農業農村工学会論文集
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87 巻, 1 号
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研究論文
  • 渡辺 晋生, 中西 真紀, 草深 有紀, 武藤 由子
    2019 年 87 巻 1 号 p. I_1-I_8
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/01/11
    ジャーナル フリー

    異なる温度で, 硫酸アンモニウムを含む黒ボク土のバッチ試験を行った. バッチ試験で測定したアンモニア態窒素 (NH4-N) の減少と硝酸態窒素 (NO3-N) の増加は一次分解反応で表せた. 一次分解の硝化速度定数は温度低下とともに減少した. バッチ試験と同じ温度で, 硫酸アンモニウム溶液を滴下後, 純水を滴下する浸透実験を行った. この際, NH4-Nが吸着により上方に残存し, 硝化により生じたNO3-Nが下方に流下した. 温度が低いほど土中で発生するNO3-Nは減少した. ここで, バッチ試験で求めた硝化速度定数を用いて浸透実験の数値解析を行った. 溶存態と吸着態NH4-Nが等しく硝化すると仮定すると, 計算は浸透実験のNO3-N分布を過大評価した. 一方, 吸着態は溶存態より硝化速度定数が小さく, また硝化が遅れて開始すると仮定すると, 計算は土中のNH4-N, NO3-N分布と排液のNO3-N濃度をよく再現した.

  • 中野 拓治, 中村 真也, 松村 綾子, 高畑 陽, 崎濱 秀明, 大城 秀樹, 幸地 優作, 平田 英次
    2019 年 87 巻 1 号 p. I_9-I_15
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/02/02
    ジャーナル フリー

    沖縄本島北部に分布する国頭マージ土壌を用いて油汚染土壌の室内浄化試験を実施し, 島内で産出される琉球石灰岩砕・粒子を含めた浄化促進材の添加を通じて, バイオレメディエーションによる油分浄化特性と影響要因について考察した.軽油模擬汚染土壌に琉球石灰岩を5%以上添加することにより, 土壌含水比が5~20%の範囲で油分の浄化速度(Total Petroleum Hydrocarbons(TPH)浄化速度)を向上させるとともに, 貝殻片や花崗岩砕等を用いた浄化促進材との比較検証の結果, 琉球石灰岩砕が最もTPH浄化速度を高めることを明らかにした.琉球石灰岩砕・粒子は, 油分分解菌の代謝活動に必要となる通気性とその棲息域を確保する細孔を多く有しており, 国頭マージ土壌のpHを酸性域から中性域に中和する効果もあることから, 土壌中の油分分解菌の活性化によりTPH浄化速度が向上したものと推察される.

  • 上野 和広, 浅野 純平, 長束 勇, 石井 将幸, 西山 竜朗
    2019 年 87 巻 1 号 p. I_17-I_25
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/02/02
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    無機系材料間のせん断付着強度の評価に向け, 傾斜せん断試験と一面せん断試験による検討を行った.傾斜せん断試験でモルタルとポリマーセメントモルタル(PCM)の間の付着性を評価した結果, PCMの圧縮強度の増加に伴ってせん断付着強度は増加し, 摩擦角は一定の値を示した.この結果は, 無機系材料の一般的な材料特性として妥当であることから, 傾斜せん断試験をせん断付着強度の評価に適用可能と考えられた.また, 傾斜せん断試験に対する一面せん断試験の代替性を評価した結果, 一面せん断試験は適切な試験条件の設定により供試体をせん断破壊可能であること, 一面せん断試験によるせん断強度が理論的に求めたせん断強度とほぼ一致すること, 同一条件の付着界面での付着性の評価が両試験で類似することが確認され, 一面せん断試験によって傾斜せん断試験を代替可能と考えられた.

  • 藤澤 和謙, 村上 章
    2019 年 87 巻 1 号 p. I_27-I_36
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/02/02
    ジャーナル フリー

    本論文の目的は, 飽和領域の浸透挙動を記述するDarcy-Brinkman式を不飽和領域に適用可能な方程式へと拡張することにある.Darcy-Brinkman式は, 粘性項と慣性項が追加されたDarcy則に対応し, 飽和した多孔質領域において, Navier-Stokes式に空間的な平均操作を施すことで導かれるが, これまで不飽和領域におけるDarcy-Brinkman式は提案されていない.本論文では, 同様の平均操作を不飽和の多孔質領域に適用することで, Darcy-Brinkman式を不飽和領域へと拡張を行う.平均操作の結果から得られる方程式は, 体積含水率の時間変化が連続式に追加されることが導かれ, 運動方程式には, 慣性項, 粘性項, Darcy則から導かれる項において液相が間隙を完全には占めないことに起因する不飽和の特徴が表れることが示される.

  • 金森 拓也, 堀野 治彦, 櫻井 伸治, 中桐 貴生, 中村 公人
    2019 年 87 巻 1 号 p. I_37-I_43
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/03/05
    ジャーナル フリー

    広範かつ恒常的に重金属汚染が生じている農地においては, 時間的・コスト的側面から浄化措置を講じることが困難である場合もあり, 土壌改良資材の投与により重金属の可動性を弱め, 作物の重金属吸収を抑制する不動化技術が注目されている.本研究では, 不動化技術における有機性廃棄物の利用可能性に着目し, 銅, カドミウム, 鉛を対象とした土壌バッチ試験から牛ふん堆肥およびメタン発酵消化液の重金属不動化資材としての有用性を検討した.その結果, 牛ふん堆肥で重金属の不動化効果が高く, 特に銅では対照区に対して9割程度の可給性の減少が確認された.しかし, カドミウムは他の重金属と比べて不動化されにくく, さらに他種重金属との共存下では移行性が顕著に増大するなど, 土壌中における不動化挙動は重金属種によって異なることも示された.また, メタン発酵消化液の不動化効果は牛ふん堆肥に比して小さかったものの, 化学形態別の見地からは, 重金属の移行抑制に寄与する可能性が示唆された.

  • 有田 博之, 橋本 禅, 内川 義行
    2019 年 87 巻 1 号 p. I_45-I_50
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/03/05
    ジャーナル フリー

    東日本大震災・新潟県中越大震災で講じられた対策の検討を通じて, 災害レベルに応じた計画的な災害復旧対応の必要性について論じ, 計画が具備すべき特性・構成について提案した.農業農村整備分野では災害復旧の計画策定は現在行われないが, 大規模災害では計画策定が復旧の迅速化・効率化および業務負担の軽減に繋がる.災害復旧計画は, ①復旧方針を明確にし, ②発災直後の業務を簡素化し, ③復旧対応の均一性を確保する効果をもつ.被害の形態によって被災地区は, 個別被害ゾーン, 団地的被害ゾーン, 面的被害ゾーンに区分でき, これらの組み合わせによって災害レベルは異なる.本論では, 災害レベルを3種に類型化し, 各レベルに対する計画的な災害復旧方法を示した.

  • ―多良間島の147日地下水位データへの適用―
    白旗 克志, 吉本 周平, 土原 健雄, 石田 聡
    2019 年 87 巻 1 号 p. I_51-I_60
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/04/03
    ジャーナル フリー

    沖縄県多良間島の沿岸域帯水層の広域的な水理定数を把握するため, 地下水位の潮汐応答を分析して水理定数を推定する潮汐応答法に, デジタルフィルタリングと離散フーリエ変換による単一周期潮汐振動の抽出を組み合わせて適用した.用いた水位観測データの長さは, 卓越潮汐成分抽出のための離散フーリエ変換に適した3,279時間(約137日)に, デジタルフィルタリングに必要な10日間を加えた長さとした.多良間島沿岸域の複数測線下の帯水層に対し推定された水頭拡散率は4∼15 m2·s-1であり, これから算出された透水係数は既往の揚水試験の結果と同じ10-2 m·s-1のオーダーであった.推定された水頭拡散率および透水係数には島内の位置によって3∼4倍の違いがあり, 北北西側をはじめとして北部では小さい.このことは多良間島の淡水レンズの分布が同じ方向に偏っていることにも整合する.

  • 李 雨桐, 中野 拓治, 中村 真也, 山岡 賢, 阿部 真己
    2019 年 87 巻 1 号 p. I_61-I_71
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/04/03
    ジャーナル フリー

    連続流入間欠ばっ気活性汚泥方式の農業集落排水施設のBOD除去性能確保に関して, ばっ気槽1室のばっ気終了時のORP管理範囲100~125mVを明らかにするとともに, ばっ気装置散気方式, ばっ気強度, ばっ気時間等によるDO挙動特性とBOD除去性能確保に必要なばっ気終了時のDO濃度を把握した.総括酸素移動容量係数(KLa)にはばっ気槽の活性汚泥粘度が関与しており, ばっ気強度, 水温, MLSSを説明変数とする重回帰式から推定できることが確認された.BOD除去速度恒数はばっ気強度, ばっ気時間, 及び槽内水温を説明変数とする重回帰式から推定できることが示唆された.ばっ気強度(0.03 m3∙m-3∙mim-1)とばっ気時間(30min)を組合わせたばっ気槽の運転操作を通じて, 少ないばっ気空気量で高いBOD除去性能を得るなど農業集落排水施設の運転管理効率化が図られることが示された.

  • 桑原 淳, 横濱 充宏, 大岸 譲, 石黒 宗秀
    2019 年 87 巻 1 号 p. I_73-I_82
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/04/03
    ジャーナル フリー

    曝気スラリーおよび消化液が, 最大8年間散布された採草地で草地土壌表層の化学性, 牧草品質を調査した.草地土壌表層では, 特にカリウムが過剰であったが, 牧草のカリウムは適正な範囲で, ミネラルバランスは良好であった.ただし, 牧草のマグネシウムは栄養診断基準の下限値に近かった.これは, 草地土壌表層のカリウム過剰による牧草のマグネシウム吸収抑制が理由と考えられ, 土壌分析に基づく減肥が求められる.曝気スラリーおよび消化液を散布している圃場では, 表層土壌の亜鉛や銅は, 経年的に増加すると推察されたが, 非散布圃場と比較して有意な差は見られなかった.

  • 関島 建志, 桐 博英, 安瀬地 一作, 木村 延明, 向後 雄二
    2019 年 87 巻 1 号 p. I_83-I_90
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/04/19
    ジャーナル フリー

    大規模な津波浸水被害をもたらした東北地方太平洋沖地震では,海岸線と並行する道路盛土や堀が津波遡上エネルギーを減勢する効果があったと考えられている.このため,沿岸部農業地域の減災対策の一つとして,農業排水路を活用した津波の減勢が期待されてきているが,排水路規模による効果発現の程度は明らかとなっていない.本研究では,サイズの異なる排水路を設置した水理模型実験を行い,津波の減勢効果を検証した.その結果,減勢効果は排水路の深さよりも,幅に影響を受けること,減勢効果が認められる排水路では,水路が滞水している場合でも効果は低下するものの減勢効果が認められることを明らかにした.また,減勢効果が認められる排水路では,浸水の到達に差が生じることが明らかとなった.

  • 長岡 誠也, 岡島 賢治, 伊藤 良栄, Mohammad Raihanul ISLAM, 渡部 健
    2019 年 87 巻 1 号 p. I_91-I_97
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/05/16
    ジャーナル フリー

    農業用水路の通水性能を決定する主な要因は, コンクリート表面の摩耗による粗さである.粗さ計測手法の多くは非灌漑期での実施を前提とした方法を提案している.本研究では灌漑期における水中のコンクリート表面粗さ計測手法として水中超音波に着目した.計測技術の開発に向けた検討項目は, 計測距離による伝達損失, 計測範囲, 計測値のばらつき, 最大振れ幅と算術平均粗さの関係である.伝達損失は, 計測距離が近いほど, 単位計測距離あたりの最大振れ幅の損失量が大きいことが確認できた.計測範囲は, 計測距離500 mmの場合, 直径約300 mmの範囲となった.計測値のばらつきは, 10回の平均で標準偏差が0.5%以内になることがわかった.最大振れ幅と算術平均粗さの関係から粗さを精度よく推定できることが明らかとなった.以上から, 水中超音波を用いた粗さ計測手法が有効となる可能性が示された.

  • —2004年新潟県中越地震を事例として—
    坂田 寧代
    2019 年 87 巻 1 号 p. I_99-I_104
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/06/05
    ジャーナル フリー

    災害復興における「文化の伝承」の意義を明らかにすることを目的として, 2004年新潟県中越地震で被災した長岡市山古志地区を対象に2013~2017年度に参与観察・聞取りを行った.その結果, 集落行事を通じた集落連携, 水稲営農組合, 伝統野菜「かぐらなんばん」の保存会, 集落行事を通じた都市農村交流, 伝統行事「牛の角突き」を通じた都市農村交流, 放課後の児童の集まる場の事例から, 農村伝承文化を通じて社会集団が編成されたことが明らかになった.

    農村住民が主体となって社会集団を編成するための行政支援を行うことは農村地域における災害復興・振興において非常に重要である.そのため, 例えば, 「文化の伝承」を目的とした事業の創設が望まれる.

  • ― 都道府県間産業連関分析によるライフサイクルアセスメント ―
    上田 達己, 國光 洋二, 沖山 充, 徳永 澄憲, 石川 良文
    2019 年 87 巻 1 号 p. I_105-I_116
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/06/27
    ジャーナル フリー

    本研究は, エネルギー生産の面から地形条件に恵まれた扇状地において水路システムを利用した小水力発電事業に取り組んでいる土地改良区連合を対象として, エネルギー収支と温室効果ガス排出収支の実態を明らかにするため, 水利施設の建設・運用と営農活動について, 都道府県間産業連関分析に基づくライフサイクルアセスメントを行った.結果として, 水利施設の運用に限ればエネルギー生産量は消費量の約12倍となること, 水利施設の建設を含めるとその比率は93%であること, また, 営農活動との比較では, 受益地で米と飼料作物のみ作付けされると仮定するとエネルギー生産量が電力消費量(直接・間接)の125%を供給し, 現状の地域の作目構成を反映してエネルギー集約的な施設栽培などを含めると電力消費量の51%を供給できることが明らかとなった.

  • 鈴木 麻里子, 奥田 康博, 大澤 孝史, 岩本 昭仁, 井上 一哉
    2019 年 87 巻 1 号 p. I_117-I_122
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/06/27
    ジャーナル フリー

    近年, コンクリートのひび割れ低減対策として, 多くの技術や配合設計, 施工方法が検討されている.しかしながら, ひび割れ発生要因が様々であるがゆえに, ひび割れ抵抗性の評価方法は確立されておらず, 個々に評価しているのが現状である.そこで, 本研究は, 多くの農業水利施設でみられるコンクリートの乾燥収縮ひび割れに焦点を当て, ポリプロピレン短繊維(PP短繊維)や膨張材, 収縮低減剤(SRA)などの混和材料を配合したコンクリートのリング試験を実施し, 乾燥収縮ひび割れ抑制効果を定量的に評価した.その結果, PP短繊維と膨張材, SRAを併用したコンクリートではひび割れが生じず, 最もひび割れ抑制効果が高いことが明らかとなった.

  • ― コンクリート二次製品のフリュームを用いた水路壁載荷法の基礎的研究 ―
    藤本 光伸, 兵頭 正浩, 石井 将幸, 清水 邦宏, 緒方 英彦
    2019 年 87 巻 1 号 p. I_123-I_129
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/06/27
    ジャーナル フリー

    老朽化が進行したコンクリート開水路に補修・補強工法を適用するためには, 水路の現有耐力を評価する必要がある.本文では, 開水路の耐力評価手法として水路壁載荷法を提案する.水路壁載荷法は, 水路の側壁頂部に水路壁載荷装置を設置し, 荷重を加えた時の水路側壁に発生する変形量を計測することで得られる荷重と変形量の傾きを利用して劣化状況を評価するものである.本研究では, 二次製品であるフリュームを使用し, 載荷方向の違いによる荷重と変形量の傾きの違いを測定した結果, 傾きは弾性域において近似することを確認した.さらに, 変形量の実測値は理論値と近似するため, 水路壁載荷法による変形量を理論式により推定できる可能性があることを確認した.

  • 大村 啓介, 渡部 正, 松下 正明, 荻野 寿一
    2019 年 87 巻 1 号 p. I_131-I_141
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/06/27
    ジャーナル フリー

    地下ダムの貯留性能を確保するためには, 止水壁を隙間なく構築し, 帯水層下部の基盤層(不透水層)まで確実に着底させ, 壁の止水性能を確保することが必要である.本論文では基盤層への着底を確実なものとするため, SMW工法による止水壁構築時に, 地盤改良機より得られるオーガー吊荷重と減速機の負荷電流のデータより基盤層深度を推定する手法について検討を行い, 吊荷重と負荷電流の関係性が変化することを確認した.また, 基盤層にオーガーが貫入すると削孔液の注入圧が上昇する傾向があることから, 削孔液の注入圧の変化から基盤層深度を推定する手法についても検討を行った.以上の検討から, 止水壁構築時に地盤改良機から取得するデータにより基盤層深度が推定できる可能性が示唆された.

研究報文
  • ―面積要件付加制に着目した分析―
    鬼丸 竜治
    2019 年 87 巻 1 号 p. II_1-II_10
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/02/02
    ジャーナル フリー

    農業水利施設を管理する土地改良区では, 組合員が大規模経営体と小規模農家へ二極分化することが予想されている.そのようになった場合, 総会での議決において現行の一人一票制を用いると, 人数の多い小規模農家の意見が反映されやすいので, 受益地の大半を経営する大規模経営体が不平等感を抱く恐れがある.そこで, 二極分化が進んだ土地改良区における議決権数決定方法として面積要件付加制に着目し, その具体的内容をモデル土地改良区のデータを使い提案するとともに, 導入時の留意点を分析した.その結果, ①面積要件付加制における各組合員の議決権数を, 「1人当たり1個」と「全組合員数と同数の議決権を全農地面積につき地積割した個数」の和とする, ②総会での議決前に大規模組合員同士の合意形成を促進するため, ワークショップを取り入れた議論の場を用意する点に留意する, ことを示した.

  • Kazuhisa KODA
    2019 年 87 巻 1 号 p. II_11-II_18
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/03/05
    ジャーナル フリー

    Fresh groundwater lenses develop on relatively large atoll islands and play a key role in providing stable freshwater supply. The Republic of the Marshall Islands in the Pacific Ocean sometimes suffer from drought caused by El Niño. About half of its population lives in the capital, Majuro, and securing freshwater resources for these people is a crucial issue. There is a fresh groundwater lens (Laura Lens) on Laura Island in Majuro Atoll. In this research, the current status of Laura Lens was investigated as up-coning that mixes seawater into fresh groundwater could render the fresh groundwater lens unusable. Electrical conductivities (ECs) of the groundwater at different depths in the monitoring wells were observed to determine the Laura Lens interface depths. ECs of groundwater surface at resident shallow wells were also observed to determine the planar Laura Lens interface. Locations of these interfaces, which have ECs equivalent to 200 mS/m, were calculated by interpolation. The Laura Lens storage volume from 2010 to 2013 was estimated by inputting the data into Surfer software. The results of groundwater observations showed that up-coning, similar to the one that occurred in 1998 which had resulted in serious drought, could still be observed. It was also found that the Laura Lens storage volume had decreased and that most of the fresh groundwater that seeped into Laura Lens had flowed out into the sea. Therefore, it is necessary to conserve and use the fresh groundwater lens.

  • 鬼丸 竜治
    2019 年 87 巻 1 号 p. II_19-II_28
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/04/03
    ジャーナル フリー

    農業・農村の構造の変化に伴い水管理主体が変化し, 農業水利施設の管理を担う土地改良区の組織運営に影響の生じることが想定されている.運営に著しい支障を来すことを避けるためには, 水管理主体の変化とその影響との因果関係を知った上で対策を検討することが効果的と考える.そこで, 本報では水管理主体の変化が土地改良区の組織運営に与える影響を組合員, 議決機関等の5つの体系に沿って定性分析するとともに, 影響への対策の検討方向を「抑制」と「適応」に整理した.その結果, ①大規模経営体と小規模農家への二極分化の進行による, 土地改良区内での意思決定における不平等感の増加に伴い, 組合員の義務履行意欲の低下が見込まれる, ②義務履行意欲の低下への対策として, 原因となる不平等感の増加を抑制するための, 土地改良区における議決権や選挙権の見直しが考えられること等を示した.

  • 今出 和成, 西村 伸一, 柴田 俊文, 珠玖 隆行
    2019 年 87 巻 1 号 p. II_29-II_38
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/04/03
    ジャーナル フリー

    地盤定数の空間的ばらつきは, 空間的な相関特性を持つ確率場としてモデル化されてきている.地盤定数の空間的な相関性の強さを表すパラメータとして相関距離が用いられるが, 一般に, データの密度が不十分で決定するのが難しい.本報告では, 5つのため池堤体における地盤強度の相関距離を整理し, 地盤強度の空間的ばらつきを適切に評価するための基礎資料を作成することを目的としている.そのために, ため池堤体において高密度にコーン貫入試験(CPT)を実施し, 最尤法や地質統計手法を用いて, 鉛直方向および水平方向の相関距離をそれぞれのため池堤体に対して推定した.その結果, 得られた相関距離は, ため池堤体盛土や粘性土を対象とした既往の知見と整合することが確認された.また, 相関距離の活用例として, 地質統計手法を用いて, ため池堤体強度の空間分布を評価した結果を示している.

  • 八谷 英佑, 近藤 文義
    2019 年 87 巻 1 号 p. II_39-II_45
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/04/03
    ジャーナル フリー

    JISⅡ種フライアッシュをベースとしたジオポリマー硬化体について, 初期加熱の有無および硬化後の養生条件の違いが圧縮強度に及ぼす影響について実験的に検討を行った.初期加熱を行わない場合, 僅かでも水分供給がある養生条件では材齢による強度増加は認められなかった.また, 強度の発現が遅い欠点はあるが, 恒温養生および気中養生が有効であった.次に, 初期加熱を行った場合, 材齢7日の段階では恒温養生と水中養生が有効であった.一方で, この場合, 気中養生では長期材齢で圧縮強度の低下がみられた.その理由として, 気中養生においては水中養生および土中養生に比べて, 温度や湿度変化などの負荷の影響が示唆された.

  • ― 日本の農地制度との比較による考察 ―
    武山 絵美, 王 忠融, 九鬼 康彰, 中島 正裕
    2019 年 87 巻 1 号 p. II_47-II_57
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/04/03
    ジャーナル フリー

    本研究では, 台湾の農地転用制度と転用の現状を明らかにし, 日本の現状との比較から, 台湾において優良農地の無秩序なスプロールが進む制度的背景を考察した.その結果, 台湾では, 地目変更を伴わない農業用地の農舎建設により, スプロールが進む現状を明らかにした.またその背景を①農業用地の使途の広さ, ②農地の権利移動規制の解除, ③農舎に係る規制運用体制の不備, ④違法な農地転用を相互監視する地域コミュニティー力の未活用, の4点にまとめた.新規参入者に権利移動された農地が農業に確実に利用されるよう農地の使途や転用を厳しく規制することや, 農地転用に対する社会規範の構築が, 持続的な農地保全を実現する上で必要不可欠であることを指摘した.

  • 森井 俊廣, 西野 信之, 佐藤 慎, 齋藤 大治
    2019 年 87 巻 1 号 p. II_59-II_64
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/04/19
    ジャーナル フリー

    2007年新潟県中越沖地震で,地盤の液状化による管路の被害が多数生じた.しかし,2004年新潟県中越地震で被災し復旧された埋戻し管路では,その大部分が,この2007年地震での被災をまぬがれた.埋戻しには,石灰系固化材を添加した安定処理土が用いられていた.まず,2007年地震で生じた管路の被災状況の調査にもとづき,石灰系固化材を用いた安定処理工法の液状化対策としての有効性を示した.次いで,安定処理土の耐液状化性能を探るため,養生期間56日にわたって土の一軸圧縮強さを測定した.乾燥質量比5%の添加で,所要の一軸圧縮強さを確保できることを確認した.しかし,養生時間とともに強度が増加し続けるため,再掘削が容易であるとする利点が損なわれる可能性が示唆された.固化材添加後の仮置きにより強度発現が緩慢になること,また水中浸漬により強度が大幅に低下することを示した.

  • 森井 俊廣, 小越 将仁
    2019 年 87 巻 1 号 p. II_65-II_70
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/05/16
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    大規模河川の既設頭首工において河床砂礫を採取し, 水路を用いた室内試験により透水性を調べた.Forchheimer式で表される非線形な透水性(水頭損失特性)を有するとした.ダルシー式の透水係数と比較することにより, 非線形性の程度がそれほど強くなく, かつ透水性のオーダーが通常の砂ないし砂利のそれと同程度であることを示した.これより, 粗礫と石分を多量に含むにもかかわらず, 河床砂礫の透水性は大粒径粒子がつくる骨格の間を充填する相対的に小さな粒径の砂ないし細礫に支配されていることを確認した.さらに, 頭首工取水堰下の河床砂礫層を対象にFEM定常浸透流解析を行い, 浸透特性に及ぼす非線形な透水性の影響を調べた.現実的に生じる動水勾配の範囲では, ダルシー流れで近似して問題ないことを明らかにした.

  • 岡 直子, 山路 永司, D.D. Prabath WITHARANA
    2019 年 87 巻 1 号 p. II_71-II_79
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/06/05
    ジャーナル フリー

    スリランカにおける連珠ため池システムを対象としたCASCADEモデルは, 連珠ため池システムの水収支からため池貯水量を推計できるが, モデル計算式係数の同定を行った期間と異なる期間のデータを用いた検証がなされておらず, 精度も不明であった.このため, CASCADEモデルに一部変更を加えたCASCADE IIモデルを構築し, 一年間の降水量, 蒸発量, 取水量, ため池水位の観測データを用いてモデルの係数を同定し, さらに別の一年間のデータを用いて検証を行った.その結果, 検証時の誤差は同定時の誤差から1.1ポイントの増加にとどまり, また, 信頼係数95%で誤差の信頼区間が2.7%から9.8%であった.無降雨期間の後の流出の遅れを計算する遅れ値の発生条件の見直しが, 今後必要である.

  • —長野県白馬村と小谷村の事例—
    藤居 良夫, 内川 義行
    2019 年 87 巻 1 号 p. II_81-II_91
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/06/05
    ジャーナル フリー

    過疎化が進行する農村地域において, 人々が持続的に生活できる環境の確保に向けて, 「小さな拠点」の形成を図ることが注目されている.そのためには, 日常生活に不可欠な生活関連施設の立地を考えることは重要な課題であるといえる.本研究では, 長野県内の代表的な農村地域である白馬村と小谷村を対象にして, Space Syntax理論に基づく道路網の繋がり方から見たアクセス性と道路の傾斜, さらに人口分布の観点から, 生活関連施設の立地特性を調べた.その結果, 道路網のアクセス性と道路の傾斜では, 白馬村に比べて小谷村で評価が低いなど, 両村で差があることがわかった.一方, 徒歩移動を考えた避難所の立地において, 利用圏内の人口分布割合は両村とも高いこと, また, フードデザートを考慮した食料品店の立地において, 徒歩による利用圏内の人口分布割合は両村とも低いことなどがわかった.

研究ノート
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