我が国の林業は厳しい自然条件下での人力作業が多く,低い生産性の一因となっており,新たな技術の導入による省力化の取組みが進められている。また,燃料材の需要の急速な増加への対応として,全木集材による枝条等の活用等が必要とされている。他方,ドローンの産業利用が進展し,林業の分野でも省力化技術として期待されている。最近ではペイロードが数100 kg 程度の大型ドローンの開発が進められており,急傾斜地や搬出距離の長い施業地における集材作業を大幅に省力化できる可能性がある。そこで本研究では,大型ドローンを集材作業に活用する場合の生産性やコストをシミュレーションにより分析した。その結果,ペイロード 200 kg のドローンでは,生産性については集材距離やペイロードの積載率に応じ 1 ~ 4 m3/h 程度となった。コストについては,現在のコストとしては高価であるものの,技術レベル向上のシナリオにもとづく将来コストは 3,800 円 /m3から 12,000 円 /m3 程度まで低下する結果となり,地形の起伏や土場から遠距離であるなどの林分条件によっては,ドローンが有効活用できる可能性がある。
伐木作業を行う林業機械を自動化するため,伐木対象の立木を検出する手法が必要となっている。遠距離の点群測定が可能である3D-LiDAR を使用した手法が望ましいが,伐木用林業機械に 3D-LiDAR を搭載する場合,点群を測定する方向が限定されるため,立木の背面の点群を取得することができず,また,下層植生や他の立木によって検出対象の立木や周辺の地面が遮蔽され,立木検出に必要な点群が不足する。そこで本研究では,ゲームエンジンにより仮想的な森林環境を構築することで,点群の不足を再現した教師データを効率よく生成し,深層学習におけるネットワークの学習に用いる。これにより点群の不足時においても立木を検出し,検出した立木の 3 次元位置および胸高直径を推定可能な手法を提案する。評価として,実際の森林環境において点群,立木の3次元位置および胸高直径の真値を取得し,立木の検出精度および立木の3次元位置および胸高直径の推定精度を算出した。提案手法では 3D-LiDAR に対する距離の増加による適合率および再現率の低下を抑制することが可能であり,提案手法の有効性が示すことができた。