島嶼沖縄地域においては,主に林道開設に起因する斜面浸食や崩壊は,その復旧や補修に特殊な施工技術や高額な費用を要することからこれまで問題とされてきた。そのため林道網や排水施設計画の策定に際しては,斜面浸食や崩壊が危惧される脆弱な地形箇所の特定・予測は重要である。本研究では,沖縄本島北部地域に位置するヤンバル森林を対象として斜面崩壊危険個所の抽出と地図化の方法について検討した。解析には,航空搭載型レーザー(LiDAR)で測定したデータから作成した地上解像度1mの数値地形モデル(DTM)および数値表層高モデル(DSM)を用いた。地形の情報であるDTMを用いて浸食崩壊過程に関係した二次的な地形属性として,LS factor,SP indexおよびTW indexを算出し,SAGA GISを用いたシミュレーションを行った。一方,植生被覆の解析にはDSMからDTMを差し引いて算定した数値樹冠高モデル(DCHM)を用いた。これらの地形および植生に開するパラメータを総合化して斜面崩壊危険箇所地図を作製した。この地図の精度検証は,崩壊発生箇所に関する現地調査結果との比較から行った。その結果,現地で確認された崩壊箇所の84.6%が地図上の高危険判定区域(クラス1およびクラス2)で起きていることが確認され,本手法が当該地域における林道開設に伴う地形的な危険評価に有効であることが示された。
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