森林利用学会誌
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13 巻, 3 号
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論文
  • 鈴木 秀典, 市原 恒一, 野田 巌
    原稿種別: 本文
    1998 年 13 巻 3 号 p. 151-160
    発行日: 1998/12/15
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル オープンアクセス
    デジタルマップ上にて,レクリエーション利用を想定した森林道路を計画した。総合的な評価を効率よく行うために,遺伝的アルゴリズム(GA)とDijkstra(ダイクストラ)法を組み合わせ,最適配置を検討した。また,土工量,安全性などを考慮して,一方通行,1車線の道路を2路線計画することとし,評価因子には,林内景観,見晴らしのよさ,被視頻度,山腹勾配,路線間の距離,地盤高の分散,道路長,縦断勾配を用いた。計画は,起・終点の間に通過点を1路線あたり2箇所設定し,起点から終点までの4点間をDijkstra法で探索して行う。これが1回の計算にあたる。以後,通過点の座標を変えながら,GAの模擬的進化を用いて最適な道路配置を求める。本報告では,30,000回の計算により最適解を得た。計算所要時間は約45時間であった。GAを組み合わせることで,全体を見渡して評価する因子を考慮することができ,総合的な評価ができた。また,GAの確率的探索の効率性も確認することができた。今後の課題としては,メッシュ精度に見合った,適切な評価因子,ウェイトの選定,および通過点の設定方法について検討することである。
  • 呉 在萬, 井上 章二
    原稿種別: 本文
    1998 年 13 巻 3 号 p. 161-168
    発行日: 1998/12/15
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル オープンアクセス
    林道開設に起因する渓流水質の変化を把握する目的で,林道の影響を受けない山地流域として観測点AとB,林道の影響を受ける観測点Cの3か所で浮遊砂濃度と濁度を測定し,降雨因子ならびに流量との関連性について検討した。その結果,以下のようなことが明らかになった。1)浮遊砂濃度と共に測定した濁度は,浮遊砂濃度との相関関係が認められ,今後,浮遊砂濃度の補助的指標になりうると考えられる。2)山地流域の渓流で発生する浮遊砂流出は10分間降雨強度よりも1時間降雨強度の影響を受ける。しかし,林道路面およびのり面からの土砂流入がある場合は,1時間降雨強度よりも10分間降雨強度の影響を受ける。さらに,短時間の降雨強度が急増すると,降雨と同時に多量の浮遊砂が林道路面およびのり面から流入するため,流量のピークに先行して浮遊砂濃度のピークが現れる。3)林道の影響を受けない場合は,流量Qと浮遊砂濃度SSCとの間にはSSC=aQ^b (a,b:係数)なる関係が全体的には認められるが,林道からの土砂流入がある場合は,流量と浮遊砂濃度には直接的な関係は認められなかった。このときは顕著なヒステリシス現象が確認された。
  • 井上 源基, 岡 勝, 田中 良明, 吉田 智佳史
    原稿種別: 本文
    1998 年 13 巻 3 号 p. 169-182
    発行日: 1998/12/15
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル オープンアクセス
    高性能林業機械による作業システムとして,フェラーバンチャースキッダ+プロセッサ(デリマ)の組合わせの車両系伐出システムを取り上げ,作業工程間の作業待ち時間を最小にし,伐出システム全体の生産性を最大にする適正な集材距離や作業域(面積)の関係などについてシミュレーション技法により検討した。その結果,伐出システムの生産性は作業工程間の作業待ち時間に関係し,伐出システム全体の総作業待ち時間は各種作業法に対して集材距離の関数で示された。最小総作業待ち時間を与える集材距離を適正集材距離とすると,同一の作業条件における適正集材距離は,各集積点密度や集材路網型に対して一定であることを明らかにした。また,適正集材距離は,機械の組合わせや台数あるいは積載量によって変化し,3工程連携作業の当該伐出システムでは,約400〜500mが与えられた。さらに作業の稼働状況を示す指標として作業工程の作業率k_sや工程間の重複率C_sを明らかにし,これらの数値を用いた伐出システム全体の生産性の推定式を提示した。
  • 陣川 雅樹, 辻井 辰雄, 古川 邦明, 藤井 正
    原稿種別: 本文
    1998 年 13 巻 3 号 p. 183-192
    発行日: 1998/12/15
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル オープンアクセス
    急傾斜地における林業作業の機械化,安全性の向上を図るため,レールサポート方式によって林内を走行する傾斜地用トラムカーを開発した。本車両は人員輸送および資材・木材運搬を行うため,多輪駆動,油圧駆動,傾斜対応形水冷多気筒エンジン,安全確認形システム,主・副2本レール,レールのプレハブ化などの機構を有している。牽引力,制動力,レール強度に関する性能試験では,十分な安全が確認された。岐阜県東白川村および白鳥町においてトラムカー導入試験を行い,敷設作業について調査した。要素作業分析の結果,障害物処理,レール位置調整,待ち時間が多く,敷設作業の機械化,効率化の必要性が示唆された。一方,作業速度を決定する要因は,地盤に障害物のない場合は傾斜角度が,障害物のある場合は障害物処理が主要因となることが明らかとなった。また,敷設功程に関してトラムカーをモノレール,作業道と比較した結果,急傾斜地における有用性が示された。
  • 吉村 哲彦, 酒井 徹朗
    原稿種別: 本文
    1998 年 13 巻 3 号 p. 193-200
    発行日: 1998/12/15
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル オープンアクセス
    林道は公道の整備が十分でない山間部において木材輸送だけでなく交通網の一部としての役割を担っている。本研究では,効率のよいネットワーク形成を目的として,紀伊半島中央部の熊野川流域6村を対象に,ネットワーク分析を用いて林道を含めた道路網の評価を行った。アルファ指数を用いて評価を行った結果,道路の規格が下がるにつれて,この地域の道路網は循環型ではなく突っ込み型の線形が増加することが示された。ベータ指数の値は,わずかに1以上であり,いくつかの地点で代替経路が存在していたが,土砂崩れなどにより道路が遮断された場合に適当な代替経路を探すのは困難である。イータ指数の値も,道路の規格が下がるにつれて減少傾向を示し,市町村道のレベルでネットワークの細分化が進んでいることがわかった。Croftonの公式によりネットワークの連結性を評価した結果,下北山村と野迫川村,下北山村と大塔村の連結性が最も低く,次いで十津川村と天川村,大塔村と天川村の連結性が低いことが示された。逆に道路の連結性が最も高いのは天川村と野迫川村の間であった。このような連結性の低い区間には,既存道路の改良も含めた峰越し連絡道路の整備が必要である。
  • 市原 恒一, 豊川 勝生, 澤口 勇雄, 松下 一樹
    原稿種別: 本文
    1998 年 13 巻 3 号 p. 201-210
    発行日: 1998/12/15
    公開日: 2017/04/03
    ジャーナル オープンアクセス
    集材作業が終了した集材路は廃道となり放置され,森林に戻される。本報告では,廃道の森林への回帰状況について検討した。調査路線は使用終了後11〜12年経過し,路面から土砂流出防止のために牧草の種を播種した区間とトラックを通すため敷砂利をした区間を含む。調査結果は以下のとおりである。1)切取のり高1m以下:のり面植生被覆率が高く安定し,路面にはススキが繁茂しているが,ウィーピングラブグラスを播種した区間で,敷砂利区間およびわだち部ではススキの現存量が少ない。2)切取のり高1〜3m:のり面の植被率は約30%で,のり面下部に崩土が厚く堆積し,ススキは路面の谷側に繁茂している。3)切取のり高3m以上:のり面の植被率は極めて少なく,路面一面に大量の崩土が堆積している。これらの調査結果から以下の結論を得た。1)集材路跡地を自然植生で覆うため,切取のり高をなるべく1m以下にする。2)植生が繁茂できるように路面を耕うんする。3)路面の緑化草種としてススキを用いる。4)早期に森林に戻すため,集材路周辺にその地に適した母樹を残す。
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