経験則に基づく立木の伐倒方法を科学的に評価するため,ツル周辺の内部応力について追口高さが与える影響を調べた。まず,伐倒過程の観察により倒伏初期の段階で追口端に裂けが生じることを確認した。また,追口高さと裂けが生じる方向の関係を調べた。次に,裂けが生じるまでの内部応力について有限要素解析を行った。立木モデルは等方性材料とみなし,荷重条件は高さ1mの部分の水平変位量が3cmとなるまでとした。解析の結果,追口端の2つの角のいずれかに大きな応力が発生し,変位が大きくなるとその角が裂けの起点になると予想された。裂けの生じる方向は追口の高さに影響を受けていた。すなわち追口高さが受口会合線より低い場合には上方向に,高い場合には下方向に最初の裂けが発生する可能性が高い。上方向の裂けは丸太の商品価値を損なうだけでなく,伐倒手に危険を及ぼす可能性もあるため避けるべきである。さらに,受口の会合線形状を実際の状態に近づけた解析では,追口が受口会合線と同じ高さでも上方向に裂けが生じる可能性が示された。以上のことから,上方向に裂けを生じさせないためには追口高さは受口会合線よりやや高くするべきであり,内部応力の解析結果と裂け方向の観察結果とを合わせ,国内の指導方法の合理性を確認することができた。
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