日本食品微生物学会雑誌
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34 巻, 3 号
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総説
原著
  • 加藤 莉子, 王 迪, 山木 将悟, 川合 祐史, 山﨑 浩司
    2017 年 34 巻 3 号 p. 158-165
    発行日: 2017/09/30
    公開日: 2017/10/20
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    低温性ヒスタミン生成菌M. psychrotoleransはヒスタミン食中毒の原因菌となりうるものの,食品の汚染状況といったリスク評価に必要な調査がほとんど行われていない.そこで,函館,札幌地域で購入した食品および函館近郊で採取した海水,河川水を検体とし,従来法に比べより感度の高い検出が可能なMPN-PCR法を用いたM. psychrotoleransの汚染度調査を行った.その結果,192検体中85検体でMPN-PCR陽性となり,購入地域,産地,魚種によらず,広範囲にわたる汚染が生じていることが示唆された.汚染検体から37株のM. psychrotoleransを分離し,ヒスタミン生成量を調べたところ,25℃で48時間後にはいずれの株も4,000 mg/L以上の高濃度のヒスタミンを生成した.さらに,M. psychrotolerans JCM 16473Tおよび分離株Mps. 3について,P. phosphoreumを比較対象として異なる塩分濃度(0.1および2.0%NaCl)の培地での増殖挙動とヒスタミン生成量を調べたところ,低温(4℃)における0.1%NaClではP. phosphoreumよりもM. psychrotoleransの増殖能は高く,またヒスタミン生成能も高いことが判明した.さらに,2%NaCl条件でもM. psychrotoleransは高濃度のヒスタミンを生成した.以上の結果から,生鮮魚介類においてM. psychrotoleransはヒスタミン食中毒のリスク要因となる可能性のあることが明らかとなった.

事例
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