山形県七五三掛地すべり地において, 地下水の流動状況を把握するため, 六フッ化硫黄(SF
6), フロン類(CFCs), 水素・酸素安定同位体比(δD, δ
18O), 放射性同位体トリチウム, 溶存イオン濃度を測定し, 地下水の年代推定を行った.浅部地下水の年代推定にはSF
6, 深部の古い地下水にはトリチウムが有用であった.年代推定結果と他の水質要素の関係性のうち, 特に(Ca
2++Mg
2+)/HCO
3-比は古い地下水ほど低下する傾向にあり, 年代推定結果の検証に適用可能である.また, 地形・地質情報に加え, 地下水のδ
18O分布は, 多層的な地下水流動機構を確認し, 地すべり地へ異なる涵養域から年代の異なる地下水が流入することを示す上で有効である.本研究で適用した環境トレーサーを組み合わせて用いることで, 地すべり地において対策工からどのような地下水を排除しているか, 滞留時間, 涵養年代による地下水の分類が可能である.
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