林道の切取のり面から崩落する土砂や石などは,たびたび通行の障害となり,それらの除去には多大な労力を要する。本研究は,降雨や凍結融解による切取のり面からの崩落土砂量を計測し,その計測結果に基づいて,崩落土砂量の季節変化や経年変化の予測を行うことを目的としている。本研究では,勾配が5分,7分,9分の3か所の調査プロットを設置し崩落土砂量の計測を行った。その結果,9分勾配の斜面では崩落土砂量が年々減少したが,他の斜面では減少する傾向が見られなかった。調査開始から4年目の年間崩落土砂量は,5分勾配では476kgで,9分勾配の127kgの約3.8倍にもなった。崩落土砂量に影響する要因を分析するために分散分析を行った結果,凍結融解の回数,降雨量,のり勾配という要因すべてが有意水準1%で有意であるという結果になった。特に凍結融解の回数は,その寄与率が25.8%と最も大きく,崩落土砂量に大きく影響していた。崩落土砂量の時系列のデータは,EPA (Economic Planning Agency)法によって,TC(季節・不規則変動調整済み要素),S (季節変動要素),I (不規則変動要素)に分離することができた。TCおよびSを用いたモデルは,崩落土砂量の季節変化や経年変化をおおむね良好な精度で予測できることが示された。
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