サトイモの灌漑効果を調べるため,三重県津市の黒ボク土圃場で試験を実施した.灌漑を実施しない対照区と畝間灌漑区,多孔管灌漑区を設け,収量を比較した.2022年は多雨で対照区と畝間灌漑区で収量に明確な違いは認められなかった.一方,2023年は5年に1度程度の干ばつ年であり,対照区に比べて灌漑を実施した試験区の収量が高かった.この年の畝中央部の土壌水分量は,多孔管灌漑区の方が畝間灌漑区よりも高かったが,収量に明確な差は認められなかった.収穫直前に畝内の根の分布を調べたところ,対照区は全体的に根が少なく,多孔管灌漑区は畝中央部に根が密集し,畝間灌漑区は多量の根が周辺部にも分布していた.このことから,畝間灌漑ではサトイモが周辺部分にも根を伸ばすことで畝の広い範囲から水を吸収したため,多孔管灌漑と同程度の収量が確保できたと考えられた.