本研究の目的は原木輸送を行っているドライバーにヒヤリハット経験についてのアンケートおよびインタビュー調査を行い,その特徴とヒヤリハット経験が多発する要因を明らかにすることである。森林組合1 組合,運送会社3 社,木材市場1 社で原木輸送を行っている45 名から,ヒヤリハット経験についてアンケートとインタビューによる調査の回答を得た。原木輸送のドライバーの多くはヒヤリハット経験があり,ヒヤリハットの経験をしたことのあるドライバーの約7 割は3 年の間に3 回以上のヒヤリハット経験があった。林道,直進中,カーブ,飛び出し,原木を運んでいるときにヒヤリハット経験をするドライバーが特に多かった。また,ヒヤリハット経験が増加する要因として,主な仕事,トラックサイズ,道路の場所が選択された。林道だけでなく,交差点や横断歩道など一般道においてもヒヤリハット経験をしたり,回数が増加する要因となっていたりすることから,原木輸送では林道と一般道を行き来することを考慮した注意喚起の看板の設置やドライバーの休息場所を確保するなどの安全対策が必要と考えられる。
鹿児島県内に開設された作業道247 路線(1,298 箇所)の横断排水溝閉塞を分析した。シラス地域の作業道はシラス地域以外の作業道と比較して横断排水溝を500 m当たり約3倍多く設置しているが,経過年数にかかわらず,平均閉塞率は高くなっていた。また、どの地域の作業道でも横断排水溝設置後,2 年目から急激に閉塞が進んでいる状況であった。そして,経過年数4年目以降は地域に関わらず,平均閉塞率は100%近くなる傾向がある。数量化Ⅰ類を用いて横断排水溝閉塞の要因分析を行った結果, 経過年数,横断排水溝周辺の地形勾配,地質,路面区分の順に影響することが判明した。横断排水溝の維持管理時期は,シラス地域では開設後約3 年目,その他の地域では約5 年目が目安となる。
機械地拵えによって競合植生を抑制し,下刈り回数を削減することが可能か検証するため,バケット及びグラップルによる機械地拵えと人力地拵え,無地拵えの試験区を設定し,地拵え区分が競合植生と植栽木の成長に与える影響を調査した。植栽木周辺における競合植生の被度と最大植生高,被圧された植栽木の割合は,いずれもバケット地拵えで最も低くなり,グラップル地拵えがそれに続いた。最大植生のタイプは,木本類の割合がバケット及びグラップル地拵えでは少ない傾向がみられた。植栽木の生存率は,バケット及びグラップル地拵えでは植栽3 年目においても高い状態を維持し,無地拵えと人力地拵えでの生存率は低下する傾向がみられた。しかし,植栽木の平均樹高はバケット地拵えで高くはなく,A 0 層土壌の除去が競合植生の発生を抑制すると同時に植栽木の成長に負の影響を与える可能性が考えられた。以上により,各地拵え区分における下刈りスケジュールを検討した結果,バケット地拵えに一貫作業と裸苗植栽を組み合わせた場合,地拵え,植栽,下刈りの各コストが最も低くなり,再造林コストは従来比50%程度になると試算された。
林業における安全性向上のため,遠隔操作可能な高性能林業機械の開発と導入が進められている。本研究は伐倒作業における安全性の向上に加えて作業負担の低減を図るべく,伐倒機の半自律化を目指した立木と集積場間の往復を可能とする自律移動システムを開発した。システムは,LiDAR の観測データに基づくリアルタイムな自己位置推定と地図生成を遂行しながら,車両のナビゲーションを行う。本システムを伐倒用の林業機械へ搭載することで,機械の移動に費やしていた時間を総作業時間中から省略することが可能となり,オペレータの作業負担の低減につながる。開発した実験用車両にシステムを実装し伐倒および搬出について実機検証を行った。その結果,伐倒作業の進行に沿って,自律移動時間が占める割合が増加することが確認され,自律移動システムによる作業負担の低減への有効性が示唆された。