本研究では,那須野ヶ原地域の林業事業体を対象に小径材の搬出が作業時間に与える影響を調査し,その結果から丸太サイズを考慮した直接費用計算式を作成した。さらにこの直接費用計算式を採材方法の因子として組み込み,対象間伐材の利益を最大にする採材アルゴリズムを作成した。そして,この採材アルゴリズムを用いて間伐材搬出作業の採算性推定モデルを構築し,実際に小径材が搬出された林分A(7.12haの55年生スギ・ヒノキ林分),B(6.70haの52年生スギ林分)に適用し,利益が最大となる最適搬出率を推定した。その結果,最適搬出率はそれぞれ70.3%,37.9%,搬出材積は86.48m^3/ha,47.77m^3/haと推定され,実測値に近い値であることが確認された。しかしながら,本研究の最適搬出率では小径材は搬出されなかった。そこで,haあたりの搬出材積については林分A,Bの実測値1.79m^3/ha,1.76m^3/haに対して,それぞれ3.63m^3/ha,2.51m^3/haとなったことから,新しい補助金体系のもとでは小径材の搬出により利益が向上し,小径材の搬出が促進される可能性が示された。
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