森林利用学会誌
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32 巻, 3 号
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論文
  • 藤原 まや, 岩岡 正博, 松本 武, 猪俣 雄太
    2017 年 32 巻 3 号 p. 115-122
    発行日: 2017/07/31
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,温度変化のある環境において,通気型フレコンを利用することで木質チップの乾燥が可能であるか,また含水率推定モデルは適用可能か明らかにするとともに,含水率推定モデルのパラメータの特性を明らかにすることである。このために,周期的に加温される環境と,温度調節を行わない室内環境において,通気性の小型疑似フレコン内部の木質チップの含水率を経時的に測定した。この結果,チップボイラの排熱を利用した加温はチップの乾燥の促進に有効であること,通気型フレコンを利用した木質チップの自然乾燥は数か月以上の長期間かかるものの可能であることが明らかになった。疑似フレコン内部の木質チップの平均含水率を,含水率推定モデルを用いて推定した結果はよく適合しており,このモデルは温度変化のある環境においても適用可能と判断された。モデルの係数kは,実験期間中の平均温度との関係がみられ,bを定数と考えると,kと通気性面からの距離との関係がよりはっきりすることがわかった。

  • ホイール式車両を用いたCTLシステムの事例
    鈴木 秀典, 中澤 昌彦, 佐々木 達也, 上村 巧, 吉田 智佳史, 陣川 雅樹, 戸田 堅一郎, 大矢 信次郎, 髙野 毅, 近藤 道治
    2017 年 32 巻 3 号 p. 123-130
    発行日: 2017/07/31
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー

    黒色土を対象として,ホイール式車両を用いたCTLシステムで間伐作業をした際の機械走行の影響を調査し,林内の締固めを明らかにした。作業ではホイール型のハーベスタ,フォワーダを使用し,点状および列状間伐を実施した。機械走行回数はハーベスタよりもフォワーダの方が多くなる傾向がみられ,列状間伐のフォワーダにおいて特に走行回数が多くなった。これは,フォワーダは満載になるたびに土場まで戻る必要があることに加え,列状間伐では,走行経路が伐採列に固定されることによる。走行による締固め程度をコーンペネトロメータで計測したところ,少ない走行回数では土壌硬度の増加がみられたものの,走行回数がさらに増えると,一部で泥濘化によると思われる土壌硬度の低下がみられた。また,土壌硬度の増加は,既存の報告よりも深い15cm から20cm にみられた。走行から2 年後の計測では,締固めの影響が回復しておらず,泥濘化によって土壌硬度が低下した箇所では土壌硬度の増加が確認された。泥濘化による土壌硬度の低下は一時的なものと考えられ,走行の影響を評価するためには,走行直後ではなく,時間が経過してから土壌硬度を計測する必要があると考えられる。

速報
  • 鈴木 保志, 杉尾 真菜, 山﨑 敏彦, 山﨑 真, 川久保 宜幸, 渡辺 靖崇
    2017 年 32 巻 3 号 p. 131-136
    発行日: 2017/07/31
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー

    林業用高強度合成繊維ロープは摩耗に弱く,交換時期の適切な判断のために損傷程度と残存強度の関係を知る必要がある。径10mm(12ストランド)の林業用高強度合成繊維ロープを用いて,対照と端末処理の方法も含めて損傷の種類と程度の組み合わせで8種類の処理を設け,繰り返し数3で処理後の破断強度との関係を調べた。端末加工はロープ末端を直に10山分(20ストランド分)通すのみの簡易加工とした。対照(無処理)に対し端末包み込み処理は強度が高い傾向だが有意差は認められなかった。グラインダによる摩耗処理では,表面摩耗について硬軟2種類の研磨盤間に有意差は認められなかったが,ストランド谷間までの摩耗(深度摩耗)では軟で特に強度が落ちていた。ストランド2切断と4切断の間には有意差は認められず,破断強度は表面摩耗と同程度であった。処理後の径から算出した有効断面積と破断強度の関係では,深度摩耗は有効断面積に対して明らかに低い破断強度となっており,その原因は摩耗加工時に熱が発生したためと考えられた。

  • 静岡県三島市の事例
    亀山 翔平, 鈴木 礼, 吉岡 拓如, 井上 公基
    2017 年 32 巻 3 号 p. 137-142
    発行日: 2017/07/31
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー

    本研究は静岡県三島市の間伐遅れ人工林の事業を事例に生産性および経済収支の特徴を考察することを目的とした。調査地は,静岡県三島市でH組合が所有する財産区有林であり,管理委託を受けている7.8haで行った間伐を対象とした。事業方針は,過密林が多いために間伐を中心に実施し,経済収支をプラス10万円/haとすることであった。時間観測の結果,労働生産性は6.64m3/人日であった。間伐事業による丸太売上収入が65.4万円/haであり,補助金を含めた合計は89.0万円/haであった。また,支出は70.6万円/haであった。ここから,経済収支は18.4万円/haであった。本調査地では,単木材積が小さいことや検尺によって生産性の低下が考えられる。しかし,高密な路網配置や定性間伐であるが列状になるように作業したことによって生産性が向上したと考える。また,丸太の販売先を工夫したことで,特に小径材の収益の増大につながり事業目標が達成されたと考える。需要情報をもとにした採材,検尺時の販売先の適切な見極めが収益確保に有効であること,さらに,オペレータの能力向上の重要性が示唆された。

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