森林利用学会誌
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35 巻, 4 号
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論文
  • 中澤 昌彦, 佐々木 達也, 𠮷田 智佳史, 上村 巧, 鈴木 秀典, 瀧 誠志郎, 大矢 信次郎, 赤松 玄人, 伊東 大介
    2020 年 35 巻 4 号 論文ID: 35.189
    発行日: 2020/10/31
    公開日: 2020/11/01
    ジャーナル フリー

    広葉樹バイオマスの低コスト供給システムを開発することを目的に,積雪期の平坦地において車両系林業機械を用いた広葉樹伐採を実施して生産性を求めるともに,エネルギー資源としての未利用な広葉樹バイオマスの資源量を推定した。適用した作業システムは,伐木と造材工程の木の切断において,チェーンソーを使用する従来型,フェラーバンチャを使用する機械型①,ハーベスタを使用する機械型②の3つである。伐木工程の労働生産性は,従来型では3.8m3/人時,機械型①では7.5m3/人時,機械型②では9.4m3/人時,造材工程ではそれぞれ3.6m3/人時,2.8m3/人時,3.0m3/人時であり,システム全体ではそれぞれ1.7m3/人時,1.9m3/人時,2.1m3/人時と求められた。さらに安全性面から評価すると,野外作業時間が限定される機械型①②の作業システムが比較的安全であり,積雪期の広葉樹の伐採に有効であると考えられた。また,エネルギー資源として未利用な広葉樹バイオマスの資源量を推定すると,伐採した地上部全質量の28%であり,人工林の伐採量の内訳割合と同程度を期待できることが分かった。

  • 渡辺 一郎
    2020 年 35 巻 4 号 論文ID: 35.197
    発行日: 2020/10/31
    公開日: 2020/11/01
    ジャーナル フリー

    既製品の乗用型刈り払い機((株)筑水キャニコム製CG510)をベースに,根株切削機能などを追加した造林作業機械が新たに開発された。この新たに開発された造林作業機械について,カラマツ根株の切削速度と下刈り作業コストを検討した。その結果,平均的な大きさのカラマツの根株(本試験では直径31.0cm,高さ22.8cm)を約85秒で切削することができた。また,根株切削を含む下刈り作業(カラマツ根株密度570本/ha)の作業功程は0.062 ha/時となり,作業効率は肩掛け式刈払い機による下刈り作業より2割低くなったが,根株切削後の林地での下刈り作業では0.212 ha/時となり,肩掛け式刈払い機の約2.8 倍となった。また,これらの結果に基づいて,下刈り作業コストを試算したところ,標準的な下刈りコストを下回るには,根株切削作業を含む下刈り作業では年間50 ha以上の作業面積,根株切削作業後では年間25 ha以上の作業面積が必要であることが分かった。

  • 瀧 誠志郎, 中澤 昌彦, 斎藤 仁志, 大野 勝正, 鈴木 秀典, 吉田 智佳史, 千原 敬也, 図子 光太郎
    2020 年 35 巻 4 号 論文ID: 35.203
    発行日: 2020/10/31
    公開日: 2020/11/01
    ジャーナル フリー

    一般的にSfM(Structure from Motion)では,主に多視点から撮影された複数枚の静止画像が用いられる。このため静止画を撮影する際には,撮影のたびに立ち止まり,OL(オーバーラップ)率やSL(サイドラップ)率に常に注意しながらの撮影が必要となり,撮影手法が煩雑である。本研究では,作業道の三次元点群データ化のための簡易的な撮影手法を明らかにすることを目的とし,作業道においてデジタルビデオカメラによる歩きながら撮影した動画データを基に,三次元点群データの構築を試みた。この結果,撮影した動画からフレームごとに抽出した180枚の静止画像から,SfM処理ソフトにより詳細な三次元点群を構築することができた。この際,品質等による画像の選別やマニュアルでキーポイントを設定することなく,すべての画像を自動で合成することができた。この結果から,作業道の三次元点群データの構築のための簡易的な手法として,動画撮影が活用できる可能性が明らかとなった。またこの結果を基にPC上で簡易的な出来形測量を行い,縦断図および横断図を作成し,動画を基にした点群データの再現性や動画撮影時の留意点を明らかにした。

速報
  • 伊藤 元貴, 矢部 和弘, 今冨 裕樹
    2020 年 35 巻 4 号 論文ID: 35.209
    発行日: 2020/10/31
    公開日: 2020/11/01
    ジャーナル フリー

    本研究では,飛散物防護カバーと刈刃の間に草が絡まる現象の特性を解明し,草が絡まりにくい飛散物防護カバーの形状を考察することを目的とした。下記条件下において,15分間の刈払作業を行い,刈刃と飛散物防護カバーの間に草が絡まり刈刃が停止した回数をカウントした。絡まった草は回収し,草丈,茎直径,重量,弾性率を計測した。植生条件はササ,ススキ,ツルの3条件,飛散物防護カバーの形状は従来型(カバーA),ギアケース被覆型(カバーB),上部開放型(カバーC)の3条件,刈刃回転数は5000 rpm,6000 rpm,8000 rpmの3条件とした。草が絡まり刈刃が停止した回数は,ササはカバーA,5000 rpmで3回,ススキはカバーB,6000 rpmで1回,ツルはカバーA,5000 rpmで3回,カバーB,5000 rpmで2回,カバーC,5000 rpmで3回であった。ツルは,群落全体の弾性率と比較し,絡まった草の弾性率はカバーAで1.3倍,カバーBで約1.7倍,カバーCで約2.0倍であった。カバーBおよびカバーCは,カバーAと比較し草が絡まった回数が少なかった。また,ツルは弾性率の小さい草は絡まらなかった。以上により,カバーBおよびカバーCは草の絡まり防止に効果があったといえる。

  • 猪俣 雄太, 山口 浩和, 有水 賢吾
    2020 年 35 巻 4 号 論文ID: 35.215
    発行日: 2020/10/31
    公開日: 2020/11/01
    ジャーナル フリー

    林業の死傷災害の要因分析に対するテキストマイニングの有効性を明らかにするために,2015年の林業災害事例にテキストマイニングの技術を適用して,チェーンソーおよび刈払機による災害の特性と被災者の年齢による違いを分析した。その結果,災害状況が記載されているテキストデータから,チェーンソーおよび刈払機,年齢層における主要な被災部位や被災要因を抽出できた。一方で,本手法は単語の出現頻度から単語と単語との関係性を機械的に分析しているため,文脈を読み取って,災害状況を理解・分類する作業を伴う解析には適していないことと,被災部位ではない単語の抽出があり,正確な抽出のためには,係り受けの解析を行う必要が分かった。死傷災害事例の分析手法を示した本成果は年間1000件以上発生する林業の労働災害の低減に寄与できるものと考えられる。

  • 中田 知沙, 板谷 明美
    2020 年 35 巻 4 号 論文ID: 35.223
    発行日: 2020/10/31
    公開日: 2020/11/01
    ジャーナル フリー

    Transportation distance and time are important factors for efficient timber transportation and driver management in forestry industries. A low-cost or free, and an intuitive and simple operation to estimate transportation distance and time would be useful for forestry industries. The purpose of this study was to build a system for estimation of transportation distance and time including the inside of forests using Google Maps routing system, taken between artificial forests and a woody biomass power plant as an example. Mie Prefecture, located in central Japan, was selected as our study site. As a result, the system was built to estimate the transportation distance and time including the inside of forests using the winding factor of forests roads. The transportation distances from forests to the biomass plant in the city of Tsu ranged from 15.54 to 173.30 km, and transportation time ranged from 0.54 to 5.86 h. The estimated harvestable area was smaller than the result calculated using the transportation distance and time that had been used in previous studies. Our system can estimate transportation distance and time in the forests based on actual road routes in Google Maps instead of radius circular range. Therefore, this system would contribute to efficient timber transportation and driver management.

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