。ここではまず海,平,原,山などのような景観と,風の祭祀のかかわりの解明を試みる。Ⅱ 現在の風の祭祀の特色 「風祭」に代表される風の祭祀の名称は,北九州では風鎮祭,近畿では風願済祭や除風祭とよばれる。中部から東では一般に風祭とよばれるが,一部では風神祭や風鎮祭とよぶところがみられる。東北南部でも多くは風祭で,会津や朝日山麓など局地的に風神祭とよばれる。Ⅲ 主要な祭祀の祈願古くからみられる風の祭祀での祈願の一つに,海上安全がある。祭神の神功皇后に関して,壱岐北部で風待をしたときに名付けた風本,また爾自神社の東風石など,風にまつわる地が多い。壱岐郡に応神天皇を祀るのは18社,神功皇后は14社があるが,ただし風祭は少ない。さらに,天下泰平が祈願される。宇佐付近で風止祭などが行われるが,付近は半島や南九州に向かう地でもあった。そこでの放生会の蜷流しは,養老四(720)年に隼人との戦での霊を鎮めるためといわれる。風雨順調は祈願の一つである。祭りでは,鉾や,御柱,また鎌立てなどがみられる。農耕における順調が祈願される。越中八尾のおわら風の盆で,おわらは名のごとく原とのかかわりが認められ,さらに祭りの行われる地には水とのかかわりもみられる。Ⅳ 風の祭祀の地具体的な風祭は,北九州での名称にみられるように,風止め,風除け,風鎮めなどがあり,海での航行安全にかかわるとみられる。山では,風祭にかかわる行事として,風の神送り,風塞ぎ,通せん坊,風神などがみられる。原で行われる御射山祭では,天地の安寧が祈られる。なお風の祭祀の地には、アズミの名がみられることが多い。安曇氏の名は海人津見の転訛とされ,九州から近畿,東海,伊豆から,さらに山形に広がる。長野の安曇野も同様であるが、そこにはとくに風の祭祀が集中する。風の祭祀は全国的にみられるが、海や平と山や原などでの展開の間に、それらがかかわることが考えられる。
  • 鈴木 沙和子
    セッションID: 526
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/08
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    都市部におけるカラス類にとって好適な環境要因を検討した結果、建築面積が小さく階数が高い建物地はハシブトガラスにとって好適であることがわかり、ハシボソガラスは舗装地に適応できていることがわかった。
  • ―奈良県川上村を事例として―
    澤 義明
    セッションID: 302
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/08
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     多くの中山間自治体では,地域の活性化(経済的効果,コミュニティーの維持,地元への誇りの回復など)のために観光が注目されている。そして,地域の持続性ある観光としてさまざまな形態のエコツーリズムが提唱・実行されてきた。その手法は,ブランド化された観光対象に恵まれない地域において,これまで見落とされてきた対象にスポットを当てる形で行なわれてきたように感じられる。いかし,その結果,人文的な観光対象と観光施設には乏しいが自然は豊かな地域での事例が増えるにしたがい,エコツーリズムは自然を対象にするという誤解がみられるようになってきた。そこで,エコツーリズムの本来の概念であるエコロジカルの意味を再検討する意味で,自然,歴史,文化,民俗,景観などを総合的に捉える地誌の視角から,ジオグラフィカル・ツーリズムの略称としてのジオツーリズムの可能性について考察した。
     「非日常性」を観光の価値とすれば,観光者は日常では体験できない特別な観光地に向かうことになり,普遍的な地域は価値のないものとして見過ごされる。一方,ジオツーリズムでは,特別な非日常の対象に観光価値を求めるのではなく,これまで見過ごされてきたありふれた大地の景観をベースとした歴史・文化的観光対象と,観光者や他地域との関係に観光価値を求める。本発表では奈良県川上村を事例にして,観光地の空間と観光者とをつなぐ関係を体感できる小さなサテライト的な観光の場を示し,それを展開する可能性について検討したい。
  • 飯泉 佳子, 大森 圭祐, 幸田 和久, 新田 直人, 小林 勤
    セッションID: P1224
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/08
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    1. はじめに
     人口増加や経済発展などに伴い、世界の水使用量は増加している。水資源は地域の持続的な発展や食料供給の鍵となるため、適切に管理する必要がある。特に、淡水レンズを水源として利用する小島嶼国では、気候変動による賦存量の減少や人間活動による地下水質の悪化などが懸念されており、水資源の総合的な保全が求められている。
     本研究は、淡水レンズを有するマーシャル諸島共和国のマジュロ環礁を対象に、地下水の水質特性と土地利用の関係などを検討することを目的とする。
    2. 地域の概要
    マーシャル諸島共和国は中部太平洋に位置する29の環礁と5つの島を有する島嶼国で、総面積181 km2に5.5万人が生活している。首都のあるマジュロ環礁は北緯7度東経171度に位置し、人口は約2万人である。1971年~2000年における年平均降水量は3,300 mm、平均気温は27.5度であり、住民の水源は貯留した降水および地下水である1)。淡水の地下水は環礁西部のローラ島に淡水レンズとして賦存しており、取水された地下水はパイプラインで首都のマジュロに送水されている。ローラ島の面積は1.8 km2、平均標高は数m、地質は有孔虫砂や石灰岩で構成されている2)
     2011年7月下旬から8月上旬にかけて、ローラ島内にある観測井、取水井戸、民家井戸を対象に、地下水調査を実施した。現場ではpH、EC、水温を測定し、実験室内では主要無機イオン成分の濃度を測定した。また、現地において土地利用や住民の水利用などに関するヒアリング調査を行った。
    〈参考文献〉
    1)(独)国際農林水産業研究センター:平成22年度環礁島における水資源有効利用技術の開発報告書―マーシャル諸島共和国―, pp.7, 2010.
    2)石田ら:マーシャル諸島共和国マジュロ環礁における地下水の塩水化について. 地盤工学会誌, 58, 5, pp.22, 2010.
  • 高岡 貞夫, スワンソン フレデリック
    セッションID: 216
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/08
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では、オレゴン州カスケード山脈中央部に位置するブルーリバー流域において、林野火災と土地利用の歴史を復元し、本地域の植生の成立に重要な火災発生の歴史と人間活動との関係を検討することを目的とする。先住民およびヨーロッパからの入植者による土地利用と林野火災の関係については既にいくつかの研究があるが、それらの研究では土地利用と林野火災の双方とも、空間分布パターンに関する情報が乏しい。本研究では、両者の空間分布パターンに着目して分析を試みた。 調査対象地域としたのは、ブルーリバー流域およびその周辺地域の35600haである。樹冠の大きさと高さが一様に見える若齢林(一斉林)を1946年撮影の空中写真で判読し、0.5ha以上の面積を持つ林分についてオルソ写真上で図化した。これらの一斉林の林齢を、既存の年輪データと、新たに得た年輪コア試料、伐採地にある切り株から得た年輪情報などを用いて推定した。 文献や古地図(GLO Survey Platsや旧版の地形図など)からブルーリバー流域の土地利用の歴史を推定し、過去の土地利用の空間パターンの復元を試みた。本地域の土地利用の時代変化を特徴づける1800-1830年、1831-1860年、1861-1880年、1881-1920年、1921-1930年、1931-1946年の6つの時期について、一斉林分布との関係を分析した。分析結果によると、一斉林を形成するような強度の火災は先住民が利用したトレイルの近くに集中していなかった。このことは先住民が本地域において主要な火災発生源でなかったことを示唆している。これはBurke (1979)によって示された、先住民がカスケード地域の森林に意図的に火を放ったことはないという見解と一致する。焚き火などが火災発生に繋がることはあったにせよ、本地域に住んでいた先住民が狩猟やトレイルの維持、野生果樹の生産性向上の目的で積極的に火を使用することはなかったと考えられる。トレイルとは別に、夏季のベースキャンプがおかれる主要河川の合流点付近でも火災が起きた可能性があるが、先住民の人口が急減する1830年代以前に成立した一斉林がそのような場所の周囲に集中するという傾向は見出せなかった。ヨーロッパ人による羊の放牧が始まった1861-1880年には、より多くの一斉林が放牧トレイルの近くに分布するが、1881-1930の期間には必ずしも放牧トレイルの近くに分布しなかった。このことは放牧を開始した当初は草原の維持のために火入れをしていたが、その後は火の取り扱いに注意深くなったという説(Coville 1898)を裏付けるものとなった。
  • 年輪年代学による解析
    阿部 直美子, 石川 守, 米延 仁志, TSOGTBAATAR Jamsran
    セッションID: P1212
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/08
    会議録・要旨集 フリー
    1.はじめに
    虫害は森林火災や過剰伐採と合わせて,森林を衰退させる大きな要因のひとつである.近年、モンゴルでは大規模な虫害によって森林が広範囲に枯死することが問題になっている. 虫害拡大の大きな要因として考えられるのが,気候変動や周辺の地理的条件・水分条件などである. 本研究では主に年輪年代学の手法により,森林が虫害後に衰退または再生する過程とその要因を明らかにすることを目的とする.年輪幅に加え,早材や晩材幅,さらに細胞壁の大きさなどを詳細に分析・解析することにより,気候変動や災害の履歴も読み取ることができる.スイスでは虫害を対象にした研究も行われており,モンゴルの森林においても適用できると考えている.
    2.調査内容
    現地調査は2011年7月から8月にかけて,ウランバートル近郊で3か所,ヘンティ県で1か所行い,調査地域を順にNKH,KH,SH,TSと名付けた.各調査地域では成長錐を用いて年輪解析に使うサンプルを採取し,年代決定には樹齢50年以上のカラマツ木サンプルを用いた.サンプル採取地点の虫害による被害状況は,20×20mの方形区内での毎木調査と虫害被害調査(キクイムシなどが開けた穴のカウントなど)により評価した.また,現地の人から虫害や火災の履歴などの情報を聞き取った.
    3.これまでの結果
    KHでは32年から187年,SHでは43年から116年の樹齢のサンプルを得ることができた.Schweingruber(1996)によると,虫害を受けた年とその後1~3年間は形成される細胞が通常より少なく,晩材の細胞壁が薄い特徴が年輪に現れる.サンプルの切片を電子顕微鏡で観察したところ、KHとSHの両方のサンプルで同じような特徴を観察することができた.
    4.今後の展望
    より多くの試料を用いたクロスデーティングによって年代の確度を向上させる.その結果を個々のサンプルから得られた虫害履歴と対比させ,同じ時期に同じ特徴を示す年輪を探し,虫害が発生した時期を決定する.またその結果を過去の気候データなどと比較したい.
  • 大西 有子, ベリー パム
    セッションID: P1204
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/08
    会議録・要旨集 フリー
    生物分布モデルは、現在の生物の分布情報と気候データの関係をモデル化し、将来の気候下で生物の潜在的分布域を予測するモデルである。これまで日本における研究は少なく、特に最新の機械学習系のモデルを使った研究は非常に限られている。本研究では、日本の各気候地帯を代表する植物14種に対し、従来から使われてきた樹形モデル(CTA: Classification Tree Analysis)や一般化加法モデル(GAM: Generalised Additive Models)の他に、ニューラル・ネットワーク(ANN: Artificial Neural Network)、一般化ブーストモデル(GBM: Generalised Boosted Models)、ランダム・フォレスト(RF: Random Forest)を加えた、5種類の手法で生物分布モデルを構築し、結果を比較した。精度の比較には、AUC(Area Under the Curve)値を使用した。

    解析の結果、AUC値は0.790-0.981であり、全般的には高い精度のモデルが構築されたと言える。最も精度が高かった手法は種によって異なったが、平均値では、ANNが最も高く(0.930)、続いてGAM(0.925)、GBM(0.924)、RF(0.919)、CTA(0.895)の順であった(図1)。樹種別に見ると、分布域が限定されている高標高に分布する種(Abies mariesii, Abies veitchii 等) では比較的どのモデルも精度が高かったが、分布域の広い種(Quercus crispula, Quercus serrata 等)では精度が低い傾向があった。モデル間のばらつきは、分布域が限定されている種の方が、幅広い分布域の種に比べて、大きかった。よって、このような種を対象とした研究では、精度の高いモデルを選択することが特に重要である。CTAは、空間自己相関に対する感度が高い傾向があり、特に地形が複雑で、分布が限定されている固有種の数も多い日本では、CTA、及びCTAがモデルの基盤に組み込まれているGBMやRFは、精度が低くなることが考えられ、ANNのような機械学習系のモデルがより適していることが明らかになった。
  • 青山 雅史
    セッションID: P1102
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/08
    会議録・要旨集 フリー
    本発表では,既存の調査報告の成果も参考にし,現地踏査とGoogle Earth画像の判読によって確認した大崎平野における地盤災害の分布と被害形態を示す.また,地盤災害の分布を国土地理院発行治水地形分類図に重ね合わせ,地盤災害発生箇所と微地形との関係を検討する. 
    調査方法と使用したデータ
    1)Google Earth画像(画像取得日,2011年4月6日)の判読をおこない,地表面に生じた噴砂やクラックの発生地点を確認した.2)徒歩および自転車による現地踏査をおこない,地盤災害の発生地点,被害形態等を確認・記載した.現地踏査は,2011年6月,11月,2012年1月におこなった.3)河川堤防の被災箇所については,国交省東北地方整備局(2011)の調査報告を参考にした.4)大崎市古川駅周辺の地盤災害の発生地点および被害形態については,本研究の現地踏査結果のほかに,後藤ほか(2011),中村・清田(2011),吉田ほか(2011)の調査報告も参考にした. 
    3.結果
    大崎市古川地区では,多くの地点において構造物の被害が生じた.特に,氾濫平野(後背湿地)上に位置するJR古川駅周辺において,構造物の被害が多数確認された.JR古川駅周辺では,マンホールや貯水槽の浮上,建物周辺地盤の沈下,構造物や電柱の傾斜,道路路面の変形・亀裂などの被害が生じた.構造物の被害としては,中層住宅,学校校舎や体育館等の比較的規模の大きい建物における周辺地盤の沈下,抜け上がりの被害が目立った.建物周辺地盤の沈下量は,大きい地点で30~40 cm程度であった.JR古川駅周辺では噴砂も確認されていることから,これらの被害は地盤の液状化が原因となって生じたことが考えられる.自然堤防上に発達している大崎(古川地区)市街地においても,マンホールの軽微な浮上(5 cm程度),構造物周辺地盤の沈下や電柱の傾斜などが点在的に見られた.氾濫平野上に位置する古川地区西部の古川穂波地区とその近隣地区では,電柱の傾斜が多数確認された.また,建物周辺地盤の沈下(抜け上がり量約10 cm)も見られた.古川地区南東の旧河道上の水田では,クラックやその周辺における噴砂の存在が確認された.また,その近隣において,マンホールの軽微な浮上(5 cm程度)も見られた.大崎市南部の三本木地区の氾濫平野上では,大型商業施設の周辺地盤の沈下,マンホールや浄化槽(貯水槽)の浮上,アスファルト路面の陥没などの被害が確認された.また,三本木地区の鳴瀬川河道沿いの自然堤防や丘陵地においても,マンホールの軽微な浮上(5 cm程度)が確認された.美里町小牛田地区では,氾濫平野上の造成地におけるマンホールの浮上(5~10 cm程度)や道路路面の変形,台地縁辺部の道路における開口亀裂などが見られた.江合川,新江合川,鳴瀬川の河川堤防では,堤体の沈下,崩落,はらみ出しなどの被害が多数生じた.その被害要因として,基礎地盤や堤防内部の液状化が指摘されている(国交省東北地方整備局,2011).それらの河川や中小河川の旧河道や自然堤防上の複数の地点では,クラックやその周囲の噴砂の存在が確認された.また,河川堤防や基礎地盤の沈下により,それらの河川の橋梁両端部の路面には段差(大きい地点で50 cm程度)が生じている.鳴瀬川左岸の美里町二郷地区における旧河道や自然堤防上では,開口亀裂とその周囲における噴砂の堆積,貯水池護岸のはらみ出し,墓石台座やブロック塀の沈下・傾斜,電柱の傾斜などが認められた.鳴瀬川右岸の大崎市南東部鎌巻地区の自然堤防上では,開口亀裂とその周囲の噴砂の堆積,アスファルト路面の変形,電柱の傾斜などが確認された.なお,大崎平野における地盤災害発生地点と微地形との関係の詳細は,当日の発表において示す.
  • 河角 龍典, 小野 映介
    セッションID: P1119
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/08
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      伊勢平野中部に位置する中小河川流域には,小規模な沖積低地が発達している.しかし、伊勢平野中部に位置する中小河川の下流域平野やそれらの河川間に発達している海岸低地の沖積層の層序や地形形成過程については不明な点が多い.そこで本研究では,三重県津市の田中川と志登茂川間の海岸低地を主要な研究対象地域として,海岸低地の沖積層の層序や完新世後半の地形形成過程について検討する. 研究対象地域の田中川-志登茂川間の海岸低地の幅は,0.9km~2.0kmであり,丘陵と海岸線の間には,4列の砂堆列が分布している.本研究では,最も内陸側の砂堆列を砂堆Ⅰと呼称し,海岸面している砂堆列を砂堆Ⅳとした. 津市河芸町付近の海岸低地の形成過程を把握するために,主に砂堆Ⅰ(T.P.2.9m)と砂堆Ⅱ(T.P.1.8m)の間に位置している堤間湿地(T.P.0.9-1.2m)において,ハンドオーガー及びハンディジオスライサーによる地層掘削調査を実施した.その結果,海岸に直交する幅約200m区間の地質断面を把握することができた. 大きく3つのユニットに区分できる.ユニットⅠ(T.P.1.0-1.2m)は,現耕土およびその下部のシルト層から構成される.このユニットは丘陵の開析谷を水源とする小河川からの土砂供給により形成されたものと考えられる.このユニットの自体の14C年代は得られていないが,下位のユニットⅡの最新の年代から古墳時代以降に形成された堆積物であると考えられる.ユニットⅡは,堤間湿地を埋積している堆積物で,主に泥炭や有機質シルトから構成される.このユニットでは,1670±30 BP,2260±30 BP,2510±30,2640±30 BPの14C年代が得られている.ユニットの最下部の堆積物を採取することができていないが,下位のユニットⅢの砂礫層内の木片の14C年代が,3120±30 BPの値を示すことから,ユニットⅡの形成年代は,この時期以降となる.少なくとも2640±30 BP~2260±30 BPの間は,堤間湿地は地形変化がほとんどない安定した地形環境であった.また,本ユニットの上部では,1670±30 BPの年代値が得られる有機質シルトの上層と下層に,砂層または砂礫層からなるいイベント堆積物を確認することができた. 最下位のユニットⅢは,主に砂層や砂礫層から構成される.ボーリング資料の上部砂層や砂堆構成層に連続する堆積物であると考えられる.前述したようにこのユニットの砂礫層内の木片の14C年代は3120±30 BPの値を示し,砂堆Ⅱと関連する砂州の形成がこれ以降に開始したと考えられる.
  • 大島 千穂, 山縣 耕太郎
    セッションID: P1210
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/08
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     本研究では,噴火活動及び環境条件が焼山の植生にもたらしている影響について明らかにした.本研究で調査対象としたのは,新潟県南西部に位置する新潟焼山(標高2,400m)である.活火山のランク分け(気象庁,2003)で焼山はランクBに属しており,約3,000年前に活動を開始して以来,活発な噴火活動を繰り返してきた.山頂付近から標高2,000mまでは裸地や高山植物の分布が広がり,標高2,000m以下はミヤマハンノキ-ダケカンバ群落が,標高1,400m以下になるとブナ-ミズナラ群落が主に分布する.
     本研究で明らかにしたことは,以下の四点に集約される.1) 焼山と,隣接する妙高山・火打山の森林限界高度を比較すると,焼山は標高1,400m付近,妙高山・火打山は約2,100m付近であることから,焼山では噴火の影響で森林限界が押し下げられていると思われる.2) 噴火噴出物と高木分布との関係について検討した結果,焼山の標高1,000m~1,200m付近の植生において,溶岩流によって形成された地形的高まりの上では1773年に噴出した火砕流の影響を直接受けていないため,火砕流堆積物によって覆われている凹地と比べて植生遷移が進んでいる.3) 火砕流及び溶岩流堆積後の土壌の生成過程と植物の定着について検討した結果,火砕流・泥流及び土石流などの堆積面上では,大規模な火砕流堆積が起きてから約200年で低木林が成立すること,溶岩上では約1,000年が経つと十分な土壌が発達し,ダケカンバを中心とした陽樹林が成立している.4) 焼山の標高1,400m以上に分布する落葉広葉樹林について,溶岩地形上では高木形態をとり,火砕流堆積面では根曲がりによって低木形態をとる様子が観察される.このような高木のパッチ状分布がみられる要因について,①地質②微地形③積雪条件についてそれぞれ検討した.地質については,溶岩上よりも火砕流あるいは泥流堆積物上の方が不安定で土砂移動が起きやすく,実生の定着が遅れていると考えられる.微地形については,火砕流あるいは泥流堆積面上よりも溶岩上の方が凹凸があるため,有機物の堆積を促し(露崎,2001),土壌生成が進むことが考えられる.また積雪条件については,機械的雪害(大丸,2002)や凹地での積雪期間の長さによる生理的雪害(杉田,2002)が植物の生長への阻害要因として影響している.
  • 竹本 弘幸
    セッションID: 521
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/08
    会議録・要旨集 フリー
    Ⅰ はじめに八ッ場ダム建設問題で実施された国交省(本省)・関東地方整備局(河川計画課)がまとめた検証報告書のうち,ダムの有効性と災害対策の視点から,裏付けとなる地形地質の基礎資料解析の妥当性の検討を行った.その結果,ダム建設に不都合な資料(堆砂量問題・災害履歴)の隠蔽・排除などの情報操作と思われる内容が数多く確認できた.
    Ⅱ 情報操作と災害履歴の隠蔽・排除などの6つの問題点①      想定されるダム堆砂量(1750万t)の基礎データは,ダム運用中に活火山の浅間山・草津白根山が噴火しないことを大前提とし,草津白根山東縁の二河川(1つは二次支川)の堰堤堆砂量を運用解析に使用していること.② 八ッ場ダムへの最大土砂供給源:浅間山麓の河川・砂防データや過去の土砂災害履歴を運用解析で排除していること③ 八ッ場ダムの堆砂報告では,近傍類似ダムであまり確認できない【火山性黒ボク土】が流れ込むが,これは放水で流れるので,堆砂量評価は過大としている.しかし,浅間山南東の霧積ダム流域でも同じ【火山性黒ボク土】は分布しており,この記述は偽りである.ダムは想定の3倍以上で堆砂が進行している.④ 国交省の報告では,昭和6年の西埼玉地震に関する資料掲載をしているが,ダム予定地に活断層は存在せず地震の影響も少ないという関連のみである.しかし,この地震は,震源から遠い長野原町でも石垣の崩壊20箇所,山崩れ200箇所と突出して大きな被害を記録している(前橋測候所,1931).これは,同町が急峻な吾妻渓谷や地盤が脆弱な熱水変質帯と凝集力の乏しい山体崩壊物のOkDAが分布するためである.3.11.後の検証でこの事例を勘案すると,堆砂量の想定は,大きく上回ることから意図的に隠蔽されたと考えられる.⑤ 国交省タスクフォースは,3.11.の際,群馬県内の平井断層(総延長80kmの深谷断層の一部)上に並ぶ4つの貯水池被害(中村,2011)や堤防被害の報告を受けているが,西埼玉地震同様に災害の詳細について言及をしていない.⑥ 同タスクフォースは,草津白根山の噴火災害・ヒ素汚泥で満杯の品木ダムへ泥流が流下した場合や野積状態の土捨場の安全性確保についても,十分な検討を行っていない.5月末に,火山性地震の増加と熱変化があったことを考慮すれば,火山活動の監視と防災対策が急務のはずである.
    Ⅲ 日本学術会議土木工学建築部門によるずさんな検証大熊(2011)は,国交省河川局がダムの必要性を示す資料として同部門会議に提出した八斗島上流での氾濫図(1970年利根川統合管理事務所作成を参照)が捏造だった可能性を指摘している.そこで,この可能性について地形図の点検・分類図の作成など独自の再検証を実施した結果,次の4点でも大熊氏の指摘したとおり,捏造が疑われる図であることが判明した.
    Ⅳ 八ッ場ダムに伴う吾妻渓谷の被害想定
    ダム湛水後に想定される土砂災害の進行は,水位を上下することで,OkDAは膨張と収縮・凍結と融解の繰り返しによる表層剥離と土砂流亡⇒柱状崩落・湖面津波⇒谷頭状ブロック崩壊へとつながり,OkDAで埋積された旧谷壁斜面(基盤岩)との間の地下水位を度々上下させれば⇒深層崩壊へとつながるだろう.
    Ⅴ 八ッ場ダムは,砂防機能を低下させ災害を誘発するダム国交省によれば,八ッ場ダムは砂防機能まで持つとされている.しかし,OkDAが脆いため,地すべりと崩壊に伴いダム湖の埋積は急速に進むと考えられる.これは,下流域にとっても大規模土石流の準備層を蓄えるだけでなく,火山噴火が起これば,その被害はさらに拡大するものと考えられる.
  • ー秋田県「IRIS」ロケ地めぐりのブログ分析を通じてー
    崔 龍文
    セッションID: 308
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/08
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    1.従来の研究と目的 日本政府の観光を今後の成長戦略の柱に位置づけ,政府主導の強力な推進により,近年訪日観光客は順調に伸びてきた.しかし,訪日外国人の都道府県訪問地率から見ると,主に東京,大阪など大都市とその周辺地域を集中的に訪れて,地方圏には訪れていないのが現状である(JNTO 2011).訪問率を覗いてみると,四国,東北,山陰,北陸などが下位を占めている. 経済産業省(2005)は,2030年には大都市圏と一部の地域を除いて,日本のほとんどの地域で経済規模の縮小が予測され,高齢化・少子化は現実的になっている.国土交通省のデータによると,定住人口が一人減ると,年間消費額がおよそ121万円減少することになる.これを交流人口で換算すると,旅行消費額の調査結果によると,外国人旅行者7人が訪れるか,22人の国内宿泊客が訪れるか,77人の国内日帰り客が訪れることによって埋め合わせることができるという(西村幸夫(編纂) 2009).つまり観光が地域活性化に大きく寄与できるといえる. 東北,四国,山陰,北陸地方などは外国人を惹きつける観光資源が乏しいかということなのだが,日本人の視点から見る魅力と外国人の視点から見る観光地の魅力はずれがある.たとえば日本人は日本の清潔さになれていて清潔を日常生活と思っていて,それに驚く人はまずいないであろう.しかし,日本の街と道路の清潔さを(サーチナ 2011)日本の魅力の一位にあげている.筆者の調査でも中国人観光客は東京より地方に行くと田舎の清潔さに大いに感心している. このように日本人と外国人の感じるところが違うように,日本人の観光本人の考える観光名所と外国人のそれとはずれがある.従ってそこに住んでいると気づきにくい郷土の魅力を再発見するには,外からの目線が必要である. しかし外国人の視点から観光資源を評価した研究が少ないのが現状である.に観光庁は2009年から「外国人一人歩き点検隊」や「外国人の目で名所チェック」など実施し,外国人の視点からの観光地の評価を行っている.また倉田など(2010)も外国人の視点から日本の魅力の解明に取り組んでいる.しかし,これらの研究などは大都市地域などに集中していて,地方などには研究されていない. そこで本研究は東北地方の秋田県を研究対象地として,韓国人観光客の視点から日本の地方の観光資源の再発見をここ見ることにした. 2.研究方法 まず韓国の大手ポータルサイトである「Naver.com」と「Daum.net」にてそれぞれキーワードを入力し,実際に「アイリス」ロケ地巡りに訪日したことがあり,旅行記を書いたブログを抽出する.つぎにテキストマイニング手法を通じて,と多変量解析手法を通じてデータを分析し,韓国語形態素分析器にかけて形態素分析を行い,計量的な手法を用いる. 3. 期待される成果 これによって地方の新たな観光資源を見いだし,地域活力に役に立つことを期待したい.
  • 碓井 照子
    セッションID: 203
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/08
    会議録・要旨集 フリー
    2011年8月、日本学術会議は、高校地理歴史科教育に関する抜本的な改革として「新しい高校地理・歴史教育の創造―グローバル化に対応した時空間認識の育成―」を公表し、「地理基礎」、「歴史基礎」の新設科目各2単位の必修化を提言している。 この「地理基礎」では、現行の地理Aをベースにしながらも地域づくりや防災・環境への学習に重点が置かれ、地図やGISを利活用した地理的スキルの育成が重視されている。本稿では、教育情報化を踏まえながら「地理基礎」における地図/GISの段階的学習に関して考察する。 学校と地域におけるGISの利活用は、地域防災力を向上させることにも寄与する。東日本大震災の教訓を生かすためには、津波や地震に関する科学的知識をベースに、地域の地形や道路状況を総合的に判断して避難するという判断力が求められている。地図/GISを利用したDIG(Disaster Imagination  Game:災害図上訓練)を通して、地域の災害脆弱性を子供達が理解しておれば、地域防災の担い手育成にもつながる。 地理基礎で想定されている現段階でのGISを利用した授業形態には、 ① 教員がインターネット上のWebGISやGISソフトを使って教材を作成し提示する授業形態   ② 高校生がGISを操作しながら学習する授業形態 の2種類が考えられる。地理基礎が必修故にAからD段階までの4段階が、現在では想定されている。 <A段階:GISスキルレベル1>  インターネット環境のみ必要で、高校生がWebGISサイトから既成の電子主題地図を見るスキルレベルこの段階では、GISで主題図を作成しない。 <B段階:GISスキルレベル2> 各学校でGISソフトが導入されておればよいが、WebGISを利用すると学校にGISソフトがなくとも可能である。高校生がWebGISサイトから既成のデジタル主題図をダウンロードし、GISで簡単な主題図などを作成するスキルレベル <C段階:GISスキルレベル3> GISソフトが必要になる。高校生がGISwebサイトからちずだけでなく、統計データなどもダウンロードし、GISで主題図を作成するスキルレベル 。 <D段階:GISスキルレベル4>)高校生がGISで主題図を作成して、GISの空間解析機能を使用し初歩的な空間分析ができるスキルレベルである
  • 山科 千里
    セッションID: 218
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/08
    会議録・要旨集 フリー
    はじめに:サバンナにおいてシロアリのバイオマスは草食動物に匹敵すると言われ,生態系において重要な役割を果たすことが指摘されている.シロアリは塚の形成や食物の貯蔵を通して空間や資源の不均一なパッチを生み出すため,サバンナにおけるパッチ動態の一因としても議論される.空間や資源などの不均一性は植物相や動物相の多様性を高めることが指摘されているが,サバンナの植生動態におけるシロアリ塚の機能は十分議論されていない. 南部アフリカの20°S付近には植生帯がみられる.単一種で純林を形成し,樹形や植生景観の地域差が大きいなどの特徴をもつが,これらの特徴をもたらす要因は十分明らかになっていない. 以上から,本研究は,ナミビア北東部に分布するモパネ植生帯においてシロアリ塚上に形成される植生の特徴を明らかにすることを目的とし,純林を形成する傾向をもつモパネ植生帯においてシロアリ塚のパッチが果たす機能を検討する. 方法:ナミビア北東部,カプリビ州に位置するM村で計4ヶ月(2009年10月~12月,2010年11月~12月)にわたる現地調査を行った. 結果と考察 (1)シロアリ塚の多様性生成機能:本調査地の植生は,① “モパネ林”,②“D. cinerea林”,③“混合林”の3つに分類された. シロアリ塚上の植生は,塚の分布する周囲の植生タイプを反映し,上記の3つの植生タイプに分類された.しかし,各植生タイプの中で,シロアリ塚は周辺に比べ,樹木密度や出現樹種数が高く,シロアリ塚にのみ出現した木本種が21種あった. 以上から,シロアリ塚は出現樹種数の少ないこの地域で木本種の多様性を生み出すパッチとして機能していると考えられる. (2)シロアリ塚の形態と木本種の侵入過程:調査地ではキノコシロアリ亜科のMacrotermes michaelsaniによって形成された塚がみられ,活動中と放棄に分類された.放棄された塚は活動中に比べて基部の径が大きかった.活動中の塚は約3割に樹木が全く見られなかった.樹木の見られないものを除くと,活動中の塚には塚一つ当たり平均2種,4本の木本種が出現したのに対して,放棄された塚では平均5種,20本の木本種が出現した.特に,Salvadora persicaはシロアリ塚に特徴的な樹木で塚の中央付近に出現する傾向がみられた. 以上から,S. persicaはシロアリ塚に先駆的に侵入する種と考えられる.さらに,この種が鳥散布種であること,活動中のシロアリ塚は煙突状の特異な形態を持つことから,塚が止まり木の役割を果たし,鳥によって種子が散布されていることが考えられる.
  • 森本 洋一, 小寺 浩二
    セッションID: P1226
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/08
    会議録・要旨集 フリー
    魚野川本流における積雪期(12~2月)の水質時間データをもとに、冬季の河川水質の日変動を解析し、変動の特徴や要因について、気候データや今まで行ってきた現地観測データから考察した。
  • -大谷石、琉球石灰岩、安山岩を中心に-
    宋 苑瑞
    セッションID: P1114
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/08
    会議録・要旨集 フリー
    最近の環境汚染などにより石造建物の風化が促進され、脆くなった石造建物の修復には多様な樹脂や薬品が使われている。本研究ではナノライムや最新の合成樹脂を用いて岩石の強化実験を行い、効果的な適用方法を模索し石造文化財の保存修復に役立てることを目的とした。本実験に用いた合成樹脂は現在の石造文化財の修復に最もよく使われているアクリル樹脂ParaloidTM B-72(AcryloidTM B-72)とエポキシ樹脂、それから Wacker SILRES(R) BS OH100である。樹脂による強化実験は大谷石を中心に行い、ナノライム粒子による結合実験には大谷石、琉球石灰岩と安山岩が用いられた。岩石試料は引張強度、Equotipによる表面の強度測定、P波速度測定を行った。
  • 福岡 義隆, 丸本 美紀, 長谷川 直子
    セッションID: P1223
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/08
    会議録・要旨集 フリー
    古気候復元や年代決定の上で、cross-dating法による年輪成長曲線作成が施されるが、その際、各地でのサンプルを使う必要性がある。さらには場合によっては樹種の違ったサンプルも参考にしなければならない。そういった場合に地域代表性の上ではたして地域間相関とか樹種間相関が有意であるかどうか検討することが必要である。ケッペンの気候区分が植生分布との相関性に基づいているということからも空間的スケールの検討が必要である。また、樹木年輪だけでは絶対年代の決定や古気候復元に関して信憑性があるかとか、年輪データーと複数の他の古気候資料との関連性・継続性についても考察してみた。
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