広範かつ恒常的に重金属汚染が生じている農地においては, 時間的・コスト的側面から浄化措置を講じることが困難である場合もあり, 土壌改良資材の投与により重金属の可動性を弱め, 作物の重金属吸収を抑制する不動化技術が注目されている.本研究では, 不動化技術における有機性廃棄物の利用可能性に着目し, 銅, カドミウム, 鉛を対象とした土壌バッチ試験から牛ふん堆肥およびメタン発酵消化液の重金属不動化資材としての有用性を検討した.その結果, 牛ふん堆肥で重金属の不動化効果が高く, 特に銅では対照区に対して9割程度の可給性の減少が確認された.しかし, カドミウムは他の重金属と比べて不動化されにくく, さらに他種重金属との共存下では移行性が顕著に増大するなど, 土壌中における不動化挙動は重金属種によって異なることも示された.また, メタン発酵消化液の不動化効果は牛ふん堆肥に比して小さかったものの, 化学形態別の見地からは, 重金属の移行抑制に寄与する可能性が示唆された.
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