年齢・時代・コウホートが林業の従事者比率の増減に及ぼす影響を明らかにすることを目的に,1980年から2015年の国勢調査の農林水産業の従事者数をAPC分析して,各因子の影響を推定した。その結果,農林水産業では年齢の影響が強く,時代の影響は小さいことが分かった。年次によって,従事者比率を最も増加させる因子が異なり,2000年以降の75歳以上では,その因子はコウホートであり,35歳未満は農林水産業によって異なる結果となった。35歳未満において,増加因子が異なるのは,1971年以降に生まれた世代のコウホートの影響が農林水産業によって異なるためであった。特に,林業では1971年以降に生まれた世代はそれ以前に生まれた世代より林業に従事する比率が高いことが分かり,緑の雇用担い手育成対策事業といった若年者への就業支援策の効果があったと示唆された。また,林業において,1971年以降に生まれた世代のコウホートの影響に性差がなかったことから,性別を問わず,就業支援策の効果があったと考えられる。これらの成果は林業の就業支援に関する政策に貢献できる。
近年,これまで森林環境では利用が困難とされていたRTK(Real-Time Kinematic)測位が可能になってきた。本研究では,スギ人工林内において2周波GNSS受信機とソフトバンク社の高精度測位サービスを用いてRTK測位を行い,正確度誤差,精密度誤差,2DRMSを指標として測位精度の検証を行った。その結果,精密度誤差は0.17~0.47 m,正確度誤差は0.85~0.93 m,2DRMSは1.78~2.24 mであり,スギ人工林でのRTK測位は開空地に比べると立木の影響を受けて大きく精度が低下した。周囲測量の結果,面積の誤差率は最大-3.7 %であり,対象地の面積が小さい割には良好な結果であった。また,FIX率は15.4~29.9 %と低く,t検定の結果,FIX解とFLOAT解の測位精度には有意な差が認められなかった。ゆえに,FIX解とFLOAT解の精度が同等な森林環境では,FIX解の代わりとしてFLOAT解が利用できる。さらに本研究では,アンテナの種類やアンテナの高さを変えることで測位精度を改善できるのではないかと考えて,その検証のための追加的な測位試験を行ったが,測位精度を改善することはできなかった。
森林内での車両位置情報は運搬の自動化などに利用可能な技術だがGNSSを使用する場合,森林内ではリアルタイムに正確な位置情報を取得することが困難な場所があり,車両位置情報の取得をGNSS以外でする必要がある。本研究では弊社が独自に開発しているLiDAR SLAMを林業機械向けに適用し,その精度の検討を行った。LiDAR SLAMを林業機械向けにIMU,ホイールエンコーダ情報との統合とLiDAR SLAMのマッチング処理を粗い精度と細かい精度の二段階にすることでICTフォワーダの自己位置推定時に水平方向で最大誤差0.064 m,平均誤差0.020 m,SLAMを用いた追従走行においても水平方向で最大誤差0.34 m,平均誤差0.17 mという結果が得られ,GNSSを用いることが困難な森林環境における自己位置推定手法として適用できることを確認した。