森林利用学会誌
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32 巻, 4 号
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論文
  • 吉田 智佳史, 佐々木 達也, 中澤 昌彦, 上村 巧, 陣川 雅樹, 古川 邦明
    2017 年 32 巻 4 号 p. 175-186
    発行日: 2017/10/31
    公開日: 2017/11/29
    ジャーナル フリー

    森林バイオマスの効率的な生産システムの開発を目的に,造材作業に伴い発生する端材を用材と切り離さずそのまま搬出・運搬する「一体材生産システム」について現地試験を行い,積載量や作業時間等を分析するとともに生産性や生産コストを評価した。作業機械は,荷台への積載に油圧ショベルをベースとするグラップルを用いる他積載型と自身に装備したグラップルローダを用いる自積載型の2種のフォワーダおよびトラックを用いた。フォワーダ搬出,トラック運搬,プロセッサ切り分けの3工程による用材と端材の合計生産コストについて,用材と端材を別々に運ぶ従来方式と一体材として同時に運ぶ一体材方式を比較すると,フォワーダ搬出距離500 m,トラック運搬距離50 km,年稼働日数200日の条件において,他積載型は従来方式が1,978円/m3,一体材方式が1,765円/m3であり,自積載型は従来方式が2,367円/m3,一体材方式が2,394円/m3であった。用材と端材の搬出運搬コストは,自積載型では大きな差はないが他積載型では11% 低下した。さらに,用材の生産量に比例した端材量のみを運搬する作業条件では,箱型トラックの年稼働日数が14〜16%に低下し,自積載型,他積載型ともに従来方式に比べ一体材方式の方がコストは20〜26%低下した。端材運搬用の箱型車両が不要な一体材生産システムは,小規模からでも事業展開が可能なことから,未利用材供給量の拡大が期待される作業システムであることが示唆された。

  • 猪俣 雄太, 伊藤 崇之, 山口 浩和, 鹿島 潤, 山田 健
    2017 年 32 巻 4 号 p. 187-195
    発行日: 2017/10/31
    公開日: 2017/11/29
    ジャーナル フリー

    本研究はコンテナ苗専用植栽道具使用時に腰部にかかる負荷を明らかにすることを目的に,8名の被験者を対象に,3種類の植栽道具使用時(唐クワ,ディブル,スペード)の腰部モーメントを計測した。計測結果より,斜面傾斜が急になると腰部モーメントは減少することが確認された。また,唐クワとそれ以外の植栽道具とを比較すると,腰部モーメントは唐クワのほうが高い傾向を示した。腰部への負荷を4段階に分類した基準に適用すると,急傾斜地ではどの植栽道具でも「普通作業」に分類され,腰部を痛める危険性は低い。緩傾斜地では作業や植栽道具によって分類された区分が異なり,唐クワの穴あけ作業は全被験者で「重い作業」に分類され,傷害の危険性が急傾斜地より高い。そのほかの植栽道具の作業は被験者によっては「重い作業」に分類されたが,多くは「普通作業」に分類された。このことから,急傾斜地では道具による負荷の違いはないが,緩傾斜地では唐クワよりコンテナ苗専用植栽道具のほうが適していることが示された。

速報
  • 小林 裕之, 佐竹 謙二, 板川 あゆみ
    2017 年 32 巻 4 号 p. 197-
    発行日: 2017/10/31
    公開日: 2017/11/29
    ジャーナル フリー
  • 松永 宙樹, 斎藤 仁志, 大塚 大, 植木 達人
    2017 年 32 巻 4 号 p. 203-210
    発行日: 2017/10/31
    公開日: 2017/11/29
    ジャーナル フリー

    天然更新施業は,再造林コストの低減や再造林放棄の拡大防止に寄与する可能性を持っている。カラマツ(Larix kaempferi (Lamb.) Carriere)天然更新施業に関しては,更新誘導に関する研究は行われているが,育林過程における報告は少ない。天然更新した林分では,立木配置や径級のバラつき等が予測できず,伐採等作業を行う上で,生産性や収益性にどのような影響があるかも明らかでない。本研究ではカラマツ天然更新林分の構造が搬出間伐に及ぼす影響を調査し,その収益性を検討することを目的とした。調査の結果,人工植栽区に比べて天然更新区では立木配置がランダムである一方,立木の直径階のバラつきと平均直径の差には,天然・人工の両プロットにおいて有意差は認められなかった。列状間伐作業時の生産性は全体的に人工植栽区で高く,システム労働生産性は,天然更新区で4.58 m³/人日,人工植栽区で5.20 m³/人日となった。伐倒工程では,要素作業「選木・列の確認」において,天然更新区で時間を費やしていた。一方,出材量および選木結果,径級ごとの価格を考慮すると,主作業費に対する収益の割合は,天然・人工で同程度であった。

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