林業労働災害を減少させる有効な対策として,厚生労働省を中心にリスクアセスメントの普及・導入が進められている。しかし,労働環境が日々変化する林業においては,その特殊性を考慮する必要がある。本研究では,林業現場でのリスクアセスメントの効果的な実施を目的にアンケート調査を行い,課題の究明および実施方法の検討を行った。その結果,リスクアセスメントは比較的よく実施されていることが明らかとなった。一方,リスクアセスメントによる労働災害の低減効果は認められず,リスクアセスメントが十分に理解されないまま形式的に実施されている可能性が示唆された。本研究で提案した災害発生年頻度を使って,リスクアセスメントの実施頻度と参加者の分析を行った。その結果,実施頻度については,作業面積に合わせて「現場が変わる度に」と「1ヶ月に1回」実施の柔軟な組み合わせが効果的であると考察された。また,参加者については,事業体規模に合わせて,作業員が10人未満の事業体では経営者側も含めた「全員で」実施することが効果的である一方,10人以上の事業体では「作業班」を中心に経営者側と他班の班長も含めて実施することが効果的であると考えられた。
本研究は林業機械の接地圧を考慮し,作業道路体に求められる強度を明らかにすることを目的とした。そのために,バケット容量0.28 m3及び0.5 m3クラスの建設機械をベースマシンとする林業機械の接地圧を測定し,それが作業道盛土の法肩付近に作用した時に安全率が1となるための内部摩擦角及び粘着力を円弧すべり法により計算した。林業機械の接地圧分布は履帯長軸方向の変動が激しく,遊動輪,起動輪,転輪の位置で高かったが,二次元の安定計算法である円弧すべり法では,奥行方向(すなわち履帯の長軸方向)にはある程度の長さにわたり一定の力学状態が続くと仮定されている。そこで履帯の任意の位置における長さ1 mの区間の平均接地圧を求め,その最大値(履帯長1 mあたり平均接地圧)を林業機械の接地圧とみなして円弧すべり法を適用した。履帯長1 mあたり平均接地圧は林業機械の姿勢によって変化し,重心が最大偏心時の97%の位置にある時には155 kPaに達した。幅0.50 m,接地圧150 kPaの履帯が法肩から0.0 mの位置に載る場合,法面勾配1:1.2の盛土の安全率が1となるための内部摩擦角と粘着力の組み合わせは(10度,27 kN/m2),(20度,19 kN/m2),(30度,13 kN/m2),(40度,7 kN/m2)であった。