農業農村工学会論文集
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78 巻 , 2 号
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研究論文
  • 齋藤 未歩, 後藤 章, 水谷 正一, Khem Sothea
    2010 年 78 巻 2 号 p. 65-73
    発行日: 2010/04/25
    公開日: 2011/04/25
    ジャーナル フリー
    本研究ではカンボジアメコンデルタを対象にタムノップ(Tum Nub)と呼ばれる土堤の活用による米二期作地拡大の可能性について検討を行った.洪水氾濫原の二期作においては,非冠水期間内の作期の確保と灌漑水源の確保がポイントとなり,この両面でタムノップの活用が有効であると考えられる。現地調査の結果,少数ではあるが早期雨季稲作を導入することで二期作を実現している農村があることがわかった.聞き取り調査を実施した農村から対象地区を選定し,早期雨季稲作を実現するためのタムノップの効果を推定した結果,洪水をせき止めて貯水池を創出し,貯水した水を消費したあとに貯水池内部での一作を可能とするタムノップと洪水氾濫の開始を遅延する機能を持つタムノップを組み合わせることで,対象地区では現状より24~30%の米の増産が見込めることがわかった.
  • Akira KOBAYASHI, Takuma HAYASHI, Kiyohito YAMAMOTO, Shoichi KIYAMA
    2010 年 78 巻 2 号 p. 75-82
    発行日: 2010/04/25
    公開日: 2011/04/25
    ジャーナル フリー
    To investigate the mechanism of seismic damage to irrigation tanks, the irrigation tanks damaged during the Mid Niigata Prefecture earthquake in 2004 were analyzed. The damaged irrigation tanks were classified into damage conditions. It was found that a large embankment located near the seismic center had a high risk for seismic disaster. The circular slice method was applied to damaged and undamaged irrigation tanks. The slide at the upstream slope of the embankment was considered as a possible failure pattern. Sensitivity analyses of the parameters used in the calculation of safety factors were also conducted to examine damage prevention. Since the slope angle was as influential as the internal friction angle, widening of the embankment would be effective for earthquake resistance. The conditional damage probability of a given irrigation tank was calculated using a Monte Carlo simulation, which is useful for risk management.
  • 久米 崇, 梅津 千恵子, K. Palanisami
    2010 年 78 巻 2 号 p. 83-88
    発行日: 2010/04/25
    公開日: 2011/04/25
    ジャーナル フリー
    本研究では2004年12月26日のスマトラ島沖地震によって発生した巨大津波によるインドタミルナドゥ州ナガパティナム地区における塩性化被害の程度とその回復を評価した.特に,農業環境被害の評価をするため土壌,地下水,植生のデータを収集した.分析の結果,土壌の電気伝導度は津波後に急激に上昇し,pHも上昇した.しかし,津波から1年後には津波前の状態に低下していた.地下水も塩性化したが津波から1年後には津波前の状態に回復したと推測された.MODIS EVIの値から植生量は津波直後に減少したが,次年度の同時期には津波前の値に回復したことが明らかになった.これら塩性化被害からの回復には,モンスーンによる降雨と高い土壌の透水性が大きな役割を果たし,津波の1年後には同地区の土壌,地下水,植生からみた農業環境はほぼ津波前の状態に回復していると結論された.
  • 長束 勇, 上野 和広, 渡嘉敷 勝, 石井 将幸
    2010 年 78 巻 2 号 p. 89-95
    発行日: 2010/04/25
    公開日: 2011/04/25
    ジャーナル フリー
    水利コンクリート構造物の劣化現象の一つとして,コンクリート材料のモルタル分が選択的に切削される摩耗がある.このコンクリートの選択的摩耗の進行予測手法や補修材料の流水環境下における耐摩耗性の評価手法の開発を目的として,砂を含む水の噴流によるすり磨きおよび衝撃による摩耗作用を擬似した摩耗試験機を試作した.本試作試験機,これまで多用されているテーバー式摩耗試験機,水流摩耗試験機を用いて,コンクリート,ポリマーセメントモルタル,複数微細ひび割れ型繊維補強セメント複合材料の各試験体についての比較摩耗試験を行った.その結果,試作試験機は比較的短時間で選択的摩耗を再現でき,補修材料の流水環境下における耐摩耗性を評価できることが明らかになった.
  • 辻 盛生, 山田 一裕, 平塚 明, 塚田 浩子
    2010 年 78 巻 2 号 p. 97-104
    発行日: 2010/04/25
    公開日: 2011/04/25
    ジャーナル フリー
    ヤシ繊維を生育基盤とするヤシ法と水耕法を交互に用いた人工湿地を寒冷地の水質浄化施設に設置し,景観形成や管理上有利な形質を持つ在来種カサスゲの浄化能力に及ぼす季節の影響について,凍結期と非凍結期を比較,検証した.その結果,BODやSS,Chl-aの除去率が高く,植物プランクトンを中心とした有機汚濁物質除去に有効であったが,窒素,リンの除去は十分ではなかった.3年間の流入水と処理水について,BODの平均値は26.6mg/Lと12.2mg/L,SSの平均値は27.9mg/Lと7.5mg/Lであった.BOD除去速度の平均値は,非凍結期が2.99g/m2/d,凍結期が1.86 g/m2/dであった.BOD負荷速度の上昇に除去速度は追随し,非凍結期は15 g/m2/d,凍結期は4g/m2/d程度が限界と考えられた.除草,刈取りに要する年間維持管理延べ作業時間は,20時間程度であった.
  • 上野 和広, 長束 勇, 石井 将幸
    2010 年 78 巻 2 号 p. 105-111
    発行日: 2010/04/25
    公開日: 2011/04/25
    ジャーナル フリー
    本研究では,開発した水砂噴流摩耗試験機の促進倍率を明らかにし,ストックマネジメントを実現する上で必要となる摩耗の進行予測を可能にするための検討を行った.実際に供用中のコンクリート製水路から採取した健全部(気中部)および摩耗部(水中部)の供試体を用いて摩耗試験を実施し,供試体を採取した時点までの供用年数と健全部の供試体が摩耗部の供試体と同等の摩耗状況に達するまでの摩耗時間から促進倍率を求めた.その結果,本研究で対象とした各水路に対する促進倍率は,評価量に摩耗深さを用いた場合で1.05~1.72year/h,表面粗さを用いた場合で0.50~8.85year/hとなった.また,算出した促進倍率を用いて摩耗の進行予測を行った結果,摩耗深さが供用年数の経過に伴って増加し続けるのに対し,表面粗さはある程度まで摩耗が進行した後は一定の値に収束することが確認された.
  • 外木場 康将, 岡島 賢治, 飯田 俊彰, 田中 忠次
    2010 年 78 巻 2 号 p. 113-120
    発行日: 2010/04/25
    公開日: 2011/04/25
    ジャーナル フリー
    低土被りで既設線路や道路を供用したまま直下に農業用排水路を構築する方法に非開削先受ルーフ函体築造工がある.しかし本工法適用にあたり,掘削による地盤の変形~崩壊機構が明確になっておらず,具体的な設計手法も確立されていない.そこで本研究では,施工を模擬した地盤崩壊実験と弾塑性有限要素解析を実施し,掘削による地盤の挙動について検討を行った.本解析モデルの特長は,地盤の限界荷重解析に適している4節点アイソパラメトリック平面要素で1点での低減積分を使用し,地盤のひずみ硬化・軟化およびせん断帯の影響の考慮,implicit-explicit混合型の動的緩和法の採用である.実験結果より,掘削面下部から地表面への地盤崩壊モードが確認でき,数値解析は地盤の崩壊過程,地表面沈下傾向に関して実験結果と同様の傾向が確認できた.
研究報文
  • 柚山 義人, 土井 和之, 中村 真人, 清水 夏樹
    2010 年 78 巻 2 号 p. 121-126
    発行日: 2010/04/25
    公開日: 2011/04/25
    ジャーナル フリー
    地域でバイオマスの利活用を推進する計画の妥当性を見極めるため,地域を主として物質循環の観点から診断する農林業物質循環モデルとモデル構築を支えるバイオマス成分,バイオマス変換技術の性能・コスト,資源作物の生産特性の情報からなる「地域バイオマス利活用診断ツール」を開発した.モデルの対象地域は1~10市町村,評価物質及び要素は窒素,リン,カリウム,炭素,生重量である.
    診断ツールを用いると,バイオマス利活用からみた地域の現状把握ができる.また,新たなバイオマス利活用計画案を需要と供給のバランスの確保,環境への影響,持続性などの観点から比較分析ができ,説得力のあるバイオマスタウン構想書の作成に役立つ.
  • 工藤 亮治, 永井 明博, 近森 秀高
    2010 年 78 巻 2 号 p. 127-133
    発行日: 2010/04/25
    公開日: 2011/04/25
    ジャーナル フリー
    雨量観測点のような点的な視点ではなく,地域という面的な視点から降雨の経年変化について検討するため,地域最大雨量という概念を導入し,全国11地域における地域確率雨量の経年変化について検討を行った.地域最大雨量は,気象,水象の類似する地域において,ある地点で発生した年最大雨量はその地域内ではどこにでも起こり得るという考えに基づき,同一地域内の観測点で観測された年最大雨量のうち,最も多い年最大雨量と定義する.その結果,地域別10年確率日雨量は北海道や本州太平洋側などの8地域で,地域別10年確率1時間雨量は3地域,地域別10年確率10分雨量は2地域で増加傾向がみられた.また,Gumbel分布のパラメータの経年変化を調べたところ,地域最大雨量の標準偏差が増加しており,近年で地域最大雨量の年ごとのばらつきが大きくなっていることが示された.
研究展望
  • 柚山 義人, 山岡 賢, 中村 真人, 清水 夏樹
    2010 年 78 巻 2 号 p. 135-140
    発行日: 2010/04/25
    公開日: 2011/04/25
    ジャーナル フリー
    バイオマス利活用システムは,原料バイオマスの生産(発生)・収集・運搬・貯蔵(保管),再生資源であるマテリアルやエネルギーへの変換,再生資源の貯蔵・利用場所への運搬・利用,それぞれの段階での廃棄処分からなる.本報では,新たなバイオマス利活用シナリオを,ライフサイクルでのコスト及び化石エネルギー消費量をどれだけ削減できるかで評価する計算方法の論点整理を行い,方法論を展望した.この評価は,コスト形成やエネルギー消費・生産の構造を明らかにし,バイオマス変換プラント補修のタイミング見極め等により,コスト削減や地球温暖化防止に貢献し,適切なプロジェクトサイクルマネジメントにつなげることに意義がある.持続性を担保して誤りをおかさない判断のために必要な指標である.
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