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阿部 裕輔, 鎮西 恒雄, 満渕 邦彦, 今西 薫, 磯山 隆, 松浦 弘幸, 米沢 卓実, 河野 明正, 渥美 和彦, 藤正 巌, 井街 ...
1995 年24 巻3 号 p.
864-869
発行日: 1995/06/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
1/R制御は、末梢血管抵抗における神経系や液性因子のβ作用を利用して、人工心臓の拍出量が心臓血管中枢により操作される制御方法を実現しようとするものである. 自然心臓を切除した完全置換型人工心臓ヤギにおいて、1/R制御により360Bの最長生存を得たため、このヤギの生理学的および生化学的な所見を解析した. 循環系パラメータは、制御が安定して継続している間は異常を認めなかった. 血液生化学データやホルモン値は、末期に呼吸不全が発生するまでは特別な異常を認めなかった. 剖検時の所見では、肺や腎臓の梗塞、動脈管の再開通および肝臓の病変が認められた. 死因は、広範囲の肺梗塞に、突然の動脈管の再開通による肺動脈圧の上昇が加わり発生した呼吸不全によると考えられた. 1/R制御では、右心房圧の上昇を抑えることができたために腹水の量が低滅し、自然心臓に匹敵する制御性の良さにより全身状態が向上したが、完全人工心臓で長期生存を得るためには、血液ポンプの抗血栓性の向上が重要である.
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榊原 直樹, 竹村 博文, 安田 保, 川筋 道雄, 渡辺 洋宇
1995 年24 巻3 号 p.
870-873
発行日: 1995/06/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
慢性電気刺激した広背筋をリニアー型として利用した人工心臓駆動において、広背筋の初期牽引力を小さく収縮長を長くとるlow power/high stroke方式(LP方式)骨格筋アクチュエーターの有用性を検討した。成犬5頭の広背筋を約8.8週間にわたり慢性電気刺激を行い耐疲労性を獲得したのち、模擬循環回路内に組み込まれた人工心臓を2種類のLP方式(LP5、LP10)とhigh power/low stroke方式(HP方式)を用いて後負荷30、100mmHgで駆動した。後負荷30mmHgにおける出力はLP5が0.25mW/g、LP10が0.27mW/g、HPが0.24mW/g、100mmHgにおける出力はLP5が0.81mW/g、LP10が0.92mW/g、HPが0.76mW/gであった。犬心臓の出力は左室330mW、右室60mWであったことからLP10は左室の50%、右室の82%であった。LP10はHPに比べて有意に高い出力を発生し、LP方式の有用性が証明された。
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戸田 宏一, 中谷 武嗣, 妙中 義之, 巽 英介, 増澤 徹, 馬場 雄造, 脇坂 佳成, 江屋 一洋, 冨永 求, 高野 久輝
1995 年24 巻3 号 p.
874-877
発行日: 1995/06/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
1985年以来Cardiomyoplastyの臨床応用は400例を越えるに至ったが、未だ一般的な治療法とみなされるには多くの問題が残されている。我々は発生仕事量が少ない事が最も問題であると考え、これを改善するトレーニング方法の開発のため、兎骨格筋ポンプ(SMV)モデルを作製した。in situにて2Hzで連続的に10週間電気トレーニングを施行した兎の左広背筋をトレーニング(+)側、右広背筋をトレーニング(-)側とし、これを用いてSMVを作製し模擬回路にて基礎特性を検討した。後負荷80mmHgでの最大拍出仕事量は6.28×10
-2Jで正常兎左心の67%、後負荷30mmHgでの最大拍出仕事量は4.77×10
-2Jで右心の184%に相当した。耐疲労性試験ではトレーニング(+)側でのみ4分以上の駆動が可能であり、1時間後において兎右心の66%に相当する1.4×10
-2Wの仕事率が維持された。今回の結果より電気的トレーニングのみ施行したvascular delayの無い兎SMVモデルの力学的特性及び耐疲労性が示された。
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―open proximal anastomosis法の利点と課題―
安達 秀雄, 村田 聖一郎, 水原 章浩, 山口 敦司, 紙尾 均, 川人 宏次, 井野 隆史
1995 年24 巻3 号 p.
878-881
発行日: 1995/06/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
下行大動脈置換手術の補助手段として、左心バイパス法を7例に、抗血栓性回路を用いた部分体外循環法を6例に、低体温循環停止によるopen proximal anastomosis法を7例に臨床応用したので、それらの成績と特徴を比較検討した。左心バイパス法の1例と部分体外循環法の2例を病的大動脈の遮断および吻合操作のトラブルによる塞栓症や解離の発生により失った。Open proximal anastomosisでは視野が良好で確実な吻合が実施できたが、心筋肥厚の著名な1例をLOSで失った。本法では脳および心筋の保護についてさらに検討を要すると考えられた。Open proximal anastomosisは、遠位弓部とその近傍に遮断鉗子を使用することで塞栓症の発生や大動脈壁を損傷する危険がある例、および大動脈解離例にはよい適応と考えられる。これら以外には加温と酸素化が可能な抗血栓性部分体外循環を補助手段として使用する方針である。
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国吉 幸男, 古謝 景春, 赤崎 満, 宮城 和史, 下地 光好, 久高 学, 草場 昭, 島袋 正勝, 神里 隆
1995 年24 巻3 号 p.
882-885
発行日: 1995/06/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
大腿動脈―大腿静脈(以下F-F)バイパスのみによる開心術手術症例26例に検討を加えた。年齢は平均55.8歳(14~83歳)、男女比は13/13であった。術式別に4群に大別した。I群(n=5);再手術症例。II群(n=17);上行弓部大動脈瘤症例。III群(n=3);収縮性心膜炎症例。IV群(n=1);冠動静脈瘻破裂症例。26例中7例が緊急手術症例であった。脱血用long cannulaは大腿静脈より右心房内まで、また送血は大腿動脈から行った。いずれの群とも適正潅流量が確保でき、体重最大83kgまで対応可能であった。I群では癒着剥離を最小限にとどめることが出来、II群症例中6例の破裂症例では、F-Fバイパス下に胸骨縦切開も含めて安全な手術操作が可能であった。III群の収縮性心膜炎症例では常温心拍動体外循環下に、心臓全周に渡って心膜切除が可能であった。IV群の冠動静脈瘻破裂症例ではF-Fバイパスにより安全に手術が施行できた。手術死亡はII群の3例で他はいずれも軽快退院した。
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―人工心肺中のサイトカイン、血小板, 好中球渚性の変動について―
山口 敦司, 井野 隆史, 安達 英雄, 水原 章浩, 村田 聖一郎, 紙尾 均, 百瀬 直樹
1995 年24 巻3 号 p.
886-889
発行日: 1995/06/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
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人工心肺全回路にヘパリン化抗血栓性材料を用いた際のサイトカイン及び血小板、好中球活性の変動について検討した。
〈方法〉C群;コントロール(n-14), HC群;ヘパリン化抗血栓性材料使用(n-14)の2群に分け、HC群では、人工肺、貯血槽、血液フィルター、回路チューブに抗血栓性を付加した。
〈結果〉好中球エラスターゼは、人工心肺終了後10分にて有意に上昇し、C群とHC群との間で有意差が認められた。血小板第4因子、IL-6はC群で有意に上昇したが、HC群では有意差がなかった。β-TG, IL-8は両群で上昇傾向を認めたが有意差は無かった。
〈結論〉人工心肺使用時にはサイトカイン及び血小板、好中球活性の充進が認められたが、ヘパリン化抗血栓性材料はこれらの一部を抑制し生体適合性に優れていることが示唆された。
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木山 宏, 田辺 貞雄, 大島 永久, 佐野 英基, 村井 則之, 片山 康, 入江 嘉仁, 中原 秀樹, 今関 隆雄, 山田 崇之, 向山 ...
1995 年24 巻3 号 p.
890-894
発行日: 1995/06/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
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抗リン脂質抗体(APA)陽性患者は血栓症発症の頻度が高く, 最近APAに関連した血栓症の報告も多い。また体外循環中の凝固線溶系の亢進は既に報告されている。今回開心術を施行したAPA陽性患者の出血量, 血小板, 凝固線溶系を陰性患者と比較検討した。待期的開心術17例を抗体陽性群(APA群)の9例と陰性群(N群)の8例に分類した。APA群は弁膜疾患が多く, N群は虚血性心疾患が多かった。疾患に偏りがあったが, APA群はN群と比較すると術前より血小板数が少なく, 術後3時間と6時間の出血量が有意に多かった。凝固線溶系の指標は両群間に有意差は認められなかった。しかし血栓傾向が強いAPA陽性患者では凝固線溶系へ悪影響を与える可能性は完全に否定できず今後の検討力泌要である。
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永沼 滋, 仁田 新一, 山家 智之, 秋保 洋, 柿沼 義人, 井筒 憲司, 小林 信一, 田中 元直, 橋本 弘之, 三浦 誠, 田林 ...
1995 年24 巻3 号 p.
895-900
発行日: 1995/06/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
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われわれは電磁駆動式振動流ポンプ(VFP)を開発し、このポンプが形成する振動流が外部灌流型膜型人工肺の酸素加能を向上させることをこれまで報告し、このポンプをextra-corporeal membrane oxygenation (ECHO)に用い、前回の本学会ではその適応の可能性を示唆した。今回はシステムおよび手技をより簡便なものとなるように、麻酔下山羊の一側頚静脈より2本のカニューレを上大静脈まで挿入し、一方を脱血他方を送血として用いた。人工呼吸器を停止させ呼吸不全状態とした山羊に、流量10、20ml/min/KgでECMOを行なった。その結果、10ml/min/Kgの低流量では十分な動脈血酸素分圧を得られなかったが、20ml/min/KgではPaO
2:100mHg程度で健常時の酸素分圧を維持できた。VFPを用いて1か所の静脈から脱血と送血を行なうECMOは可能であると考えられた。
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