農業農村工学会論文集
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84 巻, 1 号
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研究論文
  • 井谷 昌功, 藤田 信夫, 有吉 充, 毛利 栄征, 河端 俊典
    2016 年 84 巻 1 号 p. I_1-I_8
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/01/12
    ジャーナル フリー
    圧力管路の曲管部には, その屈曲角度と内圧の大きさに応じたスラスト力が作用する.そのため, 曲管の安定性を確保するためにその背面の受働土圧などを抵抗力として構造設計するが, 基礎材が液状化し, その抵抗力が減少することまでは想定しておらず, 地震時に曲管部の継手離脱などが発生している.パイプラインの地震時の安全性を定量的に評価するためには, 地盤の液状化の影響を考慮した挙動解明が重要である.そこで, 本研究では液状化地盤中でスラスト力を受ける曲管部を含む継手構造管路を対象とした振動実験を実施し, 曲管部周辺の管路挙動を検証した.その結果, 周辺地盤全体が液状化するような条件では, 管の基礎を砕石とするだけでは継手離脱が発生し, 対策として不十分であることが明らかとなった.また, 曲管変位に追従するための対策として鎖構造管路の有効性が確認できた.
  • 永井 明博, 近森 秀高
    2016 年 84 巻 1 号 p. I_9-I_14
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/02/20
    ジャーナル フリー
    有効降雨の推定など表面流モデルの適用上の難点を克服する目的で, 斜面流, 河道流を扱う表面流モデルに, 浸入, くぼ地貯留, 地下水流出を組み込んだモデルを提示した.浸入強度は斜面水深に比例すると仮定し, 地下水流出は線形貯水池で定式化した.このモデルを面積が10m2~1,717km2の6流域における34洪水(ピーク比流量:0.6~18m3s-1km-2)に適用して, その再現性が良好であったことを実証した.また各流域のモデル定数の一覧も示した.このモデルでは斜面流, 河道流ともkinematic waveとしているが, 河道流をdiffusion waveとした扱いも検討し, 大流域においてもkinematic waveで近似しても良好な結果が得られることを示した.なお計算にはMacCormack差分スキームを用いた.
  • 石井 将幸, 野中 資博, 坂村 博, 秋元 昌哲, 井川 秀樹
    2016 年 84 巻 1 号 p. I_15-I_21
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/02/20
    ジャーナル フリー
    伸縮能力と離脱防止抵抗力の両方を備えた離脱防止継手は, 地震時に隣接する管を次々に引き出し, 複数の継手の伸縮能力を足し合わせることによって, 地盤ひずみの集中に対応することができる.この種類の継手はパイプラインの耐震性を向上させる手段として期待されているが, その具体的な設計手法は確立されていない.合成鋼管を対象とし, カラーと止めネジの接触で抵抗力を生じさせる継手を試作して試験を行ったところ, 直線施工と曲げ施工の両方において, 想定したとおりのメカニズムで離脱防止機能を発揮できることを確認できた.次に, この継手が備える伸縮性能と離脱防止抵抗力の両方を評価し, 離脱防止継手の性能を照査する指標として, 離脱防止抵抗力によって伸ばされる継手の伸び量の合計である, 合計伸び能力を用いることを提案した.
  • 瑞慶村 知佳, 原口 暢朗, 宮本 輝仁, 中矢 哲郎
    2016 年 84 巻 1 号 p. I_23-I_30
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/02/20
    ジャーナル フリー
    津波被災農地で除塩作業後に安心して営農を再開するためには, 事前に表層から下層までの塩分状況を把握することが重要である.本論文では, 電磁誘導探査機器の一つであるEM38-MK2を用いて, 塩分濃度の高い土層の深さを判定する新たな方法を提案することを目的とした.そのため, 野外に人工的に作製した高塩分区画で(i)これまで知見の少なかったEM38-MK2の水平方向の測定影響範囲を特定する圃場試験, (ii)EM38-MK2とtime domain reflectometry(TDR)を用いた測定比較によりEM38-MK2の4つの測定モードについて応答曲線の有効性を評価する圃場試験を行った.これらの結果から, 応答曲線がEM38-MK2の4つの測定モードに適用可能であることを確認し, EM38-MK2の4つの測定モードで得られた測定値を組み合わせることで, 深さ0~20 cm, 20~50 cm, 50~75 cm, 75~150 cm, 150 cm~の5層の中で塩分が多く含まれている土層の深さを判定する方法を提案した.本論文で提案した方法は津波被災農地の土層内の塩分状況を把握するための有用な技術となると考えられる.
  • Takayuki SHUKU, Kazunori FUJISAWA, Shin-ichi NISHIMURA, Toshifumi SHIB ...
    2016 年 84 巻 1 号 p. I_31-I_38
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/02/20
    ジャーナル フリー
    Recently, the evaluation of the failure potential of earth-filled dams has become important because of the increasing occurrence of storm rainfall. Although most instances of earth-filled dam failure are caused by overflow, in-depth knowledge of the mechanism of the erosion and failure process of embankments due to overflow is still lacking. This paper presents a numerical method for simulating an embankment erosion and failure process by the moving particle semi-implicit (MPS) method. To reasonably simulate the erosion and failure process of an embankment due to overflow, a simple erosion model whose parameters can be determined through erosion tests on embankment materials was newly incorporated into the original MPS method. An embankment erosion and failure process observed in a model test was simulated by the proposed MPS method to confirm its practicability. Although the simulation accuracy for the erosion rate is slightly low at the beginning of the erosion, the average simulated values of the erosion rate are almost the same as the experimental values. The proposed MPS method can be a useful tool in embankment design practices to simulate embankment erosion due to overflow and to discuss remedial measures against overflow.
  • ― 青森県上北地域の黒ボク土畑圃場を事例として ―
    遠藤 明, 今川 貢, 大和山 真一, 上平 章弘, 杉山 憲雄
    2016 年 84 巻 1 号 p. I_39-I_46
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/02/20
    ジャーナル フリー
    本研究は平成26年の青森県上北地域のナガイモ作付圃場における土壌水分移動の様態を数値計算により明らかにし, ナガイモの根部障害発生との関連を明らかにすることを目標にしている.今回, ナガイモ栽培時において, チェーン式およびホイール式トレンチャーがトレンチャー溝を形成することによって, 植溝の土壌理化学性(土性, 乾燥密度, 土壌硬度等)と水分移動特性(透水性や保水性)に対してどのような影響を与えるのかについて調査した.その結果, ホイール式トレンチャー区の70cm以深では低透水性であることが判明し, トレンチャー溝の形成方式の相違が当該深度の水分移動特性に大きな影響を与えることが明らかになった.このことを受け, 平成26年8月豪雨生起時期のホイール式トレンチャー区において, ナガイモ塊茎が存在する付近の土壌が水分飽和することがわかった.また, この状態が長期間継続することが数値計算結果により明らかになり, ホイール式トレンチャー区ではナガイモの湿害を引き起こすリスクが高くなることが示された.以上のことから, 当該時期にナガイモの腐敗や奇形が発生する可能性が高いことが示唆された.
  • 水間 啓慈, 西村 伸一, 柴田 俊文, 珠玖 隆行
    2016 年 84 巻 1 号 p. I_47-I_55
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/02/20
    ジャーナル フリー
    ため池の破堤は下流域に大きな洪水を発生させ, 農業水利施設の中で最も甚大な被害を生じさせる事象の一つである.したがって, ため池破堤時の被害額を適切に推定することは, 土地改良事業のリスク評価やリスク管理に取り組む上で非常に重要な課題となっている.ため池破堤リスクの評価には, 氾濫解析を行った上で氾濫域の資産データを収集整理し被害額を推定する手法が一般的に用いられている.しかしながら, この手法は複雑であり, 作業に多くの時間や労力が必要となるため, 計画段階で実施する概略検討に適用することは困難である.このような背景から筆者らは, 複雑な解析を簡易な代替モデルで置き換える応答曲面法に着目し, ため池破堤による被害額を算定する応答曲面(Response Surface)を先に提案した.本研究では, 筆者らが提案した応答曲面を集中豪雨時におけるため池破堤のリスク評価に適用し, その実用性について検証することを目的とする.実在する4つのため池地区の応答曲面による被害額と既定の手法による被害額との差の値は, 応答曲面を作成した21ケースの不偏分散よりも小さい結果となり, 提案した手法は集中豪雨によるため池破堤リスクの簡易評価への活用が期待される結果が得られた.
  • 武田 育郎, 高田 竜之介, 宗村 広昭, 佐藤 裕和
    2016 年 84 巻 1 号 p. I_57-I_63
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/02/20
    ジャーナル フリー
    鉄は流域からのリンの排出に深く関与するにもかかわらず, 負荷量の観点からの知見が不足している.本研究では, 酸化鉄を含む底質の堆積の見られる水田群において, 鉄とリンの年間の物質収支を17ヶ月間調査した.その結果, 溶存態の鉄とリンの濃度は低く, 鉄とリンの多くは懸濁態の成分として流出していた.年間の正味の排出負荷量は, T-Feでは108.6kg/ha(灌漑期37.3kg/ha, 非灌漑期71.3kg/ha), T-Pでは3.40kg/ha(灌漑期1.49kg/ha, 非灌漑期1.91kg/ha)であった.水田群ではリンを吸着する鉄が多く存在していたにもかかわらず, リンの水質浄化機能が見られなかった理由として, 排水路における底質の水流による剥離・流出が考えられた.したがって, リンの負荷排出の抑制には, リンを多く含む底質の管理が重要であると考えられた.
  • 亀山 幸司, 岩田 幸良, 佐々木 康一, 成岡 道男, 宮本 輝仁
    2016 年 84 巻 1 号 p. I_65-I_74
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/02/20
    ジャーナル フリー
    樹皮由来バイオ炭(バーク炭)の施用による保水性・保肥性改善効果を明らかにするため, 福井県三里浜地域の砂丘地圃場において, 対照区, 炭少量区(20 t(乾物)ha-1施用区), 炭多量区(40t(乾物)ha-1施用区)を設定し, バーク炭施用前後の土壌理化学性および作物栽培条件下での土壌水分の変動を測定した.その結果, バーク炭の施用により, 有効水分量が有意に増加し(対照区と比較して, 炭少量区で20~30%, 炭多量区で50~60%増加), 陽イオン交換容量も有意に増加した(対照区と比較して, 炭少量区で2~4%, 炭多量区で8~9%増加).また, 炭多量区では, 作物栽培条件下での土壌水分ポテンシャルの低下が抑制されることが確認された.以上の結果から, バーク炭の砂丘地圃場への施用は, 土壌の保水性・保肥性を増加させ, 作物の水利用効率を向上させるための有効な方策になり得ることが示唆された.
研究報文
  • 島 武男, 小川 茂男, 久保田 富次郎, 吉永 育生
    2016 年 84 巻 1 号 p. II_1-II_9
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/02/20
    ジャーナル フリー
    筑後川およびその関連流域においては代かき期時の水利用調整が検討されており, その際, 現在の水利用実態を把握することが必要となる.本研究では, 人工衛星データ(RADARSAT)と水利システムの圃場区画, 水路網, 受益区域等の既存のGISデータから代かき水田の拡大傾向と水利システムの取水量の両者を検討し, 代かき時期の水利用状況を明らかにすることを目的とした.その結果, RADARSATデータを用いた代かき水田分布図から, 6月上旬より下流側から代かき水田が広がり, 1週間程度遅れて中流域へ代かき水田が拡大することが分かった.また, 水利システムの取水量の増加時期も1週間程度, 下流域の水利システムが中流域より先行していた.代かき水田の拡大傾向と取水量の増加傾向とは一致しており, 下流域が先行した代かき時期の水利用実態が明らかになった.
研究ノート
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