1999~2004年の6年間に東京湾の6地点 (金沢八景, 羽田, 三枚洲, 船橋, 木更津, 富津) で採取した海水, 海泥, 貝 (アサリ) 合計149検体を供試し, 腸炎ビブリオおよび病原ビブリオ汚染実態調査を行った.その結果, 以下の点が明らかになった.
1. 腸炎ビブリオはすべての検体から検出された.腸炎ビブリオ菌数は, 海泥, 貝, 海水の順に多く, 海泥は海水の10~100倍であった.
2. その他の病原ビブリオでは, NAGビブリオが51検体 (34.2%),
V. fluvialisが21検体 (14.1%),
V. mimicusが13検体 (8.7%),
V. fuinissiiが8検体 (5.4%),
V.choleraeが2検体 (1.3%) から検出された.NAGビブリオは海泥や貝より海水からの検出率が非常に高かった.一方,
V. mimicusや,
V. fluvialisは塩分濃度の低い地域から多く検出された.
3. 腸炎ビブリオ菌数を, 一次増菌培養法で求めた場合と二次増菌培養法で求めた場合を比較すると, 必ずしも二次増菌培養法のほうが高くなるとは限らなかった.
4. 腸炎ビブリオ血清型O3: K6株は16検体から分離されたが, TDH産生菌は1株のみで, 溶血毒非産生の血清型O3: K6株が自然界に多く存在することが明らかとなった.
5. TDH産生菌は7株, TRH産生菌は6株, 両遺伝子保有株は5株検出された.しかし, PCR法により増菌培養液で
tdhまたは
trh遺伝子が検出されても, TDHあるいはTRH産生菌を分離することは非常に困難であった.
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