山岳地域における林業の諸生産活動において,とりわけ林道開設に伴う流出土砂は,その発現形態が非点(ノンポイント)的であるという特徴から,面的な拡散をしながら周辺域に大きな環境負荷を与えることがこれまでの研究から明らかとなっている。すなわち,林道から斜面に流出した土砂の多くは,経年的な移動・拡散作用により,最終的には陸水域の接点である河畔域に集積する。そのため,森林と渓流域の多様な生態系を相互に結び付けている当該地域の取り扱いについて,環境的側面からの重要な問題を提起することになった。本研究では,滋賀県下の花崗岩山岳地域に開設された林道を対象として,デジタルオルソをソースデータとする簡易型画像解析法を導入し,その流出土砂の時系列的な変化特性や動態を定量的に評価することを上記問題に対する予備的研究として試みた。その結果,当該林道からの流出土砂の拡散分布は,開設後の比較的早い時期に最も大きく,その後漸次的に減少していくことが明らかとなった。これは,従来報告されている流出土砂の時系列的動態特性と一致する。一方,このような動態特性の構造が,斜面上の流出土砂の面積分布と移動距離の相互関係からかなり捉えられることも明らかとなった。
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