農業農村工学会論文集
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80 巻 , 6 号
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研究論文
  • 伊藤 健吾, 鳥居 充裕, 千家 正照
    2012 年 80 巻 6 号 p. 465-470
    発行日: 2012/12/25
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    カエル類の生息に望ましい水田畦畔の管理手法について検討するため,草刈り機を用いた畦畔管理によるヌマガエルの食性への影響評価を目的とした.コドラート調査による餌動物の生息状況および嘔吐法によるヌマガエルの胃内容物を草刈区と伸長区で比較した.餌動物の構成は2区間で異なったが,その総個体数は変わらなかった.ヌマガエル胃内容物の総個体数および湿重量は草刈区の方が大きく,また動物群の構成が異なった.この理由は,ヌマガエルは地表付近で採餌するため,草刈り時に倒伏した植物体の上部や折り重なった茎や葉の隙間もヌマガエルが利用できるようになり,いくつかの動物群の捕食機会が増加したためであると考えられる.本調査地区のように刈った草を放置している畦畔では,草刈り機での畦畔管理によってヌマガエルの餌資源は減少しないと考えられた.
  • Tomoki IZUMI, Masayuki FUJIHARA, Junichiro TAKEUCHI, Toshihiko KAWACHI
    2012 年 80 巻 6 号 p. 471-478
    発行日: 2012/12/25
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    An inverse modeling to reproduce a variably saturated water flow in non-isothermal soil based on field observation is proposed. Since the water movement in the surface soil is significantly affected by the soil temperature, the governing equations system is composed of the mixed form Richards equation for the water movement and heat conduction equation for the thermal transport. To complete the water flow model of interest, unknown model parameters are determined with inverse technique. The major unknown parameter is the relative hydraulic conductivity (RHC) described as a free-form parameterized function which is a sequential piecewise cubic spline function and therefore can express the flexible functional form of the parameter. The inverse problem is defined as the minimization of errors between the observed and computed pressure heads to determine the coefficient values of the free-form function, and solved through a simulation-optimization method. To validate the water flow model developed, its practical application to in-situ soil is implemented. The results show that the functional form of RHC is successfully identified, and that both water movement and thermal transport models can produce the forward solutions which are good agreement with observed data for desorption period.
  • 宮津 進, 吉川 夏樹, 阿部 聡, 三沢 眞一, 安田 浩保
    2012 年 80 巻 6 号 p. 479-488
    発行日: 2012/12/25
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    本研究では,田んぼダムの効果算定を目的に,農業主体の低平地における内水氾濫現象を適切に評価する新たなモデルを構築した.本モデルは,1)各土地利用からの流出量を計算する地目別流出モデル,2)排水路網の流れを計算する河川・排水路網モデル,3)氾濫水の伝播を計算する氾濫流モデルの3サブモデルで構成される.これらは相互に連動しており,それぞれのサブモデルの計算結果である水位が,互いの境界条件もしくは計算条件となる.本モデルは,浸水規模および浸水継続時間が計算できるうえ,「地形適合セル」の導入によって,低平地の地形的特徴を効果的かつ効率的に表現できる点に基本的特徴がある.構築したモデルを異なる地形的特徴をもつ田んぼダム取組実施2流域に適用し,モデルの妥当性を検証するとともに,田んぼダムの効果を検証した.
  • 黄 琬惠, 橋本 禅, 星野 敏, 九鬼 康彰
    2012 年 80 巻 6 号 p. 489-498
    発行日: 2012/12/25
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    本研究では,台湾における農用地土壌汚染の社会的背景と,汚染及び汚染拡大の分布特性を明らかにすると共に,汚染対策の課題を日本の農用地土壌汚染対策の取組との対比により明らかにした.台湾の農用地土壌汚染は都市計画農業区やその周辺地域に多く,農村地域にある違法操業を含む工場排水の農業用排水路への放流が主因である.台湾の農用地土壌汚染対策による汚染の除去は対症療法的であり,工場排水への対策や未処理の底質による汚染の拡散や蓄積の防止を考慮した対策は取られない.本稿では,このような事態への対応方策として,①現在の点的な対症療法的対策から日本の農用地土壌汚染対策のような面的かつ抜本的な対策への改善,②工場の立地規制や排水基準の見直し,違法操業の取り締まり,③都市計画区域外の農業区については圃場整備事業等を契機とした土地利用の整序,を提案した.
  • 吉田 匡, 丸山 利輔, 能登 史和, 高瀬 恵次, 瀧本 裕士
    2012 年 80 巻 6 号 p. 499-506
    発行日: 2012/12/25
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    本研究は,急勾配・砂礫質の手取川扇状地における水田灌漑用水起源の地区内還元水について研究したものである.得られた結果は次のとおりである.(1)複雑な用排水系統を持つ水田地域に対して,灌漑用水からの還元水の分析方法を提案し,その妥当性・有効性を実測資料により検証した.(2)水源整備・圃場整備の歴史的経過を整理し,それ以前の水利用状況を想定して,具体的に当時の用水の過不足状況を分析した.(3)比較的潤沢な用水量を確保している本地域において,用水の反復利用を図っている理由は,水源整備・圃場整備以前の慣習を継承しているためと推定された.(4)現在でも集落営農等による集団転作の導入により,水利用の形態が大きく変わり,場所的・時間的に水利用が集中するため,多くの取水地点の存在や反復利用システムが有効に機能し,新たな視点から反復利用の有効性が推定できた.
  • 工藤 祐亮, 登尾 浩助, 加藤 孝, 下大園 直人
    2012 年 80 巻 6 号 p. 507-514
    発行日: 2012/12/25
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    水田での間断灌漑における間断日数の違いが温室効果ガス放出量と水稲収量に及ぼす影響を調査した.水管理は中干し期間を除いて常時湛水(湛水区),落水日数を2日とした間断灌漑(2日落水区),落水日数を4日とした間断灌漑(4日落水区)の3条件とした.調査の結果,間断灌漑における落水日数の延長がCH4放出量の削減に対して効果的である一方,N2Oの放出に対しては促進効果があることを明らかにした.また,地球温暖化係数(GWP)を用いたCO2換算量では,CH4とN2Oの積算フラックスの総和は2日落水区が最も小さく,間断サイクルの短縮が温室効果ガス放出量の削減に対して有効であることが示された.玄米収量は湛水区が最も高く,湛水区に対する2日落水区と4日落水区の減収量率は,それぞれ13%と18%であった.2日落水区は,単位玄米収量当たりの温室効果ガス放出量(CO2換算)が最小となり,大幅な収量低下をもたらさずにCH4とN2Oの放出を抑制することが可能な水管理であった.
  • 近藤 美麻, 伊藤 健吾, 千家 正照
    2012 年 80 巻 6 号 p. 515-521
    発行日: 2012/12/25
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    イシガイ科二枚貝の移動能力は極めて低い.そのため,イシガイ科二枚貝の長期的な個体群維持に重要であると考えられる生息域の拡大や生息地間の再生産交流には,幼生期の宿主である魚類の移動が大きく貢献する.そこで本研究では,水田地帯の河川および排水路において,イシガイ科二枚貝幼生の宿主であるヌマムツを対象として移動距離を調査した.その結果,日数を説明変数とした移動距離の推定式y=exp(6.50+0.06x)を得た.また,本式より幼生の寄生期間を7日間とした場合のヌマムツの移動距離を推定した結果1,040mとなった.これより,新たにイシガイ類の保全地を整備する場合,既存の生息地から1,000m程度離れた場所に設置すれば,ヌマムツがその間を移動することが可能となり,イシガイ類の長期的な個体群維持に有効であると考えた.
  • 吉田 修一郎, 木坂 康隆, 西田 和弘, 塩澤 昌
    2012 年 80 巻 6 号 p. 523-532
    発行日: 2012/12/25
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    営農用機械を用いた小規模な破砕転圧処理による火山灰土水田の浸透抑制効果をほ場実験により検証した.試験水田の作土を剥ぎ取った後,破砕深度3水準(0,10,20cm),転圧強度3水準(L,M,H)を組み合わせた試験区を土層の差異を考慮して分割区法により3ブロック,計27区設定し,施工方法が浸透能に及ぼす効果を比較した.密閉型の浸潤速度測定装置を製作して施工直後および施工3ヶ月後に浸透速度を測定し,浸潤前線が地表から10cmに及んだときの全層平均の透水係数を算定して浸透抑制効果の比較を行った.10~20cmを破砕した後,転圧を行うことにより,施工後の期間によらず明瞭な浸透抑制効果が得られた.また乾燥などに対して安定した浸透抑制層を造成するためには,20cm程度の耕起深を確保した上で,転圧を行う必要があることが確認された.
研究報文
  • 冠 秀昭, 大谷 隆二, 千葉 克己
    2012 年 80 巻 6 号 p. 533-541
    発行日: 2012/12/25
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    プラウ耕鎮圧体系による乾田直播圃場において,日減水深を抑制するための圃場鎮圧手法を検討した.様々な条件で鎮圧された圃場,および現地での播種床造成作業を考慮し段階的に鎮圧された圃場において,一筆減水深,浸潤量,土壌含水比,土壌硬度について調査した.圃場の畦畔際や圃場四隅からの漏水が,乾田直播圃場の一筆減水深を増大させる要因であった.3段階の鎮圧により,減水深を約100mm/dから約20mm/dと徐々に低下させることができ,播種作業のための排水機能,出芽までの水分保持と排水機能,出芽後の湛水機能といった,乾田直播に必要な圃場機能を備えることができる.減水深を20mm/d程度とするには,作業が可能な限り高い水分条件で鎮圧することが適切であり,地表下5cmの土壌硬度が土壌硬度計で20mm程度になるまで鎮圧する必要がある.
  • 亀山 幸司, 谷 茂, 塩野 隆弘, 宮本 輝仁
    2012 年 80 巻 6 号 p. 543-548
    発行日: 2012/12/25
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    植物を用いた土壌浄化(ファイトリメディエーション)の適用にあたっては,対象圃場において浄化期間がどのくらいに及ぶかを把握することが非常に重要である.また,浄化期間を推定する際には,栽培回数による土壌カドミウム含有量変化の推定と土壌カドミウム含有量の修復目標値の設定が必要である.本報告では,ポット試験と1作の圃場試験の測定結果からハクサンハタザオを用いた黒ボク土畑の浄化による土壌カドミウム含有量の変化を推定する計算手法の構築を行った.そして,推定結果と3作の圃場試験の測定結果の比較により,計算手法の妥当性について検討を行った.その結果,ポット試験と1作の圃場試験から求められた植物体カドミウム濃度予測式を用いた場合,ハクサンハタザオを用いた黒ボク土畑の浄化による土壌カドミウム含有量の変化が比較的良好に推定可能であった.このため,今後,土壌カドミウム含有量の修復目標値を設定することにより,算定結果から浄化期間の推定が可能となると考えられる.
  • 森 洋
    2012 年 80 巻 6 号 p. 549-554
    発行日: 2012/12/25
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    2001年に東京都港湾局より出されたごみ埋立地盤の安定化指標の基準値を,最近10年の新たな観測データ(ガス発生量や地盤沈下,地中内温度等)を追加して整理するとともに,廃棄物学会(現:廃棄物資源循環学会)等から出された最新の調査評価手引き等を考慮して再検討した.地中内温度の評価方法を修正した新たな安定化指標の基準値案を用いた場合,埋立終了後,25年程経過すれば,各観測値は,ほぼ全ての修正した安定化指標の基準値案内に収まり,自然地盤に近い地盤状況に移行していくことが確認された.
  • 有田 博之, 橋本 禅, 吉川 夏樹, 原田 直樹, 保高 徹生, 野中 昌法, 岩崎 有美, 宮津 進
    2012 年 80 巻 6 号 p. 555-561
    発行日: 2012/12/25
    公開日: 2013/12/25
    ジャーナル フリー
    東日本大震災後の放射性物質による被害の復旧対策の一つとして放射性セシウム(Cs)の除染が求められおり,農林水産省は農地への対策を実施しようとしている.しかし,効果的な復旧につなげるには,除染だけではなく,区画整理を初めとする対策の戦略的・総合的な実施が求められる.本論ではCsによる負荷の特徴を空間的広がり,土地利用,土地改良,労働環境の側面から検討し,以下の観点から提案を行った.①除染対策の実施においてはCsの封じ込め,拡散防止,長期の安全確保を原則とし,農地を生産環境・労働環境の両側面から改善する.②除染の効果的実施のための戦略的取り組みを総合的・一体的に行うとともに,除染をこれらとの関係の中に位置づける.
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